公費解体とは?対象条件や申請の流れ、注意点を専門家が徹底解説

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稲垣 瑞稀

この記事の案内人・編集長

稲垣 瑞稀

解体業界で6年間働く中で感じた『正しい情報が届かない』というもどかしさから、全記事の企画・編集に責任を持っています。専門家への直接取材を通じ、業界経験者として分かりやすい情報提供をお約束します。

災害によって自宅が大きな被害を受け、公費解体を検討せざるを得ない状況にある方にとって、将来が見通せない中での判断は簡単ではありません。「費用がかからない」という点は魅力的に感じられますが、制度を十分に理解しないまま進めてしまうと、思わぬ後悔につながることもあります。

この記事では、公費解体の制度の仕組みや対象となる災害・建物、申請の流れ、注意点までを整理し、自費解体(費用償還制度)との違いも含めて解説します。

この記事でわかること
  • 公費解体がどのような制度で、どんな災害・建物が対象になるのかがわかる
  • 罹災証明の判定区分や、対象外となる代表的なケースを把握できる
  • 申請から解体完了までの流れと、実際にかかる時間感覚がわかる
  • 公費解体と自費解体(費用償還制度)の違いを比較し、自分に合う選択肢を整理できる

この記事の制作チーム

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中野 達也監修者

一般社団法人あんしん解体業者認定協会 理事

中野 達也(なかの たつや)

解体工事業の技術管理者であり、解体工事施工技士を保有。2011年に解体業者紹介センターを鈴木佑一と共に創設。2013年に一般社団法人あんしん解体業者認定協会を設立し、理事に就任。めざまし8(フジテレビ系列)/ひるおび(TBS系列)/ 情報ライブ ミヤネ屋(日本テレビ系列)/バイキングMORE(フジテレビ系列)など各種メディアに出演。

初田 秀一現場解説

一般社団法人あんしん解体業者認定協会 理事・解体アドバイザー

初田 秀一(はつだ しゅういち)

解体アドバイザー歴15年、相談実績は11万件以上。お客様の不安を笑顔に変える現場のプロフェッショナル。「どんな些細なことでも構いません」をモットーに、一期一会の精神でお客様一人ひとりと向き合い、契約から工事完了まで心から安心できる業者選定をサポート。この記事では現場のリアルな視点から解説を担当。

稲垣 瑞稀運営責任者

「スッキリ解体」編集長

稲垣 瑞稀(いながき みずき)

解体業界専門のWebメディアでWebディレクターとして6年以上、企画・執筆・編集から500社以上の解体業者取材まで、メディア運営のあらゆる工程を経験。正しい情報が届かず困っている方を助けたいという想いから、一個人の責任と情熱で「スッキリ解体」を立ち上げ、全記事の編集に責任を持つ。

酒巻 久未子執筆

「スッキリ解体」専属ライター

酒巻 久未子(さかまき くみこ)

「解体工事でお悩みの方に、同じ主婦の立場から実用的な情報をお届けします。」

数多くのお客様や業者様へのインタビューを通じて、お客様が抱えるリアルな悩みに精通。実際の解体工事現場での取材を重ね、特に「お金」や「近隣トラブル」といった、誰もが不安に思うテーマについて、心に寄り添う記事を執筆。子育て中の母親ならではの、きめ細やかな視点も大切にしている。

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目次

公費解体とは?

地震や津波で家が壊れたとき、「解体費用は誰が負担するのか」「そもそも解体はどう進むのか」と不安に感じる方は多いはずです。
そういった場面で活用できるのが「公費解体」という制度です。

まずは、公費解体の仕組みから解説します。

公費解体の仕組み

公費解体(災害等廃棄物処理事業)とは、自治体が所有者に代わって被災した家屋の解体を行い、その費用を国や自治体が負担する特例措置です。

本来、家屋の解体や撤去は所有者が責任と費用を負担するのが原則ですが、大規模災害時には個人での対応が難しく、建物を放置すると地域全体に悪影響を及ぼすおそれがあります。こうした事情から、公費解体制度が設けられています。

制度は、環境省や各自治体のマニュアルに基づいて運用されています。

法的には、公費解体は被災家屋を「災害廃棄物」とみなし、自治体が処理する仕組みです。所有者が申請し解体に同意すると、所有権は保持したまま、解体に関する権限を自治体に委任します。自治体は審査後に業者を選定・発注し、工事管理も担当します。

