【解体ニュース解説】空き家解体中に不発弾発見・北海道恵庭市

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稲垣 瑞稀

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稲垣 瑞稀

解体業界で6年間働く中で感じた『正しい情報が届かない』というもどかしさから、全記事の企画・編集に責任を持っています。専門家への直接取材を通じ、業界経験者として分かりやすい情報提供をお約束します。

この記事でわかること

この記事では北海道恵庭市で不発弾が2つ見つかったニュースをもとに、「空き家の解体でなぜ不発弾が見つかるのか」「不発弾の危険性」「空き家解体を依頼する時に気をつけるべきこと」などを専門家の視点で解説します。

目次

ニュースの概要

公開日: 2025年11月18日
ニュース元: 空き家の解体工事中に…業者が砲弾のようなもの2個発見 半径150m以内を一時規制 陸上自衛隊が回収作業に(北海道放送)

18日午後、北海道恵庭市で、空き家の解体工事中に砲弾のようなものが2個見つかりました。 現場は住宅街で、警察は半径150メートルを規制し、陸上自衛隊が回収作業にあたりました。

引用:空き家の解体工事中に…業者が砲弾のようなもの2個発見 半径150m以内を一時規制 陸上自衛隊が回収作業に|STV

2025年11月18日午後1時45分ごろ、北海道恵庭市柏木町の住宅街で行われていた空き家の解体工事現場で、作業員が地中から砲弾のようなものを2個発見しました。通報を受けた警察は、現場から半径150メートルの範囲を一時的に立ち入り規制し、周辺住民の安全を確保。その後、陸上自衛隊の不発弾処理隊が出動し、慎重に回収作業にあたりました。幸いにも爆発などの被害はありませんでしたが、この一件は、解体工事に潜む予期せぬリスクを改めて浮き彫りにしました。

空き家の解体工事中に不発弾が発見される背景

運営者 稲垣

解体工事中に不発弾(砲弾)が発見されることは、日本ではそれほど珍しい事ではありません。

不発弾が見つかる原因

日本各地で不発弾が見つかる主な原因は、第二次世界大戦中に行われた空襲です。投下された爆弾の一部は不発のまま現在も地中に埋まっており、その数は全国で数千トンに及ぶと言われています。

特に、軍の施設や軍需工場があった地域、主要な都市部ではそのリスクが高いとされています。今回の現場である北海道恵庭市にも、かつて陸軍の演習場などが存在した歴史があります。

なぜ不発弾が?北海道恵庭市の歴史的背景

北海道恵庭市は、旧日本軍陸軍の主要拠点であった札幌(旧第七師団や北部軍管区の中心地)と、千歳海軍航空基地という、2つの重要な軍事インフラのほぼ中央に位置していました。また、札幌近辺には軍事訓練のための大型演習場(厚別演習場)と、その弾薬庫がありました。恵庭は重要な拠点へ物資を運ぶ交通の通り道だったのです。そのため、恵庭という地域全体が軍需品を一時的に置いておく中継地点として機能していた可能性が高いと考えられています。

恵庭全体が軍隊の活動と深く関わっていたため、軍の物資や武器が、公的な施設だけでなく、地域の住民や団体の手によって、個人の家の敷地内や倉庫に持ち込まれる機会が非常に多かったのではないでしょうか。

恵庭市の歴史資料には、恵庭が公的な軍の弾薬庫だという直接的な記録はありませんが、土地関係や時代背景から今回の不発弾は戦後の混乱期に処理せずに残ってしまった遺物であると考えられます。

空き家解体と不発弾の関係性

戦後、高度経済成長期を迎えた日本は、戦後の土地の上に住宅をはじめ多くの建物を建設しました。そして、戦後80年を迎えた現在、当時建てられた建物が次々と寿命を迎え、「相続したものの住む人がいない」、「管理ができない」といった理由で放置される空き家が全国的に急増しているのです。倒壊の危険性や衛生・防犯上の問題から、国や自治体は、「空き家対策特別措置法」などを用い、解体を促進しています。

