この記事の案内人・編集長
稲垣 瑞稀
店舗の閉店や移転が決まり、「解体費用は一体いくらかかるんだろう……」と不安になっていませんか?
予算内で収まるのか、悪質な業者にだまされないか、考えれば考えるほど心配になりますよね。
この記事では解体業界の専門家「一般社団法人あんしん解体業者認定協会」の全面的な監修のもと、費用のリアルな相場観と見積もりで見るべきポイントを解説します。
- 店舗解体の費用相場がわかる。内装解体とスケルトン解体の坪単価の違いを理解し、正確な予算を立てる方法。
- 地中埋設物やアスベスト発見時の高額請求を回避するコツ。悪質な業者の「追加費用の罠」を見抜く方法がわかる。
- 失敗しない業者選びの鉄則。「建設業許可」(財産要件500万円以上)を持つ優良業者を確実に見抜く方法。
- 知らないと損!厨房機器の買取や最大1,650万円の補助金を活用し、解体費用を賢く抑える3つの方法。
- 2023年義務化のアスベスト調査。1検体2万円~の適正費用を知り、法違反トラブルを未然に防ぐ方法がわかる。
一般社団法人あんしん解体業者認定協会 理事・解体アドバイザー
初田 秀一(はつだ しゅういち)
解体アドバイザー歴15年、相談実績は11万件以上。お客様の不安を笑顔に変える現場のプロフェッショナル。「どんな些細なことでも構いません」をモットーに、一期一会の精神でお客様一人ひとりと向き合い、契約から工事完了まで心から安心できる業者選定をサポート。この記事では現場のリアルな視点から解説を担当。
「スッキリ解体」編集長
稲垣 瑞稀(いながき みずき)
解体業界専門のWebメディアでWebディレクターとして6年以上、企画・執筆・編集から500社以上の解体業者取材まで、メディア運営のあらゆる工程を経験。正しい情報が届かず困っている方を助けたいという想いから、一個人の責任と情熱で「スッキリ解体」を立ち上げ、全記事の編集に責任を持つ。
「スッキリ解体」専属ライター
馬場 美月(ばば みづき)
「解体工事の準備から完了まで、初めての方でも迷わないよう、一つずつ丁寧に解説します。」
「初心者にもわかりやすく」をモットーに、解体工事の全工程をステップバイステップで解説する記事を得意とするライター。毎週の専門勉強会で得た知識や業者様へのインタビューを元に、手続きの流れや専門用語を図解なども交えながら、読者が迷わずに理解できる記事作りを心がけている。
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【工法・業態別】店舗解体の費用相場―あなたのケースはいくら?
店舗解体の費用は、主に「坪単価」で計算されますが、その金額は賃貸借契約で求められる「原状回復の範囲」によって大きく変わります。
店舗の原状回復には、大きく分けて「内装解体」と「スケルトン解体」の2種類があり、どちらを求められるかで費用は全く異なります。まずはご自身の賃貸借契約書で、どちらの工事が必要かを確認しましょう。
① 内装解体(坪単価:4万3,996円)の費用相場
「内装解体」とは、文字通り店舗の「内側」だけをキレイにする工事です。具体的には、壁紙、床材、天井といった内装材、後から設置した設備、間仕切りなどを撤去し、借りる前の状態に近づけます。建物の骨組み(構造体)には一切手を加えないのが特徴です。
費用相場は、坪単価で4万3,996円が目安となります。例えば、物販店などの比較的内装の変更が少ない店舗や、次のテナントがすぐに使えるようにするケースで選ばれることが多いです。
店舗の業態 | 特徴 |
---|---|
オフィス・事務所 | パーテーションやOAフロアの有無で変動。比較的安価なケースが多い。 |
物販店・アパレル | 内装がシンプルであれば費用は抑えやすい。造作棚が多いと上昇。 |
美容室・サロン | シャンプー台や個室の間仕切りなど、給排水設備の撤去が伴う。 |
飲食店・カフェ | 厨房設備や排気ダクトなどを部分的に撤去する場合の費用。 |