費用は自治体が業者へ直接支払い、国の補助金などが充てられるため、原則として所有者の金銭負担はありません。この仕組みにより、被災者は費用と手間の両面で負担を抑えながら、建物の解体を進められます。

対象となる災害

公費解体制度は、火災保険のようにすべての被害に適用される制度ではありません。
環境省の指針によると、個人では処理できないほど大規模な自然災害が対象とされています。

具体的には、自治体が「災害等廃棄物処理事業」を実施すると決定した災害に限り、公費解体が行われます。代表例は、広範囲に家屋被害が及ぶ大地震です。

能登半島地震の事例では、地震による倒壊だけでなく次のような複合的な被害も対象とされています。

  • 倒壊・損壊:地震の揺れで建物が倒れたり、著しく傾いたもの
  • 津波被害:津波により流出・損壊した家屋
  • 震災関連火災:地震に伴って発生した火災で焼失した家屋
  • 浸水被害:床上浸水により、構造の腐食や汚染が進んだ建物
  • 土砂災害:土石流などで押し流された、または埋没した家屋

制度を利用するには、激甚災害の指定などを受け、自治体が公費解体の実施を公式に決定・公表していることが前提となります。

一般的な失火による火災や、局地的な強風による一部破損、経年劣化による倒壊などは、通常この制度の対象外となります。お住まいの地域で制度が適用されているかどうかは、必ず自治体の発表をご確認ください。

過去の対象となった災害

公費解体はすべての災害で実施されるわけではなく、激甚災害において適用されてきました。

過去に実施された主な事例と、その規模は以下のとおりです。

▼過去の大規模災害における公費解体・処理実績表

災害名発生日解体・撤去棟数処理事業費(概算)
阪神・淡路大震災1995/1/17約47,000棟約3,300億円
東日本大震災2011/3/11約117,000棟約1.1兆円
熊本地震2016/4/14約38,000棟約1,200億円
能登半島地震2024/1/1約22,000棟(見込)数千億円規模(見込)

※数値は環境省の報告書や各自治体の完了報告に基づく概数です。
※「解体・撤去棟数」は、公費解体として申請・実施された数であり、全壊数そのものではありません。

過去の事例から、公費解体が適用される災害の共通する特徴をまとめました。

公費解体の対象となる災害の共通点

災害ごとに状況は異なりますが、過去の大規模災害の事例を見ていくと、公費解体が適用される災害には共通する特徴があります。単に建物が損壊しただけではなく、次の3つの条件が重なっている点が重要です。

  • 個人での対応が困難な被害規模
     津波による大量の廃棄物や道路寸断などにより、個人が業者を手配して解体できる範囲を超えている状況です。解体費用の自己負担が、被災者の生活再建を妨げるケースも含まれます。
  • 放置すると公共の安全や復興に支障が出る状態
     倒壊建物が道路を塞いだり、余震で周囲に被害を及ぼしたりするなど、地域全体に危険が及ぶ場合です。公衆の安全を守るため、行政の介入が必要となります。
  • 迅速な解体が地域再建に不可欠な状況
     自費解体を待つと復旧が長期化し、人口流出や地域の衰退につながるおそれがあります。早期復興のため、行政主導で解体を進める必要がある場合が対象となります。

過去に実施された公費解体の詳細は、以下のニュース解説記事で説明しています。あわせてご確認ください。

公費解体の対象となる条件・建物

ここでは、公費解体の対象となる条件や建物、対象外となるケースについて詳しく解説します。

「罹災(りさい)証明書」の判定区分

公費解体を申請するには、自治体が発行する「罹災証明書」が必要です。これは、災害による家屋の被害状況を公的に証明する書類で、公費解体の可否を判断する基準にもなります。

【り災(被災)証明書交付申請書の見本】※画像クリックで拡大できます。

石川県や環境省のマニュアル(令和6年能登半島地震)では、原則として「半壊」以上の判定を受けた家屋が、公費解体の対象とされています。

罹災証明書の主な判定区分と、公費解体の対象範囲は次のとおりです。

  • 全壊
     損害割合50%以上、または焼失・流出した状態。修復が困難で建て替えが必要と判断される。
  • 大規模半壊
     損害割合40%以上50%未満。大規模な補修が必要な状態。
  • 中規模半壊
     損害割合30%以上40%未満。
  • 半壊
     損害割合20%以上30%未満。

