
うちの浄化槽、解体するのにいくらかかるんだろう……?
浄化槽の解体を検討する方が最初に抱く最大の不安は、やはり費用に関することではないでしょうか。ご心配される気持ちはよくわかります。費用の不透明さが、多くの方を悩ませる原因となっているのがこの業界の実情です。
しかし、ご安心ください。事前にしっかりとした相場観を持つことが、後悔しない解体工事へのもっとも重要な第一歩です。
当サイト「スッキリ解体」は、業界の不透明性をなくすことを目指しています。そのため、法律で定められた必須費用を含んだ『総額目安』を提示し、読者の皆様が不当な請求で損をしないための情報を、解体業界のプロである「あんしん解体業者認定協会」の監修のもと解説します。
- 浄化槽の解体費用相場(5人槽で7万円~)がわかり、不当な請求で損をしない知識が得られる。
- 悪質な高額請求を回避する業者選びの鉄則(相見積もりなど)を知り、数十万円損するのを防ぐ。
- 「全撤去」と「埋め戻し」の長所・短所を比較し、土地の資産価値を下げない選択ができる。
- 忘れると違法になる行政手続きがわかる。浄化槽法に基づく届出(30日以内)や、補助金申請のコツを解説。
- 空き家の浄化槽を放置する危険性がわかる。地盤沈下や年間数万円の維持管理費など、将来のトラブルを防げる。




一般社団法人あんしん解体業者認定協会 理事・解体アドバイザー
初田 秀一(はつだ しゅういち)
解体アドバイザー歴15年、相談実績は11万件以上。お客様の不安を笑顔に変える現場のプロフェッショナル。「どんな些細なことでも構いません」をモットーに、一期一会の精神でお客様一人ひとりと向き合い、契約から工事完了まで心から安心できる業者選定をサポート。この記事では現場のリアルな視点から解説を担当。


「スッキリ解体」編集長
稲垣 瑞稀(いながき みずき)
解体業界専門のWebメディアでWebディレクターとして6年以上、企画・執筆・編集から500社以上の解体業者取材まで、メディア運営のあらゆる工程を経験。正しい情報が届かず困っている方を助けたいという想いから、一個人の責任と情熱で「スッキリ解体」を立ち上げ、全記事の編集に責任を持つ。


「スッキリ解体」専属ライター
丸山 夏実(まるやま なつみ)
「”わからない”という不安を、”わかった!”の安心に変えるお手伝いをします。」
はじめて解体工事に直面する方の不安な気持ちに、誰よりも共感することを大切にするライター。数多くの業者インタビューや専門勉強会を通じて、プロの専門用語を一般の方にもわかりやすく伝える。読者と同じ目線に立ち、一緒に不安を解決していくパートナーのような記事作りを信条としている。


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浄化槽の種類
浄化槽には大きく分けて単独浄化槽と合併浄化槽の2種類があります。
単独処理浄化槽(みなし浄化槽)


画像引用:浄化槽のひみつ12単独処理浄化槽って何?|環境省浄化槽サイト
トイレの排水だけを浄化するのが単独処理浄化槽です。以前は主にこちらが使われていましたが、生活排水全体による水質汚染が問題になったため、現在では台所やお風呂の排水もまとめて浄化する合併処理浄化槽が主流となっています。単独処理浄化槽は、浄化槽法の改正により、2001年4月1日から製造・販売・設置が禁止されました。
合併処理浄化槽


画像引用:浄化槽のひみつ11合併処理浄化槽って何?|環境省浄化槽サイト
合併処理浄化槽は、し尿だけでなく台所、お風呂、洗濯時の排水など、家庭から出る生活排水すべてを浄化できる浄化槽です。トイレの排水だけを浄化する単独処理浄化槽の製造が禁止されてからは、すべてこの方式が使われており、現在では主流の浄化槽となっています。
単独処理浄化槽と合併処理浄化槽の比較
比較項目 | 単独処理浄化槽 | 合併処理浄化槽 |
---|---|---|
浄化機能 | トイレの排水(し尿)のみ浄化する | 家庭から出る生活排水すべてを浄化する |
マンホールの数 | 2枚 | 一般的に3枚 ※小型は2枚の場合もある |
撤去費用 | 撤去費用に主な差はありません。 ※費用に関しては大きさや素材による違いが大きいため |


