
この記事の案内人・編集長
稲垣 瑞稀
家の解体を控えて、「家の中の荷物をどうすればいいんだろう」と途方に暮れていませんか?
長年住んだ家には、思い出の品から不要になった家具・家電まで、想像以上の荷物が残されているものです。これら「残置物」の処分は、解体工事で誰もが直面する大きな課題。適切な知識がないまま進めてしまうと、高額な追加費用を請求されたり、思わぬトラブルに巻き込まれたりするリスクがあります。
この記事では、解体工事の専門家である「あんしん解体業者認定協会」全面監修のもと、残置物処分の基本から費用を抑えるための具体的な方法、信頼できる業者の選び方まで、後悔しないための全知識を徹底解説します。
- 解体時の残置物処分の費用相場(1m3あたり12,000円〜)がわかる。
- 費用を数万円安くする「分離発注」で中間マージンを回避するコツ。
- 悪徳業者に騙されないための「一般廃棄物収集運搬業許可」の確認方法。
- 相続トラブルを回避するための「遺産分割協議書」作成の重要ポイント。
- 3社以上の相見積もりと、最大100万円の補助金で損しない方法。


一般社団法人あんしん解体業者認定協会 理事・解体アドバイザー
初田 秀一(はつだ しゅういち)
解体アドバイザー歴15年、相談実績は11万件以上。お客様の不安を笑顔に変える現場のプロフェッショナル。「どんな些細なことでも構いません」をモットーに、一期一会の精神でお客様一人ひとりと向き合い、契約から工事完了まで心から安心できる業者選定をサポート。この記事では現場のリアルな視点から解説を担当。

「スッキリ解体」編集長
稲垣 瑞稀(いながき みずき)
解体業界専門のWebメディアでWebディレクターとして6年以上、企画・執筆・編集から500社以上の解体業者取材まで、メディア運営のあらゆる工程を経験。正しい情報が届かず困っている方を助けたいという想いから、一個人の責任と情熱で「スッキリ解体」を立ち上げ、全記事の編集に責任を持つ。

「スッキリ解体」専属ライター
馬場 美月(ばば みづき)
「解体工事の準備から完了まで、初めての方でも迷わないよう、一つずつ丁寧に解説します。」
「初心者にもわかりやすく」をモットーに、解体工事の全工程をステップバイステップで解説する記事を得意とするライター。毎週の専門勉強会で得た知識や業者様へのインタビューを元に、手続きの流れや専門用語を図解なども交えながら、読者が迷わずに理解できる記事作りを心がけている。

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解体工事における残置物とは?

「残置物」とは、解体する建物の中に残された家具や家電、衣類、日用品など、建物本体とは別の動産のことです。
こうした残置物は、基本的に建物の所有者(依頼主)が事前に処分する必要があります。
「残置物=解体業者に無料で処分してもらえる」は誤解です
残置物の処分責任は基本的に建物の所有者にありますが、解体業者に処分を依頼することは可能です。
そう聞くと、「残置物は普通の家庭ゴミのようなものだから、解体工事のついでに無料で処分してもらえるのでは?」と思う方も多いでしょう。
確かに、一般廃棄物(家具や日用品など)は自治体の回収サービスを利用すれば、安く、または無料で処分できることもあります。
しかし、解体業者に残置物の処分を任せる場合は事情が異なり、費用がかかるのが一般的です。
なぜ残置物の処分を業者に頼むと費用がかかるのか?
解体工事で発生する残置物の処分には法律に基づく厳しいルールがあり、専門の許可や手続きが必要です。そのため、たとえ中身が家庭ゴミのようなものであっても収集運搬や処分には必ずコストがかかります。
ちなみに、解体工事で出る「廃材」と建物内に残された「残置物」ではゴミの分類が異なり、それぞれ必要な許可や処理責任者もまったく別です。
ゴミの種類と処理責任者
ゴミの種類 | 主な内容 | 処理責任者 |
一般廃棄物 | 家庭から出る生活ゴミや家具など | 建物の所有者 |
産業廃棄物 | 解体工事で発生する木くずやコンクリートガラなど | 解体業者(排出事業者) |
このように処理のルールが厳格に分かれているため、解体業者が残置物を処分する場合には費用が発生するのが一般的です。
業者が処分できるもの・できないもの
解体工事では、「解体業者に任せられるもの」と「依頼主が事前に処分すべきもの」が明確に分かれています。次の表をご覧ください。
分類 | 主な内容 |
業者に任せられるもの | 建物の解体で出る廃材(木材、金属、プラスチックなど) |
事前に処分したほうが安く済むもの | 家具、家電、衣類、食器などの日用品 |
業者が引き取れない可能性があるもの | 家電リサイクル法対象品目(テレビ、冷蔵庫など)、パソコン、医療廃棄物、危険物(スプレー缶など) |
木材や金属、プラスチックなどは、解体作業で出る廃材の一部としてまとめて処分できるため、追加費用がかかりにくく、比較的コストを抑えやすいのが特徴です。
一方で、家具や家電、衣類などの日用品は、自治体の粗大ごみ回収や不用品回収サービスを活用することで、より安く処分できる可能性があります。
また、家電4品目・パソコン・医療廃棄物・危険物などは専門的な処分が必要となるため、解体業者では引き取りできない場合があります。

