この記事の案内人・編集長
稲垣 瑞稀
内装解体にかかる費用ってどれくらい?業者はどうやって選べばいいの?はじめてだし、不安だらけだよ……
なやみんと同じ悩みを抱える皆さんへ向けて、この記事では内装解体で具体的にかかる費用や、業者を選ぶときに注意すべき点を専門家の視点で詳しく解説します。よかったら内装解体のガイドとして参考にしてみてください。
この記事を読めば、内装解体の費用相場と解体業者の選び方がわかり、内装解体について具体的な計画を立てられます。
- 坪数・建物別の内装解体費用がわかる。マンションは坪単価約4.4万円が目安。
- スケルトン解体と原状回復工事の費用差がわかる。坪単価約4万円と約1.5万円~3万円。
- アスベスト調査(2万円~)など、予期せぬ追加費用で損しないコツ。
- 分離発注で30万円削減も!什器買取や補助金で費用を抑える方法。
- 悪徳業者に騙されない選び方。「建設業許可」と現地調査は必須項目。
一般社団法人あんしん解体業者認定協会 理事・解体アドバイザー
初田 秀一(はつだ しゅういち)
解体アドバイザー歴15年、相談実績は11万件以上。お客様の不安を笑顔に変える現場のプロフェッショナル。「どんな些細なことでも構いません」をモットーに、一期一会の精神でお客様一人ひとりと向き合い、契約から工事完了まで心から安心できる業者選定をサポート。この記事では現場のリアルな視点から解説を担当。
「スッキリ解体」編集長
稲垣 瑞稀(いながき みずき)
解体業界専門のWebメディアでWebディレクターとして6年以上、企画・執筆・編集から500社以上の解体業者取材まで、メディア運営のあらゆる工程を経験。正しい情報が届かず困っている方を助けたいという想いから、一個人の責任と情熱で「スッキリ解体」を立ち上げ、全記事の編集に責任を持つ。
「スッキリ解体」専属ライター
丸山 夏実(まるやま なつみ)
「”わからない”という不安を、”わかった!”の安心に変えるお手伝いをします。」
はじめて解体工事に直面する方の不安な気持ちに、誰よりも共感することを大切にするライター。数多くの業者インタビューや専門勉強会を通じて、プロの専門用語を一般の方にもわかりやすく伝える。読者と同じ目線に立ち、一緒に不安を解決していくパートナーのような記事作りを信条としている。
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内装解体は建物内側の解体工事:内装解体の種類を解説!
内装解体とは、建物の内部に設置された床やドア、階段、水道、空調などの設備を解体・撤去する専門的な工事の総称です。
建物全体を解体し、更地にする「建物解体」とは明確に区別されます。
※画像クリックで拡大できます。
内装解体工事の特徴は、建物の骨組みである構造体(柱、梁など)や、壁や天井の下地材などは解体せず残す点にあります 。
内装解体の対象となるのは、壁や天井の仕上げ材、床材、間仕切り壁、家具といった内装材に加え、後付けされた設備機器です。これには、照明器具、エアコン、事務所におけるLAN配線、飲食店における厨房機器などが含まれます 。
内装解体は、その規模や範囲が多岐にわたります。たとえば、自宅の水回りだけをリフォームするような小規模なものから、オフィスビル全体を大規模に改装するケースまでさまざまです。
具体的には、以下のような目的で内装解体が選ばれます。
内装解体の主な目的
- リノベーション・リフォーム
間取りの変更や設備の刷新など、既存の空間を大きく作り変える際に必要となります。 - 用途変更
以前は店舗だった場所をオフィスにしたり、住居の一部を賃貸スペースにするなど、建物の用途そのものを変える場合に行われます。 - 原状回復
賃貸物件の退去時に、借りた時の状態に戻すために行われます。 - 老朽化対策・機能向上
古くなった内装を一新し、建物の機能性やデザイン性を向上させる目的で行われます。
このように、内装解体は単に壊すだけでなく、新しい空間を創造するための準備として非常に重要な役割を担っています。
内装解体工事は、その範囲と目的に応じていくつかの種類に分類され、それぞれ異なる特徴を持ちます。とくに混同されやすいのが「スケルトン解体」と「原状回復工事」です。
それでは、「スケルトン解体」と「原状回復工事」2つの違いを解説します。
スケルトン解体:内装をゼロから作り変えるための工事
建物の骨組みである構造体以外の内装をすべて取り除く解体工事です。
床や壁、天井の下地材、設備配管、電気配線なども徹底的に撤去し、コンクリート打ちっぱなしなどの構造体のみが残った状態にします 。
主に建物の用途変更や大規模なリノベーションの際に採用されます 。
スケルトン解体の主な作業
- 内装の撤去
天井、床材、壁材、パーティション、電気配線、排気設備、配管設備など、すべての内装を撤去します。 - 構造体の保持
構造部分(柱、梁、壁など)はそのまま残され、これにより建物の基本的な骨組みが保たれます。鉄筋コンクリート造の場合、解体後はコンクリートの打ちっぱなし状態になります。 - 産業廃棄物等の処理
解体作業や撤去作業で発生した廃棄物を適切に処理します。
スケルトン解体を行うことで次の利用者は自由に間取りや設備の変更が可能になります。また、普段は見えない基礎部分を確認できるため、必要に応じて補強工事を行えます。
スケルトン解体の特徴
- 柔軟な改装
スケルトン解体により内装を完全に新しくでき、店舗やオフィスの目的に応じた設計が可能になります。 - コストの削減
更地にする建物解体に比べて、基礎を残すスケルトン解体は費用を抑えられる場合が多いです。新たに基礎工事を行う必要がないため、解体後の建設にかかる費用も削減できます。 - 現状把握
解体作業を通じて建物の老朽化や補修が必要な部分を確認できるため、次の利用に向けた計画が立てやすくなります。
スケルトン解体は、とくに商業施設やオフィスビルの改装において非常に有効な手法ですが、周囲の安全を考え計画的に進めることが重要です。また、費用は高額に、工期は長くなる傾向があるため、工事予定の詳しい事前検討が求められます。
原状回復工事:借りたときの状態に戻すための工事
賃貸物件の借主が退去する際に、物件を賃貸契約時の状態に戻す工事を指します 。
スケルトンの状態で借りていた場合はスケルトン工事が原状回復に該当する場合もあります。
一般的には借主が設置した設備を撤去し、借りた時点の状態に戻す部分的な解体が中心となります 。
