
この記事の案内人・編集長
稲垣 瑞稀

鉄骨造の建物解体って、一体いくらかかるの……?
鉄骨造の建物の解体を検討する際、多くの方がまず気になるのは「一体いくらかかるのか?」という費用面でしょう。特に坪単価の相場は、計画を立てる上での最初の目安になります。
しかし、坪単価だけを信じて計画を進め、あとで「こんなはずではなかった」と後悔する方は本当に多いのです。
なぜなら、最終的な金額は「アスベスト調査」や「地中の障害物」といった、坪単価には決して含まれない無数の要因で大きく変動するからです。
この記事では、一般社団法人あんしん解体業者認定協会の中野達也理事(監修)と初田秀一理事(現場解説)に直接取材。単なる費用相場だけでなく、費用の総額が決まる仕組みや法律で定められた注意点、そして賢く費用を抑える方法まで、後悔しない解体工事の第一歩となる知識を網羅的に解説します。
- 鉄骨造の建物解体費用がわかる。軽量は坪4~6万円、重量は坪6~8万円が目安。
- 想定外の追加費用を防ぐ!アスベスト調査の法的義務や、付帯工事費など総額が決まる内訳がわかる。
- 数十万円損しないための鉄則!自治体の補助金や中間マージンを避ける方法など5つのコツがわかる。
- 悪徳業者を回避する「建設業許可」の確認方法や、マニフェストの5年間保管義務がわかる。
- 見積書に潜む注意点(「一式」表記や安すぎる金額)を見抜く、プロが教えるチェックポイントがわかる。




一般社団法人あんしん解体業者認定協会 理事・解体アドバイザー
初田 秀一(はつだ しゅういち)
解体アドバイザー歴15年、相談実績は11万件以上。お客様の不安を笑顔に変える現場のプロフェッショナル。「どんな些細なことでも構いません」をモットーに、一期一会の精神でお客様一人ひとりと向き合い、契約から工事完了まで心から安心できる業者選定をサポート。この記事では現場のリアルな視点から解説を担当。


「スッキリ解体」編集長
稲垣 瑞稀(いながき みずき)
解体業界専門のWebメディアでWebディレクターとして6年以上、企画・執筆・編集から500社以上の解体業者取材まで、メディア運営のあらゆる工程を経験。正しい情報が届かず困っている方を助けたいという想いから、一個人の責任と情熱で「スッキリ解体」を立ち上げ、全記事の編集に責任を持つ。


「スッキリ解体」専属ライター
秋田 栞(あきた しおり)
「どんな専門的な情報も、『なるほど!』に変わる瞬間を大切に、解説します。」
複雑な情報を分かりやすく紐解くことを得意とするライター。毎週の専門勉強会で得た最新知識を元に、読者の「なぜ?」「どうして?」を「わかった!」に変える記事を執筆。現場の職人さんが話す言葉と、お客様が使う言葉の橋渡し役となることを目指している。


