解体工事で後悔しない!見積書10のチェックポイントを専門家が徹底解説

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稲垣 瑞稀

この記事の案内人・編集長

稲垣 瑞稀

解体業界で6年間働く中で感じた『正しい情報が届かない』というもどかしさから、全記事の企画・編集に責任を持っています。専門家への直接取材を通じ、業界経験者として分かりやすい情報提供をお約束します。

初めての方は驚かれるかもしれませんが、解体工事の見積書には決まった書式がなく、業者ごとに書き方が異なります。そのため、一目見ただけでは内容を把握しづらいのが現状です。優良な業者を選ぶには見積書の比較が不可欠ですが、内容を理解しないまま金額の安さだけで決めてしまうと、後々の追加請求などのトラブルを招く恐れがあります。

本記事では、トラブルを未然に防ぐ「見積書10のチェックポイント」を数多くの現場を見てきた専門家が解説します。

「各項目が示す作業内容」から、「サンプルを用いた比較方法」や「失敗事例から学ぶ注意点」まで、安心して依頼できる業者を見極めるための「見積書の正しい見方」をお伝えします。

この記事でわかること
  • 見積書を構成する「5つの基本項目」と具体的な作業内容がわかる。
  • トラブルを未然に防ぐ「10の見積書チェックポイント」がわかる。
  • 「一式・安すぎる」見積もりのリスクと失敗事例・対策がわかる。
  • 優良業者を見極める「現地調査の質問」と「相見積もりの比較法」がわかる。

この記事の制作チーム

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中野 達也監修者

一般社団法人あんしん解体業者認定協会 理事

中野 達也(なかの たつや)

解体工事業の技術管理者であり、解体工事施工技士を保有。2011年に解体業者紹介センターを鈴木佑一と共に創設。2013年に一般社団法人あんしん解体業者認定協会を設立し、理事に就任。めざまし8(フジテレビ系列)/ひるおび(TBS系列)/ 情報ライブ ミヤネ屋(日本テレビ系列)/バイキングMORE(フジテレビ系列)など各種メディアに出演。

初田 秀一現場解説

一般社団法人あんしん解体業者認定協会 理事・解体アドバイザー

初田 秀一(はつだ しゅういち)

解体アドバイザー歴15年、相談実績は11万件以上。お客様の不安を笑顔に変える現場のプロフェッショナル。「どんな些細なことでも構いません」をモットーに、一期一会の精神でお客様一人ひとりと向き合い、契約から工事完了まで心から安心できる業者選定をサポート。この記事では現場のリアルな視点から解説を担当。

稲垣 瑞稀運営責任者

「スッキリ解体」編集長

稲垣 瑞稀(いながき みずき)

解体業界専門のWebメディアでWebディレクターとして6年以上、企画・執筆・編集から500社以上の解体業者取材まで、メディア運営のあらゆる工程を経験。正しい情報が届かず困っている方を助けたいという想いから、一個人の責任と情熱で「スッキリ解体」を立ち上げ、全記事の編集に責任を持つ。

丸山 夏実執筆

「スッキリ解体」専属ライター

丸山 夏実(まるやま なつみ)

「”わからない”という不安を、”わかった!”の安心に変えるお手伝いをします。」

はじめて解体工事に直面する方の不安な気持ちに、誰よりも共感することを大切にするライター。数多くの業者インタビューや専門勉強会を通じて、プロの専門用語を一般の方にもわかりやすく伝える。読者と同じ目線に立ち、一緒に不安を解決していくパートナーのような記事作りを信条としている。

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目次

見積書の内訳

解体工事の見積書は業者によって記載方法が異なり、一見「何のための費用なのか」を判別しにくいケースも多いです。ですが、あらかじめ基本の構成を理解しておけば、適切な比較検討が可能になります。

ここでは、一般的な解体工事の見積書にみられる「仮設養生費」「本体工事費」「付帯工事費」「廃棄物運搬処理費」「諸経費」の5項目に分けてそれぞれどんな費用が含まれているかを解説します。

実際の解体工事で使用された「3階建て鉄骨造住宅の解体工事見積書」を例にそれぞれの内訳を見ていきましょう。

仮設養生費

1つ目の「仮設養生費」は、工事を安全かつ円滑に進めるために欠かせない費用です。近隣への騒音・粉塵対策の「養生シート」や、作業員の安全を守る「足場」を設置するための費用が含まれます。

この見積書では「1.仮設工事・準備費」と記載されている部分です。

見積書「仮設養生費」の項目 

見積書2
スクロールできます
費用項目内容備考
シート養生足場組立解体足場、養生シート、仮設トイレ、敷鉄板などの設置・解体費用粉塵や騒音などを防ぐ近隣対策や安全確保のため
重機回送費工事で使用する重機を運ぶトラックのレンタル代やガソリン代など往復分の金額が含まれる
散水用設備費及び散水散水を行うための散水機本体、ホース、ポンプなどの設備費費用は業者負担の場合も多い
検体(建材)採取費アスベスト調査のための費用資格者がいない業者の場合は外部の業者に委託する必要がある
アスベスト含有検査費アスベスト調査のための費用資格者がいない業者の場合は外部の業者に委託する必要がある
近隣家屋調査主に「解体時大きな振動が発生することが予想される際に行う調査」にかかる費用RC造の建物や、マンション・アパート、ビルなどの解体工事前に行われる調査で、一般的な木造住宅では行われない場合がほとんど
運営者 稲垣

この見積書では「アスベスト検査費」や「家屋調査費」が準備費として「仮設養生費」とセットになっていますが、これらの費用は後で解説する「諸経費」に含む業者が多い印象です。

本体工事費

2つ目の「本体工事費」は、建物を解体するための費用です。主に作業員の人件費が大きな割合を占め、建物の構造や階数、手作業が必要な箇所の有無などによって金額が変動します。

この見積書では「2.躯体(=建物の骨組み)解体工事」と表記されています。

見積書「本体工事費」の項目 

見積書3
運営者 稲垣

備考欄にある「手壊し」は重機が使えない場所を手作業で解体する作業のことです。手壊し解体は、手間がかかる分料金が割増しになる傾向があります。

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費用項目内容備考
内部造作物撤去建物の内装を撤去するための作業費




作業員の人件費が含まれる
1F躯体解体建物の1階部分を撤去するための作業費
2F躯体解体建物の2階部分を撤去するための作業費
3F躯体解体建物の3階部分を撤去するための作業費
基礎撤去建物の基礎を撤去するための作業費
バルコニー撤去バルコニーを撤去するための作業費

付帯工事費

3つ目の「付帯工事費」は、建物以外の付帯設備(塀や庭木など)の撤去費用です。これらは現場ごとに状況が大きく異なるため、何が含まれているかを正確に把握しておく必要があります。