原状回復工事の主な作業
- 壁紙や床の張り替え
日常使用による汚れや傷を修復します。 - 設備や備品の撤去
入居時に設置した什器や設備を撤去し、元の状態に戻します。 - 清掃や消毒
物件全体を清掃し、次の入居者が快適に使用できるようにします。 - 産業廃棄物等の処理
解体作業や撤去作業で発生した廃棄物を適切に処理します。
原状回復工事の特徴
- コストの抑制
原状回復工事は必要最低限の修繕を行うため、比較的低コストで実施できます。大規模な改修を必要としないため、予算を抑えつつ物件を元の状態に戻せます。 - 工期の短縮
大規模な工事を伴わないため工期が短く、通常は数日から数週間で完了します。これにより、次の入居者を早く迎え入れられ、空室期間の短縮につながります。 - 物件の資産価値の維持
原状回復工事を適切に行うことで、物件の資産価値を保てます。清潔で整った状態の物件は、次の入居者にとって魅力的であり、賃料の維持や市場価値の向上につながります。 - トラブルの回避
原状回復工事を契約書に基づいて適切に行うことで、借主と貸主の間でのトラブルを防げます。どの範囲まで修復が必要か、費用負担がどちらにあるのかが明確になるため、後々の問題を避けられます。
原状回復工事は賃貸物件の管理において非常に重要な作業です。適切に行うことで物件の価値を維持し、次の入居者をスムーズに迎え入れるための工事です。
スケルトン解体と原状回復工事の大きな違い
スケルトン解体は、建物の構造体である柱や梁、壁の構造部分のみを残し、それ以外の内装や設備をすべて撤去して、空間を完全に何もない「骨組みだけの状態」に戻す工事です。一方、原状回復工事は賃貸契約に基づき、入居時の状態に戻すことを指します。つまり、借りた時点の内装や設備を残しつつ、入居後に手を加えた部分(間仕切りや増設した設備など)を撤去・修繕して、元の状態に戻す工事です。
スケルトン解体と原状回復工事の費用や工期に差が出る要因は、「床や壁(下地材を含めて)を残すか、すべて撤去するか」という解体範囲にあります 。この範囲の違いが費用と工期に直接的な影響を与えます。
スケルトン解体は原状回復工事よりも工期が長くなります 。たとえば、30坪程度の物件の場合、原状回復工事は数日~1週間が目安であるのに対し、スケルトン解体は2週間から1か月が目安となります 。これは、スケルトン解体の解体作業の範囲が広いことに加え、構造体(骨組み)の状態確認や補修なども必要になるためです 。同様の理由で、費用もスケルトン解体の方が高くなる傾向にあります。
▼スケルトン解体と原状回復工事比較表 | ||||
---|---|---|---|---|
解体方法 | 解体範囲 | 目的 | 費用相場 | 工期 |
スケルトン解体 | 構造体(骨組み)以外の内装をすべて撤去。下地材、設備配管、電気配線も含む。 | 建物の用途変更、大規模リノベーション、大規模設備改修 | 4万円前後/坪 | 2週間~1か月 |
原状回復工事 | 賃貸契約時の状態に戻す工事。借主が設置した造作や設備を撤去する。 | 賃貸物件の退去、テナント店舗の返却 | 1万5千円~3万円/坪 | 5日~3週間 |
※坪単価は『中野達也のスッキリ解体』(運営:『あんしん解体業者認定協会』)の解体工事データから独自に集計したものです。実際の価格帯とは異なる場合があります。
※上記はあくまでも目安です。解体する物件や造作の量によって費用や工期は異なります。
「スケルトン解体」と「原状回復工事」この2つの違いがわかってれば、自分にピッタリな業者探しもうまくいくはず!
【坪数・地域・建物別】内装解体費用の相場が一目でわかる!
解体工事における「坪単価」とは、解体する建物の「1坪(畳約2枚分の広さ)あたり」の価格のことで、相場感をつかんだり、費用を比較する上での目安になります。ただ、あくまでも目安のため、条件によっては大きく外れる可能性もあることを覚えておきましょう。
坪数別費用相場
▼坪数別の内装解体費用相場(1坪あたりの金額) | |
坪数 | 平均坪単価(1坪=約3.3m2) |
---|---|
~10坪 | 5万4,592円 |
11~20坪 | 4万3,963円 |
21~30坪 | 4万984円 |
31~40坪 | 3万3,935円 |
41~50坪 | 4万2,886円 |
51~100坪 | 4万1,465円 |
101坪~ | 4万4,197円 |
※上記の坪単価データは、監修の「あんしん解体業者認定協会」が保有する2023年~2024年の全国約1,200社の見積もりデータを基に算出した独自のものです。
※坪単価は2025年9月時点のデータです。実際の価格帯とは異なる場合があります。
地域別費用相場
▼地域別の内装解体費用相場(1坪あたりの金額) | |
地域 | 平均坪単価(1坪=約3.3m2) |
---|---|
北海道 | 3万9,124円 |
東北 | ー |
関東 | 4万3,941円 |
中部 | 3万7,023円 |
近畿 | 4万2,102円 |
中国 | 3万5,980円 |
四国 | 3万1,090円 |
九州沖縄 | 3万4,711円 |
※「ー」は、情報が少なく相場を算出できなかった地域・坪数を示しています。データが集まり次第、随時更新します。
※上記の坪単価データは、監修の「あんしん解体業者認定協会」が保有する2023年~2024年の全国約1,200社の見積もりデータを基に算出した独自のものです。
※坪単価は2025年9月時点のデータです。実際の価格帯とは異なる場合があります。
建物種別費用相場
▼建物種別の内装解体費用相場(1坪あたりの金額) | |
建物種別 | 平均坪単価(1坪=約3.3m2) |
---|---|
住宅 | 3万8,756円 |
アパート | 2万7円 |
マンション | 4万4,243円 |
小屋 | 2万2,000円 |
倉庫 | 2万6,589円 |
店舗 | 4万3,996円 |
事務所 | 5万326円 |
工場 | 3万3,176円 |
病院 | 2万4,112円 |
ビル | 3万5,954円 |
※上記の坪単価データは、監修の「あんしん解体業者認定協会」が保有する2023年~2024年の全国約1,200社の見積もりデータを基に算出した独自のものです。
※坪単価は2025年9月時点のデータです。実際の価格帯とは異なる場合があります。
解体する建物によって、坪単価の相場が3万円も違うんだね!