単独処理浄化槽はトイレの汚水のみを処理するのに対し、合併処理浄化槽は台所や風呂場からの生活雑排水もまとめて浄化するため、河川や海の水質汚染を防ぐ効果が格段に高いことがわかっています。2001年4月1日から単独処理浄化槽の製造・販売・設置は禁止されていますが、以前から使用しているものが現在も使われ続けているケースは少なくありません。



だから、単独処理浄化槽を使用し続けているご家庭や施設へ向けて、合併処理浄化槽へ転換するよう促している自治体がたくさんあるんだって!
浄化槽解体の費用相場と内訳


工事方法別の費用相場(全撤去/埋め戻し)
浄化槽の解体費用は、「全撤去」か「埋め戻し」か、どちらの工事方法を選ぶかによって大きく変わります。それぞれの費用相場を以下の表にまとめました。
工事方法 | 費用相場(5人槽の場合) |
---|---|
浄化槽本体をすべて解体し、その中にある部材や装置も取り除き、その土地に何も残さない方法。 | 全撤去7万円 ~ 14万円程度(最終清掃費込み) |
埋め戻しは、浄化槽本体を1/3ほど撤去し、部材や装置を取り除いたのち、残りの2/3を地中に埋める方法。 | 埋め戻し5万円 ~ 12万円程度(最終清掃費込み) |
※現場の状況により費用は異なります。
ご覧の通り、浄化槽本体をすべて取り除く「全撤去」の方が、費用は高くなる傾向にあります。どちらの方法を選ぶべきかは、費用だけでなく土地の将来的な利用計画も関わってくるため、後の章で詳しく解説します。
上記の費用は、法律(浄化槽法)で義務付けられている最終清掃・消毒費(相場2~4万円)を含んだ総額の目安です。重機の搬入経路が狭い、浄化槽が特殊な材質であるなど、現場の状況により費用は変動するので注意しましょう。
浄化槽のサイズ(人槽)別の費用相場
費用は、浄化槽の大きさ、つまり「人槽(にんそう)」によっても変動します。人槽とは、その浄化槽が何人分の生活排水を処理できるかを示す単位です。
一般家庭でよく見られる5人槽と7人槽の費用相場を見てみましょう。
浄化槽のサイズ | 全撤去の費用相場 | 埋め戻しの費用相場 |
---|---|---|
5人槽 | 7万円 ~ 14万円 | 5万円 ~ 12万円 |
7人槽 | 9万円 ~ 16万円 | 7万円 ~ 14万円 |
※現場の状況により費用は異なります。
浄化槽のサイズについて
浄化槽の規模は、処理対象人員を想定した「人槽」という単位で区分されていて、最も小さい「5人槽」をはじめ、住宅の大きさなどにあわせて「7人槽」、「10人槽」というように大きさが決められています。
引用:浄化槽-環境技術解説|環境展望台:国立環境研究所


画像引用:“人槽”ってなに?浄化槽の大きさの決め方|フジクリーン工業株式会社
ご自宅の浄化槽のサイズは、蓋やブロワー(空気を送る装置)の近くに貼られたプレートで確認できることが多いです。もしもサイズが不明な場合は、業者に現地調査を依頼すれば正確に把握できます。
浄化槽の素材別の費用相場
浄化槽の素材は大きく分けて2種類あり、素材によっても解体費用の相場が異なります。
素材 | 撤去費用相場 | 平均撤去費用 |
---|---|---|
頑丈で耐久性が高いのが特徴。表面がザラザラしていて重量がある。 | コンクリート製5.6万~15万円 | 93,100円 |
軽量で強度が高く、腐食しにくい素材。表面が滑らかで、比較的軽いのが特徴。 | FRP(強化プラスチック)製2万~5万円 | 33,235円 |
※費用目安は「あんしん解体業者認定協会」が保有する解体工事データから費用幅を算出したものです。
※現場の状況により費用は異なります。




