この記事の案内人・編集長
稲垣 瑞稀
家と家の間が狭い、いわゆる狭小地での解体を検討する多くの方が、「どうして、うちの解体費用はこんなに高いんだろう……」と、最初に見積もりを見てこう感じます。
これは決して、業者が不当に高い金額を提示しているわけではありません。狭小地での解体には、通常の工事にはない特殊な事情があり、どうしても費用が高くなってしまうのです。
この記事では、11万件以上の相談実績を持つ「あんしん解体業者認定協会」の監修のもと、狭小地での解体費用が高くなる理由から、賢く費用を抑える方法、そして後悔しない業者選びのポイントまでをわかりやすく解説します。
- 家と家の間が狭い解体が「手壊し」になり、費用が高額になる理由がわかる。
- 30坪150万円からの相場と、中間マージンをなくす分離発注で損しない方法。
- 悪徳業者を回避する「建設業許可」と「損害賠償責任保険」の確認術。
- 近隣トラブルを未然に防ぐ、施主同行の挨拶と防音・防塵養生の重要性。
- 2023年10月義務化のアスベスト調査など、追加費用に関する注意点を回避するコツ。
一般社団法人あんしん解体業者認定協会 理事・解体アドバイザー
初田 秀一(はつだ しゅういち)
解体アドバイザー歴15年、相談実績は11万件以上。お客様の不安を笑顔に変える現場のプロフェッショナル。「どんな些細なことでも構いません」をモットーに、一期一会の精神でお客様一人ひとりと向き合い、契約から工事完了まで心から安心できる業者選定をサポート。この記事では現場のリアルな視点から解説を担当。
「スッキリ解体」編集長
稲垣 瑞稀(いながき みずき)
解体業界専門のWebメディアでWebディレクターとして6年以上、企画・執筆・編集から500社以上の解体業者取材まで、メディア運営のあらゆる工程を経験。正しい情報が届かず困っている方を助けたいという想いから、一個人の責任と情熱で「スッキリ解体」を立ち上げ、全記事の編集に責任を持つ。
「スッキリ解体」専属ライター
酒巻 久未子(さかまき くみこ)
「解体工事でお悩みの方に、同じ主婦の立場から実用的な情報をお届けします。」
数多くのお客様や業者様へのインタビューを通じて、お客様が抱えるリアルな悩みに精通。実際の解体工事現場での取材を重ね、特に「お金」や「近隣トラブル」といった、誰もが不安に思うテーマについて、心に寄り添う記事を執筆。子育て中の母親ならではの、きめ細やかな視点も大切にしている。
家と家の間が狭い解体で費用が高額になる3つの理由
理由1:重機が入れず、すべてが「手壊し解体」になるから
最大の理由は、解体工事の主役であるショベルカーなどの重機が現場に入れないことです。
道が狭かったり、隣家との隙間がなかったりするため、重機を使った効率的な作業ができません。その結果、職人がハンマーやバールといった道具を使い、文字通り「手で壊す」作業、すなわち「手壊し解体」が中心となります。
重機であれば一日で終わる作業が、手壊しでは数日かかることも珍しくありません。この作業時間と手間が、そのまま人件費として費用に追加されます。
理由2:廃材の搬出に手間と時間がかかり、人件費が増えるから
家を壊せば、木材やコンクリートガラといった大量の廃材が出ます。
通常の現場なら、重機で一気にトラックに積み込めますが、狭小地ではそうはいきません。解体した廃材を、一輪車や手運びで、家の前の道に停めたトラックまで何度も往復して運び出す必要があります。
この地道な「小運搬(こうんぱん)」と呼ばれる作業に、多くの人手と時間がかかります。「たかが運ぶだけ」と思われるかもしれませんが、この小運搬費が、実は解体費用を押し上げる大きな要因となります。
理由3:隣家保護のための養生など、特別な安全対策が必要だから