内装解体費用変動のカラクリを専門家が解説!
ここまで内装解体の坪単価について見てきましたが、実は内装解体は、他の解体工事に比べ「物件ごとに坪単価の差が出やすい」という特徴があります。使用されていた用途で費用が大きく変動する内装解体費用の真相を、『あんしん解体業者認定協会』で解体アドバイザーとして15年間、11万件以上もの相談に応じてきた現場のプロ、初田理事に詳しく聞いてみました。
一般社団法人あんしん解体業者認定協会 理事・解体アドバイザー
初田 秀一 (はつだ しゅういち)
解体アドバイザー歴15年、相談実績は11万件以上。お客様の不安を笑顔に変える現場のプロフェッショナル。「どんな些細なことでも構いません」をモットーに、一期一会の精神でお客様一人ひとりと向き合い、契約から工事完了まで心から安心できる業者選定をサポート。この記事では現場のリアルな視点から解説を担当。
【初田理事に聞いた】同じ広さの部屋でも、内装解体(スケルトン解体)の費用が高額になるのはどのようなケース?
初田理事によると、内装解体特有の原因で費用が高額になる場合があるそうです。
稲垣:内装解体費用が高額になるのは、具体的にどんな用途で使われていた部屋ですか?
音楽教室や美容室など、特殊な用途で使われていた部屋は費用が高くなりがちですね。
稲垣:なぜ、音楽教室や美容室の解体は費用が高額になるのでしょうか?
音楽教室の場合は、音漏れを防ぐための防音壁といった特別な「造作(建物の骨組みや構造体ではない、後から取り付けられた内装や設備の総称)」があり、その取り外しや処分費用が高額になるケースがあります。また、美容室の場合は水回りの設備が追加されているため、その撤去費用によって高くなる傾向にありますね。
稲垣:通常の住居にはない特別な造作がある場合、その撤去・処分に専門的な作業が必要となるため高額になるということですね。
そうですね。それに、特殊でなくても造作の数が多かったり、複雑に取り付けられている場合も費用は上乗せされます。店舗やオフィスの中に設置された造作は、それぞれの物件によって大きく異なります 。そのため、内装解体においては「この場合はいくら」と一概に費用を提示するのが難しいんです。見積もり依頼をする際は、必ず解体業者に現地調査をしてもらいましょう。
造作によって費用が異なる例
美容室同様、水回りの設備がある飲食店の解体費用は高くなる傾向にあります。また、内装にこだわった居酒屋などは、厨房設備や複雑な水回り設備の撤去に加え、壁やパーテーションなどの造作の撤去費用もかかるため、費用が高額になりやすいと言えます。
上の画像①、②はどちらも飲食店で、ほぼ同じ広さの店舗ですが、備え付けのカウンターテーブルがある分②の店舗の方が解体費用が高額になります。①の店舗の移動できるテーブルや椅子は運び出すだけで撤去ができますが、備え付けのカウンターテーブルは解体作業が必要です。作業費や人件費が発生するため費用が上乗せされます。
内装解体の場合、室内に設置されている設備が多く、その作りが複雑なほど解体費が上乗せされる傾向があります。建物の広さだけで費用を計算する行為は、実際の金額が想像より遥かに高額になってしまう可能性があり危険です。
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【見積書付】内装解体費用の4大内訳と追加費用を解説
内装解体費用の主要な内訳項目
▼実際に使用された内装解体の見積書▼※画像クリックで拡大できます。
①内装解体費
内装設備を解体・撤去するための作業費や人件費です。業者によって含まれる内容は異なりますが、重機を現場に運ぶための重機回送費や、マンションなどの集合住宅の共用部分を保護する養生費などを含む場合があります。
②付帯工事費
内装解体以外の費用の総称です。見積書内の給排水設備工事や残置物処分が該当します。残置物は、解体日当日に量を確認し、追加費用として後から見積もりを出す場合も多いです。
③廃棄物処理費
解体工事で出た廃材を分別し、運搬・処分するための費用です。廃材の種類や量によって金額に差が出ます。見積書内では発生残材処分という表記になっています。
④諸経費
解体工事を行うために必要な申請費や書類作成にかかる費用。また、警備員を配置する場合の人件費や、近隣挨拶で配る粗品代などを含む場合があります。
解体工事の見積書には雛形がありません。業者によって項目の書き方も値段の出し方もさまざまです。同じ部屋の解体をお願いしたとしても、見積書に書いてある内容や金額がまったく異なる場合があります。費用相場を見極めるためにも、複数社に見積もり依頼して比較・検討しましょう。
アスベスト調査と除去費用はどのくらい?見逃せないリスクと対策
大気汚染防止法により、解体工事を行う前にはアスベストの事前調査が定められています。アスベストは建物の梁や柱、天井や壁などの下地材にも使用されている場合があります。建物全体を解体する工事でなく、リフォーム等の内装解体を行う際も事前調査は必要です。
▼建物内部にアスベストが使用されている例▼
アスベスト調査費用
『あんしん解体業者認定協会』のデータによると、工事前に行うアスベスト調査の費用は、一般的に2万円から10万円程度です。アスベストの調査方法には、図面調査、目視調査、サンプル採取と分析などの種類があり、費用は調査方法や検体の規模によって変動します。
アスベスト除去費用
アスベスト除去費用の相場は、1m3あたり約3万円とされています 。この費用は、アスベストの飛散性レベル1~3(レベル1がもっとも高リスク)によって大きく変動します。
※アスベスト調査や除去の費用は『中野達也のスッキリ解体』(運営:『あんしん解体業者認定協会』)のデータから独自に集計したものです。実際の価格帯とは異なる場合があります。
画像引用:特定建築材料以外の石綿含有建材(レベル3建材)除去等作業時の石綿飛散防止|環境省
アスベスト調査に必要な資格
- 石綿作業主任者
アスベストの調査や作業、作業完了確認を行う上で必須の資格。有資格者の在籍がない場合、アスベスト調査や除去は外部への委託が必要となる。 - 石綿取扱作業従事者
石綿の危険性や作業手順を学び、安全に作業を行うための知識を習得した者。アスベストを取り扱う作業に従事する者にとって必須の特別教育を受けた証明。 - 建築物石綿含有建材調査者
解体や改修工事前、建築物内にアスベストが使用されているかどうかを調査するため必須の資格。
上記資格者の在籍がない業者は、アスベスト調査や除去は外部への委託が必要となります。外部委託する際の費用は依頼主負担になるため、資格者の在籍する業者を選ぶと費用を抑えられるかもしれません。
▼アスベスト調査や撤去費用、リスクについての詳しい解説はコチラ!▼
残置物撤去やLGS解体で費用は変わる?付帯工事費の詳細
内装解体における付帯工事には、主に残置物の処分や電気や水道、ガスなどライフライン設備の撤去、壁や天井の下地であるLGSの除去などが挙げられます。
