【解体ニュース解説】不法残留のベトナム人を解体現場で働かせたか 横浜市

解体 不法残留者 サムネイル
稲垣 瑞稀

この記事の案内人・編集長

稲垣 瑞稀

解体業界で6年間働く中で感じた『正しい情報が届かない』というもどかしさから、全記事の企画・編集に責任を持っています。専門家への直接取材を通じ、業界経験者として分かりやすい情報提供をお約束します。

この記事でわかること
  • 解体現場で不法残留者が働いた事件の概要と発生した背景
  • 不法残留者が生まれる制度上の理由と技能実習・特定技能の実態
  • 企業が不法就労を防ぐために取るべき具体的な確認・管理のポイント

この記事では、横浜市で発生した不法残留のベトナム人が解体現場で働かされていた事件をもとに、事件の概要や背景、不法就労が生まれる制度的な問題点、そして解体業界や企業が取るべき対応までを解体工事の専門家が分かりやすく解説します。

目次

ニュースの概要

まずはニュースの事実関係を整理します。

  • 発生場所:神奈川県横浜市
  • 報道日:2026年1月22日
  • 対象: 横浜建設株式会社(横浜市磯子区)
  • 事案: 横浜の建設会社経営者が、残留期間が過ぎたベトナム人4人を解体現場で不法就労させた疑いで逮捕された。建設会社は書類送検された。

オーバーステイのベトナム人の男4人を解体工事現場で違法に働かせたとして、建設会社を経営する男が逮捕されました。

埼玉県警によりますと、横浜市の建設会社「横浜建設」の経営者・小林延男容疑者は去年7月から9月にかけ、オーバーステイのベトナム人の男4人を、横浜市などの解体工事現場で違法に働かせた疑いがもたれています。

引用:ベトナム人4人を解体現場で違法に働かせたか 建設会社の経営者を逮捕|日テレNEWS NNN

事件が起きた背景と原因

今回の事件は、偶発的なものではなく、いくつもの構造的問題が重なった結果だといえます。背景には、主に次の3つの要因があります。

解体業界の人手不足

解体業は、体力や安全面への配慮が求められる仕事であることから、若年層を中心に敬遠されやすい傾向があります。そのため慢性的な人手不足に陥っており、「とにかく働ける人がほしい」という切迫した状況が生まれやすい業界でもあります。

今回の事件で、経営者は「在留期間が切れているとは知らなかった」と供述していますが、本来義務である身分証や在留資格の確認を怠った背景には、以下のような業界構造の問題があると考えられます。

  • 安価な労働力への依存
  • 人手確保を優先するあまり、法令遵守が後回しになる体質

SNSによる違法な経済活動

今回の事件では、「別のベトナム人からSNSで紹介を受けた」とされている点も重要です。
近年、FacebookなどのSNS上では、ブローカー的な存在が違法な求人や人材を斡旋するネットワークが形成され、企業と不法就労者を容易につなぐ違法な労働市場として機能しています。

こうしたやり取りは閉鎖的なコミュニティ内で行われるため、行政や監督機関の目が届きにくく、結果として不法就労の温床になっているのが実情です。

外国人労働者の不法残留

外国人が技能実習生などとして来日した後、不法残留者となるケースが後を絶ちません。

正規の就労資格を失った彼らにとって建設・解体などの現場仕事は、生活を維持するための「最後の受け皿」となりやすく、不法就労に流れ込む構造が生まれています。

不法残留者とは?

不法残留者とは、在留期間を過ぎても日本にとどまり続けている外国人のことを指します。

不法残留者の多くはもともと正規に来日した外国人で、とくに多いのが技能実習生です。出入国在留管理庁の統計では、不法残留者の約4人に1人が元技能実習生で、次いで短期滞在や留学生が続き、失踪や期限切れで不法残留に至っています。

不法残留になる原因

今回の事件の背景には、「なぜ在留期間を延長して合法的に働けなかったのか」という根本的な問題があります。

ここでは、不法残留になってしまう原因を解説します。

技能実習の期間は原則延長できない

技能実習制度は「技術を学び帰国する」ことが前提で、在留期間は最長3~5年と定められています。
試験に合格しなければ延長は認められず、借金返済や収入確保の事情があっても、制度上、合法的に滞在を続けることはできません。
その結果、帰国せずオーバーステイに至るケースが生まれています。

