
この記事の案内人・編集長
稲垣 瑞稀
家の解体を目前に、「家の中の荷物をどうすればいいんだろう」と途方に暮れていませんか?
長年住んだ家には、想い出の品から不要になった家具・家電まで、想像以上の荷物が残されているものです。これら「残置物」の撤去は、解体工事で誰もが直面する大きな課題と言えます。
この記事では、解体工事の専門家である「あんしん解体業者認定協会」全面監修のもと、残置物撤去の基本から費用を抑えるための具体的な方法、信頼できる業者の選び方まで、後悔しないための全知識を徹底解説します。
- 残置物は自身で処分すべき。業者に依頼すると高額になる理由とは
- 残置物は買い取ってもらえる?シビアな査定の実態を専門家が解説
- 全て綺麗にしなくても大丈夫!残置物撤去で最低限守るべきチェックリスト
一般社団法人あんしん解体業者認定協会 理事・解体アドバイザー
初田 秀一(はつだ しゅういち)
解体アドバイザー歴15年、相談実績は11万件以上。お客様の不安を笑顔に変える現場のプロフェッショナル。「どんな些細なことでも構いません」をモットーに、一期一会の精神でお客様一人ひとりと向き合い、契約から工事完了まで心から安心できる業者選定をサポート。この記事では現場のリアルな視点から解説を担当。

「スッキリ解体」編集長
稲垣 瑞稀(いながき みずき)
解体業界専門のWebメディアでWebディレクターとして6年以上、企画・執筆・編集から500社以上の解体業者取材まで、メディア運営のあらゆる工程を経験。正しい情報が届かず困っている方を助けたいという想いから、一個人の責任と情熱で「スッキリ解体」を立ち上げ、全記事の編集に責任を持つ。
「スッキリ解体」専属ライター
馬場 美月(ばば みづき)
「解体工事の準備から完了まで、初めての方でも迷わないよう、一つずつ丁寧に解説します。」
「初心者にもわかりやすく」をモットーに、解体工事の全工程をステップバイステップで解説する記事を得意とするライター。毎週の専門勉強会で得た知識や業者様へのインタビューを元に、手続きの流れや専門用語を図解なども交えながら、読者が迷わずに理解できる記事作りを心がけている。
解体工事における残置物とは?
解体における「残置物」とは、建物の中に残された家具や家電、衣類、日用品などの総称です。長年住まわれた住宅には多くの残置物が残っている場合があり、解体作業に取り掛かる前に処分をする必要があります。
「残置物は解体業者に無料で処分してもらえる」は誤解
残置物の処分は解体業者にお任せできますが、お任せした場合は残置物の処分費用が発生します。
「残置物は普通の家庭ゴミのようなものだから、解体工事のついでに無料で処分してもらえるのでは?」と思われるかもしれませんが、ほとんどの残置物は建物の廃材と一緒に処分できません。
そのため、解体業者が残置物を処分する場合は、解体工事で発生した廃材とは別で処分する必要があります。
残置物処分を解体業者に依頼した場合、費用が割増になる?