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鉄骨造の解体費用相場|構造別の坪単価


まずは、鉄骨造の解体費用の目安となる坪単価の相場から見ていきましょう。鉄骨造は、使われている鋼材の厚みによって「軽量鉄骨造」と「重量鉄骨造」に大別され、それぞれ費用が異なります。
軽量鉄骨造(住宅・アパートなど)の費用相場
▼平均坪単価 | |||
---|---|---|---|
3万8,917円/坪 |
一般的に、個人の住宅やアパートで多く使われる軽量鉄骨造の解体費用は、坪単価4万円~6万円程度が目安となります。
軽量鉄骨は、柱や梁に使われる鋼材の厚みが6mm未満のものを指します。比較的解体しやすい構造ではありますが、木造に比べると頑丈なため、費用は少し高くなる傾向にあります。ご自身が相続された実家や、所有されているアパートがこのケースに当てはまる方も多いのではないでしょうか。
坪数・地域別
▼平均坪単価【坪数・地域別】 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
坪数/地域 | 関東 | 中部 | 関西 | 北海道・東北 | 中国・四国 | 九州・沖縄 |
10坪 | 4万480円 | 3万8,623円 | 5万4,293円 | ー | ー | ー |
20坪 | 4万61円 | 3万3,119円 | 4万1,707円 | 4万1,792円 | 3万366円 | 2万9,695円 |
30坪 | 3万9,525円 | 3万6,027円 | 4万2,614円 | 3万3,797円 | ー | 3万9,705円 |
40坪 | 4万716円 | 3万3,111円 | 3万6,822円 | ー | 3万4,392円 | 2万5,853円 |
50坪 | 4万1,235円 | 3万1,469円 | 4万447円 | 3万5,276円 | 3万9,125円 | ー |
60坪 | 4万1,519円 | 3万852円 | ー | ー | ー | ー |
70坪 | 4万1,407円 | 3万1,447円 | 3万3,857円 | ー | ー | ー |
80坪 | ー | ー | ー | ー | ー | ー |
90坪 | ー | ー | ー | ー | ー | 2万6,886円 |
100坪~ | 3万6,908円 | ー | ー | ー | ー | ー |
※上記の解体費用相場は、『あんしん解体業者認定協会』が保有する解体工事データに基づく目安です。実際の価格は現場条件により変動します。
重量鉄骨造(ビル・工場など)の費用相場
▼平均坪単価 | |||
---|---|---|---|
4万9,102円/坪 |
ビルやマンション、工場などで採用されることが多い重量鉄骨造の場合、解体費用の坪単価は6万円~8万円程度が相場です。
重量鉄骨は、鋼材の厚みが6mm以上あり、非常に頑丈な構造が特徴です。そのため、解体には大型の重機や特別な工法が必要になることが多く、軽量鉄骨造に比べて費用も手間もかかります。「提示された見積もりが高すぎるのでは?」と疑問に思われている元経営者の方などは、まずこの相場感を一つの基準としてみてください。
坪数・地域別
▼平均坪単価【坪数・地域別】 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
坪数/地域 | 関東 | 中部 | 関西 | 北海道・東北 | 中国・四国 | 九州・沖縄 |
10坪 | 4万8,459円 | 4万9,162円 | 4万2,989円 | ー | ー | ー |
20坪 | 5万5,432円 | 3万1,049円 | 5万2,831円 | ー | ー | ー |
30坪 | 5万1,869円 | 4万1,980円 | 4万7,328円 | ー | ー | ー |
40坪 | 5万3,734円 | 3万8,161円 | 5万399円 | ー | ー | ー |
50坪 | 3万8,604円 | 3万8,604円 | 5万1,599円 | ー | ー | 4万6,501円 |
60坪 | 5万3,770円 | 4万1,741円 | ー | ー | ー | ー |
70坪 | 4万1,908円 | 3万7,789円 | 3万9,801円 | ー | ー | ー |
80坪 | 5万6,353円 | 3万7,918円 | ー | ー | ー | ー |
90坪 | 5万7,488円 | ー | ー | ー | ー | ー |
100坪~ | 4万8,334円 | 2万7,478円 | 3万8,162円 | ー | ー | ー |
※上記の解体費用相場は、『あんしん解体業者認定協会』が保有する解体工事データに基づく目安です。実際の価格は現場条件により変動します。


木造やRC造の解体費用との違いは?
建物の解体費用は、その構造によって大きく変わります。一般的な費用の順序としては、「木造 < 軽量鉄骨造 < 重量鉄骨造 < RC造(鉄筋コンクリート造)」となることが多いです。
下の表で、構造ごとの坪単価の目安を比較してみましょう。
構造 | 坪単価の目安 | 主な用途 |
---|---|---|
木造 | 3万円~5万円 | 戸建て住宅、アパート |
軽量鉄骨造 | 4万円~6万円 | 住宅、アパート、小規模店舗 |
重量鉄骨造 | 6万円~8万円 | ビル、マンション、工場 |
RC造 | 7万円~10万円 | マンション、公共施設 |
鉄骨造の費用が木造より高い理由は、構造が頑丈であることに加え、分別・処分が必要な建材が多く、手間とコストがかかるためです。RC造はさらに頑丈で、コンクリートガラが大量に発生するため、最も高額になる傾向があります。