また、建物のみの解体工事では「付帯工事」自体がない場合もあります。今回の見積書では該当がないため、付帯工事費でよくある撤去対象物と費用相場を挙げます。

主な付帯工事内容 単価/単位
庭木・庭石の撤去費1万2,000円~/ m3
土間の撤去費2,500円~/ m2
ブロック塀の撤去費2,500円~/ m2
物置の撤去費2万円~/ケ
カーポートの撤去費2万円~/式
ウッドデッキの撤去費4万円~/式
井戸の埋め戻し費5万円~/式
コンクリート製の浄化槽の撤去費5万円~/基
FRP製(繊維強化プラスチック)浄化槽の撤去費2万円~5万円/基

廃棄物運搬処理費

4つ目の「廃棄物運搬処理費」は、解体で出た廃棄物を分別して処理場まで運び、処分するための費用です。近年は建設リサイクル法により厳格な分別が義務付けられており、この項目の透明性が業者の信頼度を測る指標にもなります。

この見積書では「3.発生材処分・運搬」と表記されています。

産業廃棄物を運搬するには「産業廃棄物収集運搬業許可」、処理まで自社で行うには「産業廃棄物処分業許可」が必要です。これらの許可を持っていない業者は許可を持つ別業者へ委託する必要があります。

廃棄物の量は、この見積書のように「m3」または「運ぶトラックの台数」で計算されることが多いです。

見積書「廃棄物運搬処理費」の項目

見積書4
運営者 稲垣

現在、一定規模以上の解体工事では、建設リサイクル法により「分別解体」が義務付けられています。もし見積書で運搬費や処分費が廃棄物の種類ごとに分けられていない場合は、詳細を詰めない「どんぶり勘定」の可能性があります。適正な価格かどうかを判断するためにも、どの廃棄物にいくらかかるのか、業者に内訳を確認してみましょう。

出典:建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(建設リサイクル法)

(分別解体等実施義務)
第九条 特定建設資材を用いた建築物等に係る解体工事又はその施工に特定建設資材を使用する新築工事等であって、その規模が第三項又は第四項の建設工事の規模に関する基準以上のもの(以下「対象建設工事」という。)の受注者(当該対象建設工事の全部又は一部について下請契約が締結されている場合における各下請負人を含む。以下「対象建設工事受注者」という。)又はこれを請負契約によらないで自ら施工する者(以下単に「自主施工者」という。)は、正当な理由がある場合を除き、分別解体等をしなければならない。

引用:建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律|e-Gov 法令検索

諸経費

5つ目の「諸経費」とは、今まで解説してきた「仮設養生費」「本体工事費」「付帯工事費」「廃棄物運搬処理費」以外の、工事の各種申請手続きや重機の回送費、近隣への挨拶品代など、工事を円滑に進めるために必要な「間接的な費用全般」を指します。

その他の費用や雑費とも呼ばれる「諸経費」ですが、解体費用全体の10%ほどを占めることもある重要な項目です。

見積書「諸経費」の項目

見積書5
スクロールできます
主な費用項目内容備考
近隣挨拶及び対策費解体前の近隣挨拶の時で近隣住民へ渡す粗品代や案内文の作成費近隣住民への配慮が確認できる
生活設備撤去費主に電気・ガス設備の撤去費用電気の配線やガス管などが対象
搬出車両燃料費廃材を搬出する車両のガソリン代や高速代重機回送費や廃棄物運搬処分費に含める業者も多い
解体用重機燃料費解体に使用する重機のガソリン代
安全管理費通行人など現場の安全を守るための費用工事看板や安全柵の設置など
各種証明書発行費印鑑証明書や取り壊し証明書の発行費(印紙代など)
諸官庁申請代行費解体工事を行うために必要な許可の申請費建設リサイクル法の届出、道路使用許可(車両を止める場合)など
保守保安費ガードマンの配備(人件費)安全管理費に含める業者も多い
家電リサイクル法4品目
撤去・処分
エアコン撤去費+運搬処理費+リサイクル料金リサイクル対象のエアコンは運搬処理費だけでなく「家電リサイクル料金」が発生するため他の廃棄物と別表記になる場合がある
出典:家電リサイクル法(特定家庭用機器再商品化法)

家電リサイクル法とは

一般家庭や事務所から排出された家電製品(エアコン、テレビ(ブラウン管、液晶式、有機EL式、プラズマ式)、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機)から、有用な部分や材料をリサイクルし、廃棄物を減量するとともに、資源の有効利用を推進するための法律です。

引用:家電リサイクル法(特定家庭用機器再商品化法)|経済産業省

【初田理事に聞いた】特記事項では追加請求の可能性を確認

あんしん解体業者認定協会」で15年にわたって解体アドバイザーをしている初田理事によると、見積書の特記事項では追加費用が発生した時の対応についての確認が大切とのことです。特に確認した方がいい項目について、詳しいお話をうかがいました。

初田 秀一 現場解説

一般社団法人あんしん解体業者認定協会 理事・解体アドバイザー

初田 秀一 (はつだ しゅういち)

解体アドバイザー歴15年、相談実績は11万件以上。お客様の不安を笑顔に変える現場のプロフェッショナル。「どんな些細なことでも構いません」をモットーに、一期一会の精神でお客様一人ひとりと向き合い、契約から工事完了まで心から安心できる業者選定をサポート。この記事では現場のリアルな視点から解説を担当。

理事 初田秀一

追加請求の可能性がある項目は、トラブルを避けるためにも、対応方針が見積書(特記事項欄など)に記載されているか確認しましょう。

見積書「特記事項」の項目

見積書6

アスベスト撤去費用

解体する建物の調査でアスベストが発見された場合にかかる費用です。アスベストの調査結果の開示には1週間以上かかる場合が多いため、現地調査後の見積もりには含まれず、別途見積もりになる場合がほとんどです。アスベストが出た場合の連絡手段、どれくらいで結果が出るのか、発見された場合いくらぐらいかかるのかを事前に確認しておくと安心です。

理事 初田秀一

最初に出した見積書に追記し再発行するよりも、アスベスト調査の結果が出た時点で、アスベスト撤去費用のみの見積書を新たに発行するのが一般的です。

アスベストの除去費用について詳しく知りたい場合は、以下の記事をご覧ください。

地中埋設物撤去費用

解体する建物下の地面から埋設物が発見された場合、その撤去にかかる費用です。建物解体後に地面を掘ってみないと確認ができないため、多くの場合工事終盤で追加費用として提示されます。

実際には地中埋設物が出た時点では全容を把握できないため、業者が埋設物の量と費用の概算を提示し、依頼主に工事続行の判断を仰ぐという流れが一般的です。

理事 初田秀一

地中埋設物は、実際に掘り返してみるまで全容を把握できないため、見積もりはどうしても概算にならざるを得ないのが実情です。一番怖いのは、工事がすべて終わった後、「埋設物の撤去費用〇〇円追加です」と言われること。
事前に受け取る見積書では「埋設物が発見された際は、工事継続の可否を依頼主に報告・相談する」という旨の記載があるか確認しましょう。もし記載がない場合は追記を依頼することで、工事完了後の予期せぬ追加費用といったトラブルを回避できます。

