静岡県の解体業者一覧（174社）と費用相場

静岡県は、その広大な県土の中で地域ごとに全く異なる地理的特性を持っています。解体工事を計画する際は、お住まいのエリアがどの区分に属するかを把握しておくことが大切です。

• 西部エリア（浜松市など）
  平坦な台地や低地が広がる工業地帯です。工場跡地や社宅などの解体需要が多い一方、冬の強風「遠州のからっ風」対策が必須になるため、足場の補強などに追加コストがかかる傾向があります。
• 中部エリア（島田市、藤枝市など）
  静岡市の衛星都市として、古くからの住宅街が広がっています。空き家の解体需要が非常に高く、補助金の競争が激化しています。地形は平野部から山間部まで多岐にわたります。
• 東部エリア（熱海市、伊東市など）
  急峻な火山性の地形で平地が少なく、坂道や狭い道に面した建物が多数存在します。重機が進入できない「手壊し解体」になる案件が多く、人件費や工期が他のエリアよりかさむ傾向があります。
• 山間部エリア（川根本町など）
  大井川上流などの深い山間地では、豪雨による土砂災害で道路が寸断されるリスクを常に抱えています。迂回路がなければ運搬費が2倍、3倍に膨れ上がる可能性があり、解体費用が土地の資産価値を上回る「費用倒れ」が起こりやすい地域です。

静岡県の温暖な気候の裏には、解体工事の費用や工期に直接影響する、特有の気象条件が存在します。

遠州のからっ風（西部エリア）

浜松市を中心とする遠州地域では、冬季に北西からの強烈な季節風が吹きます。この風は、解体現場の足場を倒壊させるリスクがあるため、通常より厳重な補強や点検が不可欠です。加えて、防音・防塵シートが風を受けて「帆」のようになるのを防ぐため、強風予報のたびにシートを畳むなどの作業が発生します。これらの風対策は、工期の遅延や追加の安全管理費用として見積もりに反映されることがあります。

塩害（沿岸部全域）

県内の主要都市の多くが位置する沿岸部では、潮風による塩害が建物の劣化を早めます。塩分はコンクリート内部の鉄筋を錆びさせて膨張させる「爆裂」を引き起こし、解体時の予期せぬ崩落リスクを高めます。そして、塩分を含んだコンクリート塊や木材はリサイクル品質が低いと見なされ、処分費用が高騰する一因です。

静岡県で解体工事をする際には、県内全域で共通して注意すべきルールやリスクが存在します。

廃材の運搬ルート

山間部では、解体で出た廃材を処分場へ運ぶルートが限られます。例えば2024年に浜松市天竜区の国道362号で発生した斜面崩壊のように、主要な幹線道路が災害で通行止めになると、道幅の狭い迂回路を使わざるを得ません。その結果、大型ダンプが使えず小型トラックでのピストン輸送になり、運搬費が大幅に増加するリスクがあります。

廃棄物処理の傾向

県内では「建設リサイクル法」に基づき、建材ごとに分別しながら解体する「分別解体」が徹底されています。建物を一気に壊す「ミンチ解体」は違法です。この手作業による分別が、近年の解体費用を押し上げる一因です。また、沿岸部の塩害を受けた建材は、リサイクル処理施設での受け入れ基準が厳しくなる可能性があり、処分費に影響します。

静岡県の独自条例

静岡県では、熱海市の災害の教訓から「静岡県盛土等の規制に関する条例」が施行されており、土砂の移動に対して厳しい規制を設けています。解体工事で基礎を撤去した後の穴を埋める際などに、外部から土砂を持ち込む場合は条例の対象となる可能性があります。土地の過去の利用状況を証明する「地歴調査」が求められる場合もあり、専門的な知識と手続きが必要です。この規制は、熱海市、沼津市、三島市などを含む東部地域や伊豆半島で特に厳格に運用されています。

静岡県では、県ではなく各市区町村が主体となって空き家の解体補助金制度を設けています。だからこそ、お住まいの自治体によって制度内容や受付状況が大きく異なります。

令和7年度（2025年度）の状況を見ると、島田市や藤枝市といったベッドタウンでは、4月の受付開始後すぐに予算上限に達し、申請受付を終了しました。これは、固定資産税の増額リスクなどを背景に、解体を急ぐ所有者が増えているためです。

一方で、川根本町のように長期間の受付を設ける自治体や、富士市のように複数年度にわたる計画的な制度を運用する自治体、浜松市のように「先着20名」といった定員制を採る自治体など、対応は様々です。

どの自治体にも共通する最も重要な注意点は、「補助金の交付決定前に工事契約や着工をしてはいけない」というルールです。必ず「自治体に申請→審査→交付決定」という通知を受け取った後に、「業者と契約→工事開始」という順序を守る必要があります。この手順を間違えると、補助金は受けられません。