お隣との間がこんなに狭いと、何か影響が出ちゃいそう
隣家との距離が1メートルもないような現場では、細心の注意を払っても、騒音や粉塵、振動でご迷惑をおかけするリスクが高まります。万が一、隣家の壁を傷つけてしまえば、深刻なトラブルに発展しかねません。
そのため、優良な業者は、家全体を隙間なく養生シートで覆い、さらに防音パネルを設置するなど、通常よりも厳重な安全対策を講じます。
もちろん、これらの特別な養生資材や設置の手間は、追加の費用として見積もりに計上されます。しかし、これは近隣トラブルを未然に防ぎ、安心・安全な工事を行うための「必要経費」であると理解しましょう。
重機が入らない場合の「手壊し解体」とは?工事の流れと期間を解説
「重機が入れないのは分かったけど、じゃあ一体どうやって家を壊すの?」という疑問が湧きますよね。
ここでは、狭小地解体の主役となる「手壊し解体」の具体的な工事の流れと、気になる期間について解説します。言葉だけではイメージしにくい手壊し解体のリアルな現状を知れば、業者との打ち合わせもスムーズに進むはずです。
後悔しないためにも、まずは工法の実態を知ることから始めましょう。
手壊し解体の具体的な作業ステップ
手壊し解体は安全かつ効率的に進めるため、しっかりとした手順に沿って行われます。
- 足場と養生の設置:
まず、作業の安全を確保するための足場を組み、騒音や粉塵が飛ばないよう、建物全体を養生シートで隙間なく覆います。 - 内装材の撤去:
家の中に入り、畳、建具、石膏ボード、断熱材などを手作業で分別しながら撤去します。リサイクルできる貴重な資源と、廃棄物を丁寧により分ける重要な工程です。 - 屋根材の撤去:
次に屋根に上がり、瓦やスレートなどを一枚一枚手で剥がして下ろします。この作業も、隣家への落下物がないよう、細心の注意が必要です。 - 躯体(骨組み)の解体:
最後に、建物の骨組みである梁や柱、壁などを、上から下へと順番に解体します。 - 基礎の解体:
建物がすべて無くなったら、地面に残ったコンクリートの基礎を、専用のブレーカーという機械で砕いて撤去します。 - 整地:
廃材をすべて搬出したら、地面を平らにならして工事完了です。
このように、手壊し解体は細やかな作業と高度な職人技が求められる工法です。
重機解体と比較した場合のメリット・デメリット
手壊し解体は、費用や工期がかかるというデメリットばかりではありません。騒音や振動を抑えられるなど、狭小地ならではの大きなメリットもあります。
ここで、重機解体との違いを比較してみましょう。
項目 | 手壊し解体 | 重機解体 |
---|---|---|
騒音・振動 | 小さい | 大きい |
安全性 | 高い(丁寧な作業) | 低い(一気に壊す) |
近隣への影響 | 少ない | 多い |
費用 | 高い | 安い |
工期 | 長い | 短い |
この表を見ると、手壊し解体は費用と工期以外のすべての面で、重機解体より優れていることがわかります。とくに隣家が密集するエリアでは、騒音や振動を抑えられるメリットは大きいと言えるでしょう。
工事期間の目安は?通常の1.5倍以上かかることも
では、実際に手壊し解体にはどれくらいの期間がかかるのでしょうか。
狭小地での工期は建物の構造や立地条件によって大きく変動しますが、一般的な30坪程度の木造家屋の場合、2週間から1ヶ月程度を見ておくのが一つの目安です。
これは、重機を使って解体する場合に比べて、おおよそ1.5倍から2倍程度の期間となります。
もちろん、雨や雪などの天候に左右されることもありますし、廃材の搬出経路がとくに複雑な場合は、さらに工期が延びる可能性も否定できません。建て替えなどで後のスケジュールが決まっている方は、余裕を持った工期を業者と相談しましょう。