残置物撤去費用
解体対象の建物内に残っている家具や家電、その他の不要物を「残置物(ざんちぶつ)」と呼びます。
残置物撤去費用は、多くの業者が採用している1m3あたりの量で計算する方法(例:1m3あたり〇〇円)か、あるいは処分する物が多い場合にトラックの台数で計算する方法(例:4tトラック1台あたり〇〇円)のいずれかで算出されることがほとんどです。
その際、鉄などリサイクル可能なものは買い取ってもらえるケースがあります。見積もりの際にリサイクル可能なものがあるか業者に確認してみると良いでしょう。
残置物の種類や量によって変動しますが、一般的な費用相場は以下の通りです。
- 1m3あたり:約12,000円
- 4tトラック1台あたり:約5万円~10万円
※残置物撤去費用の相場は『中野達也のスッキリ解体』(運営:『あんしん解体業者認定協会』)の解体工事データから独自に集計したものです。実際の価格帯とは異なる場合があります。
撤去した残置物は、最終的に処分場まで運搬・処分する必要があります。この運搬にも費用がかかります。
残置物を処分場まで運搬するには、都道府県知事の許可である「産業廃棄物収集運搬業許可」を持つ業者でなければなりません。この許可を持っている業者を選ぶと、他社に委託するための中間マージンをカットできるため費用を抑えられます。
また、残置物は自力で処分すると「一般廃棄物」、業者に依頼すると「産業廃棄物」に該当する場合が多いです。一般的に産業廃棄物は一般廃棄物に比べて処分費が高いので、自力で処分できる残置物は処分しておくと、費用の削減につながります。
▼残置物についての全知識はコチラ!▼
LGS解体費用
「LGS解体」とは、LGS(Light Gauge Steel、軽量鉄骨)で組まれた壁や天井の下地を解体する作業のことです。LGSは内装工事でよく使われ、石膏ボードなどを貼り付けるための下地として利用されます。解体作業では、まず石膏ボードを剥がし、次にLGSの鉄骨部分を切り取って除去します。
LGSは比較的解体しやすい素材ではありますが、その量や設置状況、またLGSで組まれた壁や天井の内部にどのような設備が通っているかによって、費用は変動します。LGSは、木材と比較すると丈夫なため解体に多少手間がかかります。また、大量に使用されている場合や、複雑な構造になっている場合は作業時間や手間が増えるため、その分費用が上がる傾向にあります。
1坪(約3.3m2)あたり:1.5万円から4万円程度
※坪単価は『中野達也のスッキリ解体』(運営:『あんしん解体業者認定協会』)の解体工事データから独自に集計したものです。実際の価格帯とは異なる場合があります。
LGS解体によって発生する廃棄物は「鉄くず」として分別されます。リサイクルが可能であるため、業者によってはその場で買い取り、見積もり金額から値引きしてくれる場合もあります。そのため、処分費用は比較的安価に抑えられます。
予期せぬ追加費用が発生するケース
物件の構造や状態によって追加費用が発生する場合があります。前項で解説したアスベスト除去や残置物撤去は、追加費用が発生する代表的な例です。
ほかにも追加費用がかかるケースがないか、チェックしておこう!
1.現場環境による追加費用
現場までの道が狭い、住宅が密集している、高層階でエレベーターがないなど、重機や資材の搬入・搬出が困難な場合の追加費用です。手作業が増えたり、小型重機の使用で工期が延びたりして人件費が高くなります。住宅が密集している都市部では、この理由により費用が地方より高くなる可能性が高まります。また、工事車両の駐車スペースが確保できない場合、別途駐車場代や道路使用許可の申請費が発生する場合もあります。
2.隠れた構造物・設備
壁内や床下に隠れた配管や配線が、想定以上に複雑であったり、撤去に手間がかかる場合があります 。とくにキッチンや浴室などの水回りの解体では、配管の移設や撤去に費用がかかる傾向があります 。また、リノベーションなどで構造変更が繰り返された建物では、図面にはない補強材や梁、柱が隠れていることがあり、それらの撤去のための追加工事に対して追加費用が発生する場合があります。
3. 配管・配線の破損や漏水など
解体作業中に既存の配管(給排水管など)や配線(電気、ガスなど)を誤って破損させてしまう、または老朽化により破損が発覚し、修繕が必要となる場合があります。漏水などが発生すると、近隣への影響も考慮しなければならず緊急対応が必要となるため、追加費用が発生します。
工事中に予期せぬことが起きて工期が遅延するのも、延期した人件費や機材レンタル費により追加費用が発生する原因になります。
内装解体工事の実例をご紹介
これからご紹介する3つの事例は、あんしん解体業者認定協会に実際に寄せられた相談事例を基に、個人情報に配慮し再構成したものです。
【事例①】マンション15階の住居/退去のためのフルリフォーム
マンションの1室をリフォームするにあたり、Aさんは水回りを含む全ての内装解体(スケルトン)工事を依頼することにしました。リフォーム会社からもらった解体工事の見積もり額は「200万円」予想以上に高額だったため、少しでも費用を抑えたいと思ったAさんは、解体業者に見積もり依頼をしました。
▼Aさんが解体業者からもらった実際の見積書▼※画像クリックで拡大できます。
リフォーム会社の見積もり金額が200万円だったのに対して、解体業者に依頼した見積もり金額は171万9,949円でした。
結果的にAさんは解体業者に直接発注したおかげで、30万円近く費用を抑えられました。
- リフォーム会社に解体を一緒に依頼せず、別途解体業者を探して依頼した。
- このようにリフォームや新築の際、工事の種類ごとに別々の専門業者に依頼する方法を「分離発注」と言います。
- マンション内の近隣住民への配慮について、工事前に管理会社や解体業者と入念に打ち合わせを行った。
マンション内装解体の注意点
マンションの内装解体では、とくに以下の3つの点に注意が必要です。
- 共用部分の丁寧な養生
高層階での作業では、資材の搬出入にエレベーターを使用します。その際、エレベーター内や廊下、壁などを傷つけないよう、シートなどでしっかりと保護する「養生(ようじょう)」が欠かせません。 - 管理会社との密な連携
工事を円滑に進めるためには、管理会社との事前調整が非常に重要です。作業用の駐車場の使用許可や、工事が可能な時間帯(朝何時から夕方何時までかなど)を必ず確認しましょう。 - 近隣住民への十分な配慮
工事の騒音はトラブルの原因になりやすいため、事前の配慮が大切です。直接ご挨拶に伺ったり、工事の期間や内容を明記したお知らせを各戸のポストに投函したりすることで、理解を得やすくなります。
Aさんが頼んだ解体業者さん、ご近所への気配りとか、ちゃんと前もって説明してくれたんだって。それに、Aさんの「こうしてほしい!」っていう要望もしっかり聞いてくれたみたいだよ!
