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解体工事で養生シートなしってどうなの?リスクと対策を専門家が解説

解体工事で養生シートなしってどうなの?リスクと対策を専門家が解説
なやみん

近所で養生シートしないで解体してる現場を見たんだけど、大丈夫なのかな?

結論を言うと、養生シートなしの解体工事は危険です。

実際、養生シートなしで解体工事を行ったために近隣住民から苦情が寄せられ、工事が中断してしまった事例が報告されています。周囲の安全を確保し、近隣トラブルを防ぐために養生シートは大切な役割を果たすのです。

この記事では、養生シートなしで解体工事を行うリスク近隣トラブル、養生シートの費用相場チェックポイントについて専門家の視点で解説します。

この記事を読めば、養生シートの重要性を理解し、養生シートの設置について適切な判断ができるようになります。

3行で分かる!解体工事における養生シートのポイント
  • 周囲の安全確保、プライバシー保護。粉じんや騒音から近隣住民を守る役割がある
  • 養生シートなしで解体工事をしたことで近隣トラブルに発展した事例がある
  • 業者の養生シートをチェックすることは、安心安全な解体業者の選別に役立つ
この記事の監修者

中野達也。一般社団法人あんしん解体業者認定協会理事。解体工事業の技術管理者であり、解体工事施工技士を保有。2011年に解体業者紹介センターを鈴木佑一と共に創設。2013年に一般社団法人あんしん解体業者認定協会を設立し、理事に就任。めざまし8(フジテレビ系列)/ひるおび(TBS系列)/ 情報ライブ ミヤネ屋(日本テレビ系列)/バイキングMORE(フジテレビ系列)など各種メディアに出演。

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目次

解体工事、養生シートなしでも本当に大丈夫?

養生シートしてない解体現場を見たんだけど…

養生シートの役割とは?

1.粉じんの飛散防止

解体作業中には大量の粉じんが発生します。養生シートを使用することで粉じんが周囲に飛散するのを防ぎ、近隣住民や通行人への影響を最小限に抑える効果が期待されます。

2.騒音の軽減

解体作業は騒音を伴うため、養生シートを設置することで音の拡散を抑えられます。これにより、近隣住民からのクレーム減少につながります。

3.安全対策

養生シートは、解体作業中に予期せず飛散した建材の破片が周囲へ飛散するのを防ぐ役割も果たします。それにより、周辺道路の通行人や、近隣住民の安全を守ります。

4.プライバシーの保護

養生シートは、解体中の建物内部が外から見えないようにし、依頼主のプライバシーを保護します。また、工事中は高所での作業もあるため隣家のプライバシーを侵害してしまう可能性があります。養生シートを設置すると作業中に窓から隣家の室内が見えてしまうなどの事態を防ぎ、近隣住民のプライバシーも保護します。

5.美観の維持

解体工事は街の景観を損ねる可能性がありますが、養生シートを使用することで解体現場の見た目を和らげる効果があります。これにより、近隣からの工事に対する理解と協力を得やすくなります。

解体工事の専門家 中野達也

養生シートの中には防音性や耐火性が備わったシートがあります。それらを使用すると防音効果や防火効果が加わり、工事の安全性がより高まります。

養生シートなしで解体工事をするのは違法?

実は、解体工事において養生シートを設置しないこと自体は違法ではありません。現在の法律上、養生シートの設置は義務ではないため、設置しなくても法的な罰則はありません。ただし、養生シートを設置しないことで規定を上回るレベルの騒音を出したり、近隣住民の健康を害する量の粉じんを発生させたりした場合は、各規則に従って罰則が与えられる可能性があります。

また、周辺の住民が被害を訴えれば、損害賠償問題に発展することも考えられます。そのため、解体工事において粉じんの飛散や騒音を防ぐ重要な役割を果たす養生シートは、近隣住民への配慮として設置が推奨されています

「建築物解体工事共通仕様書」の内容

国土交通省が発行した「建築物解体工事共通仕様書」では、解体工事を行う際は養生シートの設置や散水(※)の実施を基準として制定しています。

(※)「散水」とは、粉じんが発生しづらくするために、解体を行っている箇所にホースなどを使って水を撒くことです。

建設業法を取り締まってる国土交通省。ここで発行している解体工事の仕様書には、解体工事を行う手順の中に「養生シートを隙間なく取り付ける」という旨の記載があります。このことから、法律として取り締まってはいないものの、解体工事において養生シートの設置は重要な工程だとわかります。