地中埋設物の撤去費用について詳しく知りたい場合は、以下の記事をご覧ください。

残置物

解体工事における「残置物」とは、建物内に残された家具・家電や、敷地内にある依頼主の所有物のことを指します。解体業者に回収を依頼することも可能ですが、その際は別途費用が発生します。

費用は「4tトラック1台につき〇〇円」といった単位で算出されるのが一般的です。現地調査の際に「これは自分で処理する」「これを業者に処分してほしい」と指差し確認をしておけば、見積もりに含まれる残置物の撤去費用がより正確になります。

理事 初田秀一

依頼主自身で処分したほうが安価に済むケースが多いため、可能な範囲で片付けを行い、自分では難しい分だけを業者に依頼する方が多く見受けられます。

残置物の撤去費用について詳しく知りたい場合は、以下の記事をご覧ください。

【中野理事が解説】追加請求などのトラブルを防ぐ見積書チェックポイント10

見積書の不備や確認漏れは、後々の追加請求やトラブルの元になります。ここでは、依頼主が見積書でチェックすべき10の項目について、「あんしん解体業者認定協会」の理事で解体業界に精通した専門家の中野理事に解説していただきます。

中野 達也 監修者

一般社団法人あんしん解体業者認定協会 理事

中野 達也 (なかの たつや)

解体工事業の技術管理者であり、解体工事施工技士を保有。2011年に解体業者紹介センターを鈴木佑一と共に創設。2013年に一般社団法人あんしん解体業者認定協会を設立し、理事に就任。めざまし8(フジテレビ系列)/ひるおび(TBS系列)/ 情報ライブ ミヤネ屋(日本テレビ系列)/バイキングMORE(フジテレビ系列)など各種メディアに出演。

理事 中野達也

初めて目にする解体工事の見積書は、どこをチェックすればよいか分かりにくいと思います。業者ごとに異なる見積内容をしっかりと比較検討できるよう、見積書を受け取った際に確認すべき項目をまとめました。

  1. 延床面積・施工面積は実態と一致しているか
  2. 「一式」という不透明な表記が多くないか
  3. 仮設工事費(養生・足場)の金額が安すぎないか
  4. 付帯工事の対象について詳細の記載があるか
  5. 廃棄物の運搬処理費が種類ごとに分けられているか
  6. 諸経費の各項目が明記されているか
  7. アスベスト調査費の記載があるか
  8. 地中埋設物(地中障害物)に関する取り決めがされているか
  9. 残置物の撤去範囲と費用は適切か
  10. 消費税表記と見積書の有効期限を確認

チェックポイント①:延床面積・施工面積は実態と一致しているか

解体費用は面積を基準に計算されます。登記簿上の面積と見積書の記載が一致しているか、まずは基本を確認しましょう。業者によって「坪」や「m2」など単位が異なる場合があるため、単位を揃えるとより比較しやすくなります。

1坪=約3.3m2

  • 書類との整合性: 見積書に記載された延床面積が、登記簿謄本(登記事項証明書)や建物の図面と一致しているか。
  • 業者間の比較: 複数の業者が算出した面積に大きな乖離(数坪以上の差など)がないか。
  • 算出基準: 延床面積だけでなく、バルコニーやポーチなどの「施工面積」がどのように含まれているか。

リスク

解体費用の単価計算は、一般的に延床面積(各階の床面積の合計)を基準に行われます。この面積が実際の登記簿や図面よりも大きく算出されていると、本来不要な費用を支払うことになります。実は測量の方法は業者によってさまざまです。現地調査で同じ物件を複数社に測量してもらった場合で面積に差が出ることは珍しくありません。

理事 中野達也

見積もりを依頼する前に、登記簿謄本や図面を手元に用意し、正確な面積を把握しておきましょう。業者によって算出面積が異なる場合は、何を根拠に計算したのか(図面ベースか、現地での実測か等)を質問し、不明点を解消してください。

チェックポイント②:「一式」という不透明な表記が多くないか

「解体工事一式」という曖昧な表現を多用する業者は、何にいくらかかっているかの根拠が不透明です。物置やカーポートなど「一式(1基、1箇所)」と表記せざるを得ない項目もあるため、一式表記そのものが悪いわけではありません。問題なのは、一括りにすることで「何にいくらかかっているか」という金額の根拠が不透明になってしまう点です。

わかりやすい見積書とわかりにくい見積書の違いの図解
  • 部位別の記載: 建物本体(地上部分)と基礎や土間、バルコニーなど部位別の金額が明記されているか。
  • 数量と単位: 面積(m2・坪)や、体積(m3)などの単位により金額が算出されているか。
  • 単価: 各項目ごとの単価が記載されているか。

リスク

「解体工事一式 〇〇万円」といった曖昧な表記では、工事範囲が不明確です。その結果、契約後に「その作業は一式に含まれていない」と追加費用を請求されるトラブルの原因にもなりかねません。

理事 中野達也

一式表記が多く詳細がわかりづらいと感じたら内訳明細の提出を求めてください。詳細な見積もりを出せない業者は計画性が乏しいと判断し、候補から外すことも検討すべきです。

チェックポイント③:仮設養生費の金額が安すぎないか

解体工事における「仮設養生費」は、周囲の安全確保や粉塵の飛散防止に欠かせない費用です。騒音などによる近隣トラブルを防ぎ工事を円滑に完了させるためにも、適切な仕様と費用のバランスを確認しておきましょう。

見積書の仮設養生費の項目
  • 養生面積: 建物の外周面積に対して十分な面積(m2)が計上されているか。
  • 養生シートの種類: 現場状況に適した、防音・防塵効果の高い養生シートなどが採用されているか。

リスク

この費用を極端に安く見積もる業者は、薄い養生シートの使用や足場の省略を行う可能性があります。その結果、粉塵や騒音による近隣クレームで工事がストップしたり、飛来物で隣家を傷つけて損害賠償問題に発展したりするリスクがあります。

仮説養生費は、足場の設置費と合わせて記載される場合が多いです。

仮設養生費の計算

以下は使用されるシートの種類ごとの設置費用相場です。

養生シートの種類相場(1m2あたり)
メッシュシート200円~600円
防塵シート300円~700円
防音シート500円~1,000円
防炎シート(防火シート)700円~1,200円
パネル養生2,000円~5,000円

※上記の養生シート設置費用相場は、『スッキリ解体』(提供:『あんしん解体業者認定協会』)の解体工事データ(2025.6月時点)から独自に集計したものです。実際の価格帯とは異なる場合があります。

理事 中野達也

見積もり金額の安さだけで判断せず、近隣対策が適切に行われる仕様になっているかを確認してください。他社と比較して著しく安い場合は、どのような養生を行うのか具体的に質問することが重要です。

チェックポイント④:付帯工事の対象について詳細の記載があるか

ブロック塀や庭木など、撤去してほしい付帯設備がすべて見積もりに含まれているでしょうか。「残されるはずが壊された」「壊してほしかったのに残った」といったトラブルを防ぐための確認事項です。

