この記事では、東京都大田区の解体業者で解体工事を行った熊谷さん(仮名)の事例を紹介します。
・分離発注をするメリットがわかる。
・見積書の項目ごとの不明点を解決できる。
・解体する家の周辺スペースがない場合の追加費用がわかる。
・アスベストとは何か。事故を防いで安全に工事を依頼する方法がわかる。

中野達也。一般社団法人あんしん解体業者認定協会理事。解体工事業の技術管理者であり、解体工事施工技士を保有。2011年に解体業者紹介センターを鈴木佑一と共に創設。2013年に一般社団法人あんしん解体業者認定協会を設立し、理事に就任。めざまし8(フジテレビ系列)/ひるおび(TBS系列)/ 情報ライブ ミヤネ屋(日本テレビ系列)/バイキングMORE(フジテレビ系列)など各種メディアに出演。
熊谷さんが解体工事を依頼するのは、実は今回が2回目でした。
1回目の解体工事では、見積り依頼などを全てハウスメーカーに任せきりにしてしまい、解体費用が高額になってしまったのを後悔していました。

ハウスメーカーで解体工事をお願いすると、どうして費用が高くなるの?



ハウスメーカーは解体工事を自社で行わず、提携している解体業者に解体を依頼するんだ。その際に業者に支払う手数料(中間マージン)がかかるため、費用が20%~30%上乗せされるという仕組みなんだ。



中間マージンがかかる分、工事費用が高くなるんだね!
中間マージンとは、商品等を仕入れて販売する際に仕入れ額と販売価格の差額として発生する利益のことです。解体工事の場合は、「工事をするためにかかる費用」と「解体業者が実際に工事を請け負う金額」との差が中間マージンとなります。「請負金額 - 工事費用 = 中間マージン」
解体業者の中でも、解体工事を受注した元請け会社が直接工事をせず、下請け会社である1次請けに仕事を依頼し、1次請けがさらに2次請けへ依頼し……というように複数の請負会社を挟む構造をとっている場合があり、これを「多重下請け構造」といいます。



中間マージンを回避するためには、自社施工をしている解体業者に直接工事を依頼する必要があるよ!ハウスメーカーを通さずに直接解体業者へ工事を依頼することを分離発注というんだ。
前回の反省を活かして解体費用を抑えたいと思っていた熊谷さんは、中野さんの話を聞いて、直接解体業者を探すことに決めました。
解体工事の概要と背景
今回熊谷さんが取り壊した建物 | |
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構造/種類 | 木造2階建て/住宅 |
坪数 | 32坪 |
所在地 | 東京都大田区 |
築年数 | ― |
東京都大田区で解体業者を選ぶ場合は、以下の情報を参考にして探してみると良いでしょう。
東京都大田区で解体業者を探す場合の参考情報 | |
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大田区の登録解体業者数 | 26社 |
工事に対応して貰える解体業者の所在地 | 大田区、品川区、江東区、杉並区、目黒区、世田谷区、渋谷区、港区など |
大田区の解体工事坪単価(木造) | 40,034円 |
大田市の解体工事坪単価(鉄骨造) | 52,653円 |
大田区の解体工事坪単価(RC造) | 84,265円 |
大田区特有の規制や条例 | 大田区では、区全域が景観計画の対象範囲となっており、建築物の高さ制限などがあるため、地域特有のルールを遵守しているか確認することが重要です。 |
大田区の都市計画や再開発エリアの影響 | 大田区では、バリアフリーを目的とした「おおた街なか“すいすい”ビジョン」が策定されており、解体工事に関する手続きや規制が特に厳しく定められている可能性があります。重点的に整備している蒲田駅及び大森駅周辺地区などに該当する場合は、解体実績が豊富な業者を選ぶと安心でしょう。 |
大田区内のゴミ処理場の距離・運搬コスト | 大田区内の解体業者が利用する廃棄物処理場までの距離や、解体物を処理するための運搬コストも工事費用に影響します。東京都内の他地域と比較しても、処理場までの距離や運搬費が異なる場合があるため、それも踏まえて業者を選ぶと良いでしょう。 |
見積書で注目すべきポイント





実際に見積書を出してもらったけど、どこをどう見たらいいかわからないよ~。



なやみん、まずは落ち着いて!



