この記事では、神奈川県横須賀市の解体業者で解体工事を行った高瀬さん(仮名)の事例を紹介します。
・分離発注の良さがわかる。
・浄化槽の種類と処分費がわかる。
・安さだけで解体業者を選ぶデメリットを知る。

中野達也。一般社団法人あんしん解体業者認定協会理事。解体工事業の技術管理者であり、解体工事施工技士を保有。2011年に解体業者紹介センターを鈴木佑一と共に創設。2013年に一般社団法人あんしん解体業者認定協会を設立し、理事に就任。めざまし8(フジテレビ系列)/ひるおび(TBS系列)/ 情報ライブ ミヤネ屋(日本テレビ系列)/バイキングMORE(フジテレビ系列)など各種メディアに出演。
解体工事の概要と背景
今回高瀬さんが取り壊した建物 | |
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構造/種類 | 木造2階建て/借家 |
坪数 | 30坪 |
所在地 | 埼玉県鴻巣市 |
築年数 | ー |
高瀬さんは、一戸建ての借家を保有していました。
老朽化が進んだ借家は、最後に借りていた人が退去してからしばらく借り手がおらず、修繕や建替えをするにも費用がかかってしまいます。
高瀬さんは悩んだ末、思い切って建物を撤去し更地にしてから土地を売却することに決めました。
解体する借家には浄化槽がついているので、きれいな更地にするためには、浄化槽も適正に撤去してもらう必要があります。
土地の売却を不動産会社に相談していた高瀬さんは、更地にするための解体業者は別で探すことにしました。
分離発注について

今回高瀬さんは、土地の売却と別で更地にするための解体業者を探すことにしたんだね。なんでかなぁ?



不動産会社やハウスメーカーに土地の売買と一緒に解体をお願いすることもできるんだけど、その場合「中間マージン」と呼ばれる手数料がかかってしまうから、それを回避するため、あえて分けたんだよ。



そっかぁ、中間マージンを省いて費用を抑えたいから、別々にお願いしようと思ったんだね!



その通り!「土地の売却は不動産会社へ」「解体工事は解体業者へ」それぞれ依頼することを「分離発注」というんだ。
不動産会社やハウスメーカーなど、解体工事を受注した元請け会社が直接工事をせず、下請け会社である1次請けに仕事を依頼し、1次請けがさらに2次請けへ依頼し……というように複数の請負会社を挟む構造をとっている場合があり、これを「多重下請け構造」といいます。本来払う必要のない中間マージンの発生を防ぐためにも、信頼できる解体業者へ直接工事を依頼したほうが良いでしょう。
浄化槽って何?



中野さん、高瀬さんの家にある浄化槽ってなぁに?



浄化槽は、下水道が整備されていない地域で、トイレなどの汚水を放流するための設備のことなんだ。



へぇー!そういう設備のある家もあるんだね!



あまり馴染みがない人が多いかもしれないね。浄化槽自体は地中に隠れているから、上から見えるのはマンホールのみなんだよ。
<2種類の浄化槽>
・単独処理浄化槽:トイレの汚水のみをろ過して河川に流す浄化槽。現在は、新たな製造、販売、設置が禁止されている。(マンホール2枚)
・合併処理浄化槽:トイレの汚水だけでなく、キッチンや風呂場等から出た生活排水も一緒に処理できるのが特徴。2001年4月1日以降設置されたものについては、全てこの方式が使われている。(マンホール3枚※2枚の場合もあり)
<浄化槽撤去の流れ>
浄化槽の最終清掃
浄化槽の撤去を行う前には必ず、最終清掃(撤去前に浄化槽内の汚水を取り除いて内部を消毒すること)を行います。最終清掃は解体業者では対応ができないため、別途で清掃業者への手配を行う必要があります。浄化槽の清掃業者は市区町村によって定められているので、解体を行う家の自治体に確認してみましょう。
補助制度の確認
自治体で補助制度があるか調べておきましょう。補助制度は工事の契約後には利用できないため、必ず工事をはじめる前にホームページを確認し、利用できる際は申請しておきましょう。
現地調査
解体業者が実際に現地の様子を確認する現地調査の際に、浄化槽の有無も確認しておくと良いでしょう。工事の途中で浄化槽が発見された場合は、追加費用が発生してしまいますので注意が必要です。
浄化槽使用廃止届出書の提出
浄化槽の撤去が終わったら、使用を廃止(撤去)した日から30日以内に「浄化槽使用廃止届出書」を都道府県知事へ提出する必要があります。この届け出を行わなかった場合、5万円以下の過料が発生してしまうので、忘れずに届け出をしましょう。



浄化槽撤去のこと、よくわかったよ!あとね、撤去費用も知りたいんだけど、いくらぐらいかかるのかな?