なお重機が入らない解体については、次の記事にて詳しく解説しています。
【知らないと損】狭い家の解体費用、相場と数十万円安く抑える方法
ここからは、狭い家の解体費用について解説します。
解体業界の透明化を実現し、知識不足からお客様が損をしてしまう状況をなくすため、節約術を具体的にお伝えします。
狭い家の解体費用は高くなりがちですが、正しい知識さえあれば不当な請求を避け、費用を数十万円単位で安く抑えることも可能です。
木造30坪の場合の費用相場と見積もり事例
まず、気になる費用相場ですが、狭小地における木造家屋の手壊し解体は、坪単価で4万円~6万円程度が目安となります。
仮に30坪の家であれば、単純計算で120万円~180万円が建物本体の解体費用です。しかし、これに加えて、先ほど説明した廃材の運搬費や特別な養生費、足場代などが「付帯工事費」として上乗せされます。
結果として、総額では150万円~250万円程度になるケースが多いのが実情です。「思ったより高い……」と感じるかもしれませんが、これが狭小地解体の現実的な相場観と言えるでしょう。
※この費用相場は、監修の「あんしん解体業者認定協会」が保有する全国数千件の解体工事データから算出したものです。
費用が高くなる要因の内訳を徹底分析
なぜ狭小地での解体だと、これほど高額になるのでしょうか。狭小地解体の費用を押し上げる主な要因は、以下の項目です。
- 本体工事費:
建物を壊すための費用。手壊しのため、人件費の割合が大きくなります。 - 付帯工事費:
- 足場・養生費: 安全対策のための足場と、防音・防塵シートの費用。隣家との距離が近いほど高額になります。
- 廃材運搬処分費: 解体で出た廃材を処分場まで運んで処分する費用。
- 小運搬費: 現場からトラックまで廃材を手運びする人件費。これが大きな割合を占めます。
- 重機回送費: 基礎の解体などで使う小型重機を現場まで運ぶ費用。
- 諸経費:
業者の利益や、書類作成、近隣挨拶などの費用。工事費全体の10%前後が一般的です。
これらの項目が「一式」とまとめられている見積書は要注意です。優良な業者ほど、お客様が理解しやすいように内訳を細かく記載します。
ハウスメーカー任せの注意点!中間マージンをなくす「分離発注」
ハウスメーカーや工務店に解体工事を任せきりにすると費用が高くなる可能性があるため、新築への建て替えを検討している方は注意が必要です。
なぜなら多くの場合、ハウスメーカーは自社で解体を行わず、下請けの解体業者に工事を丸投げします。その際に、1~3割の中間マージン(紹介料)が上乗せされ、その費用はすべてお客様の負担となります。
たとえば、解体業者の見積もりが200万円だったとしても、ハウスメーカーを通すだけで220万円~260万円に膨れ上がってしまいます。
この無駄な費用をなくす方法が「分離発注」です。つまり、施主であるあなたが、直接、解体専門業者に工事を依頼することです。これだけで、数十万円のコストを削減できる可能性が十分にあります。
自治体の空き家解体補助金・助成金が使えないか確認しよう
とくに、ご実家を相続した方や長年放置された空き家の解体を検討している方は、必ずお住まいの自治体のホームページを確認しましょう。
倒壊の危険性がある空き家などを対象に、解体費用の一部を補助する制度を設けている自治体が増えています。補助額は自治体によってさまざまですが、数十万円の補助が受けられるケースも少なくありません。
「(お住まいの市区町村名) 空き家 解体 補助金」といったキーワードで検索すれば、すぐに情報が見つかるはずです。使える制度は賢く利用し、少しでも負担を軽くしましょう。