古くからある家屋や大規模な施設ではコンクリート製の浄化槽が使用されている場合がありますが、最近の一般家庭では、軽量で扱いやすいFRP(強化プラスチック)製の浄化槽が主流になっています。
【内訳を公開】解体工事に含まれる費用項目
「見積もりをもらったけど、項目が多くて何が何だか分からない…」
そんな状況に陥らないためにも、解体費用に通常含まれる項目の内訳を知っておくことが重要です。費用の透明性を確保するため、主な内訳をここで公開します。
- 最終清掃・消毒費
浄化槽内部に残った汚泥を抜き取り、清掃・消毒するための費用です。これは法律で義務付けられており、省略はできません。 - 掘り起こし・解体工事費
重機を使って浄化槽の周りを掘り、コンクリートやFRP(強化プラスチック)でできた本体を破壊するための費用です。 - 産業廃棄物の収集運搬・処分費
解体で出たコンクリートガラやプラスチック片などを、法律に則って適切に処分するための費用。不法投棄を防ぐためにも非常に重要です。 - 埋め戻し・整地費
浄化槽を撤去した後の穴を、新しい土や砂で埋め戻し、平らにならすための費用です。 - 重機回送費・諸経費
重機を現場まで運ぶ費用や、現場管理費などの経費です。
これらの項目がきちんと記載されているか、見積もりをチェックする際の参考にしてください。
また、見積書の書き方は業者によって異なります。たとえ同じ工事内容でも、表記方法がまったく違う場合があるので注意が必要です。もし不明な点があれば、必ず業者に確認しましょう。
知らないと損!解体費用を賢く抑えるための重要ポイント


解体費用は決して安いものではありません。だからこそ、正しい知識で少しでも費用を抑える努力をすべきです。基本的な節約術に加え、専門家が明かす「悪質業者の手口を回避し、不当な出費を防ぐためのポイント」を解説します。
基本の節約術
まずは、誰でも実践できる2つの基本を押さえましょう。
- 必ず複数の専門業者から相見積もりを取る
これがもっとも効果的で、かつ重要な方法です。1社だけの見積もりでは、その金額が適正かどうか判断できません。最低でも3社から見積もりを取り、工事内容と金額を比較検討することで、数十万円の差が出ることも珍しくありません。 - 自治体の補助金制度を確認する
お住まいの自治体によっては、公共下水道への切り替えに伴う浄化槽の撤去に補助金を出している場合があります。工事を依頼する前に、必ず市役所や町村役場の担当窓口(環境課や下水道課など)に確認しましょう。
【初田理事に聞いた】後からの高額請求トラブルと、その回避策
見積もりが安かったのに、工事後に「地中から障害物が見つかった」などと理由をつけ、高額な追加費用を請求される……。これは、残念ながら解体業界でよく聞くトラブルです。そこで、『あんしん解体業者認定協会』に所属し数多くのトラブル事例を見てきた初田理事に回避策をうかがいました。


一般社団法人あんしん解体業者認定協会 理事・解体アドバイザー
初田 秀一 (はつだ しゅういち)
解体アドバイザー歴15年、相談実績は11万件以上。お客様の不安を笑顔に変える現場のプロフェッショナル。「どんな些細なことでも構いません」をモットーに、一期一会の精神でお客様一人ひとりと向き合い、契約から工事完了まで心から安心できる業者選定をサポート。この記事では現場のリアルな視点から解説を担当。
悪質な業者は、どんな手口で高額な追加費用を請求してくるのでしょうか?



悪質な手口としては、工事が全部終わって証拠もない状態で「これだけかかったので払ってください」とゴリ押しで請求してくるパターンですね。依頼主が何も言えなくなる状況を作られてしまうんです。
解体工事後、業者から「家の壁と屋根がそれぞれ2重になっていた」と言われ、予定の2倍近い建物解体費を請求されたKさん。
工事はすでに終わっており、写真などの証拠もありませんでした。しかし、業者の言葉を信じるしかないと思ったKさんは提示された金額を渋々お支払いしました。結果、大幅な予算オーバーになってしまいました。
※あんしん解体業者認定協会に寄せられた相談例より





こうしたトラブルを未然に防ぐため、契約前に必ず以下の4点を確認してください。これだけで、あなたの身を守る強力な盾となります。
- 問題が見つかった時、写真や動画ですぐに報告してくれるか
- 追加費用が発生する場合、作業前に「おおよその費用感」を提示してくれるか
- 契約書に「問題発生時は、依頼主の確認を得てから作業を進める」趣旨の一文があるか
- 報告を受けた際、現地を直接確認させてもらえるか


▼契約書のチェックポイントについて、より詳しい解説はコチラ!▼


【初田理事に聞いた】相場を大きく超える高額ケースとは?
先述した相場(5人槽の全撤去で7~14万円)から大きく外れ、20万円、30万円と高額になるのは、どのような現場なのでしょうか。こちらも初田理事にうかがいました。



