この記事の案内人・編集長
稲垣 瑞稀
解体工事の時、水道管ってどうすればいいの?
解体工事の際、「水道管の扱いはどうすればいいの?」と不安になりますよね。ですがご安心ください。実は、道路の下を通っている太い水道管(本管)は水道局の持ち物なので、あなたが撤去することはありません。
あなたが手続きで主に考えるべきなのは、ご自身の敷地内にある「給水管」だけです。この記事ではその正しい手順から思わぬトラブルの回避法まで、専門家の解説を交えながら解説します。
- 解体工事で水道管の撤去は必要か、停止手続きの正しい手順がわかる
- 高額請求で損しない!水道管撤去の費用相場がわかる
- 100万円の追加費用も?水道管撤去工事のリスク回避法がわかる
- 万が一水道管を破損した際の応急処置がわかる
- 「指定事業者の5年更新制」など、悪質業者を回避する業者選びの鉄則3選
一般社団法人あんしん解体業者認定協会 理事・解体アドバイザー
初田 秀一(はつだ しゅういち)
解体アドバイザー歴15年、相談実績は11万件以上。お客様の不安を笑顔に変える現場のプロフェッショナル。「どんな些細なことでも構いません」をモットーに、一期一会の精神でお客様一人ひとりと向き合い、契約から工事完了まで心から安心できる業者選定をサポート。この記事では現場のリアルな視点から解説を担当。
「スッキリ解体」編集長
稲垣 瑞稀(いながき みずき)
解体業界専門のWebメディアでWebディレクターとして6年以上、企画・執筆・編集から500社以上の解体業者取材まで、メディア運営のあらゆる工程を経験。正しい情報が届かず困っている方を助けたいという想いから、一個人の責任と情熱で「スッキリ解体」を立ち上げ、全記事の編集に責任を持つ。
「スッキリ解体」専属ライター
馬場 美月(ばば みづき)
「解体工事の準備から完了まで、初めての方でも迷わないよう、一つずつ丁寧に解説します。」
「初心者にもわかりやすく」をモットーに、解体工事の全工程をステップバイステップで解説する記事を得意とするライター。毎週の専門勉強会で得た知識や業者様へのインタビューを元に、手続きの流れや専門用語を図解なども交えながら、読者が迷わずに理解できる記事作りを心がけている。
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解体工事で水道管撤去は必要?
冒頭でも説明した通り、住宅などの建物を解体して水道(給水装置)を使用しなくなる場合は、水道メーターの近くにある給水管の根本部分にある止水栓を閉める必要があります。
解体工事における水道管の撤去範囲
水道水を供給する「給水装置」は、配水管(本管)、給水管(引き込み管)、水道メーターなどで構成されています。これらの所有者は異なるため、解体時の扱いが重要になります。
画像引用:工事のお申込み|春日那珂川水道企業団
配水管(本管)
道路の地下に埋設されている水道管で、これは水道局の所有物です。通常、建物や敷地の所有者が撤去することはありません。
給水管(引き込み管)
水道本管から各家庭や事業所内に水道水を引き込むために設置された管で、家庭や事業所の所有物です。建物を解体し水道を使用しなくなる場合は、給水管の根本部分にある元栓で水道の閉栓を行う必要があります。
水道メーター
水道局が各家庭や事業所に貸し出しているものです。給水管の撤去工事の際には、この水道メーターと受信器を返納します。
給水管の「全撤去」が必要になる稀なケースとは?
通常の閉栓とは異なり、水道本管(配水管)から給水管を完全に撤去する大掛かりな工事が必要となるケースが稀にあります。具体的には、以下の2つの状況が該当します。
1. 寒冷地域での凍結防止
年間を通じて気温が氷点下になるような地域では、地中に残された引き込み管内の水が凍結し、管が破裂するリスクがあります。そのため、自治体によっては給水管の全撤去を義務付けている場合があります。解体を計画している地域の水道局に必ずご確認ください。
2. 区画整理に伴う大規模な変更
土地の区画整理事業が実施される場合、区域内の水道経路が大幅に再編される可能性があります。この際、既存の給水管が新しい水道計画の妨げとなるため、区画内のすべての引き込み管の撤去が求められることがあります。
水道管の「全撤去」にかかる費用相場
特殊な状況で水道本管からの給水管撤去が必要となる場合、本管が埋まっている道路のアスファルトを剥がし、給水管を根元から取り除くという大規模な作業が伴います。
水道管の全撤去にかかる費用は、工事1式あたり約20~30万円が目安です。ただし、費用はあくまで目安であり、地域や状況によって異なります。必ず複数の業者から見積もりを取るようにしましょう。(※費用データは、監修の「あんしん解体業者認定協会」が保有する2023年~2024年の全国約1,200社の見積もりデータを基に算出した独自のものです。)
撤去費は通常、施主の負担となるため、該当する可能性のある解体工事を計画されている方は事前に解体業者へ確認し、詳細な閉栓方法や費用について相談するようにしましょう。
【初田理事に聞いた】見積書に「水道管撤去費」がないけど大丈夫?