残置物処分費の相場

家を解体する際の残置物処分費は業者や地域によって異なりますが、1m3あたり1万2,000円〜が相場です。戸建て住宅の解体では、多くの場合、処分費用はおおよそ2万円~30万円程度が目安となります。
※費用目安は「あんしん解体業者認定協会」が保有する解体工事データから平均相場を算出したものです。
ただし、費用は次のような要因によって変動し、30万円を超えることもあります。
費用が決まる4つの要因
残置物の量
量が多いほど、必要なトラックや作業員が増えるため費用は高くなる傾向があります。

残置物の種類
家電リサイクル法の対象品やピアノ、金庫など、特別な処分が必要なものが含まれていると、その分コストが上がります。例えばピアノは、単に運び出すだけでなく専門的な解体や、自治体で受け入れない場合は特別な処分ルートが必要になるため、5万円〜8万円程度の追加費用が発生するケースがあります。

作業環境
トラックが停めにくい、エレベーターがない、家の中がゴミ屋敷状態など、搬出に手間がかかる場合は費用は高くなる傾向があります。
時期
引越しシーズン(3〜4月)や年末の繁忙期は、料金が高めに設定されることがあります。


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残置物処分の費用を賢く抑える5つの方法

「できるだけ費用を抑えたい」と考えるのは当然です。ここでは、誰でも実践できる費用節約のコツを5つご紹介します。
1. 自分でできる範囲のものを処分する
残置物処分の費用を大きく左右するのは、自分でどのくらい処分できるかです。
衣類や書籍、食器など、自治体のゴミ収集や資源回収で出せるものは、事前に自分で処分しておきましょう。少しの手間を惜しまなければ、数万円単位の節約につながることもあります。
とはいえ、体力的にきつい場合や時間が取れないときは、無理をせず業者に任せる判断も大切です。
最小の手間で最大の節約!手間と効果で選ぶ片付け術
- ・プラスチックごみや紙くずなど、軽くてかさばる日用品を処分する
-
プラスチックごみなどの軽くて細かいものは、あらかじめ片付けておくことで、解体業者の分別や搬出の手間が減り、人件費の節約につながります。
- ・衣類/寝具類を処分する
-
衣類や寝具のようにかさばるものは、圧縮したり袋にまとめておくことで、トラックの荷台を効率よく使え、運搬費の削減にもつながります。
- ・割れ物(陶器・ガラス食器など)を処分する
-
陶器やガラス製の食器などの割れ物は重くて壊れやすく、扱いに手間がかかるため、自分で処分しておくと業者の負担が減り、結果的に費用を抑えやすくなります。
- ・中身入りのタンスや棚は「中身だけ片付ける」
-
木造住宅の場合、木製の棚やタンスは、建物と一緒に解体してもらえることがあります。その場合は中身を空にしておくだけでOKです。
▼中身を空にした状態の木製家具(解体前)

2. ハウスメーカー任せにせず「分離発注」する
「建て替えだから、解体も残置物処分もすべてハウスメーカーに任せれば安心」と考えている方は、ちょっとお待ちください。
ハウスメーカー経由の一括依頼は、相場より処分費が割高になるケースが少なくありません。
その主な理由が「中間マージン」の存在です。ハウスメーカーは、実際の解体や残置物処分を提携先業者に外注するため、紹介料や管理費などが上乗せされてしまいます。
【初田理事に聞いた】ハウスメーカーはマージン50%の可能性も
ここからは解体現場と顧客対応の両面に精通するプロフェッショナル、『あんしん解体業者認定協会』の初田理事へのインタビューです。業界の実情に詳しく、中立的な立場からアドバイスができる初田理事に、業者選びの注意点や分離発注のメリットを伺いました。

一般社団法人あんしん解体業者認定協会 理事・解体アドバイザー
初田 秀一 (はつだ しゅういち)
解体アドバイザー歴15年、相談実績は11万件以上。お客様の不安を笑顔に変える現場のプロフェッショナル。「どんな些細なことでも構いません」をモットーに、一期一会の精神でお客様一人ひとりと向き合い、契約から工事完了まで心から安心できる業者選定をサポート。この記事では現場のリアルな視点から解説を担当。
稲垣:ハウスメーカー経由だと費用が高くなるとよく聞きますが、実際どの程度の差が出るのでしょうか?