技能実習生は原則転職できない

技能実習制度では、原則として職場の変更が認められていません。
たとえ低賃金やハラスメント、残業代未払いなどの問題があっても、合法的に他社へ移ることはできず、逃げ出した時点で在留資格を失います。
一度不法滞在になると、正規のビザ更新や再取得は極めて困難となり、不法就労に追い込まれます。

「特定技能」への切り替えが難しい

実習終了後も働ける「特定技能」という在留資格はありますが、誰でも移行できるわけではありません。
日本語・技能試験への合格や「良好な修了」が条件となるため、前の職場から逃げ出した人は「良好な修了」と認められません。
さらに、企業側の協力や煩雑な手続きが必要なことから、ブローカー経由の雇用では適正な制度利用がされず不法就労につながりやすい実態があります。

日本における不法残留者の現状

令和7年7月1日の時点で、日本国内の不法残留者数は7万1,229人にのぼっています。
国籍別に見ると、ベトナムやタイ、韓国、中国などアジア諸国出身者が大半を占めており、労働力として不法就労に関与するケースも少なくありません。

▼【国籍別】不法残留者数

国籍人数
ベトナム13,070
タイ10,924
韓国10,286
中国6,252
フィリピン4,575
インドネシア4,344
台湾2,738
スリランカ2,005
トルコ1,292
カンボジア1,161

不法残留者を雇わないための企業対応

不法残留者や在留資格がない外国人を就労させると、出入国管理及び難民認定法により雇用主も不法就労助長罪として処罰の対象になります。

出典:出入国管理及び難民認定法

第七十三条の二 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の拘禁刑若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた者
二 外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置いた者
三 業として、外国人に不法就労活動をさせる行為又は前号の行為に関しあつせんした者

引用:出入国管理及び難民認定法|e-Gov法令検索

企業が不法就労リスクを避けるためには、「知らなかった」では済まされない実務対応が不可欠です。ここでは、解体業をはじめとする企業が最低限押さえておくべき、具体的な確認・管理ポイントを整理します。

  1. 在留カードの原本確認を徹底する
    外国人を雇用する際には必ず在留カードの原本を確認し、在留資格・期間・就労可能の有無を確認します。在留カードがない場合や在留期間が切れている場合は雇用してはいけません。
  2. 在留資格と業務内容の整合性を確認する
    在留資格ごとに就労できる範囲が決まっているため、雇用する仕事がその範囲内であるかを確認します。資格外の業務に従事させることも違法となります。
  3. 雇用後も在留資格を管理する
    在留期間の更新や変更が行われているか定期的に確認し、期限切れや不適切な資格で働かせないように管理します。
  4. 外国人雇用状況の届出を行う
    雇用開始・終了時には「外国人雇用状況の届出」をハローワークに提出し、適正な報告を行います。これを怠ると別途罰則が科される可能性があります。
運営者 稲垣

今後企業側には、雇用時の在留資格確認を徹底することが強く求められます。在留カードの確認や届出といった基本的な対応は、単なる「形式」ではなく、企業を守り、業界全体の信頼を守るための最低限のリスク管理として大切です。

まとめ

今回の事件は、単なる一企業の違反ではなく、次のような複数の問題が重なった結果として起きたものです。

  • 人手不足に悩む解体業界の構造的な問題
  • 制度に縛られた外国人労働者の置かれた厳しい立場
  • SNSを通じた違法な人材流通の広がり

不法残留者の多くは、もともと技能実習生などとして正規に来日した外国人であり、制度上の制約や職場環境の問題から不法滞在へと追い込まれています。
一方で、企業側が在留資格の確認を怠れば、「知らなかった」では済まされず、刑事責任を問われる時代になっています。

この事件は、「人が足りないから」「現場が回らないから」では通用しない現実を、改めて業界に突きつけた事例といえるでしょう。

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この記事を書いた人

「一個人の責任と情熱で、本当に役立つ情報を発信したい。」

『スッキリ解体』運営責任者。解体業界で6年間働く中で感じた『正しい情報が届かない』という現状を変えるため、全記事の企画・編集に携わり、責任を持って情報発信を行う。

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