だって専門用語が多くて全然分からないんだもん……



大丈夫、上の見積書の項目を以下に書き出してみたから、一緒に詳しく見てみよう!
・解体工事の見積書には決まった書式がなく、項目の記載方法は依頼する解体業者によって異なります。
・今回依頼した見積書には、必要最低限の項目が表記されています。
ただ、解体業者によっては建物の屋根、本体、基礎をそれぞれ分けて見積る場合や、解体費と廃材の処分費を別に見積るなど、見積り金額をより細かく記載している場合があります。特に高額な費用の項目については、一式という単位で大きく見積もるのではなく、内容をより詳しく記載し、なぜこの金額になるのかがわかりやすく記載されていれば丁寧な見積書と言えるでしょう。
名称 | 数量 | 単位 | 単価 | 金額 |
1.仮設工事 | ||||
単管パイプ養生シート | 200 | m² | 800 | 160,000 |
重機回送費 | 2 | 回 | 20,000 | 40,000 |
2.解体工事 | ||||
木造建物解体 発生材処分共 | 32 | 坪 | 28,000 | 896,000 |
重機搬入のため手壊し 割増 | 1 | 式 | 250,000 | |
鉄骨造解体撤去 発生材処分共 | 4.5 | 坪 | 45,000 | 202,500 |
外壁石綿含有物解体処分 (LV3)2重梱包 | 54 | m² | 2,500 | 135,000 |
3.安全対策 | ||||
誘導員配置(ガードマン) | 1 | 式 | 500,000 | |
出精値引き | 1 | 式 | -7,574 | |
合計 | 2,175,926 | |||
消費税 | 174,074 | |||
見積金額 | 2,350,000 |



まずは建物本体の解体費用から見てみよう!なやみん、この見積書の中でこれに当たる項目はどれだと思う?



んー。2.解体工事の「木造建物解体 発生材処分共」のところかな?



正解!建物本体の解体費とその際に出た廃材を処分する費用がこれに当たるよ!
単価は業者ごとに設定金額が違って、坪単価と呼ばれているんだ。
坪単価×坪数=建物本体解体費になるよ。



この見積書だと、28,000円(坪単価)×32坪(坪数)=89万6,000円(建物本体解体費)ってことだね。
解体する家の周辺環境によって工事費は変わる?



ねぇねぇ中野さん、建物解体費の下の
「重機搬入のため手壊し 割増」はどういう費用?
木造建物解体 発生材処分共 | 32 | 坪 | 28,000 | 896,000 |
重機搬入のため手壊し 割増 | 1 | 式 | 250,000 |



これは、解体する家に重機を搬入するスペース(お庭など)がない場合、重機を入れるスペースを作るために建物を手作業で壊す費用だよ。
手壊し解体とは、重機を使わずに人の手で建物を解体する工事方法です。
隣家との距離が近い場合や、道路や庭など重機を置いておくスペースがない場合に用いられます。
多くの場合は、工事が進むことで重機を置くスペースが生まれれば、途中から重機を搬入します。
重機を用いた解体に比べ、時間も手間もかかるので、費用は建物解体にプラスで請求されます。



手作業で手間がかかる分、費用が追加されるんだね。



そうだね、追加で費用がかかるといえば、この見積書で注目すべきポイントの一つが3.安全対策の「誘導員配置(ガードマン)」の項目だね。
誘導員配置(ガードマン) | 1 | 式 | 500,000 |



一式で50万円!?高額だね……。一体何の費用なの?