正直なところ、業者がマージン率を明かすことはないので正確な数字は分かりません。ただ、過去には相見積もりで1.5倍の価格差があったケースもあり、マージンが50%に達する可能性も十分に考えられます。


巧妙な営業トークにご注意を



とくに次のようなトークを用いて、一括契約へと誘導しようとするハウスメーカーには注意が必要です。
- 利便性を強調する
「窓口を一本化すれば、すべて当社が責任を持って対応しますよ」などと、手間がかからないことを前面に押し出します。 - 不安を煽る
「分離発注だと、万が一近隣トラブルが起きても当社は関与できません。すべてご自身で対応していただくことになります」といった言い回しで、不安を煽ってくる場合もあります。
分離発注のメリット
稲垣:とはいえ、分離発注は手間がかかるイメージもあります。実際のところ、どんなメリットがあるのでしょうか?



たしかに少し手間はかかりますが、それ以上のメリットもあります。たとえば――
- 中間マージンをカットできる
- 業者と直接やりとりできるため、柔軟な対応が可能
- 相見積もりが取りやすく、適正価格が見えやすい
「解体は解体業者」に分けて依頼することで、残置物の処分費だけでなく、全体の費用で数万円〜十数万円の節約につながることもあります。
3. 価値のあるものはリサイクル・買取業者に売る
まだ使える家具や家電、骨董品、ブランド品などは、リサイクルショップや専門の買取業者に査定を依頼してみましょう。処分費用がかかるどころか、逆にお金になる可能性があります。
また、不用品回収業者の中には買取を同時に行ってくれるところもあるので、見積もり時に相談してみるのもオススメです。




4. 複数の専門業者から「相見積もり」を取る
残置物の処分時は、2~3社以上の解体業者から見積もりを取り、金額や内容を比較検討することをオススメします。
「面倒くさいな」と感じるかもしれませんが、処分費は業者によって金額が異なります。同じ作業内容でも業者によって数万円の差がつくことも珍しくありません。
▼実際に残置物の処分費を3万7,000円節約できたケース


1社だけの見積もりでは、その金額が適正なのかどうか簡単には判断できません。必ず、最低でも3社の解体専門業者から相見積もりを取るようにしてください。これが、適正価格で信頼できる業者を見つけるための最も確実な方法です。
5. 自治体の補助金・助成金を活用する
お住まいの自治体によっては、残置物の処分に使える補助金や助成金の制度が用意されている場合があります。
ただし、誰でも利用できるわけではありません。補助対象は「空き家の解体に伴う家財道具の処分」などに限られているケースが多く、単に不用品撤去を目的とした場合は対象外となる可能性が高いのが現状です。
とはいえ、対象となれば、処分費用の1/3〜全額(上限30万〜100万円程度など、自治体によって異なります)が補助される可能性もあります。「うちの家は対象外だろう」と決めつけず、まずはお住まいの自治体のホームページを確認するか、担当窓口に問い合わせてみることをオススメします。
【中野理事に聞いた】補助金申請で失敗しないための重要ポイント
補助金はぜひ活用したい制度ですが、申請でつまずく方も多いと聞きます。ここからは、この記事の監修者で解体に関する法令や制度に精通した専門家である中野理事にお話をうかがいます。
稲垣:中野理事、補助金申請で失敗しないためのポイントを教えてください。



補助金で最も重要なのは「契約前に申請すること」と「スケジュール管理」です。
多くの自治体では、業者との工事契約後に申請しても対象外となってしまいます。申請でつまずく方が多いのも事実です。とくに多いのが、書類の不備や準備の遅れですね。また、自治体によっては予算が決まっており、先着順や抽選で年度の途中で受付が終了してしまうことも珍しくありません。補助金の活用をお考えなら、年度の早い段階から情報収集と準備を始めることが成功のカギですよ。