ほとんどの自治体では、先に解体業者と契約書を交わしてしまうと、その時点で補助金の対象外となってしまいます。これは、数十万円を受け取る権利を自ら手放してしまうことに他なりません。
業者探しと並行して、まずはお住まいの自治体窓口に「これから解体を検討しているのですが……」と相談することから始めましょう。
近隣トラブルを回避する!施主と業者がやるべき事前準備と工事中の配慮
解体工事をする際にとくに気をつけるべき点は「近隣トラブルの回避」です。「工事の音がうるさい」「洗濯物にホコリが……」といった苦情は、その後のご近所付き合いに深刻な影響を及ぼしかねません。
これからお伝えするポイントを、施主であるあなたと業者が一丸となって実践すれば、トラブルはほぼ防げます。後悔のない解体工事は、万全の近隣対策から始まります。
工事前の近隣挨拶で伝えるべきこと・渡すものリスト
工事が始まる1週間~10日前までには、必ず近隣への挨拶回りを行いましょう。ここでもっとも重要なのは、業者任せにせず、必ず施主であるあなたも同行することです。あなたの姿を見かけるだけで、近隣の方は安心感を持てるでしょう。
挨拶の際には、以下のリストを参考になさってください。
※クリックで詳細が読めます
伝えるべきこと
- 工事へのご理解とご協力のお願い
- 工事の期間(〇月〇日~〇月〇日頃まで)
- 作業を行う時間帯(例:午前8時~午後5時)
- 工事中の連絡先(業者の現場責任者と、あなたの連絡先)
挨拶に伺う範囲
工事現場の両隣、向かいの3軒、裏の家は最低限伺いましょう。車両の出入りで影響がありそうな範囲にも配慮が必要です。
渡すもの
- 500円~1,000円程度の粗品(タオルや洗剤など)
- 工事の工程表
- 業者の連絡先が書かれた名刺や書面
「ご迷惑をおかけします」という真摯な姿勢が、トラブルを防ぐ一番のポイントです。
騒音・粉塵・振動を最小限に抑える優良業者の対策
施主の挨拶と合わせて、業者が行う物理的な対策も極めて重要です。優良な業者は、近隣への影響を最小限に抑えるために、以下のような対策を徹底してくれます。
- 徹底した養生:
防音・防塵効果の高い養生シートで建物を隙間なく覆い、音やホコリの飛散を最大限防ぎます。 - こまめな散水:
粉塵が舞い上がらないよう、解体作業中は常に水をまきながら作業を進めます。 - 丁寧な作業:
廃材を投げ落とすような乱暴な作業はせず、静かに下ろすなど、一つひとつの作業を丁寧に行います。 - 作業時間の遵守:
朝早くや夕方遅くの作業は避け、事前に伝えた作業時間を厳守します。
これらの対策は、見積書に「養生費」や「安全対策費」として具体的に記載されています。安さだけを追求してこれらの費用を削る業者は、選ばないようにしましょう。
工事中のコミュニケーションで信頼関係を築くコツ
工事が始まる前はもちろん、工事期間中も近隣の方への配慮を忘れないようにしましょう。
たとえば、ばったりお会いした際には「いつもご迷惑をおかけして申し訳ありません」と一言声をかけるだけでも、相手の印象は大きく変わります。
また、業者の現場責任者とはこまめに連絡を取り、工事の進捗状況や、何か問題が起きていないかを確認する習慣をつけることも大切です。施主であるあなたが、工事に対して責任を持っているという姿勢を見せ続けることが、近隣の方との信頼関係を築き、万が一のトラブルを未然に防ぐコツと言えるでしょう。
なお、解体工事のトラブルについては次の記事にて詳しく解説しています。
後悔しない解体業者の選び方!悪徳業者を見抜く5つのチェックポイント
ここまで、狭小地解体の特殊性や費用、近隣対策について解説してきました。