浄化槽の撤去費用は、素材によって変わることがあるんだ。下の表が費用相場だよ。
素材 | 撤去費用相場 | 特徴 |
コンクリート製 | 56,000~150,000円 | 古くに建てられた建物に多い |
繊維強化プラスチック(FRP)製 | 20,000~50,000円 | 比較的新しい建物に多い |



結構値段に差があるんだね……



そうだね。解体業者によって、表記方法も金額も違うことが多いから、気になったら金額の理由を聞いてみよう。
それではここから、高瀬さんがどのようにして解体工事をスッキリ成功させたのか、流れをご紹介します。
解体業者3社に見積依頼
埼玉県鴻巣市で解体業者を探す場合の参考情報 | |
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鴻巣市の登録解体業者数 | 12社 |
工事に対応して貰える解体業者の所在地 | 鴻巣市、行田市、久喜市、熊谷市、北本市、川越市、さいたま市、加須市、羽生市、東松山市など |
鴻巣市の解体工事坪単価(木造) | 33,012円 |
鴻巣市の解体工事坪単価(鉄骨造) | 57,719円 |
鴻巣市の解体工事坪単価(RC造) | 76,778円 |
鴻巣市特有の規制や条例 | 鴻巣市では、計画的かつ効率的な行政の運営のための「都市計画マスタープラン」や、緑地の保全及び緑化の推進を目的とした「緑の基本計画」など、地域特有のルールを遵守しているか確認することが重要です。 |
鴻巣市の再開発エリアの影響 | 鴻巣駅東口駅通り地区など、再開発が行われている地域では解体工事に関する手続きや規制が特に厳しい可能性があります。これらのエリアの場合は、解体経験が豊富な業者を選ぶと安心でしょう。 |
鴻巣市内のゴミ処理場の距離・運搬コスト | 鴻巣市内の解体業者が利用する廃棄物処理場までの距離や、解体物を処理するための運搬コストも工事費用に影響します。埼玉県内の他地域と比較しても、処理場までの距離や運搬費が異なる場合があるため、それも踏まえて業者を選ぶと良いでしょう。 |
高瀬さんは3社に見積もり依頼をしました。
A社の見積書




B社の見積書


C社の見積書


3社の解体業者の見積りの結果比較
3社の解体業者の見積りを比較した結果、「A社156万6,000円」「B社149万400円」「C社119万8,800円」でした。



C社が一番安いね!



なやみん、合計金額の安さに目がいく気持ちはわかるけど、まずは
建物解体費(木造解体工事)の項目を見てみて!



あ!A社の見積書だけ、解体費と処分費の項目が分けてあるね。



よく気がついたね!建物解体だけの費用を一見すると、A社が安く見えてしまうけど、B社とC社は建物解体費に廃材の処分費も含んでいるんだ。
3社の見積書を見比べてわかるように、解体業者によって何をどの費用に含めるかも、表記方法も様々なんだ。



僕、気になるところがあるんだけど……A社の見積書には、浄化槽の撤去費用が載ってないんだ。



そうだね、見積書に載っていない事項については、契約前に解体業者へ必ず確認しよう。気づかずにいると、後から追加費用を請求されてしまうことがあるよ。
A社に浄化槽の撤去費用について質問すると、建物解体費に浄化槽撤去費を含めているとのことでした。
結果的に高瀬さんは、C社に工事をお願いすることに決めました。見積もり内容も問題なく、一番費用が安かったからです。
また、実際に会った時のC社担当者の丁寧な対応や雰囲気も決め手となりました。
安すぎる解体業者にはご注意を!!



安くて丁寧な解体業者が見つかってよかったね!