養生シートなしで解体工事が行われる例

  • 近隣との距離
    解体現場が近隣の住宅から十分に離れている時は、養生シートを設置せずに工事が行われる場合があります。
  • 立地による特例
    隣家との隙間がないなど、どうしても養生シートを張れない場合は、粉じんの飛散を防ぐための他の対策(手壊し作業や散水など)を講じることで養生シートなしでの工事が進められる場合があります。
  • 騒音レベル
    重機を使わない解体など、解体作業による騒音が騒音規制法で定められた基準値以下であることが確実な場合は、養生シートを設置する必要はありません。ただし、その場合も粉じんの飛散は予防しなければならないため、防音シート以外の種類の養生シートを使用するのが一般的です。
なやみん

周囲の安全が約束されている工事では、養生シートを設置しない場合もあるんだね!

養生シートなしの解体工事は危険

養生シートなしの3大リスク

解体工事で養生シートが使われていないと、近隣の方々は不安になると思います。被害を訴えるまではいかずとも、日常生活にさまざまな支障が出てしまう可能性があります。

ここでは養生シートがない場合に考えられるリスクと、実際に起こりうる被害の事例をご紹介します。

粉じんによる健康被害

「粉じん」とは物の破砕・選別・その他の機械的処理または堆積に伴い発生し、または飛散する物質を指します。

環境省では、解体作業中に出た粉じんを「特定粉じん」・「一般粉じん」と区別し、そのうち人の健康に被害を生じるおそれのある物質を「特定粉じん(石綿)」としています。

人体に深刻な被害を与えるとされている「特定粉じん(石綿)」。しかし、「一般粉じん」についても、長期にわたって吸入し続けると咳や喉の痛みを引き起こす可能性があります。とくにアレルギー体質の方は、粉じんに対して敏感な場合が多く、くしゃみや鼻水などのアレルギー症状や呼吸器系の疾患を引き起こしてしまうかもしれません。

一般粉じんの吸引が原因で発症する可能性のある疾患

じん肺

じん肺とは、長期間にわたり微細な粉じんを吸入することで引き起こされる職業性の肺疾患です。主に鉱物や金属、研磨材などの粉じんが原因となり、肺の組織が線維化して硬くなり呼吸機能が低下します。じん肺は進行性の病気であり、一度発症すると完全に回復するのは難しいため、早期の発見と適切な対策が重要です。

じん肺の症状】

  • 咳や痰:初期症状として咳や痰が増加します。
  • 呼吸困難:肺の線維化が進むと、呼吸が困難になり、息切れを感じる場合があります。
  • 合併症:じん肺は気胸や気管支炎、さらには肺がんなどの合併症を引き起こすリスクが高まります。
過敏性肺炎

過敏性肺炎(かびんせいはいえん)は、特定の抗原(アレルゲン)を繰り返し吸入することで引き起こされるアレルギー性の肺疾患です。この疾患は、咳、呼吸困難、発熱、倦怠感などの症状を伴い、急性または慢性の形で現れる場合があります。

過敏性肺炎の症状は、急性と慢性に分類されます。

  • 急性過敏性肺炎:曝露後数時間以内に症状が現れ、発熱、咳、呼吸困難が急速に悪化します。抗原からの除去により、症状は数日以内に改善することが多いです。
  • 慢性過敏性肺炎:症状は徐々に進行し、持続的な咳や息切れ、体重減少、疲労感が見られます。慢性化すると、肺の線維化が進行し、呼吸機能が低下するリスクがあります。
喘息(ぜんそく)

喘息とは、気道に慢性的な炎症が起こる病気で、主に咳や呼吸時にゼーゼー、ヒューヒューという音がする喘鳴(ぜんめい)、呼吸困難などの症状が繰り返し現れます。この病気はアレルギーや環境要因、ストレスなどによって引き起こされる可能性があります。