【要注意】坪単価だけでは危険!解体費用の総額を決める3つの内訳


ここからが本題です。坪単価はあくまで概算であり、それだけで総額が決まることは絶対にありません。
解体費用の総額が「本体工事費」「付帯工事費」「諸経費」という3つの要素で構成されているという事実を知ることが、何よりも重要です。この内訳を知らないと、見積もりの妥当性を判断できず、業者の言いなりになってしまう危険性があります。


建物の取り壊しにかかる「本体工事費」
本体工事費とは、建物そのものを取り壊すためにかかる中心的な費用です。これには、工事前の足場や養生シートの設置、重機を使った建物の解体作業、そして解体で出た廃材の分別やトラックへの積み込み、搬出費用などが含まれます。
見積書の中では最も大きな割合を占める項目であり、坪単価で計算されるのは主にこの部分です。しかし、これはあくまで総額の一部に過ぎません。
建物以外の撤去費用「付帯工事費」
付帯工事費は、建物本体以外にあるものを撤去するための費用です。例えば、ブロック塀やフェンス、カーポート、物置、庭木や庭石の撤去などがこれに当たります。
「庭の大きな木も切ってくれるだろう」と思い込んでいたら、別途高額な費用を請求された、というケースは少なくありません。見積もりを依頼する際には、どこまでが工事範囲に含まれているのかを必ず確認することが重要です。
見積書に隠れがちな「諸経費」
諸経費は、工事を円滑に進めるために必要な、細々とした経費の総称です。これには、重機を現場まで運ぶための回送費、工事車両の駐車場代、官公庁への各種届出の代行費用、近隣への挨拶回りの人件費などが含まれます。
悪質な業者の場合、この「諸経費一式」という項目で、不透明な金額を上乗せしてくることがあります。見積書にこの項目があったら、具体的な内訳を質問してみることが、信頼できる業者か見極めるポイントの一つになります。
あなたの家の費用は?総額が大きく変わる追加費用の発生ケース





見積もり金額に納得して契約したのに、後から次々と追加費用を請求されちゃった……。
こうした不安をお持ちなのは当然です。これは、解体工事で最も多いトラブルの一つでもあります。
ここでは、当初の見積もりから総額が大きく変動する可能性のある、代表的な追加費用の発生ケースをご紹介します。ご自身の状況と照らし合わせながら、リスクを事前に把握しておきましょう。
【立地・周辺環境】重機が入れない、前面道路が狭い場合
建物の前の道路が狭く、大型の重機やトラックが入れない場合、費用が割高になる可能性があります。なぜなら、小型の重機しか使えなかったり、場合によっては手作業で解体する部分が増えたりして、工期が長引き人件費がかさむからです。
また、廃材を運び出すトラックを近くに停められない場合、小さな運搬車で大通りまで何度も往復する必要があり、その分の手間賃が追加されることもあります。
【最重要】アスベスト(石綿)調査は法律で定められた義務です!
アスベストの有無は、解体費用と工期を左右する最大の要因ですが、それ以前に法律で定められた厳格な調査手順を踏むことが全ての工事の前提となります。
法改正により、現在では建物の建築年に関わらず、原則すべての解体・改修工事で「建築物石綿含有建材調査者」という有資格者による事前調査が義務付けられています。
また、床面積80㎡以上の解体工事では、アスベストの有無に関わらず行政への電子報告も必須です。安易に「自分の家は大丈夫」と判断せず、必ず法的手順に詳しい専門業者に相談してください。
(出典:環境省・厚生労働省 改正大気汚染防止法等に関する公式発表資料)
【初田理事に聞いた】アスベスト除去作業における業者の現状と課題
2021年からアスベストに関する法改正が段階的に施行され、2023年にはアスベストの事前調査・分析が義務化されましたが、正直なところ現場レベルでこの新制度はどのくらい守られているのでしょうか?『あんしん解体業者認定協会』に所属し、数多くの解体現場を見てきたプロフェッショナルである初田理事に解体業者の実態を伺いました。