この業界には、お客様の知識不足につけ込む悪質な業者も存在します。そこで、後悔しないための「5つのチェックポイント」をお伝えします。このポイントを押さえれば、あなたは安心して任せられる優良業者を見抜けます。
ポイント1:建設業許可と解体工事業登録の有無
解体工事を行うには、法律で「建設業許可(土木工事業、建築工事業、解体工事業のいずれか)」または「解体工事業登録」が義務付けられています。
項目 | 解体工事業登録 | 建設業許可 |
---|---|---|
対象工事 | 500万円未満(税込)の工事のみ | 500万円以上(税込)の工事を含むすべての工事 |
信頼性 | 最低限(審査は比較的緩やか) | 高い(経営経験・技術力・財産要件など厳しい審査あり) |
安心感 | △ | ◎ 厳しい基準をクリアした証 |
許可の有無は、見積もり依頼時に確認するほか、次の国土交通省の「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」でも確認できます。
金額の大小だけでなく、「建設業許可」は厳しい審査をクリアした信頼の証となります。500万円未満の工事でも「建設業許可」を持つ業者に依頼する方が、より安心感が高いと言えます。
必ず契約前に許可証や登録証のコピーを提示してもらい、番号を控えておきましょう。
ポイント2:「損害賠償責任保険」に加入しているか
どんなに優良な業者でも、万が一の事故のリスクをゼロにすることはできません。もし、作業中に隣家の壁を傷つけたり、通行人にケガをさせてしまったりした場合、その補償はどうなるのでしょうか。
そのためにあるのが「損害賠償責任保険」です。優良な業者は、必ずこの保険に加入しています。
契約前に「保険には加入していますか?」「もしもの時は、保険で対応してもらえますか?」と明確に質問し、保険証券のコピーを見せてもらうようにしましょう。これを渋るような業者は選ばないようにしましょう。
ポイント3:狭小地での解体実績を写真付きで示せるか
「狭小地の解体、得意ですよ」と口で言うのは簡単です。本当に信頼できるかを見極めるには、具体的な実績を示してもらうのが一番です。
「うちと似たような、隣と近い現場の解体実績はありますか?」「その時の写真を見せていただけますか?」と聞いてみましょう。
実績が豊富な優良業者であれば、過去の施工事例の写真を快く見せてくれるはずです。写真を見ながら、どのような養生をしたのか、どのように廃材を搬出したのかを具体的に説明できる業者は、信頼度が高いと言えます。
ポイント4:見積書の内訳が具体的で分かりやすいか
悪徳業者がよく使う手口が、「解体工事一式 〇〇円」という、どんぶり勘定の見積書です。これでは、何にいくらかかっているのか分からず、後から「あれは含まれていなかった」と高額な追加請求をされるリスクが高くなります。
優良な業者の見積書は、先ほど解説したように「本体工事費」「足場養生費」「廃材処分費」「小運搬費」など、項目ごとに内訳が細かく記載されています。誰が見ても内訳を理解できる見積書が重要なポイントです。
ポイント5:担当者の対応が誠実で質問に的確に答えられるか
最後のチェックポイントは、担当者の人柄です。あなたの不安や疑問に対し、専門用語を並べるのではなく、分かりやすい言葉で丁寧に説明してくれるでしょうか。
工事のメリットだけでなく、考えられるリスクやデメリットについても、正直に話してくれるでしょうか。少しでも「威圧的だな」「質問しづらいな」と感じたら、その業者との契約は見送るべきかもしれません。
解体工事は、担当者との二人三脚で進めていくものです。あなたが心から信頼でき、何でも相談できる誠実なパートナーを見つけることが、後悔しない解体工事の最大の秘訣です。
【初田理事に聞いた】許可証以外で、優良業者だと判断できるポイントとは?