見積書の付帯工事費の項目
  • 対象物のリストアップ:撤去すべき構造物(塀、カーポート、井戸など)が個別に記載されているか。
  • 撤去数量:ブロック塀の長さや庭木の数などが正確に反映されているか。
  • 撤去範囲の詳細:柵を半分だけ解体するなど細かい範囲の指定がある場合は、その旨が見積もりに記載されているか確認しましょう。

リスク

ブロック塀、庭石、樹木、物置などの「付帯工事」は、建物本体とは別に積算されるのが一般的です。これらが見積書に明記されていない場合、工事当日に「契約外」として残されるか、後から追加費用を請求されるリスクが生じます。

理事 中野達也

解体範囲を確実に伝えるには、現地調査の際に必ず立ち会い、指差し確認で「何を撤去し、何を残すか」を明確に伝えるのが確実です。見積書が出たら指示が「〇〇撤去費」として反映されているか照合し、曖昧な場合は図面などで撤去範囲を詳細に示すよう要求しましょう。

チェックポイント⑤:廃棄物の処分費が種類ごとに分けられているか

廃棄物の処理費が「廃材処分費一式」のようにまとめられている場合、大まかな予測で「どんぶり勘定」されている可能性があります。廃棄物の種類ごとに細かく項目が分けられていれば、どの処理にいくらかかっているかを正確に確認できるため安心です。

見積書の廃棄物処分費の項目
  • 品目ごとの分別: 木くず、コンクリートガラ、石膏ボード、混合廃棄物などの各品目ごとに分類されているか。
  • 運搬費の区分: 処分場での受入費用とは別に「収集運搬費」が計上されているか。
  • 単価の妥当性: 地域の一般的な相場から大きく逸脱していないか。

なお、分別方法は業者の利用する処分場によって異なるので注意が必要です。廃棄物について不明な項目がある場合は管轄の自治体や業者に確認しましょう。

理事 中野達也

工事完了後、業者に「マニフェスト(産業廃棄物管理票)の写し(最終処分完了を証明するE票)」をもらってください。これにより、見積書に記載された廃棄物が適正に処理されたことが確認できます。

マニフェスト

リスク

処分費が極端に安い、あるいは「ゴミ処分一式」のように種類が不明確な場合、業者が不法投棄や不適正な処理を行っている可能性があります。不法投棄が行われると、依頼主も発注者責任を問われる可能性があります。

出典:解体工事を行う施主(発注者)の方へ

施主(発注者)には、事前届出の義務があり、違反した場合は罰則が適用されます。また、工事を依頼しても、何か問題が発生すれば発注者責任が問われる可能性があります。そのため、施主(発注者)は信頼のおける業者に依頼する事が必要です。

引用:解体工事を行う施主(発注者)の方へ|東京都環境局

チェックポイント⑥:諸経費の各項目が明記されているか

「諸経費」としてひとまとめにされがちな項目ですが、その中身には書類の申請費や重機回送費(重機を運ぶ際の車両費など)重要な実費が含まれます。これらの必要な経費が漏れていないかを確認することで、適正な工事を行う業者を見極めます。

見積書の諸経費の項目
  • 重機回送費: 重機を現場まで運ぶ費用が計上されているか(狭小地の場合は積み替え費用も含む)。
  • ガードマン費用: 通学路や交通量の多い道路に面している場合、誘導員の配置費用が含まれているか。
  • 諸許可申請費: 道路使用許可などの事務手続き費用が含まれているか。

リスク

「諸経費」は、一括りにされて内容が不透明になりやすい項目です。ここに詳細な記載がない場合、必要な手続きが踏まれていない可能性があり、後々の追加請求や工事の中断につながる恐れがあります。

理事 中野達也

諸経費の中身を質問し、現場の状況(道路幅や周辺環境)に合わせた必要な経費が網羅されているかを確認しましょう。

チェックポイント⑦:アスベスト調査費の記載があるか

現在、該当建物の解体工事で義務化されているアスベストの事前調査。この費用が計上されていない場合、法令遵守の姿勢に疑問が残ります。工事の中断や高額な追加費用を避けるための必須チェック項目です。

見積書のアスベスト調査費の項目
  • 調査費の有無: 「石綿含有建材調査費」「アスベスト含有検査費」などの名目で費用が計上されているか。
  • 除去費用の条件: アスベストの含有が認められた場合は、その除去費用が含まれているか、あるいは調査結果により「別途」となるかを確認する。

リスク

2022年4月より、解体工事前の石綿(アスベスト)事前調査および報告が義務化されました。見積書に調査費用が計上されていない場合、適切な調査が行われているかの確認ができません。
また、万が一未調査のまま着工し、後からアスベストが発覚した場合には、工事の中断に加え、数十万〜数百万円単位の多額な追加費用が発生するリスクもあります。トラブルを避けるためにも、事前の確認が不可欠です。

出典:石綿障害予防規則

(事前調査及び分析調査)
第三条 事業者は、建築物、工作物又は船舶(鋼製の船舶に限る。以下同じ。)の解体又は改修(封じ込め又は囲い込みを含む。)の作業(以下「解体等の作業」という。)を行うときは、石綿による労働者の健康障害を防止するため、あらかじめ、当該建築物、工作物又は船舶(それぞれ解体等の作業に係る部分に限る。以下「解体等対象建築物等」という。)について、石綿等の使用の有無を調査しなければならない。

引用:石綿障害予防規則|e-Gov 法令検索
理事 中野達也

とくに2006年以前の建物の場合はアスベストが含まれている可能性があるため、見積もり段階で業者に見解を求め、もし含まれていた場合の概算費用を別枠で提示してもらうのが安全です。

チェックポイント⑧:地中埋設物(地中障害物)に関する取り決めがされているか

地面を掘ってみるまでわからない地中埋設物は、最も追加請求が発生しやすいポイントです。発見された時にどのようなプロセスで報告・見積もりが行われるか、事前の取り決めを確認しましょう。

見積書記載の地中埋設物についての取り決め
  • 注記・免責事項: 「地中埋設物は別途見積もり」という記載があるか。
  • 発見時のプロセス: 発見時に直ちに報告し、協議の上で処理方法を決定する旨の規定があるか。

リスク

地中埋設物は事前の地上調査では把握できないため、発見時には別途撤去費用が発生します。一部の悪質な業者の中には、この仕組みを悪用して虚偽の報告を行ったり、不当に高額な費用を請求したりするケースがあります。

理事 中野達也

地中埋設物が出た場合の撤去単価(m3あたり)を事前に合意し、見積書の備考欄に記載してもらうと安心です。また、契約時には契約書に「無断撤去・事後請求の禁止」についての記載があるかを確認しましょう。

