【解体ニュース解説】JR東日本が石綿除去しないまま電車を解体 鉄屑として売却

石綿除去しないまま電車を解体したニュース アイキャッチ
稲垣 瑞稀

この記事の案内人・編集長

稲垣 瑞稀

解体業界で6年間働く中で感じた『正しい情報が届かない』というもどかしさから、全記事の企画・編集に責任を持っています。専門家への直接取材を通じ、業界経験者として分かりやすい情報提供をお約束します。

この記事でわかること
  • JR東日本「185系」解体で起きたアスベスト流出事故の詳細
  • 解体の現場が遵守すべき「2013年厚労省通達」の重要ポイント
  • 今回のケースでアスベストを見落としてしまった理由

本記事では、JR東日本で石綿(アスベスト)を除去しないまま車両を解体したニュースをもとに、今回のミスが起きた原因や背景、問題点を専門家の視点から解説します。

目次

ニュースの概要

報道発表および調査報告から判明している事実関係を整理します。

  • 発生場所:JR東日本 長野総合車両センター(長野市)
  • 報道日:2025年11月26日
  • 対象:国鉄時代に製造された特急形電車「185系」など計12両
  • 事案:暖房器具周辺(座席下など)に使用されていたアスベスト含有部材を除去せず重機で解体。アスベストが混入した鉄くずをスクラップ業者へ「有価物」として売却・引き渡した。
  • 原因:契約書作成時に「石綿なし」という誤ったデータを使用したこと、および現車確認(事前調査)の不足。

JR東日本は26日、長野市で、廃車のため解体した電車の部品を、石綿を取り除かないまま鉄屑として売却していたことを明らかにしました。

JR東日本長野支社によりますと、7月と8月に、長野市の長野総合車両センターで行った廃車に伴う185系電車の解体作業で、座席の下に備えられている腰掛電気暖房器に使われている、石綿・アスベストを含む絶縁テープやパッキンを取り除かないまま、鉄屑として民間業者に売却していました。

引用:石綿除去しないまま電車を解体 鉄屑として売却「石綿ない車両データで契約書作成が原因」185系の暖房装置「周辺住民や環境に影響なし」長野・JR東日本|Yahooニュース

JR東日本は「飛散の可能性はない(非飛散性のアスベストであったため)」と説明していますが、今回のニュースではアスベストの飛散性以外にも問題点があります。

今回のニュースの問題点

厚生労働省が通達したルールへの抵触

2013年(平成25年)にもJR東日本および関連会社は、アスベストを含む車両部品や防音壁を不適切に破砕・処分する事案を発生させています。
これを受け、厚生労働省は同年、業界団体に対して「石綿付着の鉄道車両のスクラップの譲渡又は提供の禁止の徹底について」という通達を出しました。

さて、今般、石綿含有の塗料(アンダーコート)が付着したままの鉄道車両のスクラップを鉄原料として販売するといった事案が発覚いたしました。労働安全衛生法第55条においては、廃棄物として処理する場合を除き、石綿含有の製品等の譲渡又は提供を禁止しており、当該行為は同法に抵触します。

引用:厚生労働省通達「石綿付着の鉄道車両のスクラップの譲渡又は提供の禁止の徹底について」

この通達では、以下の手順の徹底が要求されています。

  1. 解体着手前の全数図面確認・メーカー照会
  2. 不明時の分析調査の徹底
  3. 破砕の禁止(手バラシによる除去)

今回の185系解体では、これらの手順を遵守しなかったことが問題点として挙げられます。

正しい対応と長野総合車両センターの事例のまとめ
正常な対応今回の長野総合車両センターの事例違反ポイント
事前調査設計図書、修繕履歴の確認。現地での目視調査および検体採取・分析過去のデータを参照。「石綿なし」と判断。石綿則第3条(事前調査義務)違反
契約調査結果に基づき、石綿含有部材を明記。適正処理費用を計上。「石綿なし」前提で契約。一般スクラップとして評価。廃掃法(委託基準)違反リスク
作業準備労働基準監督署への届出。隔離養生、負圧除じん装置の設置。特別な養生なし。通常の解体準備のみ。石綿則・大防法届出義務違反
解体作業手バラシによる慎重な除去。湿潤化。専用袋への二重梱包。重機による破砕・切断。一般廃棄物と混在。石綿則(飛散防止措置)違反
廃棄物搬出特別管理産業廃棄物管理票(マニフェスト)の発行。最終処分場へ。有価物(鉄くず)としてスクラップ業者へ売却。廃掃法(無許可業者委託)違反
運営者 稲垣

古い建物や車両に関しては「図面や台帳」と「現物」が一致しないことがあります。
改修工事で部材が交換されていたり、逆に古いストック品が補修で使われていたりするケースがあるため、本来であれば解体前に専門家による目視と検体採取(分析調査)が必須でした。

石綿を除去しないまま解体してしまった理由

今回の事故の要因は、「書類上は石綿なし」というデータを現場が鵜呑みにした点が大きいと言えます。

解体工事の現場では、事前の「建築物石綿含有建材調査(事前調査)」が義務付けられています。しかし、鉄道車両やプラントなどの特殊工作物においては、このプロセスが形骸化してしまうこともあります。

昭和の車両にはアスベストが含まれている可能性が高い

185系が製造された1980年代初頭、アスベストは「魔法の鉱物」として、断熱材、防音材、電気絶縁材として多用されていました。
今回のケースで見落とされた「暖房器具」は、座席の下に隠れて見えにくい場所にあります。解体業者が重機(ニブラ等)で座席ごとバリバリと破壊する際、内部のヒーターに巻かれた石綿断熱材が一緒に引きちぎられ、鉄くずの中に混入してしまったと考えられます。

運営者 稲垣

鉄くずの買取業者にも注意が必要ですが、JRから「この車両はアスベスト除去済みです」という契約条件が提示された場合、「本当ですか?調査させてください」とは言いにくい構造があるのも否定できません。
だからこそ現場での厳重な調査が必須になります。

まとめ

今回はJR東日本長野総合車両センターのニュースを解説してまいりました。今回の要点は次の通りです。

  • 古い建物には注意が必要:古い建物の解体において、既存データは誤りである可能性がある。
  • 現場確認の重要性:現物確認と分析調査を省略してはいけない。

また、スッキリ解体ではアスベストの取り扱いに関して詳細に解説した記事もございます。あわせてご確認ください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

「一個人の責任と情熱で、本当に役立つ情報を発信したい。」

『スッキリ解体』運営責任者。解体業界で6年間働く中で感じた『正しい情報が届かない』という現状を変えるため、全記事の企画・編集に携わり、責任を持って情報発信を行う。

目次