主に以下の3つのケースが挙げられます。
- RC造(鉄筋コンクリート造)の頑丈な浄化槽
一般的なFRP(強化プラスチック)製と違い、RC造の浄化槽は破壊に手間と時間がかかります。それにより相場の倍ぐらいの費用が発生する可能性があります。 - 事前の最終清掃がされていない
解体前に必須の「最終清掃」が行われておらず、工事当日にその費用が追加で発生するケースです。 - 浄化槽内部に廃棄物が詰められている
過去の所有者が、使わなくなった浄化槽にコンクリートの塊やガラ(瓦礫)を詰めて蓋をしてしまっている場合です。



3つ目のこれは本当に厄介なケースです。浄化槽の中がいっぱいになっていると、その廃棄物の撤去だけで20〜30万円が元の費用にプラスでかかってくるケースもあります。
これらは、現地調査の段階では判明しにくいため、追加費用のリスクとして認識しておきましょう。
全撤去か埋め戻しか?浄化槽の解体方法2種類の違いと選び方


浄化槽の解体には、「全撤去」と「埋め戻し」という2つの主要な方法があります。
「費用が安いから」という理由だけで安易に埋め戻しを選ぶと、あとで大きなトラブルに見舞われる可能性も。現場の実情として、この選択はあなたの土地の将来を左右する重要な決断です。
それぞれのメリット・デメリットを正しく理解し、あなたの状況に最適な方法を選びましょう。
【全撤去】メリット・デメリットと向いているケース
全撤去は、その名の通り、浄化槽の本体をすべて掘り起こして撤去する方法です。
メリット | 最大のメリットは、土地を完全にきれいな状態に戻せることです。地中に障害物がなくなるため、将来的に家を建て替えたり、土地を売却したりする際に何の支障もありません。資産価値の観点からも安心できる方法と言えるでしょう。 |
デメリット | 浄化槽を丸ごと撤去し、多くの土で埋め戻すため、埋め戻し工法に比べて費用が高く、工期もやや長くなる傾向があります。 |
向いているケース | ・跡地を更地にして売却する予定がある ・跡地に建物を新築する計画がある ・将来の土地利用について、あらゆる可能性を残しておきたい |
土地の価値を最大限に保ちたい、将来の不安要素を完全に取り除きたいと考える方には、全撤去を強くオススメします。
【埋め戻し】メリット・デメリットと向いているケース
埋め戻しは、浄化槽の底部を残し、上部や壁を壊して、内部を砂や砕石で埋めてしまう方法です。「砂埋め」や「埋め殺し」とも呼ばれます。
メリット | 撤去するコンクリートガラの量が少なく、埋め戻す土の量も抑えられるため、全撤去に比べて費用を安く抑えられます。工期も比較的短く済みます。 |
デメリット | 地中に浄化槽の残置物が残るため、将来土地を売却する際には買主への告知義務が発生し、資産価値が下がる可能性があります。また、跡地に建物を建てる場合は、結局この残置物を撤去する必要があり、二度手間と余計な費用がかかることになります。 |
向いているケース | ・少しでも費用を抑えたい ・解体後の土地利用に制約がない |
【中野理事に聞いた】浄化槽の解体方法選びで失敗しないための注意点
全撤去か埋め戻しか、解体方法をご自身で判断するのはなかなか難しいことだと思います。ここからは、この記事の監修者で解体に関する法令や制度に精通した専門家である中野理事にお話をうかがいます。
稲垣:浄化槽の解体方法を選ぶ上で、失敗しないための注意点を教えてください。



もっとも注意すべきは、悪質な業者による手抜き工事です。費用を安く見せかけるため、内部の汚泥を清掃せずにそのまま埋めてしまうケースが後を絶ちません。これをやると、将来的に地盤が沈下したり、悪臭や害虫が発生したりする原因となり、取り返しのつかない事態を招きます。
稲垣:では、悪質な業者による手抜き工事を回避する方法はありますか?