チェックポイント⑨:残置物の撤去範囲と費用は適切か

家具や家電などの「残置物」を解体と一緒に業者へ依頼する場合は、撤去の範囲と費用の根拠(単価など)が明確になっているかを確認しましょう。

見積もりの残置物の撤去費用項目
  • 範囲の特定: 見積書に含まれる残置物処分の対象範囲が希望通りになっているか。
  • 量の記載: トラック何台分、あるいは1m3あたりの単価が記載されているか。
  • リサイクル家電: 家電リサイクル法対象品目が別途計上されているか。
出典:特定家庭用機器再商品化法

(4) 規制等の概要
1)対象品目
特定家庭用機器:ユニット型エアコンディショナー、テレビジョン受信機(ブラウン管式)、電気冷蔵庫・電気冷凍庫、電気洗濯機

2)規制等の概要
i. 規制等の内容
ア.事業者及び消費者(使用者)は、特定家庭用機器を適正に引き渡し、収集・運搬、再商品化等にかかる費用を支払わなければならない。
イ.小売業者(販売者)は、自らが過去に販売した特定家庭用機器や買い換えの際に引き取りを求められた特定家庭用機器を引き取り、製造業者等に引き渡さなければならない。
ウ.製造業者等(家電メーカー等)は、自らが過去に製造・輸入した対象機器を引き取るとともに、再商品化基準に従ってリサイクルを行わなければならない。

引用:23.特定家庭用機器再商品化法|経済産業省商務情報政策局情報通信機器課環境リサイクル室
理事 中野達也

一般廃棄物である「残置物」の回収は、解体業者にお願いするより依頼主自身が近隣の処理場に持っていくか、不用品回収業者に依頼する方が費用を安く抑えられる傾向にあります。自身で処理できるものは解体前に処理を済ませておくのがオススメです。解体業者に依頼する場合は、事前に廃棄してほしい残置物の量と種類を正確に伝えて見積もりに反映してもらうことが重要です。

リスク

家具や家電などの「残置物」を「依頼主が自分で処分するのか」「解体業者に処分を依頼するのか」が曖昧だと、正確な見積もりが出せずに追加請求などトラブルの元になる可能性があります。

理事 中野達也

注意点として、残置物は「一般廃棄物」に該当します。収集運搬するには「一般廃棄物収集運搬業許可」が必要になるため、業者が資格を持っているかを確認しましょう。不用品回収業者へ依頼する際も同様です。

▼業者によっては、解体時に無料で引き取りや買い取りができる項目を記載している場合もあります。

チェックポイント⑩:消費税表記と見積書の有効期限を確認

数十万単位の差が出る消費税の扱いや、廃材処分の価格変動に対応するための有効期限。意外と見落としがちな、契約の前提となるこれら基本情報の確認方法を整理します。

見積書の税込表示と有効期限
  • 税別の明記: 合計金額が「税込」か「税抜」か。各小計の扱いも確認。
  • 有効期限: 通常は1ヶ月〜3ヶ月程度。期限が設定されているか。

リスク

解体工事は金額が大きいため、「税込・税抜」の違いで数十万円の差が生じます。また、廃棄物処分費などの変動が激しいため、有効期限が切れた場合は再見積もりの手間が発生する可能性があります。

理事 中野達也

支払総額を必ず確認し、検討に時間がかかる場合は有効期限に注意してください。期限が切れそうな場合は、事前に業者へ再見積もりの必要性を確認しておきましょう。

注意点:もし有効期限が切れてしまったら?

理事 中野達也

期限が切れたからといって、すぐに工事ができなくなるわけではありません。しかし、以下の対応が必要になります。

  • 再見積もりの依頼:当初と同額でいけるのか、処分費などの高騰分を上乗せする必要があるのかを業者に確認します。
  • 状況の再確認:建物や周囲の環境に変化がないか、改めて現地を見てもらう方がトラブルを防げます。

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解体工事の見積書の失敗事例

「安ければ安いほどいい」と考えてしまいがちな解体費用ですが、見積書の内容を詳しく確認せずに契約してしまうと、後から取り返しのつかないトラブルに発展する場合があります。

ここでは『あんしん解体業者認定協会』で実際にあった失敗談をご紹介します。

失敗事例1:安すぎる「一式見積もり」の罠。後から追加請求の嵐に……

Aさんは、3社から相見積もりを取り、最も安かったX社(120万円)に依頼しました。他の会社は150万円前後でしたが、X社の見積書は「解体工事一式 120万円」とだけ書かれた非常にシンプルなものでした。

【結果】
工事が始まると、業者から次々と追加費用を請求されることに。

  • 「地中からコンクリートガラが出たので+30万円」
  • 「庭木の撤去は別料金なので+10万円」
    さらに、養生(隣家への保護)が不十分だったため、隣人の車を汚してしまい、謝罪や洗車代の支払いにも追われました。最終的な支払額は180万円を超え、当初の予定より大幅に高くついてしまいました。

失敗事例2:地中埋設物の取り決めが曖昧で、売却利益が減少

実家の解体をして更地で売却する予定だったBさんは、業者Y社と契約しました。しかし、地中から何が出てきた場合のルールについて、見積書にはとくに記載がなく、少し気になってはいたものの、Bさんは「業者に任せておけば大丈夫だろう」と確認をせずに契約をしてしまいました。

【結果】
基礎の解体中に、土の中から「古い浄化槽」と「大量の瓦礫(ガレキ)」が発見されました。業者から「これらを撤去しないと土地は売れませんよ」と言われ、「聞いてない」と思いながらも断ることもできず、結局50万円の追加費用を支払うことに。
予算を大幅にオーバーし、楽しみにしていた土地の売却利益が減ってしまいました。

【中野理事に聞いた】見積書を確認する際に陥りやすい失敗

普段触れる機会の少ない解体工事の見積書。実際工事を依頼する方々は、見積書をもらった時どんな失敗に陥りやすいのでしょうか。ここでも、この記事の監修者で解体工事の専門家である中野理事の見解をうかがいました。

「一式」表示を信じて追加請求

「木造家屋解体工事一式 250万円」のような見積書を見て、「全部込みでこの値段なら分かりやすい」と感じてしまうのは危険です。

この「一式」という言葉は、後々のトラブルの温床になりかねません。何が含まれていて、何が含まれていないのかが不明瞭だからです。
例えば、解体時に地中からコンクリートガラが出てきた場合、「それは『一式』には含まれていません」と、高額な追加費用を請求されるなどのケースがあります。

理事 中野達也

「一式」表記を避け、必ず「何にいくらかかるか」の内訳明細を要求しましょう。また、極端に安い見積もりは必要な工程(安全対策など)を省略しているリスクがあることを認識しておく必要があります。

総額の安さだけで業者を選んでしまう

複数の業者から見積もりを取った際、一番安い金額を提示した業者に魅力を感じるのは自然なことです。
ただ、解体工事において「安すぎる」見積もりには裏があると考えるべきです。