残置物を自分で処分する場合と、業者に依頼した場合とでは、費用にどのような違いが出るのでしょうか。
結論から言うと、解体業者に依頼をした方が費用が高額になる傾向があります。
ゴミの種類と処理責任者
費用が高くなる仕組みを知る前に、ゴミの種類について解説します。法律上、ゴミの種類は「産業廃棄物」と「一般廃棄物」に分けられます。
産業廃棄物は「事業活動に伴って生じた特定の20種類の廃棄物」を指し、それ以外の廃棄物(家庭ごみなど)は一般廃棄物に分類されます。
ゴミの種類 | 定義 |
産業廃棄物 | 事業活動によって発生した特定20種類の廃棄物 |
一般廃棄物 | 主に家庭や生活によって発生した、産業廃棄物以外の廃棄物 |
2 この法律において「一般廃棄物」とは、産業廃棄物以外の廃棄物をいう。
4 この法律において「産業廃棄物」とは、次に掲げる廃棄物をいう。
一 事業活動に伴つて生じた廃棄物のうち、燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類その他政令で定める廃棄物
二 輸入された廃棄物(前号に掲げる廃棄物、船舶及び航空機の航行に伴い生ずる廃棄物(政令で定めるものに限る。第十五条の四の五第一項において「航行廃棄物」という。)並びに本邦に入国する者が携帯する廃棄物(政令で定めるものに限る。同項において「携帯廃棄物」という。)を除く。)
解体業者の残置物の処分方法
「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」に定められているところでは、残置物は家庭や生活よって排出された「一般廃棄物」扱いとなります。
しかし残置物を「産業廃棄物」として取り扱っている解体業者も存在します。また、一般的に残置物は「解体業者が処分すると産業廃棄物扱いになるから高額になる」とも言われます。これは一体どういうことなのでしょうか。
真相を確かめるため、「あんしん解体業者認定協会」の理事であり、解体現場に携わるプロフェッショナルの初田さんに実態を伺いました。
一般社団法人あんしん解体業者認定協会 理事・解体アドバイザー
初田 秀一 (はつだ しゅういち)
解体アドバイザー歴15年、相談実績は11万件以上。お客様の不安を笑顔に変える現場のプロフェッショナル。「どんな些細なことでも構いません」をモットーに、一期一会の精神でお客様一人ひとりと向き合い、契約から工事完了まで心から安心できる業者選定をサポート。この記事では現場のリアルな視点から解説を担当。
稲垣:解体工事の残置物は「一般廃棄物」か「産業廃棄物」かどっちなのでしょうか?
残置物は法律に則り「一般廃棄物」に分類されます。そのため残置物を収集運搬できるのは、「一般廃棄物収集運搬業許可」を持っている解体業者のみです。それ以外は許可を持っている業者に処分を委託しなければいけません。
稲垣:「解体業者が処分すると産業廃棄物になる」という説明をよく耳にするのですが、こちらについてはいかがでしょうか。
解体業者が処分しても「一般廃棄物」であることに変わりはありません。ただ、一般廃棄物の収集運搬業許可を持たない解体業者も多いため、グレーゾーンではありますが「産業廃棄物として」処分しているケースがあります。その実態に照らし合わせて、そういった説明が広まったのだと思います。
残置物を解体業者が処分すると高くなる仕組み
稲垣:では、産業廃棄物として処分しているから処分費用が高くなるのですか?
そうなります。分類としては一般廃棄物でも「産業廃棄物として」解体業者が収集運搬し、処分場も暗黙の了解で受け入れていることがあるのが実情です。もちろん一般廃棄物の運搬許可を持っていたり、専門の処分業者に依頼しているケースもありますよ。
残置物を自分で撤去する方法
解体工事の前には、自身での残置物撤去をおすすめします。
残置物の種類と処分方法
まずは残置物の種類と処分方法を確認しましょう。以下は自身で処分した方が良い品目です。