全撤去か埋め戻しか、業者がすすめてきた解体方法に、しっかりした根拠があるかに注目しましょう。根拠について業者からの説明が不十分と感じた場合は、「なぜその解体方法で行うのか」を納得のいくまで確認しましょう。
土地の将来で決める!あなたに合った工事方法の選び方
結局のところ、どちらの工法を選ぶべきかは、あなたがその土地を将来どのように利用したいかによって決まります。判断に迷った際の考え方を整理しました。
- 売却や建て替えの予定が少しでもあるなら
- 「全撤去」一択
将来、土地を手放したり、新しい家を建てたりする可能性がゼロでない限り、全撤去を選ぶのが賢明です。目先の費用を惜しんだ結果、将来もっと大きな費用やトラブルに見舞われるリスクを避けるべきでしょう。
- 「全撤去」一択
- 駐車場や庭として利用し、将来も動かす予定がないなら
- 「埋め戻し」も選択肢に
跡地を駐車場や庭、家庭菜園など、上に重量物がかからない用途で使い続けることが確定している場合は、費用を抑えられる埋め戻しも合理的な選択肢となり得ます。ただし、信頼できる業者に依頼し、最終清掃が確実に行われることを必ず確認してください。
- 「埋め戻し」も選択肢に



5年後、10年後のライフプランを想像してみるのが、後悔しない選択への近道なんだね!
浄化槽の解体業者選びで後悔しないための3つの鉄則


ここまで費用や工法について解説してきましたが、浄化槽の解体工事でもっとも重要なのは、「信頼できる業者を選ぶこと」です。
なぜなら、この業界には残念ながら、消費者の知識不足につけ込む悪質な業者が存在するからです。業者選びを一つ間違えるだけで、不当な高額請求や手抜き工事といったトラブルに巻き込まれ、数十万円もの損害を被る可能性があります。
そんな悪質な業者を回避するため、業者選びで後悔しないための鉄則を3つご紹介します。これさえ守れば、あなたは悪質業者から身を守り、安心安全な工事を実現できるはずです。
鉄則1:必ず複数の専門業者から相見積もりを取る
これは業者選びにおける基本中の基本であり、もっとも効果的な防御策です。
面倒に感じるかもしれませんが、1社だけの見積もりで契約を決めてしまうのは非常に危険です。その業者の提示する金額が、果たして地域の相場に見合った適正価格なのか、あなたには判断する術がありません。
最低でも3社以上の専門業者から見積もりを取り、それぞれの内容をじっくり比較検討してください。そうすることで、おおよその費用相場が肌感覚で分かり、極端に高い、あるいは安すぎる(手抜き工事の可能性)業者を見抜けます。
相見積もりは、あなたの財産を守るためのもっとも重要なステップです。


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鉄則2:許可証の有無と廃棄物処理の流れを契約前に必ず確認する
解体工事を行う業者は、法律に基づいて必要な許可を得ていなければなりません。契約前に必ず「解体工事業登録」の有無を確認しましょう。これは500万円未満の解体工事を行うために必須の登録です。
解体で出たコンクリートガラなどを運搬するための許可ですが、注意点があります。廃棄物処理法では、工事の元請業者が自ら排出した廃棄物を自社の車両で運搬する場合、この許可は不要とされています。許可が法的に必須となるのは、下請け業者が運搬する場合です。
そのため、契約する業者が元請けで「自社で運搬します」と説明された場合、この許可証がなくても直ちに違法とは限りません。重要なのは、許可の有無だけでなく、誰が、どのように処分するのかを契約書やマニフェスト(産業廃棄物管理票)で明確に示せるかを確認することです。
優良な業者であれば、ホームページに許可番号を記載していたり、お願いすればこころよく提示してくれたりするはずです。逆に、提示を渋ったり、曖昧な返事をしたりする業者は、依頼を避けた方がよいでしょう。
鉄則3:見積書の内容を細かくチェックする
複数の業者から見積書が届いたら、総額だけを見て判断してはいけません。悪質な業者は一見安く見せかけて、後から「追加費用」と称して高額な請求をしてくる手口をよく使います。
そうした被害に遭わないために、見積書の以下の項目を必ず細かくチェックしましょう。
- 工事内容
「浄化槽撤去工事一式」のような曖昧な記載ではなく、「全撤去」か「埋め戻し」か、工法が具体的に明記されているか。 - 費用項目
前の章で解説した「最終清掃費」「産業廃棄物処分費」などが、きちんと含まれているか。とくに「処分費」が含まれていない見積もりは要注意です。 - 追加費用の条件
「地中から予期せぬ障害物が出てきた場合」など、どのようなケースで追加費用が発生する可能性があるのか、その条件が明記されているか。 - 諸経費
「諸経費」の項目があまりに高額な場合は、何が含まれているのか具体的に質問すべきです。
これらのポイントを押さえるだけで、あなたは見積もりの裏に隠されたリスクを見抜けます。
⚠️注意⚠️ハウスメーカー任せは数十万円損する可能性も
新築への建て替えなどで浄化槽を解体する場合、多くの方がハウスメーカーや工務店に解体工事もまとめて依頼しがちです。しかし、これが大きな落とし穴になる場合があります。
ハウスメーカーは自社で解体工事を行わず、下請けの解体業者に工事を依頼するのが一般的です。その際、本来の工事費にハウスメーカーの利益(中間マージン)が上乗せされるため、あなたが直接解体業者に依頼するよりも、費用が2割から3割、金額にして数十万円も高くなってしまうケースが少なくありません。
「窓口が一つで楽だから」という理由だけで任せきりにせず、必ずご自身で解体専門業者を探し、相見積もりを取ることをオススメします。このように、新築と解体をそれぞれ別の業者に依頼することを「分離発注」と呼びます。賢く費用を抑えるための方法の一つです。
▼解体業者の選び方について、より詳しい解説はコチラ!▼