考えられるリスクは主に3つあります。

  • 必要な費用(アスベスト調査費用や適切な廃棄物処理費用など)が計上されておらず、後から追加請求される。
  • 解体中に必要な措置(近隣への粉塵・防音対策や安全対策など)を省略している。
  • 不法投棄など法令を遵守せずに費用を浮かせている。

解体で出た廃棄物は、廃棄物処理法に則って適正に処分しなければなりません。この処分費用を削るために、山中などに不法投棄する悪質な業者が残念ながら存在します。

出典:廃棄物の処理及び清掃に関する法律

(事業者の責務)
第三条 事業者は、その事業活動に伴つて生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない。
2 事業者は、その事業活動に伴つて生じた廃棄物の再生利用等を行うことによりその減量に努めるとともに、物の製造、加工、販売等に際して、その製品、容器等が廃棄物となつた場合における処理の困難性についてあらかじめ自ら評価し、適正な処理が困難にならないような製品、容器等の開発を行うこと、その製品、容器等に係る廃棄物の適正な処理の方法についての情報を提供すること等により、その製品、容器等が廃棄物となつた場合においてその適正な処理が困難になることのないようにしなければならない。
3 事業者は、前二項に定めるもののほか、廃棄物の減量その他その適正な処理の確保等に関し国及び地方公共団体の施策に協力しなければならない。

引用:廃棄物の処理及び清掃に関する法律|e-Gov 法令検索
理事 中野達也

依頼した業者が不法投棄をした場合「排出事業者責任」は解体業者(元請け)にあるため依頼主が罰せられる可能性は低いです。しかし、業者への依頼を都道府県知事などが不適正な委託とみなした場合、依頼主に対しても「ゴミを片付けなさい(または費用を出しなさい)」という措置命令を出す可能性があります。

出典:行政処分(報告徴収、立入調査、改善命令、措置命令等)及び罰則

廃棄物処理法第19条の5では、産業廃棄物の処理基準に適合しない産業廃棄物の処分(不法投棄等)が行われた場合、都道府県知事等は、生活環境の保全上支障が生じ、又は生ずるおそれがあると認めるときは、次の者に対して期限を定め、その支障の除去等の措置を講ずるよう命ずることができると定めています。

  1. その処分(不法投棄等)を行った者
  2. 不適正な委託により当該処分が行われたとき、その委託をした者
  3. 当該処分の行程で産業廃棄物管理票に関する義務に違反した者
  4. 当該処分に関与した者(規定に違反する行為をすることを要求し、依頼し、若しくは唆し、又はこれらの者が不適正処分等をすることを助けた者)
引用:行政処分(報告徴収、立入調査、改善命令、措置命令等)及び罰則|群馬県
理事 中野達也

総額の安さだけに目を奪われず、その金額が適正な工事をするためのものか、しっかり見極める必要があります。解体後に廃棄物の適正処理の証明である「マニフェスト伝票」の写しをもらえるか、見積もりの時点で確認しておきましょう。

わからない専門用語などを質問せずに契約をしてしまう

見積書には「仮設養生費」「発生材運搬処分費」など、普段聞き慣れない言葉が並びます。
中には「こんな初歩的なことを聞いたら迷惑になるかも……」と質問をためらってしまう方がいます。

しかし、わからないことをそのままにして契約を進めることこそ、トラブルの元です。過去には、依頼主は「聞いていない」業者は「説明した」と主張し「言った言わないの水掛け論」になってしまった例もあります。

疑問点を率直に質問し、丁寧に答えてくれるかどうかは、その業者が信頼できるかを見極める絶好の機会です。むしろ、質問を歓迎し、あなたが納得するまで説明してくれる業者こそ、依頼するべき優良な業者でしょう。

理事 中野達也

優良な業者であれば依頼主の皆さんにわかりやすい言葉で説明してくれるはずです。わからない部分はそのままにせず積極的に確認しましょう。また、口頭で説明された約束事などが見積書に記載されていない場合は、追記してもらうと安心です。

【初田理事が解説】解体業者3社の相見積もり(あいみつもり)実例

ここでは業者ごとの見積書項目の違いについて、実際の見積書を使って比較解説していきます。

同じ建物の解体工事でも、業者によって見積項目や金額には大きな差が出ることがあります。実際に相見積もりした3つの見積書を使って、今までに数々の解体業者選定をサポートしてきた初田理事に解説をしてもらいましょう。

理事 初田秀一

以下は、築50年木造2階建ての空き家の解体工事で、実際に相見積もりをした3社の見積書です。

A社の見積書【総額168万8,060円】

A社の見積書①
A社の見積書②
A社の見積書③
スクロールできます
費用項目数量単位単価(円)金額(円)
①仮設工事
足場シート組払い250m2400100,000
②解体工事
木造2階107m26,000642,000
③発生材運搬費
廃材類9,700kg329,100
廃プラ類(廃プラスチック)5m33,00015,000
ガレキ類22m32,50055,000
コンガラ類(コンクリートガラ)10m33,50035,000
④発生材処分費
廃材類9,700kg15145,500
廃プラ類(廃プラスチック)5m312,00060,000
ガレキ類22m314,000308,000
コンガラ類(コンクリートガラ)10m35,00050,000
⑤重機回送費
重機回送費(中型・小型)130,00030,000
⑥付帯工事
玄関120,00020,000
125,00025,000
⑦諸経費120,00020,000
理事 初田秀一

廃棄物の運搬処理費用が種類ごとに細分化されており、各項目の金額が非常に分かりやすくなっています。一方で、その他の項目は簡潔にまとめられているため、詳細を確認することで他社と比較しやすくなるでしょう。とくに注意すべきは「アスベスト調査費」の記載がない点です。諸経費に含まれている可能性もあるため、念のため諸経費の内訳を確認しておくことをオススメします。

B社の見積書【総額190万円】

B社の見積書
スクロールできます
費用項目数量単位単価(円)金額(円)
解体工事事務130,000
アスベスト調査・検体分析1検体80,00080,000
解体工事事務・近隣挨拶及び工事ビラ等事務諸経費150,00050,000
解体工事1,597,273
解体費32.7424,000785,760
2F手解体費14.1110,000141,100
処分費32.7414,000458,360
養生足場組バラシ32.746,000196,440
隣家カーポート・砂利養生130,00030,000
屋根型鉄門扉撤去130,00030,000
境界土間カッター入れ120,00020,000
土間・入口共用階段撤去150,00050,000
理事 初田秀一

作業内容に対する費用がわかりやすく記載されていると思います。注意点は、処分費がすべてまとまっているのでざっくりで計算している可能性があります。業者によって資格や経験の差、利用する処分場の違いなどで廃棄物の運搬処理費に差が出ることは珍しくありませんが、運搬費と処分費それぞれの詳細項目を確認しておくと安心です。