② スケルトン解体(坪単価:3万9,037円)の費用相場
「スケルトン解体」は、別名「スケルトン返し」とも呼ばれ、店舗の内装や設備を「全て」撤去し、建物の構造体(コンクリートの床・壁・天井など)がむき出しの状態に戻す、徹底的な工事です。
こちらの費用相場は、坪単価で3万9,037円が目安です。主に飲食店や、大規模なリノベーションを行った店舗で求められるケースが多いです。借りた時と同じ、何も無い状態に戻すことで、次のテナントが自由に内装をデザインできます。
店舗の業態 | 特徴 |
---|---|
物販店・アパレル | 大規模な造作や間仕切りがなければ、比較的費用は抑えられる。 |
美容室・サロン | 給排水設備や防水工事の撤去に手間がかかり、費用が上昇する。 |
オフィス・事務所 | 天井や床をすべて撤去するため、内装解体より高額になる。 |
飲食店・カフェ | 厨房の防水層やコンクリート土間、複雑な給排気ダクトの撤去は費用増の主因。 |
※解体費用相場は『あんしん解体業者認定協会』が保有する、2020年~2024年の解体工事データ30,000件以上を基に算出しています。
※解体費用相場は平均値です。実際の解体費用は現場の状況や建物の状態によって変動します。
【初田理事に聞いた】費用を左右するのは「設備」より「現場の条件」
内装解体の費用を左右するポイントは何なのでしょうか。『あんしん解体業者認定協会』に所属し、数多くの内装解体現場を見てきた初田理事に費用相場の実態をうかがいました。
稲垣:内装解体の費用が高くなる原因は、室内の設備が影響するのでしょうか?
特定の設備があるから高くなる、ということはあまりありません。むしろ費用を大きく左右するのは、以下のような「現場の条件」なんです。
- 手間のかかる内装:居酒屋の壁に石が貼り付けてあるなど、撤去に手間がかかる特殊な造作があると費用が上がります。
- 作業時間の制約(夜間工事):周辺に病院やオフィスがあり日中の作業が制限される場合や、繁華街のルールで夜間しか工事できない場合は要注意。人件費が倍になることもあります。
- 搬出入の経路:エレベーターが使えず、階段で資材や廃棄物を運ばなければならない場合。労力がかかり、当然人件費が上がります。
初田理事によると、飲食店のスケルトン解体では坪単価に大きな幅が出ることがあるそうです。その原因は特定の厨房設備などにあると思われがちですが、現場の条件が重要だと指摘します。見積もりを取る際は、こうした現場の条件が費用にどう反映されているかをしっかり確認することが重要です。
「どこまで壊すか」の認識ズレは「4者立ち会い」で防ぐ
初田さんによると、「スケルトン返し」契約では、貸主と施主間で「どこまで解体するか」の認識がズレるトラブルがよく発生するそうです。
これを防ぐには、工事が始まる前に「貸主、施主、管理不動産会社、解体業者」の4者が現場に立ち会い、認識をすり合わせるのが重要だと初田さんは言います。
入居前の写真や図面を全員で確認し、「どこまで原状回復するか」を指差し確認すれば、認識のズレは防げます。見積もり段階から関係者全員で確認の場を持つのが、安心して工事を進める最大の秘訣です。
店舗解体の見積書で確認すべき3つの費用内訳
優良な業者が提出する見積書には、必ず費用の内訳が詳細に記載されています。
逆に「解体工事一式 〇〇円」といった大雑把な見積もりを出す業者には、絶対に注意してください。後から「これは含まれていない」と追加請求される典型的なパターンです。
見積書では、主に以下の3つの項目が記載されているかを確認しましょう。
- 解体工事費
建物の内装や構造物を解体する作業員の人件費や、重機を使用する場合の費用です。仮設足場や養生シートの設置費用や、 解体で発生した木くず、コンクリートガラ、石膏ボードなどの産業廃棄物の処分費もここに含まれることが多いです。
- 付帯工事費
アスベストの調査・除去費用や、残置された厨房機器・什器の撤去費用など、本体の解体工事以外に発生する工事の費用を指します。