浄化槽の解体工事、何から始める?問い合わせから完了までの全手順


「業者選びの重要性は分かったけど、具体的に何から手をつければいいの?」
いざ行動しようと思っても、はじめてのことばかりで戸惑うのは当然です。しかし、工事全体の流れをあらかじめ把握しておけば、一つひとつのステップを落ち着いて進められます。
ここでは、あなたが業者に問い合わせてから工事が完了するまでの全手順を、分かりやすく解説します。
業者への問い合わせ・現地調査の依頼
まずは、インターネットなどで複数の解体業者を探し、電話やメールで問い合わせをします。その際、浄化槽の解体を検討している旨を伝え、現地調査と見積もりの作成を依頼しましょう。
現地調査では、業者が浄化槽のサイズや種類、設置場所、重機が入れるかといった現場の状況を確認します。この調査が正確な見積もりの基礎となるため、非常に重要です。


見積もりの比較検討と契約
複数の業者から見積書が提出されたら、前の章で解説した「3つの鉄則」に基づいて、内容をじっくり比較検討します。
費用だけでなく、担当者の対応や説明の分かりやすさなども含めて、総合的に信頼できる1社を選びましょう。契約を決めたら、工事内容、金額、工期、支払い条件などが明記された契約書を交わします。
不明な点があれば、契約前に必ず質問して解消しておくことが大切です。
工事前の最終清掃・消毒
解体工事に着手する前に、必ず浄化槽内部の汚泥を抜き取り、清掃・消毒する「最終清掃」を行います。これは浄化槽法で定められた義務であり、通常は解体業者が提携している清掃業者に手配してくれます。
この作業を怠ると、悪臭や環境汚染の原因となるため、絶対に必要な工程です。


解体・撤去工事と埋め戻し
最終清掃が終わると、いよいよ重機を使った解体工事の開始です。浄化槽の周りを掘削し、コンクリートやFRPでできた本体を破砕・撤去します。
撤去で出たコンクリートガラなどの産業廃棄物は、分別してトラックに積み込み、許可を得た処分場へ運搬されます。その後、浄化槽があった穴を新しい土や砂で埋め戻し、重機で踏み固めていきます。


工事完了の確認
すべての作業が終わったら、業者と一緒に現場の最終確認を行います。土地がきちんと平らになっているか、周囲にゴミや廃材が残っていないかなどをチェックしましょう。
問題がなければ、工事は完了です。この流れを頭に入れておけば、今自分がどの段階にいるのかが分かり、安心して工事を進められるはずです。
忘れると違法に?浄化槽解体に必要な行政手続きと補助金