【喘息の症状】

  • :とくに夜間や早朝に悪化する場合が多い。
  • 喘鳴(ぜんめい):呼吸時に音が鳴る状態。
  • 呼吸困難:息が苦しくなる感覚。
  • 胸の圧迫感:胸が締め付けられるような感覚。

これらの症状は、喘息の発作中にとくに強く現れます。

粉じんの健康被害は、吸い込むことによる影響だけでなく、鉄粉など粉じんの種類によっては目への刺激などの症状を発生させてしまう恐れもあります。

特定粉じん(石綿)の吸引が原因で発症する可能性のある疾患

肺がん

肺がんとは、肺の細胞が異常に増殖し、制御ができなくなることで発生する悪性腫瘍の一種です。この病気は、主に気管支や肺胞の細胞ががん化した結果として現れます。肺がんは、全世界でもっとも多くのがん関連死を引き起こす原因となっています。

肺がんの症状】

肺がんの初期症状はあまり目立たない場合が多いですが、以下のような症状が現れることがあります。

  • 持続的な咳
  • 胸の痛み
  • 息切れ
  • 血痰(咳をした際に血が混じること)
  • 原因不明の体重減少
  • 疲労感

これらの症状は他の呼吸器疾患とも共通しているため、早期発見が難しい場合があります。

中皮腫(ちゅうひしゅ)

中皮腫とは、中皮細胞から発生する悪性腫瘍の一種で、主に胸膜、腹膜、心膜、精巣鞘膜などの膜に発生します。中皮腫の主な原因はアスベスト(石綿)への曝露です。アスベストは過去に建築材料や工業製品に広く使用されており、曝露から30~40年の潜伏期間を経て発症することが多いです。中皮腫患者の約80%がアスベストに曝露されたことが確認されています。

【中皮腫の症状】

  • 胸膜中皮腫: 息切れ、胸痛、咳、胸水の貯留による圧迫感など。
  • 腹膜中皮腫: 腹部の膨満感、腹痛、食欲低下、体重減少など。

特定粉じんに指定されている「石綿(いしわた)」は、別名「アスベスト」と呼ばれています。天然に存在する繊維状の鉱物であるアスベストは耐熱性や耐久性に優れ、以前は多くの建材に使用されていました。しかし、空気中に飛散したアスベストを吸入することで健康に深刻な影響を及ぼすとわかり、現在日本では使用が禁止されています。

アスベスト被害に関するニュース

アスベストによる健康被害は過去に多くの人々を苦しめてきました。その粉じんの危険性を考えると不安に感じるのは当然のことです。しかし、現在は解体工事におけるアスベスト対策が厳格化されていますのでご安心ください。

現在、解体工事を行う際には、アスベスト含有建材の有無を事前に調査することが法律で義務付けられています。この調査は、特定のアスベスト調査の資格者が実施します。

解体工事の専門家 中野達也

現在の法律では、知らずにアスベストを飛散させてしまうような状況はまず発生しないでしょう。

▼アスベストの危険性や解体工事前に行われる調査についての記事はこちら▼

粉じんによる健康被害を防ぐための規制

粉じん障害防止規則

粉じんにさらされる労働者の健康障害を防止するために、労働安全衛生法に基づいて制定された規則です。

作業者は防塵マスクなど個人保護具を着用しなければなりません。とくに、高濃度の粉じんが発生する現場では、高性能の保護具が必要です。また、粉じんを吸い続けると発症する肺の病気「じん肺」にかかるのを防ぐ為、作業に従事する労働者は定期的に健康診断を受けることが義務付けられています。

大気汚染防止法

私たちの健康や生活環境を守るために、工場や事業所などから出る「粉じん」などの汚染物質が空気中に広がるのを防ぐための法律です。粉じん被害を防ぐため、大気汚染防止法では主に特定粉じん(石綿/アスベスト)一般粉じんの2種類の粉じんを規制しています。特定粉じんについては先述した通り、アスベストに関する規制が適用されます。

▼一般粉じんに関する規制

工場や事業場など一定以上の粉じんを発生させる施設は一般粉じん発生施設とされ、粉じんの発生を抑制し、環境への影響を最小限に抑えるための基準や手続きが設けられています。