- 諸経費
現場管理費や、官公庁への届出書類作成の代行費用、駐車場代などです。業者によって項目は異なりますが、何に対する費用か明確になっていることが重要です。
これらの内訳がきちんと書かれているかどうかが、その業者の信頼性を測る最初のバロメーターになると心得てください。
【要注意】店舗解体で追加費用が発生するケース
「見積もり金額で契約したのに、後から高額な追加費用を請求された……」という事態は避けなければなりません。
もちろん、やむを得ず追加費用が発生するケースは存在します。しかし、優良な業者は契約前にその可能性を必ず説明してくれます。
特に注意すべき、追加費用が発生しやすい代表的なケースは以下の3つです。
- 地中埋設物の発見
建物の解体後、地中からコンクリートガラや以前の建物の基礎など、図面になかった障害物が発見された場合。これらの撤去費用が追加で必要になります。
- アスベストの発見
事前の調査では分からなかった箇所から、アスベスト含有建材が新たに見つかった場合。専門業者による除去作業が必要となり、追加費用が発生します。
- 想定以上の残置物
契約時の想定よりも、店舗内に残された什器やゴミが多かった場合。これらの処分費用が追加されることがあります。
悪質な業者は、これらのリスクをあえて説明せず、契約後に高額な追加請求をする口実に使います。見積もり時に「追加費用が発生する可能性があるのはどんな場合ですか?」と必ず質問し、誠実に答えてくれる業者を選びましょう。
店舗解体工事の全手順―相談から完了までの流れと期間をステップ解説
「閉店日や移転日は決まっているのに、何から始めればいいのか分からない……」店舗解体を前に、多くの方がこのような焦りや不安を抱えています。
しかし、心配はいりません。工事完了までの全体の流れと各ステップでやるべきことを事前に把握しておけば、計画的に安心してプロジェクトを進められます。
ここでは、相談から工事完了までの全6ステップを、期間の目安とともに具体的に解説します。
ステップ1:解体業者への相談・現地調査の依頼
まず最初に行うべきは、解体業者への相談です。インターネットなどで複数の業者候補を見つけ、電話やメールで連絡を取りましょう。この段階で店舗の状況(業態、広さ、構造、希望工期など)を伝え、現地調査を依頼します。現地調査は正確な見積もりを出してもらうために不可欠なプロセスです。業者は現場で、内装の状況、搬出経路、近隣環境などを細かく確認します。
このステップの期間の目安は、相談から現地調査まで1週間程度です。
ステップ2:見積もりの比較検討と業者決定
現地調査後、各社から見積書が提出されます。ここで重要なのは、最低でも3社以上から見積もりを取り、比較検討することです。金額の安さだけで判断してはいけません。見積もりの内訳は詳細か、担当者の対応は誠実か、質問に的確に答えてくれるか、といった点を総合的に見て、最も信頼できる1社を選びます。
この業者選定が、店舗解体の成功を左右する最も重要なポイントと言っても過言ではありません。見積もり取得から業者決定までの期間は、1~2週間程度が目安となります。
ステップ3:契約・各種届出の手続き
依頼する業者が決まったら、工事請負契約を結びます。契約書の内容は隅々まで確認し、工事内容、金額、工期、支払い条件、追加費用が発生する場合の取り決めなどを必ずチェックしてください。不明な点があれば、納得できるまで説明を求めましょう。
契約後、各種行政手続きを進めます。特に注意したいのが「建設リサイクル法」に基づく届出です。法律上の届出義務は発注者であるあなたにあり、怠った場合の罰則もあなたが対象となります。通常は業者が委任状に基づき代理で手続きを行いますが、契約時に、届出を誰が責任を持って行うか、委任状の取り交わしについて必ず確認しましょう。
このステップの期間は、約1週間が目安です。
【初田理事に聞いた】内装解体で本当に注意すべきは「届出」より「近隣配慮」だった!