【事例②】商業ビルのおむすび屋さん/テナント返却のための原状回復工事
ビルの地下1階でテイクアウト専門のおむすび屋さんを営業していたBさんの事例です。Bさんは、3か月後の退去に向けて解体業者に店舗の原状回復工事を依頼しました。
Bさんは解体費用を抑えるため、店舗の商品を顧客に見せるディスプレイの器材である「什器(じゅうき)」は解体前に不用品回収業者に引き取ってもらうなど工夫しました。
什器は、店舗やオフィス内で使う器材を指す広い概念として使われ、具体的には、冷蔵庫・棚・ショーケース・テーブル・アクリルボックスなどが該当します。
▼Bさんが解体業者からもらった実際の見積書▼※画像クリックで拡大できます。
不用品買取で一部の什器(じゅうき)が売れたため、解体業者に全て回収依頼した場合に比べて、結果的に5万円ほど安くなりました。
- 店内の什器を不用品回収業者に回収してもらった。
- 解体業者に引き取りを依頼すると「残置物処分費」として追加費用が発生する恐れがあります。
- おむすびを陳列していたショーケースを専門の買取業者に買い取ってもらった。
テナント返却の際の注意点
- テナント返却は必ず、契約時の状態に戻して返却する必要があります。契約書を確認し、解体範囲を詳細に業者に伝え、余計に解体してしまうなどのトラブルを避けましょう。
- 什器や設備は買い取ってもらえる場合があります。店舗やオフィスで使用していた什器や設備の中に、まだ使えるものや価値のあるものがあれば、専門の買取業者に買い取ってもらうことを検討しましょう。
- 飲食店なら「厨房機器専門の買取業者」、オフィスなら「事務用品を専門に扱う買取業者」などがあります。こうした専門業者に依頼することで、高値で買い取ってもらえる可能性があります。
【事例③】狭小地ビルの自習室/テナント退去のための原状回復工事
川崎市で自習室を営んでいたCさんは、テナント返却に向けて店舗の原状回復工事を依頼しました。解体業者を探すにあたり、天井の穴埋めや壁紙の張り替え等も一緒にお願いできる業者を探しました。
▼Cさんが解体業者からもらった実際の見積書▼※画像クリックで拡大できます。
机やパーテーションなどの設備が多かったにもかかわらず、解体工事と一緒に補修もできる業者を探したことで、天井の穴埋めや壁紙の張り替え費用込みで118万円に抑えられました。
- テナントの原状回復工事の実績が多い業者に依頼したことで、パーテーションなどたくさんの造作があっても費用を最小限に抑えられた。
- 業者の工事実績は業者のホームページなどで確認できます。
- 補修してもらいたい箇所があったため、解体と一緒に行ってくれる業者を探した。
- 解体作業と並行して補修を行ってもらえたため、工期も短く、費用も抑えられた。
テナントビル内装解体の注意点
- 解体業者の中には、解体や撤去だけでなく、損傷部分の補修を行っている業者があります。とくに原状回復などを行う内装解体専門の業者に多いため、補修してもらいたい箇所がある場合は解体と一緒に行ってくれる業者を探しましょう。
- なぜなら、解体工事と補修工事は作業工程が近く、専門業者であれば効率的に一貫して対応できるためです。
- 解体工事現場に工事車両の駐車スペースがない場合は、道路に駐車するための「道路使用許可申請」や「誘導員の配置」が必要になり、別途費用が発生するので注意しましょう。
内装解体費用を安く抑える方法
内装解体の得意な業者から相見積もりを取る
内装解体費用を賢く抑えるには、内装解体に特化した専門業者から相見積もりを取ることが非常に重要です。専門業者は効率的な解体ノウハウや適切な廃棄物処理ルートを持っているため、無駄なコストを削減できます。複数の業者から見積もりを比較することで、適正価格を見極め、より費用を安く抑えられます。一般的な解体業者に依頼するよりも、専門性の高い業者を選ぶことが、結果的に経済的な選択となるでしょう。
また、内装解体の中でも、「原状回復工事」「スケルトン解体」など業者によって特化した工事が異なるため、会社情報や口コミを見て希望に沿った業者を探しましょう。
什器や設備を買い取ってもらう
内装解体費用を少しでも抑えたいなら、商品棚などの什器や設備を専門業者に買い取ってもらう方法を検討しましょう。これらは単に処分費用がかかるだけでなく、品目によっては高額な買取価格がつくケースもあります。解体業者に見積もりを依頼する際に、買い取りについても相談することで、廃棄物量を減らせるだけでなく、売却益を解体費用に充てられ、結果的にトータルのコストを大幅に削減できる可能性があります。
什器は専門の買取業者へ依頼した方が高く買い取ってもらえる可能性があります。たとえば、飲食関係の什器なら飲食専門の買取業者、事務系の什器なら事務用品の買取業者に依頼するのがオススメです。