一方、準半壊や一部損壊(損害割合20%未満)は、原則として公費解体の対象外とされます。
これらは「修理して住み続ける」ことが想定されているためです。ただし、自治体によっては独自の支援制度が設けられている場合もあるため、詳細は窓口での確認が大切です。

なお、一次調査は外観確認が中心となるため、内部被害が十分に反映されず、実態より軽い判定となるケースがあります。判定結果に納得できない場合は、再調査(二次調査)が申請できます。再調査の結果、半壊以上に修正されれば、公費解体の申請が可能になります。

対象となる建物の種類

公費解体の対象は、住宅だけに限られません。被災地の復旧・復興を進めるため、環境省や石川県のマニュアルでは、次のような建物も一定の条件のもとで対象としています。

  • 住宅(住家)
     生活の拠点となっている建物。一戸建て住宅のほか、住居部分のある店舗併用住宅や、要件を満たすアパート・マンションなどの共同住宅も含まれます。
  • 付属建物
     住宅の敷地内にある住居以外の建物。倉庫、納屋、蔵、車庫(カーポートを含む)、作業場などが該当します。倒壊のおそれがある場合は、住家とは別に申請できるケースもあります。原則として、基礎・屋根・壁を備えた「建物」として確認できるものが対象ですが、未登記であっても固定資産税課税台帳などで確認できれば対象となる場合があります。
  • 事業用建物
     通常は自力再建が原則ですが、能登半島地震のような大規模災害では特例として公費解体の対象となる場合があります。中小企業者が所有する店舗、事務所、工場、旅館、農業用施設などが該当し、事業所用の罹災証明書などで被害が確認されていることが条件です。
  • 解体に伴い撤去されるもの
     建物本体の解体に付随して、基礎コンクリート、倒壊して避難路を塞いでいるブロック塀・門扉、重機搬入の支障となる立木(樹木)なども、原則として撤去対象に含まれます。

なお、庭石や池、舗装などの撤去範囲は自治体ごとに細かなルールが異なります。現地調査の際は必ず立ち会い、撤去対象を事前に確認しましょう。

家財道具や残置物の処分方法

公費解体の対象はあくまで建物ですが、災害時には家具や家電、衣類などが室内に残ったままのケースがほとんどです。家財の扱いについては、原則と災害時の状況を考慮した例外が設けられています。

ここでは、家財や残置物の取り扱い方法について解説します。

【原則】所有者が事前に撤去する

建物内部に立ち入れる状態であれば、貴重品や思い出の品、持ち出し可能な家財は、解体工事が始まる前に所有者自身で搬出します。室内に物が残っていると解体作業に支障が出るため、環境省のガイドラインでも事前の片付けが推奨されています。

【例外】立ち入りが危険な場合は建物と一緒に撤去

建物が倒壊・大きく損壊している場合や、浸水・土砂流入によって家財が使用不能になっている場合は、家財道具を建物と一緒に災害廃棄物として処分することが認められています。この場合、重機で建物ごと解体・撤去されます。

エアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機などの家電4品目は、通常は所有者負担で処分しますが、公費解体では取り外しが困難なケースが多いため、建物と一緒に公費で撤去・処分されることが一般的です。ただし、運用は自治体ごとに異なるため、申請時の確認が必要です。

家財を残したまま解体する場合の注意点

家財を残したまま公費解体を申請する場合、提出書類の中で解体時に室内に残っている物が処分されることに同意します。これは、工事の過程で家財が撤去・廃棄されても、後から返却や補償を求めないことを意味します。

【被災家屋等の解体等に係る同意書の見本】※画像クリックで拡大できます。

解体前に、次のような貴重品・記念品は必ず持ち出しましょう。

  • 現金
  • 通帳・キャッシュカード
  • 実印・印鑑類
  • 権利証(登記済証)
  • 位牌・遺影
  • 写真アルバム・重要書類

また、灯油・ガスボンベ・農薬などの危険物は、解体時の火災や事故につながるおそれがあります。可能な限り事前に撤去するか、撤去が難しい場合は、保管場所を解体業者に必ず伝えておきましょう。