建設リサイクル法の届出義務は発注者にありますが、初田理事によると「店舗の内装解体の場合、建設リサイクル法の届出は基本的に不要なケースがほとんど」だそうです。そのため、届出の不備で自治体から指導が入る、という事態はまず考えにくいと言います。
むしろ施主様が不利益を被るリスクが高いのは、法的な手続きよりも近隣トラブルです。
「事前の挨拶を怠ったためにクレームが入り工事が止まってしまった」「結果的に夜間作業しかできなくなり、追加費用と工期延長が発生した」といったケースの方が、よほど現実的なリスクです。
法的な手続きはもちろん重要ですが、それ以上に次の「ステップ4」で解説する近隣への配慮が、スムーズな工事の鍵を握ることを覚えておきましょう。
ステップ4:近隣挨拶・工事準備
解体工事では、騒音や振動、粉塵の発生が避けられません。そのため、工事開始前の近隣への挨拶が非常に重要になります。通常は業者が主体となって、工事の概要や期間を説明する挨拶状を持って、近隣の店舗や住民へ挨拶回りを行います。施主であるあなたも同行することで、より丁寧な印象を与え、トラブルの発生を未然に防ぐ効果が期待できます。
同時に、電気やガス、水道などのライフラインの停止手続きも進めておきましょう。この準備期間は約1週間です。
ステップ5:解体工事の実施と廃棄物処理
いよいよ解体工事の開始です。まずは、内装材や設備を分別しながら手作業で撤去する「内装解体」から始まります。その後、建物の構造部分を重機で解体していきます。工事中は、騒音や粉塵が外部に漏れないよう、建物全体が養生シートで覆われます。
解体で発生した廃棄物は、法律に従って分別され、専門の処理場へ運搬されます。この時、廃棄物が適正に処理されたことを証明する「マニフェスト」という伝票が発行されるので、最終的にその写しを必ず受け取ってください。
工事期間は店舗の規模によりますが、内装解体のみなら1週間~2週間、建物全体の解体なら2週間~1ヶ月以上かかることもあります。
ステップ6:工事完了の確認・引き渡し
工事が完了したら、業者と一緒に現場の最終確認を行います。契約通りに解体が行われているか、廃材などが残っていないか、敷地が綺麗に整地されているかなどを自分の目でしっかりチェックしましょう。問題がなければ、工事完了の確認書にサインし、引き渡しとなります。この最終確認をもって、店舗解体工事の全工程が終了です。
なぜ店舗解体は業者選びで失敗するのか?現場で見た3つの落とし穴
「こんなはずじゃなかった……」解体工事で後悔する声は後を絶ちません。その原因は、ほぼ例外なく「業者選びの失敗」にあります。
なぜ、多くの人が業者選びでつまずいてしまうのか。それは、解体業界特有の構造と、施主が陥りやすい心理的な「落とし穴」が存在するからです。ここでは、後悔に直結する3つの典型的な落とし穴についてお話しします。
落とし穴1:価格の安さだけで飛びつき、後から高額な追加請求をされる
これは最も多い失敗パターンです。複数の見積もりを取った際、他社より明らかに安い金額を提示する業者がいると、つい魅力的に感じてしまうかもしれません。しかし、その安さには裏があるかもしれません。
悪質な業者は、まず安い金額で契約を取り付け、工事が始まってから「地中から障害物が出た」「アスベストが見つかった」などと理由をつけ、法外な追加費用を請求してきます。工事が始まってしまえば、施主は「今更断れない」という考えになってしまいます。
落とし穴2:「ただ壊すだけ」と考え、不法投棄などのトラブルに巻き込まれる
「解体なんて、ただ壊すだけの簡単な作業だろう」
このように考えているとしたら、それは大きな間違いです。
店舗解体は廃棄物処理法や建設リサイクル法など、多くの法律が絡む専門的な工事です。解体で出た廃棄物は種類ごとに細かく分別し、許可を得た処理施設で適正に処分しなければなりません。しかし、技術力のない業者や悪質な業者はこの分別を怠ったり、コストを浮かせるために山中などに不法投棄したりすることがあります。