一般社団法人あんしん解体業者認定協会 理事・解体アドバイザー
初田 秀一 (はつだ しゅういち)
解体アドバイザー歴15年、相談実績は11万件以上。お客様の不安を笑顔に変える現場のプロフェッショナル。「どんな些細なことでも構いません」をモットーに、一期一会の精神でお客様一人ひとりと向き合い、契約から工事完了まで心から安心できる業者選定をサポート。この記事では現場のリアルな視点から解説を担当。





解体業者は安全性を確保しつつ、限られたリソースの中でこれらの義務を遂行しようとしていますが、記録の完全性においては改善の余地があると言えるでしょう。
アスベスト含有建材の除去作業において、基本的に多くの業者は法規制を遵守しようと努めています。特に、事前の検査や行政への申請に関しては、ほとんどの業者が適切に実施しています。これは、これらの手続きが作業着手前の必須事項であり、不備があれば作業自体が進められないためです。
しかし、作業中の記録保持については課題が見られます。
例えば、法的には写真等で記録を残し、5年間保管することが義務付けられています。具体的には、アスベスト含有建材の除去前、除去中、除去後の状況を写真で記録する必要などですが、現状では厳密な記録をするには手間がかかり徹底が難しく、すべての記録が完全に残されているかは不確実な場合が多いです。
新しい時代の流れと共に、解体業者も日々思考錯誤しつつより良い対応をすべく進んでいます。



アスベストに関する法規制は、業者だけでなく施主にも関わる部分があるので注意が必要だよ!
施主の「努力義務」と罰則 | 情報把握の重要性 | 業者との連携と適切な判断 |
---|---|---|
アスベスト含有の可能性がある建材については、施主様も適切に処理・対応できるよう努める義務があります。もし、アスベストが含まれていることを把握しているにもかかわらず、それを隠蔽して作業を進めたり、適切な処理を行わずに解体・改修を進めたりした場合、施主様も罰則の対象となる可能性があります。 | 建物の謄本には使用されている材料が記載されていることがあり、アスベスト含有の有無について情報が得られる場合があります。そのため、「知らなかった」では済まされないケースが多いです。 | もし業者からアスベストに関する説明や、適切な処理が必要であるとの提案があったにもかかわらず、費用を惜しむなどの理由で適切な処理をさせなかった場合も、施主様の義務違反となります。アスベストは人体に深刻な健康被害をもたらす物質であり、その処理は専門性と厳格な管理が求められます。 ご自身の財産を守るためだけでなく、ご家族や周辺住民の健康、そして環境保護のためにも、アスベストに関する業者からの説明には真摯に耳を傾け、適切な判断を下すことが非常に重要です。 |
アスベスト問題は、建物所有者として知っておくべき重要な事項です。もしご所有の建物にアスベスト含有の可能性がある場合は、専門業者に相談し、適切な対応を検討されることをお勧めします。
石綿障害予防規則について:改正ポイント/石綿総合情報ポータルサイト/厚生労働省
【付帯工事】ブロック塀・カーポート・庭木の撤去
先ほど「付帯工事費」で触れましたが、これは追加費用の原因にもなりやすい項目です。契約時に「建物本体のみ」の解体で話を進めていたものの、工事が始まってから「やっぱりブロック塀も撤去してほしい」と依頼すれば、当然ながら追加費用が発生します。
解体工事を始める前に、どこまでを更地にするのか、撤去したいものは何かを明確にし、すべて見積もりに含めてもらうことがトラブル回避の鍵です。
【地中の障害物】以前の建物の基礎やコンクリートガラ
これは、解体業界の人間でも予測が難しい、厄介な追加費用です。建物を解体し、基礎を掘り起こしたところ、地中から以前の建物の基礎やコンクリートガラ、浄化槽などの障害物が出てくることがあります。
これらは見積もり段階では見えないため、発見された場合は別途、撤去・処分費用が追加で請求されるのが一般的です。優良な業者であれば、契約前に「地中埋設物が見つかった場合は、別途協議の上で追加費用が発生する可能性があります」と、きちんと説明してくれます。
知らないと数十万円損!解体費用を安く抑える5つの方法