C社の見積書【総額209万円】

C社の見積書①
C社の見積書②
スクロールできます
費用項目数量単位単価(円)金額(円)
仮設工事
丸太足場養生架け払い(防音シート張り)240m2600144,000
散水用水道工事115,000
解体工事
木造上屋分別解体手間108.6m26,900749,340
基礎土間撤去手間63m21,10069,300
上記解体材処分費108.6m28,000868,800
土間撤去処分(カッター切)130,000
鋼製門構え撤去1箇所6,000
その他
諸経費(近隣挨拶、事前調査報告、申請)125,000
理事 初田秀一

廃材の処分費が3社の中で1番高く、詳細項目がないため費用を大まかに見積もっている可能性があります。総額が一番高いのも、この金額差が影響しているように思います。依頼を検討する場合は単価など金額の根拠を提示してもらいましょう。

3社の比較

比較した3社の費用項目と各費用を一覧にまとめました。

3社とも「仮説養生費」、「本体工事費」、「付帯工事費」、「廃棄物運搬・処分費」、「諸経費」すべての内訳項目が揃っていますが、それぞれの詳細項目には違いがあります。

スクロールできます
費用項目 A社 B社 C社
1. 仮設養生費13万円
足場シート組払い
重機回送費
22万6,440円
養生足場組バラシ
隣家カーポート・砂利養生
15万9,000円
丸太足場養生架け払い(防音シート張り)
散水用水道工事
2. 本体工事費64万2,000円
木造2階
92万6,860円
解体費
2F手解体費
81万8,640円
木造上屋分別解体手間
基礎土間撤去手間
3. 付帯工事費4万5,000円
玄関
10万円
屋根型鉄門扉撤去
境界土間カッター入れ
土間・入口共用階段撤去
3万6,000円
土間撤去処分(カッター切)
鋼製門構え撤去
4. 廃棄物運搬処理費69万7,600円
運搬費(廃材類、廃プラ類、ガレキ類、コンガラ類)134,100円
処理費(廃材類、廃プラ類、ガレキ類、コンガラ類)563,500円
45万8,360円
処分費
86万8,800円
上記解体材処分費
5. 諸経費2万円
諸経費一式
13万円
アスベスト調査・検体分析
解体工事事務・近隣挨拶及び工事ビラ等事務諸経費
2万5,000円
諸経費(近隣挨拶、事前調査報告、申請)
値引き(端数などの企業努力による値引き)ー114,387円ー7,440円
消費税(10%)15万3,460円17万2,727円19万円
合計金額(税込)168万8,060円190万円209万円

費用面を見てみると、大きな費用差が出ているのは「本体工事費」と「廃棄物運搬処理費」です。1番高い業者と1番安い業者で、本体工事費は約28万円、廃棄物運搬処理費では41万円もの差があります。

本体工事費」に差が出る主な要因の一つとして、業者によって得意分野が異なる点が挙げられます。例えば、木造解体に特化した業者や、小型重機を保有し住宅密集地での効率的な作業を得意とする業者、あるいは大型重機の所有により大規模ビル解体に強みを持つ業者など、その特色はさまざまです。

理事 初田秀一

建物の構造や立地条件に最適な業者を選ぶことで、費用を抑えられる傾向にあります。また、作業員の熟練度や技術力の高さも、コストを左右する重要な要素となります。

廃棄物の運搬処理費用」も、業者によって見積もりに差が出やすい項目の一つです。

理事 初田秀一

廃棄物の種類ごとに単価を明記している業者は、詳細な積算を行う管理能力が高く、結果として費用が抑えられる傾向にあります。逆に、内訳が不明瞭なまま安値を提示する業者は、価格の根拠が曖昧で、後から追加費用が発生するリスクもあるため注意が必要です。

なお、スッキリ解体には「家の解体費用」について徹底解説した記事もございます。よろしければあわせてご覧ください。

理想的な見積書

  • 工事項目が詳細:「仮設足場養生」「木造建物本体取壊し」「基礎コンクリート取壊し」など、作業工程ごとに費用が分かれている。
  • 数量と単価が明確:それぞれの作業の規模(m2、m3など)と単価が明記されており、金額の根拠が透明。
  • 諸経費も内訳を記載:何にいくらかかるのかがわかり、納得感がある。
  • リスクへの言及:追加費用が発生しうるケースについてあらかじめ但し書きで触れられており、リスクを隠さず伝えようとする誠実な姿勢が表れている。
理事 初田秀一

すべての業者が完璧な見積書を出すわけではありませんが、この理想形を目指して、業者に質問や要望を伝えていくことが大切です。

理事 初田秀一

そのほか「追加費用が発生した際の対応について十分な説明があるか」「現地調査での担当者の人柄は信頼できるか」また「連絡へのレスポンスは迅速か」といった点も考慮して、依頼する業者を慎重に検討しましょう。

優良業者の選び方については以下の記事で詳しく解説しています。よろしければあわせてご覧ください。

損をしない!見積もり依頼までの3ステップ

Step1:情報収集

見積もりを依頼する前に、まずは依頼主側で要望を整理しておくことが重要です。準備が不十分なまま業者に連絡してしまうと、業者のペースで話が進み、本来伝えるべき事項を伝え漏らしてしまうリスクがあります。

最低限、以下の情報は事前に手元にまとめておきましょう。

  1. 建物の情報
    登記簿謄本や建築図面など、建物の構造(木造、鉄骨など)や正確な面積がわかる書類を用意します。これらが手元にない場合は、法務局で取得できます。
  2. 敷地の状況
    隣家との距離や、前面道路の幅員(道の広さ)を確認しておきましょう。道が狭い場合は大型の重機が入れず、費用が割高になることもあるため、事前の把握が不可欠です。
  3. 残置物の有無
    家の中に残っている家具や家電の種類・量を確認します。自身で処分できるものは済ませておき、業者へ撤去を依頼する場合はその旨を明確に伝えましょう。
  4. 希望の工事範囲
    どこまでを解体・撤去するか、家族や関係者と話し合って詳細に決めておきます。建物本体だけでなく、ブロック塀や庭石、樹木の撤去が必要かどうかも整理しておきましょう。

Step2:現地調査で確認すべき5つの質問

基本的に解体工事の見積もりでは、業者が直接現場を確認する「現地調査」が必要です。遠方で立ち会いが難しい場合を除き、依頼主も同席するのが一般的なため、業者を見極めるチャンスです。「ただ見ているだけ」ではもったいないので、疑問があれば積極的に質問してみましょう。

現地調査の際に聞いておきたい「5つの質問」をご紹介します。

  • 「追加費用が発生する可能性があるとしたら、どんなケースですか?」
    (リスクを隠さず話してくれるか、誠実さをチェック)
  • 「地中埋設物が出てきた場合、過去の事例ではいくらくらいかかりましたか?」
    (「不明」で終わらせず、費用の目安を引き出す)
  • 「アスベスト調査は、自社と委託のどちらで実施しますか?」
    (法的な知識と、調査体制の透明性を確認)
  • 「廃棄物はどの処分場に持ち込みますか?」
    (不法投棄を防ぐため、適正処理の意識を確認)
  • 「近隣への挨拶は、いつ、どのように行いますか?」
    (近隣トラブルを防ぐための配慮があるかを確認)