種類 | 具体的な品名 | 費用の目安 | 処分方法 |
---|---|---|---|
日用品 | 燃えるゴミ、燃えないゴミ、資源ゴミ | 基本的に無料 | 地域のゴミ回収 |
家電製品 | エアコン、洗濯機、冷蔵庫、テレビ | 1点あたり1,052円~ | 郵便局で家電リサイクル料金を支払い、指定場所へ持っていく |
パソコン | ノート型を含むパソコン本体、液晶ディスプレイ | 基本的に無料 | 家電量販店やメーカーの回収サービスに依頼 |
粗大ゴミ | タンス、布団、机 | 1点あたり数百円~ | 粗大ゴミ受付センターに連絡後、ゴミ処理券を購入し指定日に出す |
かさばる布団やマットレスなどの布類、割れやすい陶器は業者が処分すると高額になるため、自身での処分をおすすめします。レアケースではありますが医療品や薬なども業者は扱いに困るため、自身で処分しておきましょう。
日用品
燃えるゴミ、燃えないゴミ、缶・ビン・ペットボトル、古紙などの生活ゴミは、自治体で週ごとに回収している指定日に捨てましょう。指定日は地域によって異なるため必ず事前に確認しておきましょう。
家電製品(リサイクル対象)
「エアコン」「テレビ」「冷蔵庫」「洗濯乾燥機」は家電リサイクルの対象です。郵便局で家電リサイクル料金を支払って、指定されている引き取り場所に持っていくことで比較的安価に処分できます。
エアコン | 972円~ |
テレビ | 1,386円~ |
冷蔵庫 | 3,672円~ |
洗濯機乾燥機 | 2,484円~ |
また、リサイクル対象外の大型家電製品を処分する場合は、まず近場の家電量販店に相談をしてみましょう。無料で回収やリサイクルを請け負っている店もあるため一度問い合わせてみてください。
パソコン
パソコンを処分する際は、まず機器に記された「PCリサイクルマーク」を確認してください。PCリサイクルマークがあるパソコンは製造メーカーに無料で引き取ってもらえるため、処分費用を抑えられます。
PCリサイクルマークが無い場合は、メーカーによる処分に3,000円程度の費用がかかります。
なお、処分の前にはパソコンの初期化を行い、大切なデータが残されたままにしないように気をつけましょう。
粗大ゴミ
粗大ゴミは「粗大ごみ受付センター」に連絡をし、自治体が指定する手順で処分を進めてください。
なお、処分をするには指定の金額分の「粗大ごみ処理券」が必要になります。こちらは近場のコンビニで購入できます。
引用:有料粗大ごみ処理券について(券の種類・購入場所)|世田谷区
解体業者に任せていい残置物
木造住宅を解体する場合、タンスやテーブルなどの木製家具は家と一緒に取り壊してもらえる場合があります。依頼する解体業者に「残置物はどこまで処分すれば良いか」と相談してみましょう。
木製家具、鉄、スチールなどは解体業者が「処分しなくていいよ」と言ってくれる場合があり、その場合はほぼ無料で処分をしてくれます。どこまで解体業者が対応できるかは見積もりの段階で確認しておきましょう。
価値のあるものはリサイクル・買取業者に買い取ってもらう
まだ使える家具や家電、骨董品、ブランド品などは、リサイクルショップや専門の買取業者に査定を依頼してみましょう。処分費用がかかるどころか、逆にお金になる可能性があります。
また、不用品回収業者の中には買い取りを同時に行ってくれるところもあるので、見積もり時に相談してみるのもオススメです。
【初田理事に聞いた】不要品は本当に買い取ってくれる?
稲垣:多くの解体現場に携わる初田理事の実感として、不要品の買い取りは頻繁に行われるものなのでしょうか?
確かに買い取ってもらえるケースはあります。しかし実態としては、値がつかないケースがほとんどです。一見価値のありそうな骨董品・着物・書籍なども、基本的には値がつかずに買い取りにならないことが多くあります。
稲垣:査定は思ったよりシビアなのですね。反対に値がつきやすいケースはありますか?
