この記事の案内人・編集長
稲垣 瑞稀
本記事では、解体業者探しから工事完了後の手続きまで、あなたが悩まずに解体工事を終わらせるための「解体工事の流れ」を網羅的に解説しています。
なお、本記事で解説される解体工事の流れは「一般社団法人あんしん解体業者認定協会」の全面監修によるものです。
- 解体業者への依頼~工事完了後の手続きまで、解体工事の全手順がわかる
- 詳細な解体工程の解説で、実際に建物を取り壊す様子がイメージできる
監修者
現場解説一般社団法人あんしん解体業者認定協会 理事・解体アドバイザー
初田 秀一(はつだ しゅういち)
解体アドバイザー歴15年、相談実績は11万件以上。お客様の不安を笑顔に変える現場のプロフェッショナル。「どんな些細なことでも構いません」をモットーに、一期一会の精神でお客様一人ひとりと向き合い、契約から工事完了まで心から安心できる業者選定をサポート。この記事では現場のリアルな視点から解説を担当。
運営責任者「スッキリ解体」編集長
稲垣 瑞稀(いながき みずき)
解体業界専門のWebメディアでWebディレクターとして6年以上、企画・執筆・編集から500社以上の解体業者取材まで、メディア運営のあらゆる工程を経験。正しい情報が届かず困っている方を助けたいという想いから、一個人の責任と情熱で「スッキリ解体」を立ち上げ、全記事の編集に責任を持つ。
執筆「スッキリ解体」専属ライター
秋田 栞(あきた しおり)
「どんな専門的な情報も、『なるほど!』に変わる瞬間を大切に、解説します。」
複雑な情報を分かりやすく紐解くことを得意とするライター。毎週の専門勉強会で得た最新知識を元に、読者の「なぜ?」「どうして?」を「わかった!」に変える記事を執筆。現場の職人さんが話す言葉と、お客様が使う言葉の橋渡し役となることを目指している。
今回は解体工事の流れを10個のステップに分けて解説します。ご自身で解体を進められる際にお役立てください。
ステップ1 解体業者を探す
インターネットで解体業者の情報を収集する
まずは、インターネットで解体業者の情報を収集します。
取り壊したい建物がある地域で「〇〇市 解体業者」と調べると、解体業者の公式ホームページや、解体業者の情報を掲載しているサイトが見つかるはずです。

理事 中野達也ホームページでは主に、工事実績や実際の施工写真があるかを確認してみましょう。自分が取り壊す建物と似た事例があるかはもちろん、解体作業現場や更地の写真をしっかりと公開しているかも信頼性を判断できるポイントです。
調べた解体業者に電話で問い合わせする
依頼する解体業者に目星がついたら、現地での見積もりを依頼します。見積もり依頼の時点ではまだ解体工事の依頼は確定していないので、慎重になりすぎる必要はありません。良いと思った業者に電話をしてみましょう。
※解体業者によってはメール、LINEでの対応をしているケースもあります
実際に話してみることで得られる情報があります。電話の際には、以下のポイントを重視して判断してみてください。
電話が繋がりにくい業者は、緊急時に繋がらない可能性が高い
3~4回電話をしても応答がない会社は、万が一のトラブル時など、急な対応をお願いしたい時にも繋がりにくい可能性があります。従業員全員が解体現場に出払っていて電話に出られない、という場合もありますが、お客様対応をしっかりと考えている優良な業者であれば、事務所への電話を携帯電話に転送するなどの対策をとっています。
業者選びでは、万が一の場合に備えて、迅速に対応する体制をとっているかが重要です。また、留守番電話に見積もりを取りたい旨の伝言を残し、返答があるかどうか対応を見てみると良いでしょう。
電話対応がおろそかな業者は、工事完了までのやり取りに苦労する
依頼者とコミュニケーションを円滑にできるかどうかも、工事を最後まで無事に進めるうえで重要なポイントです。
例えば、現地測量時に解体工事の進め方を話し合う際、お客様対応に慣れていない業者の場合、自ら作業工程の提案を出来ないかもしれません。そのような解体業者のほとんどが、普段は下請けで解体工事を行っていて、元請けのハウスメーカーなどから作業指示を受けて仕事をしています。
指示された通りの工事が出来たとしても、現場の状況や作業効率、周辺地域への影響を考慮して安全な工事を進めなければ、工事トラブル発生に繋がる可能性があります。
万が一トラブルが起きた場合でも、その後の対応を迅速かつ誠実に行うことで被害を抑えられるため、業者が円滑に対応できているかどうかを見極めましょう。
建物を確認せず口頭のやりとりだけで金額を提示する業者は注意
解体業者に問い合わせると、「建物の大きさ」「建物の構造」「解体を終わらせたい時期」について質問されます。これは、自社の施工技術的に対応可能か?スケジュール的に請けても問題ないか?を確認するためです。