一般粉じん発生施設は、粉じんが飛散しにくい構造であることや散水設備を設けることなど、法律で定められた基準を遵守する義務があります。

解体工事の専門家 中野達也

一般粉じん発生施設を設置するには、都道府県知事または市長に届出を行い、厳しい構造基準や管理基準をクリアする必要があります。

解体工事中の粉じん被害事例

解体工事による粉じんに対して住宅紛争処理支援センターへ寄せられた相談

隣地の工事による粉じんに悩まされている。粉じんの適切な処理を求めたい。

騒音による近隣トラブル

環境省が実施した令和5年度の「騒音規制法等施行状況調査」の結果によると、騒音に関する苦情のうち「建設作業」に対する苦情がもっとも多く、全体の37.5%を占めています。

※画像クリックで拡大できます。

画像引用:騒音規制法施行状況調査|環境省

解体工事中の騒音被害事例

解体工事中の騒音トラブルニュース

解体工事から発生した騒音・振動により不眠になり、休業を余儀なくされたとして、近隣住民が建設会社に対し、損害賠償金合計311万7,661円の支払を求めた事件

騒音規制法

騒音規制法は、工場及び事業場における事業活動並びに建設工事に伴って発生する相当範囲にわたる騒音について必要な規制を行うとともに、自動車騒音に係る許容限度を定めること等により、生活環境を保全し、国民の健康の保護に資することを目的とする。

引用:騒音規制法の概要|環境省

騒音規制法の4つの規制のうち、解体工事に関係があるのは、「2、建設作業騒音の規制」です。

  • 工場・事業場騒音の規制
  • 建設作業騒音の規制
  • 自動車騒音の規制
  • 深夜騒音等の規制

騒音規制法では、特定建設作業を行う場合は、騒音の大きさや作業時間等が次のとおり定められています。

スクロールできます
特定建設作業における建設作業騒音の規制
規制の区域第1号区域第2号区域
騒音の大きさ敷地境界において85デシベルを超えないこと
作業時間帯19:00~7:00に行われないこと22:00~6:00に行われないこと
作業期間1日あたり10時間以内1日あたり14時間以内
連続6日以内
作業日日曜日、その他の休日でないこと

第1号区域:良好な住居の環境を保全するため、とくに静穏の保持を必要とする区域(学校、病院等の周囲おおむね80mの区域等)。
第2号区域:生活環境を保全すべき地域のうち、1号区域以外の区域。

特定建設作業とは

指定地域内で行われる特定建設作業に伴って発生する騒音を規制しており、著しい騒音を発生する建設作業が特定建設作業として定められています。

特定建設作業に使われる重機

※定格出力など基準の詳細については、「騒音規制法パンフレット|環境省」をご確認ください。

解体工事の専門家 中野達也

特定建設作業を行う場合は、作業開始日の7日前までに市区町村長への届出が必要です

騒音規制法の罰則
  • 建設工事作業で市区町村長の命令を受け入れず基準値以上の騒音工事を行った場合、5万円以下の罰金に処す。(第30条)
  • 無届または虚偽の届出や報告をした場合、3万円以下の罰金に処す。(第31条)

飛散物による事故のリスク

養生シートなしの解体工事現場付近を通る際は、可能な限り現場に近づかないことが重要です。

特に、解体作業中は、建物の破片や粉じんが突然飛散する可能性があります。予期せぬ事故を防ぐためにも、現場から十分な距離を保ち、安全を確保してください。

破片飛散の危険性

解体作業中に発生する建材の破片などの飛散物は、近隣住民や通行人に深刻な危害を及ぼす可能性があります。

解体工事は多くの場合、重機を操作して作業を進めるため、意図せずに破片が周囲に飛散してしまう可能性があります。養生シートをしていなかった場合、建材の破片が外に飛び出し大変危険です。

  • 人身事故
    飛散した破片が通行人に当たって重大な怪我をする危険性があります。養生シートを設置していない解体現場の前を歩くのは通行人にとって非常に危険です。
  • 物的損害
    物的損害により近隣住民に怪我を負わせたり、損害賠償請求に発展したりする場合があります。解体工事中に飛散した破片が隣家の外壁を傷つける、窓ガラスを割るなどの事例が報告されています。
解体工事中の飛散物トラブル事例