ほんとだね!
でもね、安いからといって他社と比較しないで契約したり、見積書の内容をしっかり見ないで契約すると、悪徳業者に引っかかってしまうことがあるんだよ……



えぇ!!それは怖いね……



実際に起きたトラブル事例を一緒に見てみよう。
【
事例 1】他社に比べてかなり安かったので工事を頼んだが、後になって「追加費用」という名目で多額の請求をされ、支払ってしまった。


工事のあとで「追加費用が発生した」って言われたら焦っちゃうよね……



追加費用が発生するようなことが起きた時、普通は一旦工事を中断して、追加費用の説明と解体工事を継続するかの確認をお客様にご連絡するのが一般的なんだけど……
・今回見積もり依頼をしたA社のように、解体に必要な工程が見積書から抜けていたり、追加費用についての記載や説明がない場合は注意が必要です。後から請求をされずに済むよう、見積書に記載のない項目はどういう約束になるのか、早い段階で説明を求めましょう。
・追加費用でトラブルになりやすい項目に「地中埋設物」があります。地中埋設物とは、地中に埋められた物質のことで、建物の基礎や井戸、浄化槽など様々なものがあります。これらは解体を進めないと存在がわからないことが多く、それを利用して虚偽の報告をしたり、高額な追加費用を請求してくる業者がいます。
解体工事を依頼する際は、必ず地中埋設物に関する事前の説明をしてくれる解体業者を選び、万が一地中埋設物が出た場合の対応が契約書に記載されているかの確認をしましょう。
【
事例 2】他の解体業者よりかなり安かったが、後に不法投棄を行っていることが判明した。


中野さん、不法投棄ってなに?



不法投棄っていうのはね、「廃棄物を定められたルールに従って適性に処理せず、処分場以外の山林や原野、空き地などにみだりに捨てたり埋めたりする違法行為」のことだよ。



解体業者でそんな事する人たちがいるの……?



廃材の処分費は年々上がっているから、不法投棄をしてコストを削減しようとする悪徳業者が増えているんだ……
・「相場よりも明らかに安い金額で受ける」という解体業者には注意が必要です。見積もりがあまりにも安い場合は、解体を行う上で必要な「廃材の処分費」や「建物の養生費」などを違法に削っている可能性があります。
・解体業者が廃棄物の不法投棄を行った場合、廃棄物処理法によって解体の依頼主が罰せられてしまうこともあります。
不正をしている解体業者を回避するには、複数社の見積書を比較して記載項目や金額を確認し、解体業者のホームページを見て必要な資格が揃っているか、解体工事実績が十分にあるか、口コミの評価はどうか、などを調べる必要があります。
【
事例 3】工事が原因で近隣住民とトラブルに発展し工事が中断……新築工事の時期が大幅に遅延してしまった。


解体工事が原因でご近所さんとトラブルになったら悲しいな……



確かに「新築を建ててこれから楽しい新生活!」という気分ではなくなってしまうよね……
・解体工事で起こる近隣トラブルには「粉塵(ふんじん)の飛散」「騒音・振動の発生」などが挙げられます。これらは解体業者がしっかり対策を行っていれば避けられるトラブルです。
・悪質な解体業者は、コストを削減するために建物の周りを養生シートで覆わなかったり、粉塵(ふんじん)の飛散を防ぐための放水作業を怠っていたりするため費用が安くなっている場合があります。
・解体工事をする際、十分な対策をしていても多少の騒音や振動の発生はどうしても避けられません。近隣住民の理解を得るため、工事前に挨拶まわりをする解体業者が多数いますが、不正にコストを削っている悪徳業者には期待できません。
・近隣トラブルにより工事が中断してしまうと、解体後の予定が後ろ倒しになってしまうだけでなく、新たな解体業者を探す手間と費用が余計にかかってしまう恐れもあります。安さにつられて悪徳業者に解体を依頼してしまった結果、より多くのコストがかかってしまう事態になりかねないのです。
実際の解体工事過程
無事に安心安全な解体業者に工事を依頼できた高瀬さんの家の解体が始まります。


養生シートを設置して、周囲への騒音や粉じんの飛散を防止してから解体を行います。


重機を使って解体していきます。


建物の解体を終え、廃棄物を分別しています。


建物の基礎の撤去作業を行っています。


すべての撤去が終わり、整地に入ります。


きれいな更地に仕上がりました。
【まとめ】今回の解体工事のポイント
今回の解体工事事例のポイントは、「分離発注をしたこと」「浄化槽の撤去費用を事前に見積もりで確認できたこと」「安いだけの解体業者と契約するデメリットを知ったこと」でした。



初めて解体工事を依頼する人たちの心につけ込んで、不要な追加費用を請求してきたり、不法投棄で依頼者の不用品を正しく処分しなかったりする悪い解体業者がいるんだね……



そうだね、そういう悪徳業者に捕まらないように実際に起きた事例を知っておくことは大事だね。



中野さんのyoutubeチャンネルでも、悪徳業者の事例と対策についてわかりやすくお話ししているよね!



うん!為になるから、よかったら見てみてね!
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