不法投棄が発覚した場合、排出者である施主(あなた)も責任を問われる可能性があります。業者選びは、法律違反という最悪の事態を避けるためのリスク管理でもあることを忘れないでください。
落とし穴3:施主と業者の情報格差につけ込まれ、不要な工事まで契約してしまう
解体工事は、ほとんどの人にとって初めての経験です。専門知識がないのは当たり前。しかし、その「情報格差」につけ込んでくる業者がいるのも事実です。
例えば、「このアスベストは危険なレベルだから、高額な除去費用がかかる」と不安を煽り、実際には必要のない大掛かりな工事を契約させようとするケース。また、賃貸店舗の原状回復で、契約書に定められた範囲以上の過剰な工事を提案してくることもあります。
知識がないために、業者の言うことを鵜呑みにしてしまい、結果的に数十万円も余計な費用を支払ってしまう。この情報格差を埋めるためには、あなた自身が正しい知識を身につけ、信頼できる相談相手を見つけることが何より重要になります。
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店舗解体における優良業者の選び方【6つのポイント】
ここまで、店舗解体に潜むリスクについてお話ししてきました。続いては優良な解体業者を見極めるためのチェックポイントを理解していきましょう。
基準1:建設業許可の保有・解体工事業の登録がされていること
解体工事を行うためには、「建設業許可」の保有または「解体工事業の登録」のいずれかが必要です。許可・登録がない状態で解体工事を行うことは違法行為にあたるため、必ずどちらかを保有・登録している業者を選びましょう。
それぞれ取得している場合は、解体業者のホームページに許可番号・登録番号が記載されています。
ホームページを保有していない場合は国土交通省の「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」から検索することで確認できます。
基準2:産業廃棄物収集運搬業許可を保有していること
廃棄物の収集運搬を自社で行える「産業廃棄物収集運搬業許可」を保有していると、業者にとってベストな処分場を選べるため、費用を削減できる可能性があります。
また、「産業廃棄物収集運搬業許可」を取得するためには、会社の経歴や経営状況などの要件をクリアする必要があるため、会社としての信頼感の裏付けになります。
基準3:過去に違反歴がないこと
国土交通省の「ネガティブ情報等検索サイト」や、産業廃棄物処理事業振興財団の「許可取消処分情報」で解体業者名を検索し、過去に違反歴や行政処分歴がないかを確認してください。
処分歴があるからといって必ずしも危険な業者とは限りませんが、安全意識の高さを判断する基準として有効です。
基準4:店舗解体の実績が豊富であること
店舗解体の実績が豊富な業者に依頼しましょう。
解体業者はそれぞれに得意分野である工事が存在し、それは過去の工事実績や所有する重機、可能な工法、職人の技術力などによって左右されます。
その得意分野を判断する1つの根拠として、計画する解体工事と同様の工事実績が豊富であるかを確認しておきましょう。
基準5:見積金額、内訳項目それぞれの金額に根拠があること
優良な解体業者は見積書の項目を詳細に記載し、どのような根拠で見積額を算出しているかを明確に提示します。
項目を詳細に分けず「一式」でばかり記載する業者には注意しましょう。
また、不明点や詳細について質問された際にちゃんと答えられる業者は、見積もりに後ろめたいことがない裏付けになります。
基準6:資格を持った従業員が在籍していること
解体工事に活かせる資格を保有している従業員が在籍していると、様々なメリットがあります。とくに解体工事施工技士は、現場の作業員の安全を守る上で大事な資格です。
解体工事を行う作業員にとってメリットのある資格 | |
---|---|
解体工事施工技士 | 持っていると500万円以下の解体工事を行うための解体工事業の登録ができ、技術管理者として従事できる国家資格。解体工事の現場作業や監理における知識や技術の裏付けになる資格。 |