隣家の解体工事で飛散してきた石により、外壁に2箇所損傷が生じました。

工具落下の危険性

解体工事中に飛散するのは建材の破片だけではありません。解体作業で使用する工具が誤って落下したり外へ飛び出したりする可能性もあります。

もしも養生シートの設置を怠った場合、落ちた工具が跳ね返り、通行人や周りで作業している他の作業員に当たるなどの大きな事故につながってしまいます。

近隣建物への重機接触

飛散とは違いますが、解体工事中の重機の操作ミスにより、隣家の外壁を傷つけてしまう事例もあります。養生シートは飛散物だけではなく、もしもの場合に重機などが隣家と接触するのを防ぐ役割も担っています。

なやみん

養生シートをしていない解体工事現場の前を歩くのは危険だから、できるだけ近づかないようにしようね!

養生シートの費用相場と内訳

養生シートに関する費用

養生シートの種類と費用

解体工事や建設現場で使用されるシートには、さまざまな種類があります。それぞれが異なる特徴を持っており、シートによって1m2あたりの費用相場が違います。以下が解体工事でよく使われる養生シートの一覧です。

  • 防塵シート
  • 防音シート
  • 防炎シート(防火シート)
  • メッシュシート
  • パネル養生

防塵シート

防塵シート

工事中に発生する粉じんの飛散を防ぎ、作業員の視界や呼吸環境を確保します。通気性がありながら粉じんを防ぐ効果があるため、解体工事でよく使われます。

1m2あたりの相場:300円~700円

防音シート

防音シート

騒音を低減するために使用され、とくに住宅密集地での工事に適しています。シートに厚みがあるため音を遮る効果が高く、近隣住民への配慮として重要です。

1m2あたりの相場:500円~1,000円

防炎シート(防火シート)

燃えにくい加工が施されており、火災リスクを低減します。解体工事では、鉄筋や鉄骨などの金属を切断するときに出る火花の飛散を防ぐために使われます。

1m2あたりの相場:700円~1,200円

メッシュシート

メッシュシート

風を通すことのできるメッシュ構造のシートを活用することで、風により足場が倒れてしまう事故を防ぎます。とくに海辺や山など風の強い場所での工事で活躍します。

1m2あたりの相場:200円~600円

パネル養生

固定されたパネル状の養生で、とくに強い衝撃や圧力から保護するために使用されます。鉄筋コンクリート造など頑丈で大きめの建物解体時に使用する場合が多いです。

1m2あたりの相場:2,000円~5,000円

これらのシートは工事の種類や規模だけでなく、周囲の環境に応じて適切に選択されることが重要です。費用は解体する地域や解体業者によって異なるため、解体を依頼する業者によっては相場から外れる場合もあります。

解体工事の専門家 中野達也

建物を壊す際に大きな音が出るため、解体工事では防音シートを使っている現場が多いです。

養生シートの設置方法

養生シートを取り付けるためには、まず足場(※)を設置します。

(※)「足場(あしば)」とは、建物の解体や建設作業を行う際に、作業員が安全に作業を行うために設置される構造物です。主に金属製のパイプや板を組み合わせて作られ、登ることで作業員が高所での作業を行いやすくします。

先に設置した足場に養生シートを紐で括り付け固定します。このように、養生シートの設置に足場は必須なので、養生費には足場の設置費用が含まれる場合が多いです。

養生シートを設置する様子

養生シート設置にかかる費用

見積書の中で、養生シートの設置は「仮設養生費」や「仮設工事費」と呼ばれる項目に含まれます。仮設養生費には、足場を設置し養生シートを張るための作業費や人件費などが含まれます。

仮設養生費は、解体工事全体の費用の中で5%~10%ほどを占めるとされています。

足場の設置費用は、立地や足場の種類によりますが、「1m2あたり600円から800円程度」の相場です。ここに養生シートの相場費用をプラスした「仮設養生費」の相場は、「1m2あたり800円から1,600円程度」が一般的と考えられます。

仮設養生費の計算

※上記の物置解体費用相場は、『中野達也のスッキリ解体』(運営:『あんしん解体業者認定協会』)の解体工事データから独自に集計したものです。実際の価格帯とは異なる場合があります。

たとえば、木造30坪(約100m2)2階建て住宅の解体工事における仮設養生費は、8万~16万円程度が相場となっています。

なやみん

それじゃあ、実際の見積書を見ながら確認してみよう!

