【解体ニュース解説】「落ちちゃっただけ」ため池に解体工事のコンクリートがら約3.6トン不法投棄

「落ちちゃっただけ」ため池に解体工事のコンクリートがら約3.6トン不法投棄のアイキャッチ
稲垣 瑞稀

この記事の案内人・編集長

稲垣 瑞稀

解体業界で6年間働く中で感じた『正しい情報が届かない』というもどかしさから、全記事の企画・編集に責任を持っています。専門家への直接取材を通じ、業界経験者として分かりやすい情報提供をお約束します。

この記事でわかること
  • 今回の不法投棄事件の概要と問題点がわかる
  • 「落ちちゃっただけ」という供述についての専門家の見解。
  • 不法投棄の防止措置について今後の課題がわかる

この記事では、先日容疑者が逮捕された静岡県小山町の不法投棄事件を専門家の視点で深掘り解説していきます。容疑者の供述にある「落ちちゃっただけ」で罪を免れられる可能性はあるのでしょうか。

目次

ニュースの概要

  • 発生場所:静岡県駿東郡小山町の農業用ため池
  • 報道日:2026年1月7日
  • 事案:2025年4月上旬から7月上旬までの間、静岡県小山町内のため池に倉庫の解体工事で発生したとみられるコンクリートがら約3.6トンを不法に投棄したとして、元建設業の男(77)ら2人が廃棄物処理法違反の疑いで逮捕されました。警察の調べに対し、容疑者は「落ちてしまっただけ」と容疑を否認していると報じられています。
ため池の写真

ため池は、地元の人たちによる共同所有で、2025年8月下旬に、地元の人がため池にコンクリートがらが捨てられているのを発見し、静岡県に報告、静岡県が警察に通報したことをきっかけに警察が捜査を開始し、男2人の逮捕に至りました。

警察によりますと、男らは犯行当時、同業者で面識があり、不法投棄されたコンクリートがらは、男らが、ため池の近くの倉庫を解体する際に出たものとみられています。

警察の取り調べに対し、男らは解体工事をしたことは認めつつも、不法投棄については容疑を否認しており、元建築業で無職の男は「捨てていない。知らない」、建設業の男は「落ちちゃっただけ」などと供述しているということです。

引用:「落ちちゃっただけ」ため池に解体工事のコンクリートがら約3.6トン不法投棄か 男2人を逮捕=静岡・小山町|SBS NEWS

落としていたとしても不法投棄

そもそも「落としたのなら不法投棄にならないのか」という疑問が浮かびますが、実際そうではありません。

廃棄物処理法では、たとえ最初は過失で落ちたとしても、それを回収せずに放置し、管理対象から外す行為は「投棄」とみなされます。数ヶ月間にわたって放置・隠蔽していた事実は、明確な「投棄の意思」とされ処罰の対象になります。

(事業者の処理)
第十二条 事業者は、自らその産業廃棄物(特別管理産業廃棄物を除く。第五項から第七項までを除き、以下この条において同じ。)の運搬又は処分を行う場合には、政令で定める産業廃棄物の収集、運搬及び処分に関する基準(当該基準において海洋を投入処分の場所とすることができる産業廃棄物を定めた場合における当該産業廃棄物にあつては、その投入の場所及び方法が海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律に基づき定められた場合におけるその投入の場所及び方法に関する基準を除く。以下「産業廃棄物処理基準」という。)に従わなければならない。

引用:廃棄物の処理及び清掃に関する法律|e-Gov 法令検索

また、産業廃棄物の処理には最終処分までの過程を証明する「マニフェスト(産業廃棄物管理票)」と呼ばれる証明書が必要になります。マニフェストは7枚複写(または8枚の積替え保管用)の票からなっており、産業廃棄物の種類ごとおよび引き渡しごとに交付が必要です。廃棄物を処理場まで運ばず、これを怠っている時点で違反になります。

処理業者はマニフェストの交付を受けずに産業廃棄物の引き渡しを受けてはならないこととする。

引用:廃棄物処理法の改正について|環境省

画像引用:産業廃棄物管理票(マニフェスト)の使い方|姫路市

落として気づかないはありえない

結論から言えば、3.6トンものコンクリートがらが落下して「気づかない」ことは物理的に不可能です。これほどの量を投棄するには、トラックの荷台を傾ける「ダンプアップ」などの人為的な操作が不可欠であり、重機を用いた積み下ろしや運搬作業を伴うからです。