解体業者から見積もりを取った際、「水道管撤去費」が記載されておらず、具体的な金額が分からずに困惑するケースが少なくありません。その理由について、『あんしん解体業者認定協会』に所属し、11万件の解体に関するお悩みを解決してきた初田理事に伺いました。
一般社団法人あんしん解体業者認定協会 理事・解体アドバイザー
初田 秀一 (はつだ しゅういち)
解体アドバイザー歴15年、相談実績は11万件以上。お客様の不安を笑顔に変える現場のプロフェッショナル。「どんな些細なことでも構いません」をモットーに、一期一会の精神でお客様一人ひとりと向き合い、契約から工事完了まで心から安心できる業者選定をサポート。この記事では現場のリアルな視点から解説を担当。
敷地内の給水管撤去は「当然の作業」という認識
稲垣:解体工事の見積もりに「給水管撤去」という項目がないのは一般的なのでしょうか?
はい。そもそも論になりますが、建物に繋がっている給水管の撤去は、どの解体業者も解体工事に含めて行う前提で見積もりを作成します。そのため、改めて「給水管撤去」として項目を立て、金額を提示することは基本的にありません。
初田理事が指摘するように、一般的に敷地内の給水管撤去が独立した項目として記載されることは稀です。なぜなら、それは「解体工事」に含まれる当然の作業だと考えられているからです。
注意すべきは、道路の下にある「水道本管」との接続部分の工事です。これは自治体の「指定給水装置工事事業者」しか扱えず、解体業者の見積もりには含まれません。
解体工事で水道はいつ止める?
水道の停止手続きを行うタイミング
水道の停止手続きは、解体工事の完了後に行いましょう。
解体工事中は、粉塵の飛散を防ぐために定期的に散水を行います。この散水には敷地内の水道を使用するため、工事が始まる前に水道を停止してしまうと、別途、仮設の貯水タンクを用意するなど、手間と費用が発生する可能性があります。
家を解体するときの水道代って、いくらかかるんだろう……?
解体工事中に発生する水道代は、一般的な住宅解体の場合で約5,000円~1万円が相場です。この水道代は基本的に施主側の負担となります。
▼解体工事中の散水
解体工事前の水道に関する調査と届け出
解体工事中に水道管の破損といったトラブルを防ぐため、解体業者は地中に埋まっている水道管の配管状況について、水道局と連絡を取り合い事前調査を行うことがあります。
また、解体工事で使用する水は生活用水と区分が異なり水道代の算出方法などが変わるため、解体業者が解体工事前に水道局へ届け出を行います。これらの対応は解体業者が行うため、ご自身が対応する必要はありません。
水道以外のライフライン(ガス・電気)を停止するタイミング
解体工事におけるガスや電気の取り扱いも、水道と同様なのかと疑問に感じる方もいるでしょう。しかし、水道とは違って、ガスや電気は工事が始まる前に止めておくのが基本です。忘れずに手続きしておきましょう。
ガス
管轄のガス会社へ連絡します。停止手続きには立ち会いが必要になるケースもあるため、スケジュールに余裕を持って手続きを行いましょう。
電気
管轄の電力会社へ連絡し「建物の解体に伴う電気の引き込み線撤去」を依頼しましょう。
解体工事をスムーズに進めるためにも、これらのライフラインに関する手続きを忘れずに行いましょう。ただし、実際に停止する日は解体業者との相談が必要です。不明な点があれば、必ず解体業者や各ライフライン事業者などに相談し、後悔のないよう計画的に進めることが大切です。
水道の停止手続きは「解体後」、ガスと電気は「解体前」だね!
アスベスト水道管(石綿管)に潜む危険性とは?解体前に知るべきリスク
特に築年数の古い家を解体する際には、「アスベスト水道管(石綿管)」に注意が必要です。
知らずに工事を進めると、健康被害や法律違反、高額な追加費用につながる可能性があります。「うちの家は大丈夫だろう」と安易に考えず、このリスクについて正しい知識を身につけましょう。
古家解体に潜むアスベスト水道管とは?