解体費用は高額ですが、正しい知識を持っていれば、賢く費用を抑えることが可能です。ここでは、費用を安く抑えるための、特に重要な5つの方法をご紹介します。
1. 必ず3社以上の専門業者から「相見積もり」を取る
これが最も重要かつ効果的な方法です。1社だけの見積もりでは、その金額が適正なのか判断のしようがありません。必ず3社以上の解体専門業者から見積もりを取り、内容を比較検討してください。
これにより、ご自身の工事の適正な費用相場がわかるだけでなく、業者間の競争意識が働き、不当に高い金額を提示されるリスクを大幅に減らすことができます。
2. 自治体の「補助金・助成金制度」を活用する
特に老朽化した空き家の解体などでは、多くの自治体が補助金や助成金の制度を設けています。補助額は自治体や条件によって異なりますが、数十万円単位の補助が受けられるケースも少なくありません。
「うちの市にはあるだろうか?」と思ったら、まずは「〇〇市 空き家 解体 補助金」といったキーワードで検索し、お住まいの自治体のホームページを確認してみましょう。申請には条件や期限があるため、早めに情報収集を始めることが肝心です。
特に重要な注意点として、ほとんどの自治体で『解体業者との工事契約を締結する前に、補助金の申請を行うこと』が絶対条件となっています。契約後にこの制度に気づいても手遅れになるため、必ず計画の初期段階で自治体の担当窓口に相談してください。
補助金・助成金制度の活用術:失敗と成功の分かれ道
補助金・助成金制度の活用について、失敗せずに手続きを進めるためのポイントをまとめました。
- 必ず解体工事を初める前に、使える補助金がないか確認する。
前述の通り、解体業者と契約した後だと申請対象外になってしまうことがほとんどです。 - 自治体に問い合わせる
インターネットの情報だけでなく、自治体の担当者に確認するのが確実です。 - 手続きに詳しい解体業者に依頼する
補助金に詳しい解体業者だと、手続きのサポートまでしてくれることがあります。解体業者を決める際に検討してみるのもオススメです。
3. 家の中の不用品は自分で処分しておく
家の中に残された家具や家電、衣類などの不用品(残置物)の処分を解体業者に依頼すると、それらは「産業廃棄物」扱いとなり、高額な処分費用がかかります。
しかし、事前に自分で自治体のルールに従って一般ごみとして処分したり、リサイクルショップやフリマアプリで売却したりすれば、その費用を大幅に節約できます。手間はかかりますが、費用削減効果は非常に大きいポイントです。
4. 建物滅失登記を自分で行う
建物を解体した後、1ヶ月以内に法務局で「建物滅失登記」を行う必要があります。この手続きを土地家屋調査士に依頼すると、一般的に4〜5万円程度の費用がかかります。
しかし、この登記は自分で行うことも可能です。管轄の法務局で相談すれば、手続きの方法を教えてもらえますので、時間と手間を惜しまなければ数万円の節約になります。
5. ハウスメーカーへの一括依頼は避ける【中間マージンに注意】
新築への建て替えを計画している方に、特に注意していただきたい点です。ハウスメーカーや工務店に解体から新築まで一括で依頼すると、多くの場合、解体工事は下請けの解体業者に発注されます。
その際、ハウスメーカーの「中間マージン」が上乗せされるため、あなたが解体専門業者に直接依頼するよりも、費用が数十万円も高くなってしまうケースがほとんどです。解体は解体のプロに直接依頼する「分離発注」が、賢い選択と言えるでしょう。
悪徳業者に騙されない!後悔しない解体業者の選び方