貴金属は経年に関わらず値がつきやすいです。ただ、買い取ってもらえるケースでも1万~3万円程度の値引きに落ち着くので、過度な期待はしない方が良いかもしれません。
もし査定に納得がいかない場合は、ご自身でフリマアプリなどを使って販売するのも手です。
上記は実際に不要品が買い取りになった事例の見積書です。残置物の処分費用から買い取り分が値引きになっています。業務用の冷蔵庫が50,000円で売れたことが大きいですね。ただ、家電は型落ちも早く3年以上経っていると価値はぐんと下がってしまうので注意が必要です。
解体工事の残置物の撤去費用相場
家を解体する際の残置物撤去費は業者や地域によって異なりますが、1m3あたり1万2,000円〜が相場です。戸建て住宅の解体では、多くの場合、撤去費用はおおよそ2万円~30万円程度が目安となります。
※費用目安は「あんしん解体業者認定協会」が保有する解体工事データから平均相場を算出したものです。
ただし、費用は次のような要因によって変動し、30万円を超えることもあります。
費用が決まる3つの要因
残置物の量
量が多いほど、必要なトラックや作業員が増えるため費用は高くなる傾向があります。
残置物の種類
家電リサイクル法の対象品やピアノ、金庫など、特別な処分が必要なものが含まれていると、その分コストが上がります。例えばピアノは、単に運び出すだけでなく専門的な解体や、自治体で受け入れない場合は特別な処分ルートが必要になるため、5万円〜8万円程度の追加費用が発生するケースがあります。
作業環境
トラックが停めにくい、エレベーターがない、家の中がゴミ屋敷状態など、搬出に手間がかかる場合は費用は高くなる傾向があります。
【FAQ】解体前の残置物撤去に関するよくある質問
家の解体で布団はどうなるの?
布団は解体業者に処分を依頼することも可能ですが、事前にご自身で処分しておくことで費用を抑えられることがあります。ご自身で処分する場合は、主に次の方法があります。
- 粗大ゴミとして捨てる
折りたたんで紐でしばり、指定日に出します。数百円の処理券が必要です。 - 家具・インテリア店の回収サービスを利用する
新しい布団を購入する際に、店舗が古い布団を回収してくれることがあります。引き取り条件や料金はお店によって異なるため、購入前に回収サービスの有無や詳細を確認しておくと安心です。
畳は残置物?解体業者に処分してもらえるの?
畳は基本的に解体業者が建材の一部として処分してくれます。ただし、状態によっては「残置物」として別料金になるケースもあるため、見積もり段階で業者に確認しておくことが大切です。
相続人が複数いる場合の残置物はどうする?
とくに、ご両親から相続した実家の残置物を処分する際には注意が必要です。
相続人が複数いる場合、残置物は相続人全員の「遺産共有」という状態にあります。たとえ価値のない物でも勝手に処分してしまうと、後から他の相続人から損害賠償を請求される可能性があります。
処分に着手する前に、必ず「遺産分割協議書」に残置物の取り扱いを明記し、相続人全員の合意を得ておくことが非常に重要です。なお、相続に関する最終的な判断や手続きについては、思わぬトラブルを避けるためにも、必ず弁護士や司法書士などの法律専門家にご相談ください。
【まとめ】これだけは守る!残置物の処分で最低限守るべきポイント
残置物が多く残っていると「これを全部処分しなきゃいけないのか」と負担に感じるかもしれません。
しかし、残置物は全てさっぱり綺麗にする必要はありません。ご自身が割ける時間や労力を踏まえたうえで「少しでも処分費用を安くする」ために特に重要なポイントだけは押さえておきましょう。
- ・プラスチックごみや紙くずなど、軽くてかさばる日用品を処分する
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プラスチックごみなどの軽くて細かいものは、あらかじめ片付けておくことで、解体業者の分別や搬出の手間が減り、人件費の節約につながります。
- ・衣類/寝具類を処分する
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衣類や寝具のようにかさばるものは、圧縮したり袋にまとめておくことで、トラックの荷台を効率よく使え、運搬費の削減にもつながります。
- ・割れ物(陶器・ガラス食器など)を処分する
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陶器やガラス製の食器などの割れ物は重くて壊れやすく、扱いに手間がかかるため、自分で処分しておくと業者の負担が減り、結果的に費用を抑えやすくなります。
- ・中身入りのタンスや棚は「中身だけ片付ける」
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木造住宅の場合、木製の棚やタンスは、建物と一緒に解体してもらえることがあります。その場合は中身を空にしておくだけでOKです。