アスベスト水道管とは、その名の通り、セメントにアスベスト(石綿)を混ぜて作られた水道管です。かつては強度を高める目的で広く使用されていました。
この管自体が通常の使用で健康に害を及ぼすことはないとされていますが、問題は解体時です。解体作業で管を破損させると、目に見えないほど細いアスベスト繊維が空気中に飛散します。これを吸い込むと、肺がんや悪性中皮腫といった潜伏期間が数十年にも及ぶ深刻な病気を引き起こす可能性があると、国(厚生労働省など)も警告しています。そのため、作業員だけでなく近隣住民の健康を守るためにも、法律で定められた厳格な手順で除去作業を行う必要があります。
そのため、現在では法律(石綿障害予防規則など)によって厳しく規制され、アスベストが含まれる場合は、許可を得た専門業者が除去・処分すると定められています。
今はもう「アスベスト水道管」は製造されてないけど、昔作られたものが残っている可能性はあるんだね!
アスベスト水道管の見分け方
アスベスト水道管かどうかは、残念ながら見た目だけで正確に判断することは困難です。しかし、いくつかのヒントはあります。
家の建築年
アスベスト水道管の国内製造は1985年(昭和60年)に中止されました。特に使用のピークは1970年代半ばまでだったため、1985年以前に建てられた家屋は特に注意が必要です。
管の色や材質
灰色で、金属管とは明らかに違うセメントのような質感が特徴です。
とはいえ、これらはあくまで推測の域を出ません。ご自身の判断で管に触れたり、破損させたりすることは大変危険です。最終的な判断は、専門家による事前調査が不可欠です。具体的には、専門の調査員がご自宅の水道管からごく少量のサンプルを採取し、それを分析機関で調べることでアスベストの有無を正確に特定します。解体業者に見積もりを依頼する際はアスベスト調査の必要性をきちんと確認し、適切な対応を提案してもらいましょう。
調査の結果、アスベストが発見された場合は法律に基づいた安全な除去作業が必要となるため、追加費用が発生する可能性があります。費用は状況によって大きく変動するため、必ず事前に複数の専門業者から見積もりを取り、費用の内訳を詳しく確認しましょう。
【初田理事に聞いた】アスベスト水道管以外の注意点
アスベスト水道管は確かに注意すべきリスクです。しかし、『あんしん解体業者認定協会』に所属し数多くのトラブル事例を見てきた初田理事は「アスベスト水道管で工事がストップした経験はないが、他にも深刻なトラブルは存在する」とさらなる警鐘を鳴らします。それは「共有配管」のリスクです。
稲垣:解体工事で水道管を撤去する際に、どのようなトラブルに注意する必要がありますか?また、その対処法を教えてください。
本管から伸びた一本の給水管が、解体するご自宅だけでなく、その裏手や隣の建物まで枝分かれしているケースには細心の注意が必要です。これに気づかずに元の管を撤去してしまうと、隣家まで断水させてしまうという深刻な事態を招きかねません。
【実例】「まさかウチが…」100万円超えの追加費用
当協会に実際に寄せられた相談事例では、共有配管のトラブルにより、隣家のために急遽本管から新しい給水管を引き直した結果、100万円単位もの追加費用が発生したケースもあります。(※これは共有配管の引き直しという特殊な工事の一例であり、全てのケースで同様の高額な費用が発生するわけではありません)
このトラブルの厄介な点は、通常の事前調査では見つけにくいことです。特に昔からある住宅地では、このような複雑な配管になっていることがあります。事前に「うちの水道管は、隣の家と繋がっていませんか?」と一言、解体業者や水道局に確認しておくだけで思わぬ出費を防げます。古い住宅地では竣工当時の図面が不正確であったり、後年の増改築で配管状況が不明瞭だったりするため、現地調査だけでは共有配管を見抜けないケースがあるためです。
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解体工事で水道管を破損!まずやるべき3つの応急処置
解体工事で水道管を破損しちゃった……どうしよう!