中には、その会話だけで「○○円で出来ますよ」と安価な金額を提示してくる解体業者もいます。このような業者は後々追加費用が発生する危険があるため注意しましょう。確実な見積金額を提示するためには、実際に建物を見て測量する「現地測量」が必須です。
同じ大きさの建物でも、立地条件や家屋の状態で作業工程は変わります。口頭のやりとりだけで金額を伝えるような解体業者は、工事が始まった後、もっともらしい理由をつけて追加費用を請求してくる可能性も考慮に入れておきましょう。
依頼者の状況を詳細に確認する業者は良心的
『この建物だと見積もりはいくら位になりますか?』と業者に質問してみましょう。
金額を言い切る返答ではなく、建物の細かな部分を質問してきたり、解体工事がどのように進む等、話をしてくれる解体業者は工事完了までの対応がしっかりしている可能性が高いと言えます。
問い合わせの電話にどれだけ丁寧に対応してくれるかで、その後の対応も予測できます。解体業者の対応に注目しましょう。
なお、スッキリ解体では後悔しない解体業者の選び方をさらに詳しく解説しています。優良な業者に依頼したい方は以下の記事も参考になさっってください。

解体工事の一括見積サイトに依頼する場合
インターネットで解体業者を探すのが手間であれば、一括見積サイトに頼む方法もあります。一括見積サイトでは業者連絡などの面倒な手続きを代行してもらえる、業者選定や見積比較においてどの業者が適切かを判断してもらえるなど、様々なメリットがあります。
ただし、紹介サイトの中には解体業者を選別せずに、依頼者の解体物件情報を一斉の解体業者にFAX送信し、空いている業者の中から安価な業者をお客様に斡旋しているケースもあります。
悪質な業者を紹介されて被害に遭わないために、見積サイトを選ぶ際には次の5のポイントを押さえておきましょう。
- 解体工事の専門性があるか?
- サイトで提供されている情報に信憑性はあるか?
- 解体工事の料金設定がどのようになっているか?安さだけを売りにしていないか?
- ご利用されたお客様の直筆アンケートやご本人写真が掲載されているか?
- 会社概要がわかりやすい位置に明瞭に記載されているか?
最も安くかつ安全に解体工事を終えるためには、数多くの解体業者の中から優良な解体業者同士を、正しい基準で比較することが重要です。
その第一段階として、まずやらなくてはいけない事は「どこの解体業者に見積もりをしてもらうのが賢明か?」という判断です。
注意点を押さえてチェックすることで、その業者が全うな工事をしているか、トラブルに繋がる危険性が高いかの判断材料になります。
もう一点重要なのは、優良解体業者ほど仕事が頻繁に入るため、すぐに予定が埋まってしまう可能性が高いという点です。
その結果、こういった事態が想定されるので注意が必要です。
- 解体現場から遠くの業者しか空いておらず解体費用が高くなる(廃材運搬費用や人件費が増額します)
- 比較対象がないまま業者を選ばなくてはいけない(常に仕事がない解体業者にはそれなりの理由があります)
- 希望の時期に工事開始できないと、解体を完了させたい時期に間に合わなくなる(新築建設や売却の計画変更が発生し大きな影響が出てしまいます)
理事 中野達也解体工事をする日にちが明確に決まっていなくても、見積もりは取得できます。解体業者探しは、工事時期から逆算して早めに進めると良いでしょう。解体業界にも繁忙期があるため、依頼時期には注意が必要です。
ステップ2 解体業者から見積もりをとる
建物の構造により作業方法と手順が変わるため、正確な見積もりを出すためには、解体現場での測量調査が重要になります。
この調査を「現地測量」や「現地調査」といいます。建物の構造は表面を見ただけではわからない部分が多いため、解体業者は詳細に現地測量を行い、工事の内容について確認と説明を行います。
現地調査でチェックすべきこと

理事 中野達也現地調査では下記のポイントについて質問してみましょう。事前に確認しておくことで、後々のトラブル回避や費用節約に繋がります。
- 家財道具など、無料で処分して頂けるものは何がありますか?
建物内に荷物がある場合は、一緒に処分できる物・できない物を聞いておきましょう。解体費用を節約できるかもしれません。
解体工事と一緒に荷物の処分も依頼できますが、解体業者ごとに処分できるものが違います。処分するには古物商許可や、一般廃棄物許可等の資格が必要だからです。サービスで処分してくれるケースもあります。 - 工事契約~完了までは大体何日間かかりますか?
解体工事は、天候の影響を受ける可能性があるため、確実に◯日間で終わるとは言い切れません。ただ、工事が問題なくスムーズに進んだ場合の完了目処は答えてくれます。ここで、あやふやな回答をしたり、反対に◯日間で終わると言い切る業者は、工事を下請け業者に丸投げしている等、現場をしっかり把握していない可能性が高いと言えます。 - 追加費用がかかるとしたらどんな物がありますか?