これらの質問にハッキリと答えてくれる業者なら、安心して任せられる可能性が高いでしょう。

運営者 稲垣

近隣住民との関係性や周辺道路の注意点など、あらかじめ気になる情報を伝えておくことも、トラブルを未然に防ぐ大切なポイントです。

Step3:複数社の見積書から選ぶ

1社だけの見積もりでは、提示された金額や内容が適正であるかを判断する基準が得られません。リスクを回避するための基本として、必ず複数の業者を比較検討しましょう。

相見積もり(あいみつもり)の原則

  • 3社程度の比較を推奨:
    最低でも2社、できれば3社以上から見積もりを取ることをオススメします。複数社の見積書を比較することで、解体費用の「相場観」がわかりやすくなるためです。また、レスポンスの速さや説明の丁寧さといった業者ごとの対応の質も比較できます。
  • 直接対話で信頼性を確認:
    見積もり比較サイトなどを利用する場合でも、最終的には業者と直接話をすることが重要です。細かな要望への理解度や、誠実さを確認しましょう。
運営者 稲垣

複数の業者へ見積もりを依頼する際は、必ずすべての業者に対して「同一の条件」を提示しましょう。例えば、A社には「塀の撤去を含める」、B社には「含めない」といった条件のズレが生じると、提示された金額を正しく比較検討できなくなります。正確な「相場」を知るためにも、依頼内容は統一することが鉄則です。

3社程度の見積書が手元に揃ったら、いよいよ比較検討です。

比較すべきは「総額」ではなく、「工事範囲」や「金額の明瞭さ」、「リスクへの備え」です。

  • 工事範囲の確認: A社には含まれている「ブロック塀撤去費」が、B社には含まれていない、といった項目漏れがないかチェックします。
  • 詳細な内訳: 「廃棄物処分費 一式 〇〇円」とまとめられている見積書より「コンクリートガラ処分費 〇〇m3 〇〇円」と記載された見積書の方が金額の根拠が明確です。
  • 追加費用の条件: 「地中埋設物」「アスベスト」など、追加費用が発生する場合の条件が明記されているかを確認しましょう。
運営者 稲垣

見積書の書式は業者によって大きく異なるため、比較がしづらいという問題があります。オススメなのはExcelなどを用いて各社の項目をまとめ、横並びで比較できる一覧表を作成する方法です。工事範囲、単価、数量を一つずつ照らし合わせられるため、ない項目や不明な項目に気づきやすくなります。

見積もり比較表の例

スクロールできます
比較項目A社B社C社備考・チェックポイント
【費用項目】
1. 仮設養生費00万円00万円00万円防音シート、足場、散水などの費用
2. 本体工事費000万円000万円000万円建物の構造体(屋根・壁・基礎)の解体
3. 付帯工事費00万円00万円00万円塀、門扉、物置、庭石、樹木などの撤去
4. 廃棄物運搬処理費00万円00万円00万円廃材の運搬と処分。一式表示は内訳を確認
5. 諸経費0万円0万円0万円近隣挨拶、道路使用許可、損害保険料など
合計金額(税込)000万円000万円000万円総額だけでなく、内訳の漏れがないか確認
【信頼性・条件チェック✔】
工事範囲の明確さ撤去する範囲が図面等で示されているか
追加費用の条件説明地中埋設物が出た際の単価説明があったか
アスベスト調査対応法律に基づく事前調査が含まれているか
許可証・登録の有無解体業・産廃収集運搬の許可があるか
担当者の対応・印象返信の早さ、説明の分かりやすさ

【FAQ】解体工事の見積書に関するよくある質問

見積書の有効期限はどのくらいですか?

一般的に、見積書の有効期限は発行から1ヶ月〜3ヶ月程度に設定されていることが多いです。

廃材の処理価格は処分場の空き状況や法規制で頻繁に変わるため長期間の価格維持が困難です。また、重機を動かす燃料費や人件費は不安定で、短期間でコストが大きく変化する可能性があります。

これらの理由から、誠実な業者ほどリスクを考慮して適切な有効期限を設定しています。
有効期限が記載されていない場合は、いつまでその金額が有効なのかを業者に確認しておくことをオススメします。

見積もりは無料ですか?有料の場合もあるのでしょうか?

ほとんどの解体業者で見積もり(現地調査を含む)は無料です。

ただし、業者によっては遠方の場合に出張費を請求したり、特殊な調査(図面がない場合の詳細な測量など)に費用がかかったりするケースも稀にあります。
トラブルを避けるため、見積もりを依頼する段階で「現地調査や見積書の作成は無料ですか?」と一言確認しておくと安心です。

見積もり依頼後、断る時に失礼にならない方法はありますか?

電話かメールで、「今回は他社様にお願いすることになりました。ご丁寧に対応いただきありがとうございました」と、感謝の言葉を添えて簡潔に伝えれば十分です。

前提として、相見積もり後にお断りする業者が出てくるのは当然なので、断りの連絡をためらう必要はありません。理由を詳しく説明する必要もありません。誠実に対応してくれた業者への敬意を忘れずに、はっきりと意思を伝えましょう。

まとめ:見積書は単なる価格表ではありません

今回は、解体工事の見積書で後悔しないための知識として、

  • 解体工事の見積書を構成する「5つの基本項目」に含まれる具体的な作業内容
  • 依頼主が確認すべき「見積書10のチェックポイント」
  • 実際の失敗事例を交えた対策
  • 「現地調査での質問事項」や「相見積もりの比較方法」

について、専門家監修のもと解説してきました。最後に見積書10のチェックポイントをおさらいしましょう。

  1. 延床面積・施工面積は実態と一致しているか
  2. 「一式」という不透明な表記が多くないか
  3. 仮設工事費(養生・足場)の金額が安すぎないか
  4. 付帯工事の対象について詳細の記載があるか
  5. 廃棄物の運搬処理費が種類ごとに分けられているか
  6. 諸経費の各項目が明記されているか
  7. アスベスト調査費の記載があるか
  8. 地中埋設物(地中障害物)に関する取り決めがされているか
  9. 残置物の撤去範囲と費用は適切か
  10. 消費税表記と見積書の有効期限を確認

見積書は単なる価格表ではなく、どんな業者かを確認するための「名刺」です。誠実な業者であれば、依頼主に対して費用や施工内容をわかりやすく提示する努力がうかがえるはずです。

ご紹介したチェックポイントを元に、安心して解体工事を任せられる業者を見つけられることを心から願っています。

解体工事をお考えの方は…
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この記事を書いた人

「”わからない”という不安を、”わかった!”の安心に変えるお手伝いをします。」

はじめて解体工事に直面する方の不安な気持ちに、誰よりも共感することを大切にするライター。数多くの業者インタビューや専門勉強会を通じて、プロの専門用語を一般の方にもわかりやすく伝える。読者と同じ目線に立ち、一緒に不安を解決していくパートナーのような記事作りを信条としている。

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