また、積載物については道路交通法に基づき、落下や飛散を防ぐための「シート掛け」や「あおりの密閉」などが義務付けられています。仮に3.6トンもの瓦礫がこれらを突き破って落下したのであれば、それは単なる過失ではなく、直ちに運搬を中断し警察や関係機関へ報告すべき「重大な事故」に該当します。

第七十一条 車両等の運転者は、次に掲げる事項を守らなければならない。

四 乗降口のドアを閉じ、貨物の積載を確実に行う等当該車両等に乗車している者の転落又は積載している物の転落若しくは飛散を防ぐため必要な措置を講ずること。
四の二 車両等に積載している物が道路に転落し、又は飛散したときは、速やかに転落し、又は飛散した物を除去する等道路における危険を防止するため必要な措置を講ずること。

引用:道路交通法|e-Gov 法令検索
運営者 稲垣

仮に落としてしまったとしても、処分場に着いた時点で積んだはずのコンクリートがらがないことに気づけば慌てて探すはずです。それをしていないということは、そもそも処理場に持っていく気がなかったと考えるのが妥当でしょう。

考えられる罰則

不法投棄に対する罰則は以下です。

  • 個人の場合: 5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金。またはその両方。
  • 法人の場合: 業務に関わる投棄であれば、企業に対して3億円以下の罰金刑が科される可能性がある。

(投棄禁止)
第十六条 何人も、みだりに廃棄物を捨ててはならない。

第二十五条 次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の拘禁刑若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

十四 第十六条の規定に違反して、廃棄物を捨てた者

引用:廃棄物の処理及び清掃に関する法律|e-Gov 法令検索
運営者 稲垣

廃棄物の処分費用は、コンクリートがらのみであれば1トンあたり5,000円~1万円が相場です。このわずかな費用を惜しんで不法投棄を行い、結果として数千万円もの罰金を科されるリスクを背負うのは、あまりに割に合わない行為と言わざるを得ません。

※費用目安は「あんしん解体業者認定協会」が保有する解体工事データから費用幅を算出したものです。
※この価格はあくまで目安です。実際の費用は立地条件(重機の搬入経路の広さ)など、現場の状況によって大きく変動します。

不法投棄のあった小山町について

事件の現場となったのは、富士山の麓に位置する静岡県小山町です。豊かな自然に恵まれた地域ですが、人目が少ない山間部であることから、心ない業者による「不法投棄」のターゲットになってしまったのかもしれません。

農業用ため池への不法投棄の問題点

今回不法投棄のあった農業用ため池とは、雨が少なく大きな川に恵まれない地域で、農業用水を確保するために人工的に作られた貯水施設です。

農業用ため池は、地域住民が共同で維持管理を担う場所です。個人の土地に比べて日常的な監視の目が届きにくい「死角」となりやすいため、犯罪のターゲットに選ばれた可能性があります。

ため池へ廃棄物が投棄されれば、農業用水の質を低下させてしまう恐れがあります。その結果、地域の農産物に深刻な被害を与える事態になりかねません。

また、大量の異物が沈むことで池の堤防が損傷し、大雨の際に決壊を招くなど、地域住民の安全を脅かす可能性も考えられます。

2025年末にも小山町で不法投棄が発生

現場となった静岡県駿東郡小山町では、以前にも山林への不法投棄被害が報告されています。

令和7年11月13日に明神峠(小山町)の国有林などに不法投棄された廃棄物を小山町、静岡県東部健康福祉センター、静岡森林管理署で撤去活動を行いました
本件は、警察署に通報しており、廃棄物の中に個人が特定できる書類等が多数発見されていて、既に捜査が進められていると聞いています
不法投棄された廃棄物の処理には、多額の費用と労力がかかるだけではなく、景観・森林生態系が大きく損ないます
今後も関係機関と協力しながら、情報共有・捜査協力など行い不法投棄対策を実施していきます

日時:令和7年11月13日(木曜日)10時00分~14時30分
    場所:小山町上野明神峠オリンピック記念碑付近
    参加者:小山町(5名)
    静岡県東部健康福祉センター(5名)
    静岡森林管理署(5名)
    回収物
    ・可燃ごみ:470kg
    ・不燃ごみ:800kg(うち、産業廃棄物:500kg、廃家電:200kg)
    ・合計:1,270kg
    ・他、廃タイヤ16本