公費解体の対象外となるケース

公費解体は、災害により「廃棄物」となった建物を処理するための制度です。
そのため、被害が軽い場合や、権利関係が未整理の場合などは対象外となります。

ここでは、主な対象外ケースをご紹介します。

  1. 被害判定が軽微な場合
  2. 権利者全員の同意が得られない場合
  3. 大企業が所有する建物
  4. 建物以外のもの・土地整備
  5. すでに修理・使用を継続している建物

1.被害判定が軽微な場合

罹災証明書で「一部損壊」「準半壊」と判定された建物は、原則として公費解体の対象外となります。この場合、「修理すれば引き続き使用できる」と判断され、解体ではなく応急修理制度などの支援を活用して修繕するのが一般的です。

ただし長屋や連棟式建物のように、隣接する建物が全壊して一体で解体せざるを得ないケースでは、個別相談により公費解体の対象となる場合もあります。

2.権利者全員の同意が得られない場合

申請にはすべての権利者の同意が必要となるため、共有名義や相続未了、借家人がいるケースでは注意が必要です。

  • 共有名義・相続中: 相続人全員の同意が必要
  • 親族間で合意が取れない場合: 一人でも反対があると申請不可
  • 借家人がいる場合: 借主の同意や退去が完了するまで申請できない
運営者 稲垣

相続未登記のご実家などで、所有者全員の同意書が揃えられないケースは少なくありません。
しかし近年は法改正が進み、たとえば能登半島地震では、代表者が「将来トラブルが生じた際は自身の責任で解決する」という宣誓書を提出することで申請を受理する自治体も出てきています 。
諦める前に、こうした特例措置が使えないか行政に確認することが重要です。

公費解体・撤去に向けた手続を円滑化・迅速化する方策として、建物の滅失の登記や、所有者不明建物管理制度及びいわゆる宣誓書方式を活用することができます。

引用:令和6年能登半島地震によって損壊した家屋等に係る公費解体・撤去に関する申請手続等の円滑な実施について(概要)|石川県

3.大企業が所有する建物

中小企業基本法の対象外となる企業(大企業)が所有する店舗・工場・事務所などは、自力での復旧・処理が可能と判断されるため原則として対象外です。

なお能登半島地震では、中小企業に限り特例措置が設けられたため、自治体によって異なる場合があります。

4.建物以外のもの・土地整備

制度の対象は「建物とその基礎」までなので、以下は公費解体の対象外です。

  • 土地そのもの:土砂崩れ、地盤沈下、宅地造成など
  • 農地・山林:倒木処理や農地のガレキ撤去
  • 自動車:原則は所有者処理

なお、分野別に支援制度が用意される場合があります。
農林水産省では、農地が崩れたり農業用ハウスが壊れたりした場合の支援制度があります。

災害対策室では、降雨、洪水、暴風、地震等異常な天然現象により被害を受けた農地・農業用施設について、農業生産の維持を図るとともに、農業経営の安定に寄与することを目的として、農地・農業用施設の災害復旧事業を推進しています。

引用:災害復旧事業|農林水産省

5.すでに修理・使用を継続している建物

被災後に修理やリフォームを行い、居住・使用を続けている建物は、「廃棄物」とはみなされず公費解体の対象外となります。

「公費解体」と「自費解体(費用償還)」の違い

被災した建物を解体・撤去する制度には、「公費解体」と「自費解体(費用償還)」の2つがあります。
いずれも最終的な費用は国や自治体が負担しますが、業者との契約主体、解体までのスピード、支払いの流れに大きな違いがあるため、ご自身の状況に合った方法を選びましょう。

自費解体(費用償還制度)とは

自費解体とは、所有者が自ら解体業者を選んで契約・解体を行い、支払った費用を後から自治体に請求する制度です(正式名称:解体撤去費用の償還制度)。
公費解体は申請順で待ち時間が生じるため、少しでも早く解体したい場合に選ばれます。

注意点は、支払った費用が必ず全額償還されるわけではないことです。自治体ごとに定められた基準額があり、次のうち低い金額が償還対象となります。

  • 自治体の標準単価 × 延床面積
  • 実際に支払った解体費用

そのため、相場より高額な契約や特殊工事が発生した場合、差額は自己負担になります。

この申請には、解体前・解体中・解体後の写真(撮影日付き)や、廃棄物処理の証明書が必要です。これらが不足すると請求できないため、事前に業者と確認しておく必要があります。

【比較表】公費と自費、どっちを選ぶべき?