補助金や助成金制度を活用して費用負担を軽減する
内装解体にかかる費用負担を軽減するために、国や地方自治体が提供する補助金や助成金制度を活用する方法があります。
とくに、古い住宅の建て替えやリノベーションを促進するための補助金、アスベスト除去に関する補助金、耐震改修と一体となった解体工事への補助金などが例として挙げられます。
これらの制度は地域活性化や安全対策、環境配慮など、さまざまな目的で設けられており、要件を満たせば解体費用の一部が支給される可能性があります。ご自身の物件や工事内容が対象となるか、事前に各自治体のウェブサイトを確認したり、窓口へ問い合わせたりすることが重要です。適切な制度を活用できれば、内装解体での費用負担を減らせます。
工期に余裕を持って依頼する
解体費用を少しでも抑えたいなら、業者との日程調整がカギとなります。一般的に、年度末の公共工事や企業の予算消化が一段落する4月から9月が解体業者の閑散期と言われています。この時期に工事を依頼することで費用を削減できる可能性があります。繁忙期を避けて日程を調整することで、業者側も日程調整がしやすく、費用の相談がしやすくなります。
工事自体は1週間以内で終わることも多いですが、良い業者ほど予定が埋まるのが早いので、余裕をもって工事希望日の3か月程前を目処に相談するのがよいでしょう。
内装解体工事の具体的な流れと注意点
内装解体工事は、解体するものとしないものを区別し、安全かつスムーズに進めるための綿密な計画と手順が必要です。ここでは、一般的な内装解体工事がどのような流れで進み、どれくらいの期間を要するのかを具体的に解説していきます。事前に全体の流れを把握しておくことで余計な不安を解消し、スムーズな工事を実現できるでしょう。
1.問い合わせから見積もり、契約までのステップ
複数の解体業者に問い合わせをすることからスタートします。内装解体専門の業者や内装解体の工事実績が多い業者に絞って連絡しましょう。電話での問い合わせの際は対応スタッフの丁寧さ、メールでの問い合わせの際は返信の速さなど、業者の質を判断する上で直接連絡してみることは重要な作業です。
問い合わせの際は、工事の目的や規模、希望するスケジュールなどを具体的に伝えることで、業者もより正確な情報に基づいた見積もりを提示しやすくなります。
いくつかの業者に絞ったら、現地調査の日程を調整し、見積もり依頼をします。業者は現地で建物の構造や解体範囲、搬入・搬出経路などを確認し、調査結果をもとに詳細な見積書が作成されます。見積書の内容は、解体費用だけでなく、廃棄物処理費用や養生費用、諸経費などが細かく記載されているかを確認しましょう。
不明点があれば、遠慮なく業者に質問し、見積もりの段階で納得いくまで説明を求めることが大切です。
最終的に、提示された見積もり内容や業者の対応、実績などを比較検討し、信頼できる業者と契約を結ぶ流れとなります。契約書にサインする前には、工事内容や費用、期間、追加費用についてなどが明記されているか確認することが肝心です。
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2.事前準備と近隣挨拶の重要性
解体工事を始める前には、いくつかの重要な事前準備があります。まず、建物内に残置物がある場合は、できる限り撤去しておくことをオススメします。個人的な荷物はもちろん、不要な什器や設備なども事前に搬出しておきましょう。この作業は、解体工事をスムーズに進めるだけでなく、余計な費用発生を防ぐためにも不可欠です。
また、必要に応じて、電気やガスの停止手続き、インターネット回線の撤去なども済ませておきましょう。
それから、もっとも大切な事前準備の一つが近隣住民への挨拶です。解体工事は騒音や振動、粉じんが発生するため、近隣の方々に少なからずご迷惑をおかけすることになります。工事開始前に、業者と一緒に近隣の住宅や店舗を訪問し、工事期間や作業内容、連絡先などを記した挨拶文を添えて、丁寧に説明と協力を依頼しましょう。このひと手間が、近隣トラブルを未然に防ぎ、円滑な工事進行に大きく貢献します。
3.解体工事中の進捗と現場管理:安全と環境への配慮
いよいよ解体工事が始まります。ここで重要なのが、安全と周辺環境に配慮するための「 養生(ようじょう) 」です。
内装解体における養生は、建物全体の解体とは目的が異なると言います。多くの解体工事現場を見てきた初田理事にお話を伺いたいと思います。
【初田理事に聞いた】建物解体と内装解体「養生」の違いとは?
稲垣:建物解体と内装解体では、「養生」のやり方に違いはありますか?