石綿作業主任者 | アスベストの調査や作業、作業完了確認を行う上で必須の資格。有資格者の在籍がない場合、アスベスト調査や除去は外部への委託が必要となる。 |
建築物石綿含有建材調査者 |
今回は、店舗解体する業者を選ぶにあたって効果的な判断基準をピックアップしました。以下の記事ではさらに網羅的な業者の選び方を紹介しています。「どうしてそれが優良業者の裏付けになるのか」といった、各基準における専門家の詳細な解説が読めますのでぜひご確認ください。
店舗解体の費用を安くする方法【8つのポイント】
ここまで、安さだけで業者を選ぶ危険性をお伝えしてきましたが、もちろん費用は少しでも抑えたいというのが本音ですよね。
悪質な業者に騙されることなく、正当な方法で費用を賢く抑えるコツがあります。これからお伝えする3つの方法を実践するだけで、あなたが支払う総額が数十万円単位で変わることも珍しくありません。
方法1:厨房機器や什器は専門の買取業者に依頼する
店舗内に残っている厨房機器や業務用エアコン、陳列棚、テーブル、椅子といった什器(じゅうき)。これらを解体業者に「残置物処分」として依頼すると、産業廃棄物として扱われ、高額な処分費用がかかってしまいます。
そこで、解体工事の前に、厨房機器や什器の専門買取業者に査定を依頼することを強くお勧めします。まだ使える状態の良いものであれば、買い取ってもらえる可能性があります。たとえ値段がつかなくても、無料で引き取ってくれるケースも少なくありません。
処分費用がかかるどころか、逆にお金が手に入るかもしれません。解体業者に丸投げする前に、一手間かけるだけで大きな節約に繋がります。
方法2:解体業者の閑散期を狙って依頼する
解体業者の年間スケジュールには閑散期と繁忙期があります。一般的に年末年始や年度末、引っ越しシーズンは(12月~3月)は需要が集中するため、繁忙期とされています。
反対に4月~9月は解体業界の閑散期とされており、この時期に工事を依頼することで日程調整の融通が効きやすく、費用を安くできる可能性が高まります。
方法3:自治体の補助金制度を活用する
主に古くなった建物が周囲や景観に被害を与えるのを防ぐため、各自治体は解体工事を促進するための補助金を設けています。
解体工事を計画する際には、事前に「自分の地域で補助金が支給されているか」を調べておきましょう。ネットで検索する際には、「○○市 空き家 補助金」や「○○市 危険ブロック塀 補助金」など、市町村名を入れて検索すると情報を見つけやすくなります。
【具体例】店舗オーナーが活用できる可能性のある助成制度
- 東京都品川区「不燃化特区支援事業」: 老朽建築物の解体費用として最大1,650万円〜を助成。
- 東京都港区「アスベスト対策費助成」: アスベスト含有調査費用として最大10万円、除去工事費用として最大200万円を助成。
このように、事業用の建物でも手厚い制度が存在します。制度は年度ごとに変わるため、必ず「自治体名 店舗 解体 補助金」で検索し、お住まいの自治体の公式サイトで最新情報を確認してください。問い合わせ先は「建築指導課」「都市整備課」などです。
方法4:必ず3社以上から相見積もりを取る
見積もり依頼は1社だけでなく、3社以上から相見積もりを取りましょう。複数の見積書を比較することで、ご自身のケースにおける費用の適正相場が分かり、不当に高い業者・安すぎて危険な業者を見抜けます。
方法5:家の中の不用品は自分で処分する
家の中にある家具や家電などをなるべく処分しておくと、解体費用を抑えられます。
これらの不用品をそのまま放置した場合は解体業者が処分を請け負うため、その処分費用が見積もりに上乗せされます。
▼不用品の処分方法の例 | ||||
---|---|---|---|---|
具体的な品目 | 費用の目安 | 処分方法 | ||
日用品 | 可燃ゴミ、不燃ゴミ、資源ゴミ | 基本的に無料 | 自治体のゴミ回収 | |
家電製品 | エアコン、洗濯機、冷蔵庫、テレビ | 基本的に無料(売却で収益発生) | フリマアプリやリサイクルショップ | |