解体現場周辺の道路が狭く、工事中の交通誘導が必要な場合は、誘導員を配置するための人件費が発生するんだ。
今回の場合は、家の前の道路が狭い上に一方通行になっていて、2人の誘導員が必要だったので費用も高額になっているね。





解体する家の立地によって、解体費用は大きく左右されるんだね。
アスベスト除去について



もう一つ、見積書の金額が増える要因に、アスベストの除去作業があるよ。この見積書では、「外壁石綿含有物解体処分(LV3)2重梱包」が該当するね。
外壁石綿含有物解体処分(LV3)2重梱包 | 54 | m² | 2,500 | 135,000 |



アスベスト?石綿?



アスベストは石綿(いしわた)と呼ばれる天然の鉱物繊維で、軽くて安くて断熱性や防音性に優れているため、昔は建築工事の様々な場所で使用されていたんだ。



アスベストの除去費用はどうして他の項目と区別されてるの?



それはね、粉塵になったアスベストを吸い込むと人体に有害だということがわかり、解体業者は細心の注意を払って除去しなければならないからなんだ。
・アスベストは、肺がんなどの病気を引き起こす恐れがあることが判明してから、日本では1975年以降段階的に使用が禁止され、2006年には全面的に使用が禁止されています。
・アスベストがそこにあること自体が被害につながるのではなく、飛び散ることや吸い込むことが問題となります。そのため、解体工事の際は法規制に従って特殊な方法でアスベストを除去しなければなりません。
・「石綿作業主任者」や「建築物石綿含有建材調査者」の資格は、アスベストの調査や作業、作業完了確認を行う上で必要な資格です。依頼する解体業者が資格を持っているか必ず確認しましょう。



熊谷さんのおうちにはアスベストを使った部分があったんだね。



以前はたくさん使われていたものだから、これから解体するお家にアスベストが使われていることは少なくないんだ。



一緒に書いてある「(LV3)2重梱包」はどういう意味?



アスベストのレベルと梱包方法のことだね。
アスベストは発じん性=(飛散のしやすさ)によって1~3のレベルに分類されています。
・レベル1 発じん性が著しく高い(もっとも危険):水、セメントと混合した吹付け材などです。アスベストの濃度が高く、経年劣化により少しの振動や接触でボロボロと崩れ、飛散する恐れがあり非常に危険です。
・レベル2 発じん性が高い(とても危険):アスベストを含んだ保温材、耐火被覆材、断熱材などです。
・レベル3 発じん性が比較的低い(やや危険):屋根材や壁材として使われていることが多く、セメントなどで板状になっています。通常の使用状況でアスベストが飛散することはほぼありませんが、解体するときには慎重に取り扱わねばなりません。



今回はアスベストレベル3に該当するということなんだね!



その通り。



2重梱包っていうのは、解体後、アスベストの含まれる建材を、専用の袋などを使って2重に梱包することなんだ。袋が破けるなどの事故を防ぐために採用している方法だよ。



アスベストの飛散を防ぐために工夫しているんだね。
実際の解体工事写真


解体前の様子です。これから工事が始まります。


ホコリの飛沫対策として養生シートを設置し作業をしています。手壊し解体でスペースを確保ができ、トラックが敷地内に入っています。


きれいな更地に仕上がりました。
【まとめ】今回の解体工事のポイント
今回の解体工事事例のポイントは、「分離発注をすることで解体費用を抑えられたこと」「見積書の内容をしっかり把握できたこと」「アスベスト除去を安心して任せられる業者を選べたこと」でした。



熊谷さん、「以前の解体工事より費用を抑えられた」と喜んでいたね!



そうだね。分離発注で直接解体業者へ工事を依頼した分、中間マージンをカットできたおかげだね。



見積書の難しい言葉も、中野さんのおかげでスッキリ解決したよ!



それはよかった。見積書でわからないところは、依頼した業者へしっかり確認することも大事だよ!
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