内装解体では、解体する部屋の中を養生することは基本的にありません。養生するとすれば、解体物を搬出する経路である廊下やエレベーター、階段などを傷つけないように保護する場合がほとんどです。床や壁、扉など、傷つけてはいけない共用部分を保護することが、内装解体における養生のポイントになります。
養生する目的の違い
- 建物解体:敷地全体をシートで囲い、近隣へのホコリの飛散や騒音を防ぐ。
- 内装解体:解体で使う機材の搬入や解体で出たガラを運び出す際などに、共用部分を傷つけないよう保護する。
工事中は、近隣住民の安全はもちろん、現場作業員の安全確保も重要視されます。ヘルメットや安全帯の着用はもちろん、危険な作業には複数人で対応するなど、徹底した安全管理のもとで作業が行われます。そうした現場の意識が、近隣住民への配慮につながります。
4.工事後の引き渡しまで
内装解体工事が完了すると、まず業者は最終的な清掃を行い、解体された空間の引き渡し準備を進めます。依頼主は現場を最終確認し、契約通りの解体が行われているか、問題がないかをしっかりとチェックしましょう。問題がなければ、業者から工事完了の報告を受け、工事代金の精算を行います。
賃貸物件の原状回復工事の場合は、物件オーナーや管理会社への引き渡しが行われます。これらの手続きを滞りなく行うことで、解体工事は最終完工となります。
建物全体を解体してなくなった場合は、解体後に「建物滅失登記」という法的な手続きが必要になります。しかし、内装解体の場合は建物自体がなくなるわけではないので、建物滅失登記は行わない場合が多いです。
滅失登記が必要となるのは、建物の主要な構造部分(屋根、柱、壁、床など)が解体され、建物としての機能がなくなったと判断される場合です。
内装解体は、建物の骨組み(構造部分)は残したまま、内装材や設備などを撤去する工事です。建物そのものが無くなるわけではないため、「建物が滅失した」という状態には該当しません。
内装解体ならではの注意点:専門家に聞いた「施工範囲」のトラブル防止法
内装解体工事は、建物の骨組みだけを残すスケルトン工事から、店舗やオフィスの原状回復まで多岐にわたります。工事をスムーズかつ安全に進め、予期せぬトラブルや追加費用を防ぐためには、事前に確認しておくべき重要なポイントがいくつか存在します。ここでは、とくに注意したい4つの項目について詳しく解説します。
1.ビル管理者が指定する工事時間や搬入搬出路の遵守
テナントビルでの内装解体は、ビル管理会社が定めるルール遵守が最優先です。他のテナントに配慮し、作業時間が夜間や休日に指定されることが多く、その場合は人件費の割増料金で費用が上がります。また、資材や廃棄物を運ぶ搬入搬出経路も業務用エレベーターなどに限定されます。円滑な工事のため、計画の初期段階でビル規約を解体業者と共有し、ルールに沿った見積もりと工程を組むことが不可欠です。
2.大通り沿いや駐車場がない立地での搬出車両と誘導員の確保
内装解体では廃材を運び出すトラックの駐車スペース確保が重要です。とくに大通り沿いや駐車場がない現場では、路上駐車による交通渋滞や事故を防ぐため、歩行者や車両を案内する交通誘導員の配置が必要になる場合があります。誘導員の人件費は工事費に加算されるため、見積もりの段階で駐車場の有無を業者に伝え、誘導員の配置費用などが含まれているかを確認することが、予期せぬ追加費用を防ぐ鍵となります。
3. 近隣への騒音・振動対策とコミュニケーション
マンション解体は、隣戸との距離が近く騒音・振動トラブルになりやすいため、近隣への配慮が不可欠です。工事前には、依頼主と業者で両隣と上下階の住戸へ挨拶に伺い、工事期間や内容を直接説明しましょう。管理組合の許可を得て、工事案内を掲示板やポストに投函することも有効です。もちろん管理規約で定められた作業時間の厳守は絶対です。こうした丁寧な対応が、住民の理解を得てクレームを防ぎます。
4.【中野理事に聞いた】トラブルを未然に防ぐ「施工範囲」の明確化
内装解体ならではの注意点4つ目は、とくにトラブル事例が多い「施工範囲」についてです。ここでは、めざまし8など各種メディアにも出演経験があり、この記事の監修者で解体工事の専門家である中野理事にお話をうかがいます。
稲垣:内装解体でトラブルを防ぐため、とくに注意が必要なことについて中野理事のご意見をお聞かせください。
内装解体でもっとも多いのが「どこまで壊すか」という施工範囲の認識のずれです。「残すはずの壁を壊された」といった事態を避けるため、契約前に範囲を明確化しましょう。確実なのは、依頼主、解体業者、建物の管理会社の三者で現地に立ち会い、図面上で「壊す箇所・残す箇所」を指差し確認することです。合意内容は必ず契約書や議事録に具体的に明記し、記録として共有することがトラブル防止の鍵です。
『あんしん解体業者認定協会』へ寄せられたトラブル事例:「残すはずだった」間仕切り壁や設備まで解体してしまった
【背景】
オフィス移転に伴う原状回復工事で、次の入居者が再利用できるよう、比較的新しい間仕切り壁とエアコン、照明器具を残しておくという話がビル管理会社とついていました。依頼主のA社は、業者に「一部残しでお願いします」と口頭で伝えましたが、具体的にどの壁や設備を残すのか、図面上で明確な指示をしていませんでした。
【発生したトラブル】
解体業者は「基本的にすべてスケルトン(何もない状態)にする」と解釈し、残しておくはずだった間仕切り壁やエアコン、照明器具まですべて撤去してしまいました。
【結果】
A社は、ビル管理会社との約束を果たせなかっただけでなく、再設置するための費用を弁償する事態になりました。業者との間で「言った・言わない」の争いになり、後味の悪い結果となってしまいました。
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失敗しない内装解体業者の選び方と見積もり注意点
信頼できる内装解体業者の見分け方:許可・実績・保険の確認
「建設業許可」または「解体工事業登録」
解体業者は、建設業許可と解体工事業登録のどちらかの資格を持っていなければ工事を行えません。許可の有無は業者のホームページや国土交通省の検索ページで確認できます。内装解体を依頼する前に業者が資格を持っているか必ず確認しましょう。
「建設業許可」と「解体工事業の登録」いずれかの資格を持たずに解体工事を行った場合は建設業法違反になります。
工事実績
内装解体業者の工事実績は、その業者の技術力や信頼性を判断するための重要な情報源です。ただ実績の数を眺めるのではなく、以下の3つのポイントに注目することで、優良業者を見極められます。
1. 実績の「種類と規模の多様性」で技術力を見る
一口に内装解体と言っても、建物の種類や構造によって求められる技術や知識は大きく異なります。優良業者は、特定の分野に特化しているか、もしくは幅広い分野で安定した実績を残しています。
▼チェックポイント
- 建物の種類
オフィス、店舗(飲食店・物販店)、マンション、戸建て、商業施設など、多種多様な建物の実績があるか。自分の依頼したい物件と似た実績が豊富だと、より安心できます。 - 工事の規模
小規模な一部屋の解体からフロア全体の大規模なスケルトン工事まで、さまざまな規模の工事に対応しているか。これは業者の対応力の高さを示します。 - 工事の難易度
アスベスト(石綿)の除去や、営業中のビル内での夜間工事など、専門的な知識や技術、徹底した安全管理が求められる工事の実績があるか。難しい工事をこなしている業者は、技術力が高いと判断できます。
2. 「工事前・工事中・工事後」の写真で仕事の丁寧さを見る
多くの業者が工事後のきれいな写真(スケルトン状態)を掲載していますが、本当に注目すべきは工事中の写真です。仕事の丁寧さや安全への配慮は、作業過程にこそ表れます。
▼チェックポイント
- 養生の質
解体しない壁や床、エレベーターや廊下などの共用部分が、傷つかないようにシートなどで丁寧に保護(養生)されているか。養生の丁寧さは、業者のお客様の資産や第三者への配慮の表れです。 - 現場の整理整頓
作業中の現場は、資材や道具が整理整頓されているか。現場がきれいな業者は、安全管理の意識が高く、作業効率も良い傾向にあります。 - 情報公開の姿勢
工事前の「Before」、工事中の「作業風景」、工事後の「After」をセットで公開しているか。過程をしっかり見せられるのは、仕事ぶりに自信がある証拠です。
3. 「施工場所」と「更新頻度」で信頼性を見る
工事実績がどこで行われ、どのくらいの頻度で更新されているかを見ることで、その業者の地域での信頼性や現在の活動状況を把握できます。
▼チェックポイント
- 施工場所
自分が依頼したい地域での実績が豊富かを確認しましょう。地域に密着している業者は、その地域の特性(条例、搬出入ルート、近隣への配慮など)を熟知しており、スムーズな工事が期待できます。 - 更新頻度
工事実績が定期的に更新されていますか。頻繁に更新されていれば、コンスタントに依頼があり、安定して事業を継続している信頼できる業者だと判断できます。何年も前の実績しか掲載されていない場合は注意が必要です。
その業者がどんな工事をやってきたか知りたいなら、ホームページを見たり、直接パンフレットや写真を見せてもらったりするのがオススメだよ!
