この記事の案内人・編集長
稲垣 瑞稀
- 秋田県秋田市で「特定空き家の略式代執行」が行われたニュースの詳細
- 代執行になってしまった際のデメリット
- 空き家放置のリスク
この記事では、秋田市で執行された空き家解体の略式代執行のニュースを元に、空き家放置のリスクと代執行のデメリットについて専門家の視点から解説します。
ニュースの概要
- 報道日:2025年12月9日
- 発生場所:秋田県秋田市(河辺地区)。交通量が多い県道沿い。
- 対象:木造2階建て住宅兼店舗。築年数不明。
- 事案:令和7年10月10日、秋田市で初めて特定空き家の略式代執行が決定。その解体作業が12月9日に開始された。
秋田市は、倒壊や、周辺の住宅への被害が懸念されていた市内の空き家を、強制的に解体・撤去する代執行を9日に始めました。今年に入り、元々の所有者の、相続人の男性が相続の権利を放棄したことから、作業にかかった費用は、市の予算や国の補助金で負担することになっています。
「酒の販売店と住宅を併設していたというこちらの建物。元々は2階建てだったそうなんですが、2階部分、完全に崩落してしまっていて、平屋建てのようになっています」
建物の大部分が破損し、倒壊や、周辺の住宅への被害が懸念されることから、市は、空き家に対する初めての措置を講じることを決めました。
引用:“危険空き家”を強制的に解体・撤去する代執行開始 相続人の男性が相続の権利放棄 費用は市の予算や国の補助金で負担 秋田市|ABS秋田放送
今回秋田市では初めて略式代執行に踏み切りました。このほかにも、秋田市では倒壊の危険性がある空き家が約300件も残っています。
運営者 稲垣このニュースで、地方都市が抱える「所有者不明の空き家」という問題が、個人の域を超えて税金を投入してでも解決しなければならない「公共の問題」となっていることがあらわになりました。
建物の状態と背景

該当の建物は老朽化が著しく、元々あった2階部分が崩落し平屋のようになっています。地域をよく知る方の話によると、台風の時には崩れ落ちたトタンなどが飛んでくる被害もあったそうです。近隣住民の方々は市に相談を持ちかけていましたが、市も「個人の財産」という理由で話が進められずにいました。
元々の所有者は2016年に他界しており、その家族が相続の権利を放棄したことで、現在の相続人が所有者の甥になっていました。市は5年前からこの空き家の実態調査を始め、現在の相続人へ解体とその費用の対応を求めていましたが、話はまとまらず。今年に入ってようやく相続権が放棄され、略式代執行に踏み切ることができました。

行政代執行と略式代執行とは
急に自分が少し距離のある親族の相続人だと判明しても、すぐに相続を引き受けるかどうか判断する事は難しい場合が多いでしょう。ただし、代執行になるとデメリットしかありません。
対象・費用負担・ポイント
まずは行政代執行、略式代執行の対象・費用負担・ポイントを見てみましょう。
| 略式代執行 | 行政代執行 | |
|---|---|---|
| 対象 | 所有者が不明またはいない場合 | 所有者が判明しているが対応しない場合 |
| 費用負担 | 行政が負担(税金) | 所有者へ全額請求(給与差し押さえ等もある) |
| ポイント | 危険除去が最優先されるが、税金が使われるため執行のハードルが高い | 「逃げ得」は許されない厳しい措置である |
代執行のデメリット
行政代執行も略式代執行も、解体業者を依頼する一瞬の手間からは逃れられるかと思います。しかし、執行された時、圧倒的にデメリットが大きいです。
- 代執行の費用は持ち主に請求される
行政が解体の手続きを進めますが、最終的かかった費用はすべて持ち主へ請求されます。また、略式代執行の場合、相続放棄をしても、管理義務から費用負担の可能性が指摘される場合もあります。 - 費用が相場よりも高額になる
自身で解体を手配する場合は、費用を抑える工夫ができますが、代執行の場合は金額よりも早く確実な対応が優先されるため費用が高額になるケースがほとんどです。 - 財産が差し押さえされてしまう
費用を支払わない場合、税金の滞納と同じ扱いになり、現金、預貯金、不動産、車、給与(手取りの4分の1まで)などが差し押さえられます。 - 自己破産をしても支払い義務は免除されない
代執行の費用に関しては、自己破産をしても免除の対象外です。

空き家を放置するリスク
金銭面でも、手間の面でも、後回しにしてしまいがちな空き家の処理ですが、空き家を放置することでのリスクも見てみましょう。
物理的リスク:倒壊などの危険性
今回のように家の破片が近隣へ飛散し、隣家や通行人や車両などを傷付けてしまう可能性があります。もちろん、その場合の損害賠償責任は所有者が負うことになります。
生物的リスク:熊の隠れ家になる可能性
この事例が発生した秋田県では、現在市街地での熊出没が多発しています。今回の代執行の1週間前にも、同県内にて空き家の敷地内にある小屋に熊が居座るという事例が発生しています。
秋田県横手市の空き家敷地内の小屋に2日朝、クマ1頭がとどまっているのが見つかりました。市はこのクマを麻酔で捕獲し、駆除しました。
空き家は雨風をしのげて、人の気配がないため、クマが冬眠や休憩をする場所として選んでしまうことがあります。空き家の存在は、人間がわざわざ熊を市街地へ呼び出してしまう原因にもなります。
衛生・治安上のリスク
空き家は人の目が行き届かないため、ゴミの不法投棄が行われたり、放火されたりするリスクが高くなります。よって、近隣の治安状況も悪化する可能性があります。
今回のまとめ
今回は秋田市で初めて行われた空き家解体・略式代執行についてのニュースを解説しました。時代の変化と共に空き家は増加の傾向にあります。ご家族が元気な間に、一度これから先住宅などの資産をどうするか話し合ってみるのも良いでしょう。ご自身はもちろん、地域を守る事にも繋がります。
スッキリ解体では空き家の解体費用や建物の相続放棄についても詳しく解説しています。あわせてご確認ください。