「解体工事業登録」の業者でも、腕の良い業者は多いです。建物が密接した場所の解体工事の場合、許可証以外でも「この会社は安定していて信頼できるな」と判断できるチェックポイントはあるのでしょうか。ここからは、11万件以上ものお客様の相談に乗り、数多くの現場を見てきた解体アドバイザーの初田理事にプロの視点から優良業者を見抜くポイントをうかがいます。
一般社団法人あんしん解体業者認定協会 理事・解体アドバイザー
初田 秀一 (はつだ しゅういち)
解体アドバイザー歴15年、相談実績は11万件以上。お客様の不安を笑顔に変える現場のプロフェッショナル。「どんな些細なことでも構いません」をモットーに、一期一会の精神でお客様一人ひとりと向き合い、契約から工事完了まで心から安心できる業者選定をサポート。この記事では現場のリアルな視点から解説を担当。
家と家の間が狭く、建物が密接した場所での解体では、業者選びが重要です。たとえば、養生シートが張れない場合に屋根から垂らす「垂らし養生」で対応したり、重機による粉じんを抑えるために極力手作業で進めたりするなど、柔軟な対応力が求められます。また、万が一隣家を傷つけた際に保険で対応できる体制があるかどうかも、信頼性の判断材料になります。
また2階部分を手作業で解体する可能性もあるため、人力解体や狭小地での実績を公表している業者に依頼するのが安心です。実績が不明な場合、下請けに作業を任せるケースもあるため注意が必要です。
稲垣:たとえば隣接した場所や、旗竿地のような狭い場所での解体では、重機も小型かつロングアーム付きなど、機種によって判断できるポイントはありますか?
ありますね。多くの場合、両側の壁を残して内側に倒すような工法をとるので、どこから重機を使うかなど、対応方法を確認するとよいでしょう。現地調査の際に、具体的な施工方法をきちんと説明してくれる業者だと安心できますね。
建物が密接した狭小地での解体では、柔軟な施工対応や保険体制の有無など、業者選びが重要です。人力解体や狭小地の実績があるかも確認しましょう。重機の種類や工法も判断材料となるため、現地調査時に具体的な施工方法を説明してくれるかが安心の目安になります。
【初田理事に聞いた】費用が安い業者に依頼したら、結果的に高額になったケース
稲垣:「費用が安い登録業者に解体工事を依頼したけど、結局トラブルによって高くついた」といった事例はありますか?
「登録業者だから」は関係なく安さを重視して業者を選んだ結果、かえって高くついてしまうケースは、事前確認の不十分さが原因であることが多いです。たとえば当初重機を使う予定でしたが近隣クレームがきてしまい、すべて手作業での解体になりました。他社であれば手作業の見積もりは300万円だったところ、契約した業者でそのまま工事を進めた結果、最終的に400万円かかってしまったというケースがありました。
稲垣:トラブルを避けるには、登録業者か建設業許可業者かよりも、事前の見立てや確認の精度が重要ですね。
そうですね。業者の種別よりも、現地調査で見えにくい部分をどれだけ把握できるかが大切です。たとえば、布基礎だと思っていたら実はベタ基礎で、しかも手作業が必要な狭い立地だったというケースがありました。重機が使えないと、基礎の撤去だけで高額になることも珍しくないですね。
稲垣:登録業者かどうかは、あまり関係ないのですね。
はい。たとえば隣家との距離が近く、間口も狭くてトラックが停められない場合、隣地を使用する必要が出ることもあります。そうした条件を事前に確認し、見積もりに反映しているかどうかも重要なポイントです。
「おそらく大丈夫だろう」という安易な見込みで見積もりを出すと、いざ始めてみたら苦情が出て計画通りに進められず、結果的に手間と費用が追加でかかってしまうケースは少なくありません。建物が密接した場所だと、とくに近隣の状況を事前に把握することが大切です。
【FAQ】家と家の間が狭い家の解体に関するよくある質問
最後に、家と家の間が狭い家の解体に関して、皆様からよく寄せられる質問にお答えします。細かな不安をここで解消し、ぜひ参考になさってください。
隣の家の壁や塀を傷つけてしまった場合の補償はどうなりますか?