パソコン | ノート型を含むパソコン本体、液晶ディスプレイ | 基本的に無料 | 家電量販店やメーカーの回収サービス | |
粗大ゴミ | タンス、布団、机 | 数百円~/点 | 自治体の粗大ゴミ回収 |
▼不用品の処分方法の例 | ||||
---|---|---|---|---|
具体的な品目 | 費用の目安 | 処分方法 | ||
日用品 | 、 可燃ゴミ 不燃ゴミ、 資源ゴミ | 基本的に無料 | 自治体のゴミ回収 | |
家電製品 | 、 エアコン 洗濯機、 冷蔵庫、 テレビ | 基本的に無料 (売却で収益発生) | 、 フリマアプリ リサイクルショップ | |
パソコン | 本体、 液晶ディスプレイ | 基本的に無料 | 家電量販店、 メーカーの回収サービス | |
粗大ゴミ | タンス、 布団、 机 | 数百円~/点 | 自治体の粗大ゴミ回収 |
残置物の種類や処分について詳しく解説した記事は以下です。
方法6:庭木や雑草を自分で撤去する
敷地内の庭木や雑草の撤去を業者に依頼した場合、1m3あたり9,899円~の費用がかかります。
大きな樹木を切り倒すのは危険ですが、雑草の除去や高さ3m未満・幹の太さ20cm以下ほどの小さな庭木なら、自身で撤去すれば費用を抑えられます。作業の際は軍手をはじめ、安全対策してから取りかかりましょう。
方法7:必要な届け出を自分で行う
解体工事が完了してから1ヶ月以内に、建物滅失登記を届け出る必要があります。
土地家屋調査士に手続きを代行してもらうことも可能ですが、その場合は5万円程度の費用がかかります。自分で手続きをすればその分の費用を抑えられるため、手続きの方法を確認しておきましょう。
方法8:解体業者に値引き交渉する
解体業者に値引き交渉をするのはマナー違反ではありません。
ただし、複数の解体業者に同時に値引き交渉を行うことは避けましょう。値引き交渉をしたにもかかわらず、最終的に依頼しなかった場合、業者から不誠実と受け取られ、信頼関係を損なう可能性があります。適切な交渉を行うためにも、依頼先を決めたうえで値引き交渉を進めることが重要です。
今回は店舗解体するにあたって効果的な費用の抑え方をピックアップしてご紹介しました。以下の記事では専門家による詳細な解説を含め、費用を安くするための方法をより網羅的に掲載しています。ぜひご確認ください。
【FAQ】店舗解体の疑問に専門家が回答します
最後に、店舗解体を検討している方から特によく寄せられる質問について、Q&A形式でお答えします。多くの方が同じような疑問や不安を抱えています。あなたの悩みを解決するヒントがここにあるかもしれません。
賃貸店舗の「原状回復」はどこまでやるべき?
すべては、あなたが結んだ賃貸借契約書に書かれています。
原状回復の範囲は、物件のオーナーや管理会社との契約内容によって決まります。一般的には、内装や設備をすべて撤去して建物の骨組みだけの状態に戻す「スケルトン返し」を求められることが多いです。しかし、契約によっては「次の借主が使えるように、一部の設備は残しても良い」といったケースもあります。
自己判断で工事を進めてしまうと、後から「話が違う」とトラブルになる可能性があります。必ず契約書を確認し、不明な点は貸主側に問い合わせて、回復すべき範囲を明確に書面などで取り交わしておくことが最も重要です。
見積もり金額以外に追加費用が発生するのはどんな時?
先にも触れましたが、追加費用が発生する可能性はゼロではありません。代表的なケースは、「地中埋設物の発見」と「想定外のアスベストの発見」です。
これらは、どれだけ丁寧に事前調査をしても、100%予測することが難しいのが実情です。重要なのは、契約前に業者から「どのような場合に追加費用が発生する可能性があるか」について、具体的な説明を受けておくこと。そして、もし追加工事が必要になった場合に、その費用が妥当なものか判断できるよう、作業内容や単価を明記した再見積もりを必ず提出してもらうことです。誠実な業者であれば、こうした対応を必ず行ってくれます。
相見積もりを依頼した業者への上手な断り方は?