費用を安く抑えることも大切ですが、それ以上に重要なのが「信頼できる優良業者」を選ぶことです。
価格の安さだけで業者を選ぶと、不法投棄や近隣トラブル、手抜き工事といった最悪の事態を招きかねません。後悔のない解体工事のためにも、悪徳業者に騙されないための最低限のチェックポイントをお伝えします。
「建設業許可」または「解体工事業登録」の有無を確認する
解体工事を行うには、法律で定められた許可や登録が必要です。具体的には、請負金額が500万円以上の工事を行う場合は「建設業許可」、500万円未満の場合は「解体工事業登録」がなければなりません。これは業者選びの大前提です。
この二つは単に扱える金額が違うだけではありません。『解体工事業登録』に比べ、『建設業許可』は、5年以上の経営経験や一定の自己資本など、取得するための要件が格段に厳しくなっています。
そのため、『建設業許可』を持つ業者は、経営基盤が安定し、コンプライアンス意識が高い業者である可能性が高い、と判断する一つの重要な材料になります。(出典:建設業法、国土交通省Webサイト等)
損害賠償保険に加入しているか
どれだけ優良な業者でも、工事中に万が一の事故が起こる可能性はゼロではありません。例えば、重機が隣家の壁を傷つけてしまったり、通行人に怪我をさせてしまったりするケースです。
そうした事態に備え、業者が損害賠償保険に加入しているかは必ず確認しましょう。保険への加入は、業者のリスク管理意識の高さを示すバロメーターでもあります。
産業廃棄物処理の許可とマニフェスト発行の有無
契約前にマニフェストの発行を約束する業者を選ぶのは大前提です。さらに重要なのは、廃棄物処理法により、廃棄物の最終的な処理責任は施主(排出事業者)ご自身にあるということです。
そのため、工事完了後に業者からマニフェストの写し(B2票、D票、E票など)が返送されてくるのを必ず確認し、その書類を5年間保管する法的な義務があります。これを怠ると罰則の対象となる可能性もあるため、必ず実行してください。(出典:(公財)日本産業廃棄物処理振興センター(JWNET))
【初田理事に聞いた】これだけは確認!解体工事マニフェストの重要チェックポイント3選
解体工事が終わり、業者から「産業廃棄物管理票(マニフェスト)」の写しを受け取ったら、必ず確認してほしいポイントがあります。マニフェストは、工事で出た廃棄物が適切に処理されたことを証明する大切な書類。これをしっかりチェックしないと、思わぬトラブルに巻き込まれる可能性もゼロではありません。
解体の現場で重視しているポイントを初田理事に伺いました。