「公費解体」と「自費解体(費用償還)」は、それぞれ手続きの負担や解体までのスピード、費用の考え方が異なります。ご自身の資金状況や再建までのスケジュールを踏まえ、無理のない方法を選ぶことが大切です。

「手間や費用負担を抑えたい」なら公費解体、「早さを優先したい」なら自費解体が向いています。主な違いは以下のとおりです。

  • 公費解体: 手出しなしで利用でき、業者の手配も不要。ただし申請順となるため、解体まで時間がかかる場合がある。
  • 自費解体: 早期に解体でき、業者も自由に選べるが、一時的に解体費用を立て替える必要がある。

【比較表】公費解体と自費解体(費用償還)の違い

項目公費解体自費解体(費用償還)
費用負担
原則0円一時的な立替が必要
※基準超過分は自己負担
スピード遅い早い
手続き簡単(申請のみ)複雑(業者選定・契約・写真管理・請求)
対象条件半壊以上など公費解体と同じ

補助金制度も検討する

自費で解体する場合でも、自治体によっては「老朽危険家屋解体撤去補助金」などの支援制度を利用できる場合があります。
公費解体とは別枠の制度となるため、条件や内容を自治体の窓口や公式情報で確認しておくと安心です。

なお、補助金制度については下記の記事に詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

公費解体の必要書類と申請の流れ

公費解体は、申請すればすぐに解体が始まる制度ではありません。自治体による審査や現地確認、業者選定を経て、順番に実施されます。
ここでは、一般的な申請の流れと、事前に準備しておくべき書類を整理して解説します。

必要書類の一覧

必要書類は自治体ごとに多少異なりますが、石川県などのマニュアルを基にした基本的な書類は以下のとおりです。とくに権利者全員の同意が必要な点は重要です。

  • 公費解体申請書:自治体の窓口や公式サイトで入手が可能。
  • 罹災(りさい)証明書の写し:「全壊」「大規模半壊」「半壊」などの判定が記載されたもの。
  • 本人確認書類の写し:運転免許証、マイナンバーカードなど。
  • 建物配置図:敷地内のどの建物を解体するかを示した図面。
  • 現況写真:建物全景や被害状況がわかる写真。(解体後は証拠が残らないため、複数枚撮影・保存しておくことが重要)
  • 所有者が確認できる書類:固定資産税課税明細書、名寄帳、登記事項証明書など。
  • 権利者の同意書:
    • 共有名義:名義人全員の同意
    • 相続未了:相続人全員の同意と戸籍関係書類
    • 借家人あり:借家人の同意または退去確認書類

【事業申請書の見本】※画像クリックで拡大できます。

申請から解体完了までの流れ

手続きは、大きく3つのステップで進みます。
所有者の対応が必要なのは主に最初の段階で、その後は自治体主導で進みます。

ステップ1:申請・現地調査

書類を揃えて自治体窓口に提出します。審査後、担当者が現地を訪問し、解体対象や撤去範囲を確認します。
原則として所有者(または代理人)の立会いが必要です。

ステップ2:業者選定・発注

現地調査の結果をもとに、自治体が解体業者を選定・発注します。
公平性の観点から、所有者が業者を指定することはできません。

ステップ3:解体工事・完了確認

準備が整い次第、解体工事が開始されます。工事完了後、自治体が現地確認を行い、問題がなければ完了です。
なお、建物滅失登記は原則として所有者が行いますが、自治体が代行する場合もあるため確認が必要です。

申請受付から着工までのスケジュール

公費解体の申請が受理されてから解体着工までには時間がかかる点を理解しておきましょう。

大分市の令和7年佐賀関大規模火災への対応では、申請受付期間やスケジュール表が公開され、申請後に窓口提出→現地調査→日程調整→解体工事と進む仕組みが示されています。

解体作業開始は申請受付後のタイミングに合わせるため、申請から着工まで数週間〜数か月程度の期間を要することが想定されます。この待機期間は被災規模や申請件数、自治体の業務体制によっても前後します。

公費解体は順番待ちが基本であることを念頭に置き、自費解体(費用償還制度)も選択肢として検討することもオススメです。

 公費解体を申請する際の注意点・トラブル対策

公費解体は費用負担がなく利用できる一方で、解体後の税金や近隣トラブル、悪質な業者による被害など、事前に知っておくべき注意点もあります。
後から困らないために、大切なポイントを確認しておきましょう。