残置物処分で悪徳業者に騙されないための3つのチェックポイント


後悔しない残置物処分は、信頼できる優良業者を見つけることが何よりも重要です。残念ながら、この業界には法外な料金を請求したり、不法投棄を行ったりする悪徳業者が存在します。
ここでは、優良な業者を見極めるための3つのチェックポイントをご紹介します。
1. 「一般廃棄物収集運搬業許可」または「一般廃棄物処分業許可」を持っているか?
これは最も重要なチェックポイントです。先程もご説明した通り、家具や日用品などの一般廃棄物を取り扱うには専門の許可が必要です。具体的には、収集運搬を行うには事業所が所在する市区町村の「一般廃棄物収集運搬業許可」または「一般廃棄物処分業許可」、処分を行うには「一般廃棄物処分業許可」が必要です。
なぜ「無許可」の廃棄物回収業者に処分を依頼してはいけないのか?
無許可の廃棄物回収業者に廃棄物を引き渡すと、法令に基づいた適正な処理がされているか確認できません。実際に、環境省には次のような問題が報告されています。
- 不法投棄
- 不適正処理
- 不適正な管理による火災


画像引用:廃棄物の処分に「無許可」の回収業者を利用しないでください!|環境省
さらに、高額な処分費を請求される被害も報告されています。
これらのリスクを避けるためにも、必ず「許可」を持った信頼できる業者に処分を依頼しましょう。
2. 作業内容が明確に示されているか?
見積もりや説明の中で、「なにを処分してもらえるのか」がはっきり示されているかを必ず確認しましょう。ここが曖昧だと、後から追加費用のトラブルに発展することがあるため注意が必要です。
3. 豊富な実績や良い口コミがあるか?
業者のホームページに掲載されている施工事例や実績は、その信頼性を測る上で重要な指標です。また、Googleマップや比較サイトなどの第三者の評価も確認すると良いでしょう。
ただし、口コミはサクラである可能性もあるため、内容を鵜呑みにせず総合的に判断することが大切です。
さらに、国土交通省は業者のトラブル情報などを確認できる「ネガティブチェック」ができるサイトを提供しています。こうした公的な情報もぜひ活用しましょう。
相続人が複数いる実家の残置物処分で注意すべきポイント


とくに、ご両親から相続した実家の残置物を処分する際には、細心の注意が必要です。
相続人が複数いる場合、残置物は相続人全員の「遺産共有」という状態にあります。たとえ価値のない物でも勝手に処分してしまうと、後から他の相続人から損害賠償を請求される可能性があります。
処分に着手する前に、必ず「遺産分割協議書」に残置物の取り扱いを明記し、相続人全員の合意を得ておくことが非常に重要です。なお、相続に関する最終的な判断や手続きについては、思わぬトラブルを避けるためにも、必ず弁護士や司法書士などの法律専門家にご相談ください。
【FAQ】解体時の残置物処分に関するよくある質問
家の解体で布団はどうなるの?
布団は解体業者に処分を依頼することも可能ですが、事前にご自身で処分しておくことで費用を抑えられることがあります。ご自身で処分する場合は、主に次の方法があります。
- 粗大ゴミとして捨てる
折りたたんで紐でしばり、指定日に出します。数百円の処理券が必要です。 - 家具・インテリア店の回収サービスを利用する
新しい布団を購入する際に、店舗が古い布団を回収してくれることがあります。引き取り条件や料金はお店によって異なるため、購入前に回収サービスの有無や詳細を確認しておくと安心です。
畳は残置物?解体業者に処分してもらえるの?
畳は基本的に解体業者が建材の一部として処分してくれます。ただし、状態によっては「残置物」として別料金になるケースもあるため、見積もり段階で業者に確認しておくことが大切です。
【まとめ】解体時に残置物処分を依頼する前の最終チェックリスト


この記事の要点を踏まえ、最後に確認すべき重要事項をまとめました。一つずつチェックし、万全の準備で次の一歩に進みましょう。
最低3社の解体専門業者から見積もりを取り、費用とサービス内容を比較検討しましょう。1社だけの見積もりでは、提示された金額が適正かどうかの判断が困難です。
家具や日用品などの一般廃棄物を取り扱うには、市区町村の「一般廃棄物収集運搬業許可」または「一般廃棄物処分業許可」が必要です。無許可業者との契約は不法投棄や高額請求のリスクを伴うため、必ず事前に確認してください。
建て替えの場合、ハウスメーカーに一括で任せず、解体業者へ直接依頼する「分離発注」を検討しましょう。中間マージンを削減し、残置物処分を含む全体の費用を抑えられる可能性があります。
これらのポイントを着実に実行することが、適切な費用でトラブルなく残置物処分を完了させることへの最も確実な道筋です。


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