マニフェストの確認は、解体工事におけるトラブルを未然に防ぐための重要なステップです。疑問点があれば、遠慮なく解体業者に質問し、納得がいくまで説明を求めましょう。
「排出事業者」と「現場情報」は合っていますか? | 「最終処分先」は明確に記載されていますか? | 「排出量」と「種類」は妥当ですか? |
---|---|---|
最初に確認すべきは、マニフェストに記載されている「排出事業者」の情報が、あなた自身(施主)の氏名や会社名、そして工事を行った現場の住所と一致しているかどうかです。 住所や現場名: マニフェストは、どの現場で発生した廃棄物かを示すものです。もし記載が間違っていたり、別の現場の情報になっていたりしたら、あなたの工事で出た廃棄物ではない可能性があります。 排出事業者: 廃棄物を排出した責任は排出事業者(=施主)にあります。ここに誤りがあると、万が一不法投棄などの問題が発生した場合に、責任の所在が曖昧になってしまう恐れがあります。 | 廃棄物が最終的にどこで処分されるのかを示す「処分先」です。マニフェストには、廃棄物が運び込まれた中間処理施設や最終処分場の情報が記載されています。 運ばれた事業所の確認: 記載されている処分先の名称や住所を見て、実際に廃棄物がそこに運ばれたのかを確認しましょう。不明瞭な記載や、具体的な施設名がない場合は注意が必要です。 マニフェストには、廃棄物の種類ごとに処理の流れが記載されており、最終的な処分が終わると「E票」という最終確認の欄がすべて埋まります。業者から受け取るのは「A票(排出事業者の控え)」であることが多いですが、後日、最終処分が完了したことを示す「E票」が送られてくるのが一般的です。 「E票」が送られてこない場合は、必ず業者に確認しましょう。 | 最後に、廃棄物の「排出量」と「種類」が、あなたの解体工事内容と合致しているかを確認しましょう。特に以下の点に注目です。 廃棄物の量(特にコンクリート): 例えば、コンクリート塊の排出量が10トン以上あるかどうかは特に注意して見てください。これくらいの量になると、運搬回数も増え、マニフェストの枚数も多くなるのが普通です。 主要な廃棄物の記載: 「木くず」「がれき類(コンガラ)」「混合廃棄物(コンパイ)」といった、解体工事で必ず出る廃棄物はマニフェストに記載されているはずです。 ガラス・陶器など: これらは他の廃棄物とまとめて処分されることが多いため、個別に記載されていないこともあります。 |
そのほか、下記のような点も気にかけてみると良いでしょう。
- マニフェストの枚数
一般的な30坪程度の木造家屋の解体であれば、マニフェストは15枚~30枚程度になることが多いです。少なくとも10枚以上は発行されるのが通常なので、極端に枚数が少ない場合は内訳を確認しましょう。 - 日付の確認
同じ日に複数枚のマニフェストが発行されたり、工事期間中に何度もマニフェストが発行されたりするのは、廃棄物の運搬が行われた証拠です。日付を確認して、あなたの工事が行われた期間中のものかを確認しましょう。
担当者の対応は誠実か、質問に明確に答えるか
最終的には、人と人との信頼関係が重要になります。あなたの不安や疑問に対し、専門用語を並べるのではなく、分かりやすい言葉で丁寧に説明してくれるか。リスクや追加費用の可能性についても、隠さずに誠実に話してくれるか。
そうした担当者の姿勢は、会社全体の信頼性を映す鏡です。「この人になら任せられる」と心から思える業者を選ぶことが、安心への一番の近道かもしれません。
見積書のココを見ろ!プロが教える優良業者を見抜くチェックポイント