固定資産税の特例措置への影響

住宅が建っている土地は「住宅用地の特例」により固定資産税が軽減されていますが、解体して更地になると、翌年から税額が大幅に増えるのが一般的です。

住宅用地の特例


ただし、被災地では救済措置として「被災住宅用地の特例」が適用され、一定期間は住宅があるものとして軽減措置が継続されるケースが多くあります。

災害により滅失又は損壊した住宅の敷地の用に供されていた土地については、市町村長が認めた場合に限
り、被災後2年度分(被災市街地復興推進地域内の土地については被災後4年度分。)の固定資産税等について住宅用地特例を適用し、被災者の負担を軽減する措置がとられている。

引用:令和7年度地方税制改正(税負担軽減措置等)要望事項|総務省

この特例は自治体によって申告が必要な場合や、適用期間が定められている場合があります。
そのため公費解体を申請する際は、税務課に解体後の税金の扱いと必要手続きを必ず確認しておきましょう。

隣地境界や塀の扱い

解体工事でとくにトラブルになりやすいのが、隣地との境界にあるブロック塀や擁壁の扱いです。民法第229条では、境界線上に設けられた塀は原則として隣地所有者との共有物と推定されています。

(境界標等の共有の推定)
第二百二十九条
 境界線上に設けた境界標、囲障、障壁、溝及び堀は、相隣者の共有に属するものと推定する。

引用:民法(明治二十九年法律第八十九号)|e-Gov法令検索

そのため、たとえ自分の敷地側から工事を行う場合であっても、共有者であるお隣の同意なく撤去することは、民法第251条により認められていません。無断で撤去した場合、損害賠償を求められるなど、後のトラブルに発展するおそれがあります。

(共有物の変更)
第二百五十一条
 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。

引用:民法(明治二十九年法律第八十九号)|e-Gov法令検索

(不法行為による損害賠償)
第七百九条
 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

引用:民法(明治二十九年法律第八十九号)|e-Gov法令検索

また、基礎や擁壁を撤去すると隣地が崩れるおそれがある場合、自治体の判断で一部を残すこともあります。現地立会いでは、撤去範囲と残す部分を関係者全員で確認し、記録に残すことが重要です。

便乗商法・悪徳業者への注意

災害後は、公費解体を装った詐欺や不当な勧誘が発生しやすくなります。
「お金を払えば解体を早められる」「申請を代行する」といった話は要注意です。公費解体の順番は自治体が管理しており、金銭で変わることはありません。

また、解体予定の空き家を狙った金属盗難も多発します。貴重品は早めに持ち出し、不審な業者や人物を見かけた場合は、警察や自治体へ速やかに相談しましょう。

困ったときの相談窓口・情報ツール

災害時は電話が混み合い、役所に問い合わせづらくなることがあります。
公費解体の受付開始や説明会の案内を逃さないためにも、自治体が提供する防災アプリや公式の情報配信ツールを、平時のうちにインストールしておくと安心です。

まずは自治体の特設窓口・公式サイトへ

公費解体の手続きは、お住まいの市区町村が窓口となります。災害発生後は、自治体の公式サイトに特設ページが開設されるのが一般的です。
電話がつながらない場合でも、アプリやLINE連携による通知で最新情報を確認できる場合があります。

【地域別】便利な公式防災アプリ・情報ツール

公費解体に関する情報は、「復旧・復興情報」として防災アプリから配信されるケースが多くあります。
対象地域の方は、ぜひ活用してみましょう。

東京都エリア

ツール名:東京都防災アプリ
特徴:東京都公式の防災アプリで、避難行動の確認や防災マップの閲覧が可能です。オフライン対応のため、通信環境が不安定な状況でも役立ちます。

長野県エリア

ツール名:信州防災アプリ
特徴:河川水位や土砂災害の危険度をリアルタイムで確認できます。避難計画の作成や、罹災証明の受付開始など重要なお知らせを通知で受け取れます。

静岡県エリア(事例紹介)

ツール名:静岡県防災
特徴:危険度マップや避難所案内に加え、平時から備えるための機能も充実。緊急時には県・市町からの情報が一括で配信されます。

福岡県エリア

ツール名:ふくおか防災ナビ・まもるくん
特徴:現在地に応じた避難所情報や気象警報を受信できます。豪雨災害時の避難判断にも役立つツールです。

【FAQ】公費解体に関するよくある質問

公費解体と自費解体、費用は具体的にどれくらい違いますか?