損害賠償保険
内装解体業者を選ぶ際には、「損害賠償責任保険」に加入しているかの確認も重要です。
損害賠償責任保険は、工事中に誤って第三者の身体や財産に損害を与えてしまった場合に、その賠償金を補償する保険です。とくに内装解体では、以下のような事故のリスクが考えられます。
内装解体工事で想定される事故の例
- 共用部の破損
解体した資材を搬出する際に、マンションの廊下やエレベーター、壁などを傷つけてしまう。 - 建物本体への損害
解体対象ではない壁や床、配管、配線などを誤って破壊してしまい、水漏れや漏電などを引き起こす。 - 近隣への被害
工具の落下などで下の階の店舗やオフィスに損害を与えたり、通行人にケガをさせてしまったりする。 - 火災
電動工具の火花が引火し、火事を起こしてしまう。
こうした万が一の事態に備え、事業者が損害賠償責任保険に加入していれば、被害者への賠償や原状回復費用が保険金で支払われます。
口頭での「入っています」という返事だけでなく、保険証券のコピーを見せてもらうなど、書面で確認することをオススメします。
▼実際に使用された保険加入証明書▼※画像クリックで拡大できます。
悪徳業者に騙されないためのチェックリストと対策
内装解体は専門性が高く、一見すると費用の内訳が分かりにくいため、残念ながら悪徳業者のターゲットになりやすい工事の一つです。しかし、業者選定の際にいくつかの重要なポイントを押さえることで、不当な高額請求や手抜き工事といったトラブルを未然に防げます。
ここでは、信頼できる業者を見極めるための3つのチェックリストと、その具体的な対策について解説します。
チェック1:契約前に必ず「現地調査」を行ってくれるか?
悪徳業者は、電話やメールだけで「工事費〇〇万円です」といった安易な見積もりを提示し、契約を急かそうとする場合があります。しかし、これは非常に危険です。
内装解体の費用は、広さだけで決まるものではありません。同じ15坪の飲食店でも、壁・床・天井の材質や構造、厨房設備の数といった造作(後から設置した内装や設備)によって、作業の手間や廃棄物の量がまったく異なるため、費用も大きく変動します。信頼できる業者は、必ず契約前に現地を訪問し、内装の状態や搬出経路などを細かく確認した上で、根拠のある見積もりを作成します。
現地調査を行わずに金額を提示する業者は、後から高額な追加費用を請求してくる可能性が高いため依頼を避けましょう。
チェック2:図面を基に詳細な見積書を提出してくれるか?
見積書の内容が「解体工事一式」などと大雑把な業者も注意が必要です。これでは、何にいくらかかるのかが不明瞭で、金額の妥当性を判断できません。
店舗の図面など、内装の構造が分かる資料があれば、必ず業者に提示しましょう。優良な業者は、図面からどのような造作があるかを読み取り、「どの部分を解体するのに、いくらかかるのか」という詳細な内訳が記載された見積書を提出してくれます。これにより、金額の根拠が明確になると同時に、施工範囲についての認識のずれを防ぐことにもつながります。
チェック3:工事完了後の「状態」を具体的にすり合わせてくれるか?
「言った・言わない」のトラブルでとくに多いのが、工事完了後の状態に関する認識のずれです。
契約前に、どのような状態で引き渡せば工事完了となるのかを徹底的にすり合わせることが極めて重要です。とくにテナントの原状回復工事では、依頼主と解体業者だけでなく、ビルのオーナーや管理会社を交えて、求められる返却状態を確認しなければなりません。
「床下の配管はどこまで撤去するか」「壁はコンクリートが見える状態か」など、具体的な完了イメージを写真や仕様書で共有し、合意内容を書面に残しておきましょう。もし工事完了後にオーナー側からやり直しを指摘されると、その追加工事は割高になるうえ、工期も大幅に遅れてしまう可能性があります。
事前の綿密なすり合わせが、最終的なコストと時間を守ることにつながります。
まとめ:内装解体の費用を確定する前の最終チェックリスト
この記事の要点を踏まえ、最後に確認すべき重要事項をまとめました。一つずつチェックし、万全の準備で次の一歩に進みましょう。
- 複数の専門業者から相見積もりを取得する
内装解体の費用は、物件の構造や造作によって大きく変動します。必ず複数の業者に現地調査を依頼し、詳細な内訳が記載された見積書を比較検討しましょう。 - 施工範囲を明確にし、書面で合意する
「残すはずの壁を壊された」といったトラブルを防ぐため、解体箇所と残す箇所を図面や現地で業者・管理会社と具体的に確認し、契約書に明記することが重要です。 - 残置物・什器の事前処分を検討する
まだ使用できる什器や設備は、専門の買取業者に依頼することで処分費用を削減できます。自分で処分できるものは工事前に済ませておくと、総費用を抑えることにつながります。
これらのポイントを着実に実行することが、後悔のない業者選びと、適正な費用での内装解体工事の実現へのもっとも確実な道筋です。
この記事が、あなたの内装解体に関する不安を解消し、新たな一歩を踏み出すきっかけとなれば幸いです。
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