この記事の案内人・編集長
稲垣 瑞稀
- 大分市の大規模火災で適用された「公費解体」の具体的な内容
- 公費解体のメリットと、利用する上での注意点
本記事では、大分市の大規模火災による公費解体のニュースをもとに、今後のスケジュールや予測について分かりやすく解説します。
ニュースの概要
- 発生場所:大分県大分市佐賀関
- 報道日:2025年12月3日
- 対象:この火災による焼損家屋(182棟)
- 事案:大分市は佐賀関の大規模火災で焼損した約182棟の家屋等について、公費による解体・撤去を来年1月中旬に始め、11月までの完了を目指すと発表した。関連経費6億5000万円を補正予算案に計上し、1月から所有者の申請を受け付けて順次着手する。
大分市 佐賀関 で起きた大規模火災で、市は2日、公費で行う被災家屋などの解体・撤去作業を来年1月中旬頃に始める考えを明らかにした。同11月までの完了を目指す。開会中の市議会定例会に関連経費6億5000万円を含む今年度一般会計補正予算案を提案する。
引用:大分市の大規模火災、公費での解体撤去作業を来年1月開始へ…焼損182棟・廃棄物1万3000tと推計|読売新聞オンライン
大分市大規模火災の今後の予測
対象となる被災家屋と今後のスケジュール
大分市大規模火災による被災家屋の対象は、罹災証明書等により全壊、大規模半壊、中規模半壊、半壊と判定された被災家屋等です。
今後のスケジュールは、2026年1月から申請受付を開始し、同年11月には被災家屋等の解体工事が完了する見込みとなります。

今回の大規模火災による問題点
- 所有者不明の空き家問題
被災地に所有者が分からない、あるいは連絡が取れない空き家があった場合、公費解体の申請ができず、倒壊の危険がある状態で放置される恐れがあります。これは地域の安全を脅かし、復興の大きな足かせとなります。近年改正された空家等対策特別措置法では、行政が介入しやすくなりましたが、災害時の迅速な対応にはまだ課題が残ります。今後、災害が頻発・激甚化する中で、この問題はより深刻化していくでしょう。
- 被災建物の有害物質リスク
とくにアスベスト(石綿)は大きな懸念材料です。火災や倒壊によって建材が破損するとアスベストが飛散し、作業員だけでなく周辺住民にも健康被害を及ぼす危険があります。公費解体においても、通常時と同様にアスベストの事前調査は義務付けられていますが、建物の損傷が激しい場合は調査が困難を極めます。安全を確保しながらいかに迅速に作業を進めるかが現場の課題となります。
- 災害廃棄物の処理能力の限界
今回の大分市のケースでは、約1万3000トンもの廃棄物が発生すると推計されています。これは、一つの自治体の処理施設だけで対応できる量ではありません。分別作業の困難さも相まって、処理が滞れば復興の遅れに直結します。平時から都道府県を越えた広域的な処理協力体制を構築しておくことが、今後の防災・減災の鍵を握ると言えます。
運営者 稲垣今後はAIやドローンで被災状況を素早く把握し、調査やリサイクル技術を向上させることが求められます。解体業界も災害に備え、BCP(事業継続計画)の策定や他業種との連携を強化すべきでしょう。
公費解体と過去の大規模災害について
今回のニュースの核心である「公費解体」は、災害対策基本法や廃棄物処理法に基づき、市町村が主体となって行う制度です。なぜこのような制度が必要なのか、公費解体について解説します。
公費解体とは
公費解体とは、火事で燃えてしまった家の解体費用を個人の負担ではなく、税金(国や市のお金)で肩代わりして片付ける制度です。これは「市役所の特別なサービス」ではなく、法律に基づいた正式な事業です。正式名称は「災害等廃棄物処理事業」と呼ばれ、法律では「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」第二十二条に該当します。
(国庫補助)
第二十二条 国は、政令で定めるところにより、市町村に対し、災害その他の事由により特に必要となつた廃棄物の処理を行うために要する費用の一部を補助することができる。
燃えた家を「家」ではなく「災害ごみ(廃棄物)」として扱います。国から補助が出ることで大分市は財源を確保でき、被災者(所有者)に費用を請求することなく、市の事業として業者に発注して解体を行えます。
大規模災害時には以下の理由から、特例として税金を使った解体(公費解体)が必要不可欠となります。
- 迅速な復興のため(街全体の利益)
- 二次災害と衛生環境の悪化を防ぐため
- 被災者の生活再建支援(経済的救済)
では、なぜ「公費解体」という制度が必要なのかを過去の災害から解説します。
過去の大規模災害の教訓
かつては「個人の資産(家)に税金を使うのは公平性に欠ける」という議論が強く、全壊した家でも基本は自費解体でした。
しかし1995年に起こった阪神・淡路大震災により、約10万棟以上の家屋が全壊しました。これを個人の責任で処理させることは物理的にも経済的にも不可能でした。
倒壊家屋が道路をふさぎ、救助や復旧車両が通れない事態が多発。「個人の財産権」よりも「公共の安全と迅速な復旧」を優先すべきという議論になり、環境省(当時厚生省)が特例措置として公費による解体・撤去を認めました。これが現在のモデルの原型です。
2011年の東日本大震災で津波により家屋が破壊され、泥や瓦礫と混ざり合いました。「どこからどこまでが誰の家か」さえ判別できない状況で、個人の責任を問うことは不可能でした。
ここで「災害廃棄物処理事業」として国が全額に近い負担をするスキームが確固たるものとなりました。
▼過去の大規模災害における公費解体・処理実績表
| 災害名 | 発生日 | 解体・撤去棟数 | 処理事業費(概算) |
|---|---|---|---|
| 阪神・淡路大震災 | 1995/1/17 | 約47,000棟 | 約3,300億円 |
| 東日本大震災 | 2011/3/11 | 約117,000棟 | 約1.1兆円 |
| 熊本地震 | 2016/4/14 | 約38,000棟 | 約1,200億円 |
| 能登半島地震 | 2024/1/1 | 約22,000棟(見込) | 数千億円規模(見込) |
※数値は環境省の報告書や各自治体の完了報告に基づく概数です。
※「解体・撤去棟数」は、公費解体として申請・実施された数であり、全壊数そのものではありません。
運営者 稲垣熊本地震や能登半島地震、そして今回の大規模火災のようなケースでも適用される「災害対応の標準」となりました。
まとめ
今回は大分市の大規模火災における公費解体と今後の予測について解説しました。この事例は、万が一自宅が大規模火災で被災した場合の実務的な参考となるでしょう。
- 大規模災害時、個人の負担で解体するのが困難な場合、国と自治体が費用を負担する「公費解体」制度が適用される。
- 制度には対象外のケースや業者を選べないなどの制約もあるため、内容を正しく理解しておくことが重要。
なお、スッキリ解体では火災後の解体費用と手続きについて徹底解説した記事もございます。あわせてご確認ください。