万が一、工事中に隣の家を傷つけてしまった場合は、業者が加入している「損害賠償責任保険」によって補償されるのが一般的です。
だからこそ業者選びのチェックポイントで、保険加入の有無を確認することが重要になります。契約前に必ず保険証券のコピーを提示してもらい、補償内容や金額を確認しておきましょう。優良業者であれば、快く応じてくれるはずです。
解体後の土地の固定資産税はどう変わるのでしょうか?
「解体すると税金が6倍になる」と心配されるかもしれませんが、ケースによります。
住宅が建っている土地は「住宅用地の特例」により、固定資産税が最大で6分の1に軽減されています。家を解体して更地にすると、この特例が適用されなくなり、翌年から土地の固定資産税が上がってしまう可能性があります。
ただし、急激な税負担増を避けるための「負担調整措置」があります。税額は個別の土地評価額や自治体の条例により大きく異なります。正確な情報については、必ずお住まいの自治体にご確認ください。
解体のタイミングについては、税金のことも考慮に入れ、お住まいの自治体の税務課に事前に相談することをオススメします。
アスベスト(石綿)が含まれている場合、費用は追加でかかりますか?
建物にアスベストが含まれる場合は追加費用がかかる可能性が高く、重要な法改正が関わります。
2006年以前に建てられた建物には、屋根材や壁材などにアスベストが含まれている可能性があります。アスベストの除去は、法律で定められた特別な作業となり、通常の解体費用とは別にアスベストの除去費用が発生します。
2023年年10月1日着工の工事から建築物の解体等の作業を行う際は、国の定めた「建築物石綿含有建材調査者」の資格を持つ専門家によるアスベストの事前調査が必要になります。
この資格を持たない業者が調査を行うことは違法です。「調査費用はサービスします」といった甘い言葉には注意し、必ず有資格者による調査報告書を提出してもらうようにしましょう。これが、現在の業者選びにおける重要なチェックポイントの一つです。
相見積もりを依頼する際、業者に失礼なく断る方法はありますか?
業者さんにお断りするのって、勇気がいるなぁ……
相見積もりは、適正な価格と信頼できる業者を見つけるために必須の行動であり、業者側もそれは理解しています。断ることに、何も気兼ねする必要はありません。
お断りする際は、電話かメールで「今回は、慎重に検討した結果、他社にお願いすることにいたしました。お見積もりいただき、ありがとうございました」と、正直かつ丁寧にお伝えすれば十分です。見積もりのために時間を使ってもらったことへの感謝を伝えることで、お互いに気持ちよく終えられます。
【まとめ】家と家の間が狭い解体を依頼する前の最終チェックリスト
この記事の要点を踏まえ、最後に確認すべき重要事項をまとめました。一つずつチェックし、万全の準備で次の一歩に進みましょう。
- 1.解体費用の適正化
-
ハウスメーカーに任せず解体専門業者へ直接依頼する「分離発注」で中間マージンを削減しましょう。また、契約前に自治体の空き家解体補助金が利用できないか確認することも重要です。
- 2.信頼できる業者の選定
-
「建設業許可」の有無と「損害賠償責任保険」への加入は必ず確認しましょう。加えて、狭小地での具体的な解体実績(写真など)を示せる業者を選ぶことが、安心につながります。
- 3.近隣トラブルの事前防止
-
工事開始の1週間前までには、業者任せにせず施主も同行して近隣挨拶を行いましょう。見積書に、防音・防塵シートによる養生や散水といった具体的な安全対策費が含まれているかも確認が必要です。
チェックポイントを確認したら、まずは複数の信頼できる解体業者に現地調査を依頼し、相見積もりを取ることから始めましょう。
解体工事で失敗しない!
中野達也監修 完全ガイド
全51ページの完全マニュアル&解説動画を、今だけ無料でプレゼント中!
個人情報は厳重に保護。いつでも解除可能で安心です。
ガイドのお受け取り方法を
お選びください
コメント