浄化槽の解体は、ただ壊して埋めれば終わり、というわけではありません。法律で定められた行政への手続きを怠ると、知らないうちに違法行為となってしまう可能性があります。
また、自治体によっては費用の一部を補助してくれる制度もあります。ここでは、後悔しないために絶対に知っておくべき手続きと、損をしないための補助金情報について解説します。
必須の「浄化槽使用廃止届出書」の提出について
浄化槽の使用をやめた(解体した)場合、浄化槽法に基づき、その旨を管轄の行政機関に届け出る義務があります。この手続きに必要なのが「浄化槽使用廃止届出書」です。
- 提出期限
浄化槽の使用を廃止した日(一般的には解体工事完了日)から30日以内です。 - 提出先
お住まいの地域を管轄する都道府県や市町村の担当部署(保健所、環境課、下水道課など)となります。 - 届出書の入手方法
各自治体のホームページからダウンロードできる場合が多いです。
この届出は依頼主(あなた)の義務ですが、多くの優良業者は手続きを代行してくれます。契約時に、届出の代行までお願いできるか確認しておくと安心でしょう。
自治体によっては補助金が使える!確認方法と申請の注意点
公共下水道への接続に伴い浄化槽を廃止する場合、自治体がその費用の一部を補助してくれる制度を設けていることがあります。これは、下水道の普及を促進するための施策です。
補助金の有無や金額、条件は自治体によって大きく異なるため、まずはご自身の自治体の制度を確認しましょう。
- 確認方法
市役所や町村役場のホームページで「浄化槽 補助金」などと検索するか、下水道関連の担当部署に直接問い合わせてみましょう。 - 申請の注意点
もっとも重要なのは、必ず工事の契約前に申請を行うことです。多くの自治体では、工事開始後や完了後の申請は受け付けてくれません。補助金の利用を考えている場合は、業者選びと並行して、早めに手続きを進める必要があります。
使える制度を逃して損をすることがないよう、事前の情報収集を徹底してください。
下水道が整備されていない地域では、旧式の単独処理浄化槽から、より多くの汚水を浄化できる合併処理浄化槽への転換工事で利用できる補助金制度がある場合があります。
▼単独処理浄化槽から合併処理浄化槽へ転換する際に補助金を交付している例
生活排水による河川の水質汚濁を改善するため、汲み取り便槽又は単独処理浄化槽から高度処理型合併処理浄化槽に転換する場合に補助金を交付しています
引用:高度処理型合併処理浄化槽設置補助金|市川市
これらの制度は、時期や予算によって内容が変わる場合があります。最新の情報は、各自治体のウェブサイトや担当窓口で直接確認することをオススメします。
浄化槽を解体せず放置は危険?空き家で起こりうる3つのリスク


「実家を相続したけど、誰も住んでいないし、浄化槽もそのまま……」
「解体費用がかかるから、とりあえずこのままにしておこうかな……」
このように、空き家などの浄化槽を解体せずに放置しているケースは少なくありません。しかし、その判断が将来的に大きな金銭的負担やトラブルを招く危険性をはらんでいることを、専門家として指摘しておかなければなりません。
ここでは、浄化槽を放置することで起こりうる3つの重大なリスクを解説します。
リスク1:維持管理費が永続的に発生する
浄化槽は、使用していなくても、設置されている限り法律上の管理義務が残ります。具体的には、浄化槽法で定められた保守点検や清掃を定期的に行わなければなりません。
これを怠ると行政指導の対象となる可能性があり、結果的に年間数万円の維持管理費が永続的にかかり続けることになります。誰も住んでいない家のための出費は、まさに「負の遺産」と言えるでしょう。


環境省の「平成21年度浄化槽の維持管理費用に関する調査報告書」によると、一般家庭の浄化槽(5人槽)の維持にかかる年間費用は、約59,000円という例が報告されています。このように、浄化槽の維持費は決して安い金額ではないことがわかります。
空き家になった浄化槽の管理は、放置せず早めに専門業者へ相談し、適切な対応を検討しましょう。
リスク2:老朽化による地盤沈下や悪臭・害虫の発生