【木造/2階建て/25坪(81m2)/建物の解体工事見積書の一部】

工事費用の総額=2,860,000円

※画像クリックで拡大できます

解体工事見積書の一部

ご提示の見積書では、165.2m²の範囲に養生を行い、足場を含めた仮設養生費が148,680円とのことですね。使用されているメッシュシートの単価が1m²あたり900円というのは、一般的な相場と大きく変わりません。

現場の安全確保のためとはいえ、木造の一般住宅で15万円近くかかる仮設養生費は少し高いと感じる方もいるかもしれません。実は、この「仮設養生費」には、養生シートや足場の設置費用だけでなく、他にもいくつかの費用が含まれています。

  • 人件費
    養生シートの設置には作業員の人件費も含まれます。解体工事の人件費は作業内容によって異なりますが、1人1日あたり1万円~2万円程度が相場と言われています。
  • 資機材運搬費
    足場設置のための資材等の運搬費(往復分)です。
  • レンタル代
    養生シートを自社で所有していない場合のレンタル代です。(※自社で所有している業者が多い)
  • その他諸経費
    安全管理のための費用や、現場の状況に応じた追加費用などが含まれることもあります。

※解体工事における養生シートの設置にかかる人件費は、工事の規模や内容、地域、業者によって異なるため、実際の費用とは異なる場合があります。

仮設養生費には養生シートの設置費用だけでなく、設置するための工程と人手に対する費用が含まれています。解体業者によって費用の計算方法や採用している相場が異なるので、詳しい費用が知りたい場合は見積もり依頼をしましょう。

解体工事の専門家 中野達也

見積もりを依頼した時に、相場から大きく外れている場合や不明な点がある場合は業者に説明を求めましょう。

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養生シート費用の見積もりを安く抑えるコツはあるの?

解体工事の専門家 中野達也

養生シート費用の見積もりを安く抑えられるかもしれない方法と、実際に値引きされた事例はいくつかありますが、僕は「養生費の値引き」はオススメしてません。その理由を実際の例を見ながら解説していきます。

【方法1】足場の設置を別の業者(足場屋など)にお願いする。

実際にあった例

依頼主の隣家の方が建設関係の仕事をしており、その方の会社で足場と養生の設置をサービスしてもらいました。結果的に養生費(約12万円分)が値引きになりました。

解体工事では、ほとんどの場合、解体業者が自ら足場と養生シートの両方を設置します。これは、安全確保、責任の明確化、そして作業の効率化のためです。

  • 安全: 他の業者が組んだ足場や養生シートでは、解体作業に耐えられるか、危険がないかなどの判断が難しく事故につながるリスクがあります。
  • 責任:万が一トラブルが起きた際、誰が責任を持つのか曖昧になるのを避けるため一貫して管理したいのです。
  • 効率:作業の進捗に合わせて足場や養生シートを調整する必要があるため、自社で設置・管理する方がスムーズです。

以上の理由から、解体業者は足場の設置も自社で行うのが一般的です。別の業者が設置したものでの解体工事は、安全面のリスクから引き受けない業者が多いでしょう。

【方法2】解体現場の1方向は住宅のない地域になっているため、養生シートを3面しか設置しない。

実際にあった例

解体現場の4面の内「東の方角は住宅地から距離があるので養生を減らしてほしい」という依頼主の要望で、東側の1面は養生シートを設置せずに工事を行いました。

解体工事では、隣の家との距離が十分に離れている場合など、状況によっては養生シートの設置範囲を限定することもあります。

しかし、たとえ隣家との距離があっても、風向きによっては養生シートで覆われていない部分から粉じんが飛散してしまう可能性があります。

そのため一般的には「隣の建物との距離が十分に離れている」「近隣に住宅がない」などの特別な事情がない限り、建物の全方向を養生シートで覆うこと(全方向養生)が推奨されています。

【方法3】仮設養生費に利益をのせている業者であれば、契約前の値引き交渉で値引きしてくれるかもしれない!?