そんな事態になる前に、もしもの時に役立つ水道管破損時の応急処置について知っておきましょう。
ステップ1:大元の止水栓を閉めて被害を食い止める
何よりもまず、水の供給を止めることが最優先です。水道メーターのボックス内にある「止水栓」を閉めてください。
止水栓は通常、敷地の入り口付近や玄関脇の地面に埋められた、青や黒の蓋のボックスの中にあります。蓋を開けると、水道メーターと並んでバルブやハンドルがあるはずです。それを時計回りに、固くなるまで回してください。
これで家全体の水の供給が止まり、被害の拡大を防げます。万が一の時のために、事前に止水栓の場所を確認しておくことが後悔しないための重要なポイントです。
ステップ2:現場の解体業者にすぐに状況を報告する
水が止まったら、次に現場の責任者である解体業者にすぐに状況を報告しましょう。破損の状況や責任の所在を明確にし、修理の手配をスムーズに進めるためにも迅速な報告が重要です。
ステップ3:管轄の水道局または指定工事業者へ連絡する
応急処置と業者への報告が終わったら、次に行うのは専門家への連絡です。破損した水道管の修理は、専門の資格を持つ「指定給水装置工事事業者(指定工事業者)」でなければ行えません。
まずは現場の解体業者に、提携している指定工事業者がいるか確認してみてください。もし、いない場合や、ご自身で手配が必要な場合はお住まいの地域を管轄する水道局のウェブサイトなどで指定工事業者の一覧を確認できます。水道局に直接電話して状況を説明し、指示を仰ぐのも一つの手でしょう。
破損箇所の部分修理にかかる費用相場は、1式あたり2万円~15万円が目安です。ただし、費用はあくまで目安であり、地域や状況によって異なります。必ず複数の業者から見積もりを取るようにしましょう。
なお、素人判断での修理は絶対にやめてください。
どうすれば優良業者を見抜ける?失敗しない水道工事業者の選び方3選
鉄則1:許可は「更新済み」か?
水道管工事には、自治体の水道局から許可を得た「指定給水装置工事事業者」の資格が必須です。さらに、2019年10月の水道法改正により、この指定は5年ごとの「更新制」に変わりました。
「うちは指定業者ですよ」という言葉だけを鵜呑みにせず、「ちゃんと5年ごとの更新をクリアしていますか?」と一歩踏み込んで確認することで、悪徳業者から身を守れます。
業者のウェブサイトで確認するか、見積もり時に「指定事業者証を見せてください」と伝え、有効期限を必ずチェックしましょう。
「まさか無許可の業者が工事するなんて」って思うけど、実は許可の有効期限が切れてるってパターンもあるんだね!
鉄則2:解体と水道工事の実績・損害賠償保険はあるか?
次に確認すべきは、業者の実績とリスク管理体制です。特に、あなたの家の解体工事と類似したケースでの水道管工事の実績があるかを確認しましょう。経験豊富な業者であれば、予期せぬ事態にもスムーズに対応できる可能性が高いです。
また、万が一の事故に備え、「損害賠償保険」に加入しているかも必ず確認しましょう。「工事中に隣家の水道管を破損させてしまった……」といった最悪のケースも考えられます。保険に加入していれば、そうした際の損害を補償してもらえますが、未加入の業者だと大きなトラブルに発展しかねません。見積もり依頼時に、保険証券のコピーを提示してもらうようお願いしてみると良いでしょう。
鉄則3:業者の対応は誠実か?
最後の鉄則は、業者の「誠実さ」を見抜くことです。あなたが疑問に思った点について質問した際に、専門用語を使わずに、素人にも分かるように丁寧に説明してくれるかどうかが大きな判断基準となります。ぜひ、あなたの不安に寄り添い、真摯に向き合ってくれる優良業者を選んでみてください。
【FAQ】解体工事の水道管に関するよくある質問
解体業者は水道工事もすべて対応できるの?
誤解されがちですが、必ずしもすべての解体業者が水道工事に対応できるとは限りません。先ほども説明した通り、水道工事を行うには「指定給水装置工事事業者」の資格が必要です。解体業者がこの資格を持っていない場合は、下請けの水道業者に再委託することになります。
もちろん、解体業者が窓口になって全部まとめて引き受けてくれる場合もありますが、紹介料などが上乗せされて費用が割高になることも……契約前に解体業者が自社で施工するのか、下請けに依頼するのかを必ず確認して、費用面も比較検討することが重要です。
隣家の水道管を誤って破損させてしまった場合の対応は?
万が一、工事中に隣家の水道管を破損させてしまった場合は誠意をもって謝罪し、すぐに状況を報告することが第一です。その上で、工事を依頼している解体業者が加入している「損害賠償保険」が適用できるかを確認します。優良業者であれば、こうした事態に備えて保険に加入しています。
修理はもちろん専門の指定工事業者が行います。決して当事者同士だけで解決しようとせず、業者を交えて冷静に対応しましょう。
【まとめ】解体で水道管の扱いを依頼する前の最終チェックリスト
この記事の要点を踏まえ、最後に確認すべき重要事項をまとめました。一つずつチェックし、万全の準備で次の一歩に進みましょう。
チェックリストを手に、まずは信頼できる解体業者に相談するところから始めてみましょう。専門家に相談することが、安心して工事を始めるための一番の近道です。
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