引用:不法投棄された廃棄物の撤去活動について|関東森林管理局

撤去活動の実施には小山町の職員など15名が参加し、合計約1.2トンもの廃棄物を撤去しました。

運営者 稲垣

このように、不法投棄された廃棄物の撤去・原状回復には、単なる「ゴミ拾い」の枠を超えた「多額の費用と労力」という社会的・経済的コストが発生してしまいます。

今後の課題

1. 監視体制のデジタル化

人目の届きにくい山間部や農業用ため池では、従来の人間による巡回監視だけでは限界があることが今回の事件で浮き彫りになりました。今後は最新技術を活用した「物理的な監視網」の導入が必要です。

  • AI搭載型監視カメラ(トレイルカメラ)の導入: 電源のない場所でも稼働するソーラーパネル駆動のカメラが有効です。単なる録画にとどまらず、AIが人間や車両の動きを検知した瞬間に管理者のスマートフォンへリアルタイムで画像を送信するシステムの導入により、犯行を未然に防ぐ、あるいは初動を早められます。
  • ドローンによる広域パトロール: 人が立ち入りにくいエリアや広範囲に点在するため池群に対しては、ドローンを用いた定期的な空撮が効果的です。過去の撮影データと現在の状況をAIで比較解析し、「新たな堆積物」などの異変を早期に検知するシステムの構築が期待されています。

2. 電子マニフェスト普及推進

産業廃棄物の処理ルートを記録する「マニフェスト(管理票)」は、適正処理を担保する生命線です。しかし、紙媒体のマニフェストは改ざんや未交付といった不正が起こりやすく、悪質業者が監視の目を逃れる穴となってきました。

  • 情報のデジタル化による改ざん防止: 電子マニフェストは、排出事業者・収集運搬業者・処分業者がインターネット上で情報を共有する仕組みです。情報の書き換えが困難で、廃棄物の流れをリアルタイムで追跡できるため、不透明な処理を防ぐ大きな抑止力となります。
  • 不適切な多重下請け構造の解消: 建設業界では、二次・三次と下請けが進む過程でコスト削減が強まり、末端の業者が不法投棄に走るという「構造的な闇」が存在します。電子化によって取引の透明性を高めることで、こうした「グレーゾーン」を排除し、健全な業界環境を構築することが求められています。

3. 排出事業者責任の徹底

不法投棄を防ぐためには、実際に捨てた実行犯(下請け作業員など)だけでなく、仕事を依頼した「排出事業者(元請け業者)」の責任をより厳格に追及していく必要があります。

  • 「知らなかった」を許さない厳罰化: 廃棄物処理法では、元請け業者に適切な処理を確認する義務を課しています。管理不足や放置を単なる不注意ではなく「やるべきことをやらなかった罪(不作為犯)」として厳しく処罰する事例を積み重ねることが重要です。
  • 業界全体の意識改革: 法人に対して最大3億円という高額な罰金刑が設定されているのは、不法行為で得られる利益を上回るペナルティを与えるためです。こうした厳しい罰則運用を通じて、「不法投棄は企業存続を揺るがす重大なリスクである」という意識を業界全体に浸透させ、コンプライアンスを底上げしていく必要があります。

まとめ

この記事では、静岡県小山町の農業用のため池に不法投棄されたニュースを解説しました。

この種の事件は、解体業界全体のイメージを著しく損なうものです。一部の事業者によるコンプライアンス意識の欠如によって、日々お客様のために誠実に働いている多くの業者が、不当な評価を受けてしまうのは非常に残念でなりません。

法を遵守し、真摯に事業に取り組んでいる大多数の優良業者が「実は不法投棄している」といった偏見の目にさらされてしまうのは回避しなくてはならない問題です。

一方で、不法投棄が社会問題として大きく取り上げられることは、行政による規制や監視体制がより一層強化される契機にもなり得ます。業界全体として自浄作用を働かせ、悪質業者を排除していく取り組みが、これまで以上に求められていると考えます。

なお、以下の記事では、解体業者が不法投棄をしてしまう原因などを深堀り解説しています。よろしければあわせてご覧ください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

「一個人の責任と情熱で、本当に役立つ情報を発信したい。」

『スッキリ解体』運営責任者。解体業界で6年間働く中で感じた『正しい情報が届かない』という現状を変えるため、全記事の企画・編集に携わり、責任を持って情報発信を行う。

目次