実際にあった例

解体業者に仮設養生費の値引き交渉をしたら、「うちは仮設養生費に利益を載せてないので値引きは難しい。他の部分で値引きできるよう考えます」と言われた。

解体業者にとって、「仮設養生費」は利益を乗せる部分が少ないのが実情です。もし値引きの話が出たとしても、それは養生シートの費用からではなく、他の工事項目からの値引きであることがほとんどです。

ここまでお話ししてきたように、養生シートは解体工事において非常に重要な役割を担っています。そのため、費用の見積もりを安く抑えるのは、基本的に難しいと考えた方がよいでしょう。

養生シートの費用は、粉じんの飛散や破片の飛び散りなどを防ぎ、近隣住民の安全と快適な生活環境を守るための大切な費用です。適正な費用を支払うことでしっかり対策をしてもらい、安心して工事を進めてもらいましょう。

解体工事の専門家 中野達也

ただし、提示された仮設養生費が相場よりも明らかに高額だと感じた場合は、金額の詳細を業者に確認してみましょう。不当に高い金額を請求されている可能性があります。

解体工事の養生で注意すべきポイント

養生シートのチェックポイント5選!!

1.養生シートの状態を確認する

使用する養生シートがボロボロになっていないかを確認しましょう。破れたシートでは粉じんや騒音を効果的に防げません。また、破けた部分に解体した瓦礫や資材が引っかかり、大事故につながる可能性があります。養生シートは消耗品のため、こまめな業者は月に1、2度買い替えることもあります。きれいな養生シートの使用が安心安全な解体工事につながります。

また、養生シートが古くても、きれいに使用している業者は「工事技術がある」と考えられます。シートに穴や傷がないということは、重機の扱いに馴れた腕のよい職人が丁寧に仕事をしている業者と言えるでしょう。

丁寧な仕事ができる業者の現場は、近隣からのクレームが少なく、トラブルが起きたとしてもしっかりと対応してくれる可能性が高いため、信頼につながります。

解体工事の専門家 中野達也

例外として、あまりにもきれいすぎる養生シートは工事実績がない業者の可能性もあります。ホームページなどで実績があるかチェックしておきましょう。

2.適切な範囲まで届いているか

養生シートは、解体する建物の周りを囲む形で設置する必要があります。隣接する住宅や通行人への影響を考慮し、養生範囲が適切かどうかを確認しましょう。

養生シートの高さは、粉じんや破片の飛散を防ぐため解体する建物の高さ以上であることが望ましいです。シートの長さが足りないにもかかわらず、中途半端な長さの養生でそのまま解体工事を始めていないかチェックしましょう。

一般的には、1階建てであれば約4メートル、2階建てであれば約6.5メートル程度の高さの養生シートが必要と言われています。

3.設置方法が適切か

シートの裏表や上下が逆に設置されていないか、変な場所に括り付けられていないかを確認しましょう。

また、養生シートは風で飛ばされないようにしっかりと固定する必要があります。とくに風の強い地域では、適切な方法で設置しないとシートが飛んで重大な事故につながる危険性があります。

【適切に固定されていない養生シートの現場】

乱れた養生シート
なやみん

シートが現場全体を囲えてないし、付け方が雑で風が吹いたら飛んでっちゃいそぉ……

4.周囲の安全が守られているか

道路や隣家へはみ出した養生シートは危険です。通行人や近隣住民の邪魔になり、つまずくなど怪我の原因になってしまいます。近隣の人々を守るために設置したシートが、怪我の原因になってしまっては元も子もありません。

また、せっかく養生シートで解体工事現場を囲っていても、廃材や解体で使う道具などがシートの外に出ている現場が見受けられます。現場がきちんと養生シート内に収まっているか確認しましょう。

【養生シートの外に廃材が飛び出している現場】

養生シートの外に飛び出した廃材

5.地域の定めに従っているか

解体工事の際の養生シートについて安全を守るための基準が設けられている地域があります。業者が地域の基準を守っているか判断ができるよう、事前に解体地域のルールを確認しておくと安心でしょう。

解体工事の専門家 中野達也

使ってる養生シートの状態や設置の仕方を見ると、業者の仕事に対する姿勢や丁寧さがわかります。よかったら業者選びの参考にしてみてください!