放置された浄化槽は、年月とともに確実に老朽化します。とくにコンクリート製の古い浄化槽は、ひび割れや破損を起こしやすく、そこから汚水が漏れ出したり、槽自体が陥没して地盤沈下の原因になったりする危険性があります。
また、内部に残った汚泥が腐敗し、悪臭やハエ・蚊などの害虫を発生させ、近隣トラブルに発展するケースも少なくありません。
リスク3:土地売却時の資産価値が低下する
将来、その土地を売却しようと考えたとき、浄化槽が残っていることは大きなマイナス要因となります。買主は、浄化槽の撤去費用を負担することを嫌がるため、その分を売却価格から値引きするよう求められるのが一般的です。
つまり、あなたが先延ばしにした解体費用を、結局は将来の売却価格で負担することになります。それどころか、買い手が見つかりにくくなるなど、売却そのものの障害となる可能性も十分に考えられます。
これらのリスクを考えれば、使わない浄化槽を放置しておくことにメリットは何一つありません。問題が大きくなる前に、早めに解体を検討することが、結果的にあなたの財産を守ることにつながります。
相続税評価額
様々な調査を行い、地下埋設物があることが判明した土地の相続税評価額は下記の算式により算出します。
地下埋設物がないものとした場合の相続税評価額-撤去費用の見積額×80%
引用:地下埋設物がある土地の相続税評価を徹底解説しました!|円満相続税理士法人
すぐに解体が難しい場合、2020年4月から始まった「使用休止届出制度」を利用できる可能性があります。これは、浄化槽の最終清掃を行った上で管轄の行政機関に届け出ることで、その間の保守点検や清掃の義務が免除される制度です。
ただし、これはあくまで一時的な措置であり、放置リスクを根本的に解決するものではありません。詳細は必ずお住まいの自治体にご確認ください。
【FAQ】浄化槽の解体に関するよくある質問


最後に、浄化槽の解体に関してQ&A形式でお答えします。
解体工事の期間はどのくらいかかりますか?
一般的な戸建て住宅の浄化槽(5人槽~7人槽)であれば、工事そのものにかかる期間は2日~3日程度が目安です。
ただし、これは天候に左右される場合もあります。工事前の最終清掃や、業者との打ち合わせ、契約手続きなどの期間も考慮すると、問い合わせから工事完了までは、全体で2週間~1ヶ月程度を見ておくと余裕を持てるでしょう。
中の汚泥を自分で処理できますか?
残念ながら、業者に依頼せず浄化槽内の汚泥を自分で処理することはできません。
廃棄物処理法上、浄化槽内の汚泥は「一般廃棄物」、解体で出るコンクリートガラは「産業廃棄物」と明確に区別されています。汚泥の収集運搬には、お住まいの市町村長の許可を得た「一般廃棄物収集運搬業許可業者」への委託が法律で義務付けられています。
これは解体業者が持つ「産業廃棄物」の許可とはまったくの別物です。この違いを理解しておくことが、不法投棄などのトラブルを避ける上で非常に重要です。
相見積もりを依頼する時、業者にどう伝えれば良いですか?
「他社にも見積もりをお願いしています」と、正直に伝えることをオススメします。
これを伝えることで、業者側も不誠実な対応はできないと認識し、より真剣に見積もりを作成してくれる傾向があります。後ろめたく感じる必要はまったくありません。
むしろ、誠実な業者を見極めるための良い機会だと捉え、素直に伝えましょう。
単独処理浄化槽と合併処理浄化槽で解体方法に違いはありますか?
単独処理浄化槽(トイレの排水のみを処理)と合併処理浄化槽(生活排水すべてを処理)では、後者の方がサイズが大きい傾向にあります。
しかし、解体の基本的な手順や工法(全撤去/埋め戻し)に大きな違いはありません。ただし、サイズが大きい分、解体するコンクリートの量や埋め戻す土の量が増えるため、合併処理浄化槽の方が費用はやや高くなるのが一般的です。
見積もり時には、浄化槽の種類とサイズを事前に確認し、正確な費用を把握できるようにしましょう。
まとめ:浄化槽の解体を依頼する前の最終チェックリスト


この記事の要点を踏まえ、最後に確認すべき重要事項をまとめました。一つずつチェックし、万全の準備で次の一歩に進みましょう。
- 複数業者からの相見積もり取得
適正価格を把握するため、最低3社以上の専門業者から見積もりを取得しましょう。ハウスメーカー等に一括で依頼するのではなく、直接依頼する「分離発注」も費用を抑えるための有効な手段です。 - 工事方法の決定(全撤去/埋め戻し)
土地の将来計画に基づいて工法を選択します。売却や新築の可能性がある場合は、資産価値を維持できる「全撤去」が推奨されます。将来の土地利用に制約がない場合は、費用を抑えられる「埋め戻し」も選択肢です。 - 契約内容と行政手続きの確認
契約前に、見積書に「最終清掃費」「産業廃棄物処分費」が含まれているか、追加費用の条件が明確かを確認します。また、工事完了後30日以内の「浄化槽使用廃止届出書」の提出と、自治体の補助金制度も事前に確認しましょう。
これらのポイントを着実に実行することが、後悔のない浄化槽解体工事の実現へのもっとも確実な道筋です。


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