差額は、0円〜数十万円、場合によっては100万円前後になることもあります。
なぜなら、公費解体は原則として自己負担がありませんが、自費解体(費用償還制度)では、自治体が定めた基準額を超えた分は返金されない仕組みだからです。

問 30 自費で解体・撤去して解体工事業者へ支払った金額は全額償還されるのか。
○償還する額の上限は、市町村が当該建物を公費解体すると仮定して算定した額(基準額)となる。申請
者から解体工事業者への支払金額が上限を上回る場合、自己負担が発生する場合がある。(基準額は、
基本的に解体・撤去した家屋等の延床面積に市町村が定める構造別単価を乗じて算定する。)なお、家
屋等の延床面積は、原則、登記事項証明書、固定資産税評価・課税証明書による。

引用:公費解体・撤去マニュアル 第5版|石川県

自費解体では、環境省の指針に基づき、自治体ごとに「基準額(標準単価 × 延床面積)」が設定されています。償還されるのはこの上限までで、実際の解体費用が基準額を上回った場合、その差額は自己負担となります。

たとえば、令和6年能登半島地震における石川県の運用では、建物構造ごとに㎡単価が定められています。しかし、被災地では人件費や廃棄物運搬費が高騰し、業者見積もりが基準額を超え、数十万円〜百万円規模の持ち出しが発生するケースも想定されます。

そのため、自費解体を選ぶ場合は、事前に自治体の基準額を確認し、複数の業者から見積もりを取って比較することが重要です。


家の解体費用についての詳細は、以下の記事にて解説していますのでぜひあわせてご覧ください。

自宅のブロック塀や物置だけでも公費解体の対象になりますか?

原則として対象外です。

公費解体制度は、生活再建のために「被災家屋全体」を解体・撤去する場合を対象としています。

問 15 家屋の一部だけを解体・撤去する場合は対象となるか。
○補助対象とならない。被災家屋全体を解体・撤去する場合のみ対象となる。

引用:公費解体・撤去マニュアル 第5版|石川県

したがって、「母屋は修理して住み続けるが、壊れた物置やブロック塀だけを公費で撤去したい」という単独での申請はできません。

公費解体を知らずに、自費で先に解体してしまいました。後から申請して費用は戻りますか?

解体完了後に、公費解体の申請はできません。
公費解体は、自治体が発注者となり解体業者に工事を依頼する制度のため、すでに所有者が業者と契約・完了した工事を、後から公費解体として扱うことはできないからです。

すでに解体済みの場合は、費用償還制度(自費解体)での申請が対象となります。ただし、返金されるのは全額ではなく、自治体が定める基準額までとなる点に注意が必要です。

まとめ

ここまでは、公費解体の仕組みや対象条件、申請から解体完了までの流れ、注意点について解説してきました。

最後に、公費解体を検討するうえで、とくに重要なポイントを整理します。
制度を使うべきか、自費解体も視野に入れるべきかを判断するため、まずは次のチェックリストでご自身の状況を確認してみてください。

▼公費解体を検討するためのチェックリスト

  • 罹災証明の判定は?(全壊/それ以外)
  • 生活や事業の再建を急ぐ理由は明確か?(はい/いいえ)
  • 自費解体の場合、費用は捻出できそうか?(補助金も考慮して はい/いいえ)
  • 建物の所有権や境界線に問題はないか?(問題なし/確認が必要)
  • もし公費解体の対象外だった場合、すぐに行動できる準備はできているか?(はい/いいえ)

このチェックを通じて、ご自身が「公費解体を待つべき状況なのか」「別の選択肢も検討すべきか」が整理しやすくなります。

公費解体は申請から着工までに一定の時間を要する制度です。生活再建を見据えて公費解体にこだわりすぎず、自費解体を含めた複数の選択肢を比較しましょう。

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この記事を書いた人

「解体工事でお悩みの方に、同じ主婦の立場から実用的な情報をお届けします。」

数多くのお客様や業者様へのインタビューを通じて、お客様が抱えるリアルな悩みに精通。実際の解体工事現場での取材を重ね、特に「お金」や「近隣トラブル」といった、誰もが不安に思うテーマについて、心に寄り添う記事を執筆。子育て中の母親ならではの、きめ細やかな視点も大切にしている。

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