これにより、これまで何十年も手つかずだった土地が掘り起こされる機会が格段に増え、結果として不発弾の発見件数も増加傾向にあるのです。

今後の予測

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空き家解体は今後も増加の一途をたどります。それに伴い、不発弾の発見事例も増えていくでしょう。この流れを受け、将来的には以下のような変化が予測されます。

  • リスク情報の可視化: 自治体が主体となり、過去の空襲被害状況などから「不発弾埋没リスクマップ」のようなものを作成し、公開する動きが出てくるかもしれません。
  • 事前調査技術の普及: 現在も地中レーダー探査などの技術は存在しますが、コストがかかるため一般的ではありません。しかし、リスクが高いと想定される地域では、こうした事前調査が標準的なオプションとして提案されるようになる可能性があります。
  • 契約の標準化: 施主と業者のトラブルを防ぐため、地中埋設物に関する契約条項がより具体的で標準化された形に進化していくと考えられます。

不発弾の可能性を考慮した解体工事の進め方

不発弾の危険性

不発弾を「古いものだからもう爆発しないだろう」と考えるのは非常に危険です。 実際には、経年劣化によって構造が変化し、現役当時よりも爆発しやすくなっているケースが多々あります。

なぜ「古い不発弾」が危険なのか

不発弾が危険である一番の理由は、内部の火薬や信管(起爆装置)が生きている可能性が高いからです。

  • 火薬の鋭敏化: 長い年月が経つと、内部の火薬成分が化学変化を起こしたり、金属部分が錆びて固着したりします。これにより、わずかな振動、衝撃、熱、摩擦だけで起爆するほど敏感になっている(鋭敏化している)可能性があります。
  • 信管の損傷: 投下時の衝撃で信管が変形し、「あと少しの衝撃」で爆発する寸前の状態で止まっている場合があります。これを動かしてしまうと、即爆発につながる恐れがあります。

爆発した際の被害規模

不発弾の大きさによりますが、いずれにせよ破壊力は凄まじいものです。

  • 爆風と破片: 爆発すると強力な爆風が発生し、金属の容器が粉々になって高速の破片となり周囲に飛び散ります。
    • 小型の砲弾: 半径数メートル〜数十メートルの殺傷能力。
    • 大型の爆弾(1トン爆弾など): 半径数百メートルに被害が及び、建物が倒壊したり、窓ガラスが割れたりします。
  • 地面の陥没: 地中で爆発した場合、地面が大きくえぐれ、周辺の地盤が崩れる危険があります。
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このような事から、不発弾発見時には慎重な作業が求められます。

不発弾が発見された時に施主に及ぶ影響

1. 費用の変動:原則は施主負担
民法の規定では、土地から発見された埋蔵物はその土地の所有者に帰属すると解釈されるのが一般的です。そのため、不発弾の処理に関連して発生する費用の多くは、原則として土地所有者である施主の負担となります。

(埋蔵物の発見)
第二百四十一条 埋蔵物は、遺失物法の定めるところに従い公告をした後六箇月以内にその所有者が判明しないときは、これを発見した者がその所有権を取得する。ただし、他人の所有する物の中から発見された埋蔵物については、これを発見した者及びその他人が等しい割合でその所有権を取得する。

引用:民法第二百四十一条(埋蔵物の発見)|e-GOV法令検索

具体的には、以下のような費用が発生する可能性があります。

  • 工事中断に伴う追加費用: これが最も大きな負担になる可能性があります。工事がストップしている間も、レンタルしている重機のリース料や現場管理のための人件費(待機費用)が発生し続けます。当然、予期せぬ事態については当初の見積もりに含まれていないため、解体業者から追加で請求されることがほとんどです。
  • 不発弾処理そのものの費用: 自衛隊による回収・処理作業自体に費用を請求されることは基本的にありません。しかし、現場の安全確保や特別な養生など、付随する作業で費用が発生する可能性はあります。
  • 近隣への対応費用: 避難勧告が発令されるなど、近隣住民に影響が及んだ場合、その対応に費用がかかる可能性も考えられます。