「複数の業者に見積もりを頼んだけど、どうやって断ればいいか気まずい……」。そう感じるお気持ちはよく分かります。しかし、業者の側も相見積もりであることは承知の上ですから、正直に伝えるのが一番です。
電話かメールで、「今回は、大変申し訳ありませんが、他社のほうで進めさせていただくことになりました。ご丁寧に対応いただき、ありがとうございました」と、感謝の気持ちとともに簡潔に伝えれば問題ありません。しつこく理由を聞かれたり、値下げを提案されたりすることもありますが、「総合的に判断して決定しましたので」と毅然とした態度で対応しましょう。
古い建物だけどアスベスト調査は絶対に必要?
はい、義務であり、近年規制は強化されています。これを怠る業者との契約は避けてください。
特に重要な法改正は以下の2点です。
- 有資格者による調査の義務化(2023年10月〜)
アスベスト調査は「建築物石綿含有建材調査者」などの専門資格を持つ者しか行えません。 - 調査結果の電子報告の義務化(2022年4月〜)
解体部分の面積が80m2以上の工事などでは、調査結果を国に電子報告することが義務付けられています。
これらのルールを守らない業者は違法であり、施主であるあなたも深刻なトラブルに巻き込まれるリスクがあります。
【初田理事に聞いた】アスベスト調査費用の適正価格、見抜くカギは「納期」にあり!
2023年10月から調査の有資格者要件が厳格化されましたが、悪質な業者が資格を偽る、といった心配はあまりないようです。むしろ注意すべきは「費用」だと初田さんは語ります。
資格を偽ったという話は聞いたことがありません。それよりも、見積書に記載された調査費用が適正かどうかを見極めることが重要です。そのカギは「納期」にあります。
アスベスト分析費用の相場は、1検体(1箇所から採取したサンプル)あたり2万円~5万円です。これは検査に出してから結果が出るまで約1週間かかる場合の価格です。
もし「翌日に結果が欲しい」といった特急対応を頼む場合は、1検体10万円ほどになることもあります。しかし、通常の納期で1検体10万円を請求されたら、それはかなり高額だと言えます。
見積もりをもらったら「この調査結果はいつ出ますか?」と納期を確認することが、その価格が適正かどうかを判断する重要なポイントになります。
また、「検体数が多いから過剰請求では?」と心配になる方もいますが、一概にそうとは言えません。国の規定では複数箇所からの採取が推奨されており、それに忠実な業者は検体数が多くなる傾向があります。むしろ費用を抑えるために本来必要な検査を省いてしまう業者もいるのが実情です。数の多さだけで判断せず、調査内容をしっかり説明してくれる業者を選びましょう。
【まとめ】店舗解体を依頼する前の最終チェックリスト
この記事の要点を踏まえ、最後に確認すべき重要事項をまとめました。一つずつチェックし、万全の準備で次の一歩に進みましょう。
- 解体業者の選定と相見積もり
3社以上から見積もりを取り、内容を比較検討します。経営基盤が安定している「建設業許可」を持つ業者を選び、見積書に「工事一式」ではなく詳細な内訳が記載されているか確認してください。 - 原状回復範囲の確認
賃貸借契約書を確認し、求められる工事(内装解体かスケルトン解体か)を正確に把握します。トラブル防止のため、貸主・管理会社・解体業者との立ち会いなどで、工事範囲の認識を事前にすり合わせることが重要です。 - 法的義務と追加費用の事前確認
有資格者によるアスベスト調査は法律で義務付けられています。また、地中埋設物の発見など、追加費用が発生しうるケースについて契約前に業者に質問し、その対応を確認しておきましょう。
これらのポイントを着実に実行することが、後悔のない店舗解体の近道です。
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