複数の業者から相見積もりを取ったら、次はその見積書を比較検討するステップです。しかし、どこを見れば良いのか分からない、という方も多いでしょう。見積書にはその業者の仕事に対する姿勢や誠実さが驚くほど表れます。優良業者を見抜くための見積書チェックポイントを伝授します。
各工事項目が詳細に記載されているか
信頼できる業者の見積書は、工事項目が細かく記載されています。例えば、「仮設工事(足場・養生)」「建物本体解体工事」「基礎撤去工事」「廃材運搬処分費」といったように、何にいくらかかるのかが明確です。
一方で、「解体工事一式 〇〇円」といった大雑把な見積書は、後から「それは含まれていない」と言われるリスクがあり、非常に危険です。詳細な見積もりは、業者が工事内容を正確に把握している証拠でもあります。
「一式」という曖昧な表記が多くないか
詳細な記載と関連しますが、「一式」という表記には特に注意が必要です。もちろん、細かすぎる項目をまとめるために使われることもありますが、多用されている場合は要注意。
特に「付帯工事一式」や「諸経費一式」といった項目は、不透明な費用の温床になりがちです。もし「一式」の内訳が気になる場合は、遠慮なく「この『一式』には具体的に何が含まれていますか?」と質問しましょう。誠実な業者であれば、きちんと答えてくれるはずです。
追加費用が発生する可能性とその条件が明記されているか
優良な業者は、リスクを隠しません。地中埋設物のように、工事をしてみないと分からないリスクについては、「地中から障害物が発見された場合は、別途お見積もりの上、追加費用が発生します」といった一文が見積書や契約書に明記されています。
これは、後々のトラブルを避けるための、業者側の誠実な姿勢の表れです。逆に、リスクについて一切触れず「すべて込みです」と安易に言う業者ほど、後から高額な追加請求をしてくる可能性があります。
危険な兆候?安すぎる見積もりの裏側
相見積もりを取った中で、1社だけ極端に安い金額を提示してくる業者がいたら、それは危険な兆候かもしれません。安いのには必ず理由があります。
- 不法投棄: 処分費用を浮かせるために、廃材を山中などに不法投棄する。
- 手抜き工事: 安全対策や近隣への配慮を怠り、人件費を削る。
- 追加請求: 最初に安い金額で契約させ、後から何かと理由をつけて高額な追加費用を請求する。
安さに飛びついた結果、最終的に高くついたり、大きなトラブルに巻き込まれたりするケースは後を絶ちません。安すぎる見積もりには、まず疑いの目を持つことが重要です。


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【FAQ】鉄骨造の解体費用に関するよくある質問


相見積もりを依頼する際、業者に他社にも依頼していると伝えるべき?
はい、伝えるべきです。これを隠す必要は全くありません。むしろ、「他社さんとも比較検討しています」と正直に伝えることで、業者側も誠実に対応せざるを得なくなり、適正な価格での競争が期待できます。優良な業者であれば、他社と比較されることに自信を持っていますので、嫌な顔をすることはないでしょう。
見積もり後、しつこい営業をされたらどうすればいい?
もし、見積もり後に電話や訪問でしつこい営業をされた場合は、「まだ検討中ですので、こちらから連絡します」と、きっぱりと断ることが大切です。それでも営業が続くようであれば、その業者は避けた方が賢明かもしれません。業界の実情として、本当に仕事に自信のある優良な業者は、お客様を急かすような強引な営業はしません。
近隣への挨拶は誰がいつ頃行うもの?費用はかかる?
近隣への挨拶回りは、工事を円滑に進める上で非常に重要です。通常は、工事開始の1週間前から前日までの間に、業者の担当者が粗品を持って行います。施主であるあなたが同行する必要はありませんが、もし希望すれば一緒に回ってくれる業者がほとんどです。挨拶回りにかかる費用は、一般的に「諸経費」の中に含まれていますが、念のため見積もりの段階で確認しておくとより安心できます。
まとめ:鉄骨造の解体を依頼する前の費用相場チェックリスト
この記事の要点を踏まえ、最後に確認すべき重要事項をまとめました。一つずつチェックし、万全の準備で次の一歩に進みましょう。
1.総額費用の内訳と相見積もりの取得
坪単価だけでなく「本体工事費」「付帯工事費」「諸経費」の内訳を理解することが重要です。必ず3社以上から見積もりを取り、各項目の詳細が記載されているか比較検討しましょう。
2.業者の公的許可と法的義務への対応
信頼性の高い「建設業許可」の有無を確認しましょう。また、法律で義務付けられたアスベストの事前調査や、工事後のマニフェスト発行と5年間の保管について、適切に対応できる業者を選ぶことが不可欠です。
3.利用可能な費用削減策の事前確認
解体業者と契約する前に、自治体の補助金・助成金制度が利用できないか確認することが重要です。また、家の中の不用品を事前に自分で処分することも、総額を抑える有効な手段となります。


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