これらの費用は数十万円から、場合によっては百万円を超えるケースもあります。

2. 工期の遅延
不発弾が発見された場合、工事は即座に中断されます。その後の流れは、①警察・消防への通報、②現場の保全と周辺規制、③自衛隊による現物確認と処理計画の策定、④処理・回収作業、⑤安全確認、という手順を踏みます。このプロセスには、少なくとも数日から、事案の複雑さによっては数週間以上を要することもあります。解体工事が遅れれば、その後の新築工事の着工や土地の売却といったスケジュールにも連鎖的に影響が及んでしまいます。

3. 精神的負担
突然のトラブルに見舞われることによる精神的なストレスも大きいでしょう。警察や行政とのやり取り、不安がる近隣住民への説明、業者との追加費用の交渉など、施主が対応すべきことが山積みになってしまいます。

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今回のニュースを踏まえ、これから解体工事を検討している方が「万が一」に備えて具体的に取るべきアクションをまとめました。

解体業者選びのチェックポイント

  1. 契約書・見積書の確認: 「地中埋設物」や「予期せぬ障害物」に関する条項が明記されているか、その内容が一方的なものでないかを確認しましょう。口頭での説明だけでなく、必ず書面で確認することが大切です。
  2. リスク説明の有無: 見積もりの際に、地中埋設物のリスクについて丁寧に説明してくれる業者を選びましょう。質問に対して誠実に答えてくれるかどうかが、信頼できるかどうかの良い判断材料になります。
  3. 過去の実績: 同様のケース(地中埋設物発見)に対応した実績があるか聞いてみるのも有効です。経験豊富な業者ほど、冷静かつ適切な対応が期待できます。

情報収集の方法

  1. 土地の履歴を調べる: 所有する土地やその周辺地域が、過去にどのような場所だったか(軍事施設、工場、空襲被害など)を、自治体の役所や地域の郷土資料館、図書館などで調べてみましょう。国土地理院のウェブサイト「地理院地図」では、過去の航空写真を見ることもでき、参考になります。
  2. 相見積もりを取る: 必ず複数の業者から見積もりを取り、金額だけでなく、対応の丁寧さや説明の具体性を比較検討してください。

準備しておくべきこと

  1. 予備費の確保: 解体工事の予算を組む際は、不測の事態に備えた予備費(工事費の10〜20%程度)を確保しておくことを強くお勧めします。これにより、万が一追加費用が発生しても冷静に対処できます。
  2. コミュニケーションの記録: 業者との打ち合わせ内容は、些細なことでもメールや書面で記録を残す習慣をつけましょう。これが後の「言った・言わない」のトラブルを防ぎます。

まとめ:空き家解体工事中の不発弾発見ニュースについて

今回のニュースを踏まえ、空き家の解体工事の計画する際には、ぜひ参考にしてみてください。

  • 不発弾発見は他人事ではない: 空き家解体の増加に伴い、日本全国どこで発生してもおかしくない事象です。
  • 費用負担は原則「施主」: 工事中断に伴う追加費用や処理関連費用は、原則として土地所有者である施主の負担となる可能性が高いです。
  • 事前に納得して「契約」: 契約前に地中埋設物に関する条項を業者としっかり確認し、書面で合意することが重要です。
  • 業者選びは価格だけで判断しない: リスク説明を丁寧に行い、万が一の際の対応力がある信頼できる業者を選ぶことが、安心して工事を進めるコツです。

なお、スッキリ解体では優良な解体業者の選び方について徹底解説した記事もございます。あわせてご確認ください。

また、解体工事のスケジュール感を確かめたい方は、以下の解体工事の流れ解説をご確認ください。

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この記事を書いた人

「一個人の責任と情熱で、本当に役立つ情報を発信したい。」

『スッキリ解体』運営責任者。解体業界で6年間働く中で感じた『正しい情報が届かない』という現状を変えるため、全記事の企画・編集に携わり、責任を持って情報発信を行う。

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