良い養生シートとは

優良養生シートの条件
  • シートが隙間なく張られている
  • きれいなシートが使われている
  • シートに会社名が入っている
  • 作業していない時はまとめられている(もしくは紐が解かれている)

※以下のタブをクリックすると、各項目の詳細が見られます。

隙間なく張られている養生シート

隙間なくピッタリシートを張ることで、粉じんの飛散を防ぎ、防音効果を高めます。見た目も綺麗で景観を損ねづらいです。

解体工事の専門家 中野達也

養生シートの適切な使用は、解体業者の質を判断する一つの基準と言えます。ボロボロのシートや雑な設置方法が見られる業者は、養生以外の面でも管理が行き届いていない可能性があるため、業者選びの際には注意が必要です。

もしも「養生シートなし」の現場を見つけてしまったら……

落ち着いて必要に応じて対処しよう

ここまで養生シートの重要性についての解説を読んでくださりありがとうございます。しかし、もし養生シートが設置されていない現場を見かけても、すぐに直接苦情を言いに行くのは待ってください。

まずは落ち着いて、以下の対応を検討しましょう。

養生シートをしてない工事現場を見かけた時の対応
  • 粉じんや飛散物が危ないので現場になるべく近づかないようにする。
  • 粉じんや騒音などの被害を受けた場合は、業者に直接伝えず市区町村窓口などに相談する。
  • すでに怪我人が出ているなど緊急性がある場合は、警察や消防に通報する。
解体工事の専門家 中野達也

養生シートなしの解体業者は、違法な工事をしている悪徳業者の可能性もあるため危険です。直接クレームを入れるのは避けましょう。

▼解体工事に関するトラブルが起きた時の連絡先やクレームの回避方法についての記事はこちら▼

【まとめ】養生シートなしの解体工事

養生シートなし解体工事
3つのポイント
1.養生シートなしはリスクだらけ!近隣トラブルに要注意

養生シートを適切に設置しない解体工事は、粉じんによる健康被害や騒音による近隣トラブル、さらには飛散物による重大な事故を引き起こす可能性があります。場合によっては騒音規制法などの法律に違反し罰則の対象となることも。実際に苦情で工事が中断したり、賠償責任問題になったりするケースも少なくありません。

2.養生シートの費用は「安全を守る費用」と心得よう

養生シートの費用は、建物の規模や構造、使用するシートの種類、設置にかかる人件費などで変動します。養生シートに関する費用は、近隣の方々の安全と快適な生活環境を守るための費用と考えましょう。無理に養生費用を抑えようとすると、結果的に大きなトラブルや追加費用につながりかねません。

3.適正な工事のために、信頼できる業者選びがカギ

養生シートの費用を安く抑えるのは難しく、値引き交渉をするのもオススメしません。大切なのは養生シートの必要性をきちんと理解し、適切な対策を講じてくれる業者を選ぶことです。そのためには、複数の業者から見積もりを取り、養生計画や費用内訳についてしっかり説明してくれる業者を選びましょう。

解体工事の専門家 中野達也

近隣トラブルなどのリスクを避けるため、解体工事現場では養生シートを設置するべきです。
解体現場で養生シートの使用状況を見ることは解体業者の質を判断する材料になるため、信頼できる業者選びの参考にしてみてください。

この記事の監修者

中野達也。一般社団法人あんしん解体業者認定協会理事。解体工事業の技術管理者であり、解体工事施工技士を保有。2011年に解体業者紹介センターを鈴木佑一と共に創設。2013年に一般社団法人あんしん解体業者認定協会を設立し、理事に就任。めざまし8(フジテレビ系列)/ひるおび(TBS系列)/ 情報ライブ ミヤネ屋(日本テレビ系列)/バイキングMORE(フジテレビ系列)など各種メディアに出演。

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この記事を書いた人

中野達也のスッキリ解体」専属ライターとして活動する解体工事の専門家。
はじめてだらけの解体工事。読者と一緒に不安を解決できる記事作りを心掛けている。動物園が大好き。

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