見積もりの段階で安価な金額でも、工事終了後に追加料金が発生するケースがあります。優良な業者であれば、追加費用がかかる可能性があるものは事前に説明してくれます。庭木の処理や物置きの撤去を考えている方は、その旨が業者に伝わっているかも確認しましょう。 - 近隣への挨拶はどのように行いますか?
解体工事のトラブルで最も多いのが、近隣住民とのトラブルです。事前の挨拶はトラブルを未然に防ぐための対策として重要です。優良な業者ほど近隣挨拶や工事対策を怠らず入念に行います。工事開始直前ではなく、日にちに余裕を持って行っているか、何軒位を対象にどのように行っているかも、業者を比較するうえで重要なポイントです。 - マニフェスト票の控えを頂くことはできますか?
マニフェスト票は、施主が目で確認できない廃棄物の処理が適切に行われたかどうかを確認できる重要な証明です。もしマニフェストを発行していない場合、不法投棄などのトラブルに施主が巻き込まれてしまう可能性もあります。工事前に確認することで、信頼できる業者かを判断する材料にもなります。
正確な見積もりをとるために「現地測量の立ち合い」をする
追加費用の説明や、依頼者からの質問に対して返答せず「他の業者はいくらなの?」「いくらなら解体するの?」など、他社で取った見積もりの金額を聞き出そうとする業者がいます。
このような業者は自分で工事金額が計算できず、提示する金額に自信が無く、他社の金額よりも下げて見積ることで、依頼をもらおうとしている可能性があります。
また、普段下請けで解体工事を行っている業者の可能性が高いです。不法投棄や追加費用、近隣トラブル発生等の危険性が高まります。
必ず複数の解体業者で見積もり比較をする
複数の業者から見積もりを取って比較することを「相見積もり」と言います。相見積もりを取ることで、ハズレを引いてイチからやり直しするような失敗を防ぎ、建物の相場がいくら位か把握もできます。
現地調査では、各業者に同じ質問をぶつけてみましょう。対応の違いを比較することも出来ます。
「3社立ち会うのは手間がかかる」と思うかもしれませんが、しっかり比較せずに業者を決めた結果トラブルに発展した場合に被る被害額や費やす時間には代えることはできません。最初から1社に絞らず、必ず2~3社は現地調査を立ち会い、正しい基準で業者を比較しましょう。
理事 中野達也ホームページの作りや電話対応が好印象でも、やはり最終的な印象は現地調査でしっかりと判断しましょう。事前の連絡もないまま待ち合わせの時間より大幅に遅れて現場に来たり、現地測量の約束自体をすっぽかすような業者は、依頼をしないのが無難です。
また、正当な理由がないまま「壊してみないとわからない」とざっくり見積もって、後々高額な費用を請求する業者もいます。解体工事では、表面からは見えない地中に埋まっていたゴミなど、実際に取壊してから費用が発生することが往々にしてありますが、優良な業者は事前にそういったリスクを踏まえて依頼者への説明を怠りません。
複数の業者と現地測量することで、本当に壊してみないとわからないようなものなのか、判断することもできます。
悪徳な不用品回収業者に注意
不用品の処分方法として、解体業者に処分依頼する他に、不用品回収業者に依頼する方法もあります。
ただし、路上を回収車で廻っていたりチラシ等で宣伝をしている回収業者の中には、「無料で引取り」をうたいながら料金を請求する悪徳業者もいます。
「『ご家庭の廃棄物を無料で処分します』という宣伝を聞いたり、チラシ広告を見て処分を依頼したら、高額な料金を請求された」という内容の苦情や相談が寄せられています。
産業廃棄物収集運搬の許可や古物商の許可では、ご家庭の廃棄物を収集運搬することはできません。
廃棄物の処理を依頼する場合は、無許可の事業者には依頼しないでください。なお、許可を受けた事業者は、軽トラック等で街宣しながら廃棄物を回収することはありません。
チラシやホームページに「見積無料」と書かれていたので依頼をしたら、「隣りの県から来たから、この場合は見積もりが有料で、引き取り料金もチラシにある金額よりも高くなる」と高額な料金を請求されたというご相談事例もありました。
不用品回収業者に依頼をする場合は「一般廃棄物収集運搬業許可」を保有しているか、会社所在地や連絡先、買取実績等を確認し悪徳業者に依頼することがないよう十分注意しましょう。
ステップ3 見積書を比較する
現地調査が終わったら、それぞれの解体業者は調査の内容をもとに見積書を作成し郵送されます。解体業者から見積書が届いたら、各社を比較していきます。
見積書を比較する8つのチェックポイント
もちろん合計金額も大切ですが、見積書を比較する際は以下の8つのポイントを意識してみてください。
- 建物本体の解体に必要な費用とそれ以外(残置物撤去や付帯工事)の項目は分かれているか?
項目が分かれていると何にいくらかかるのか各社を比較できます - 見積書の建物の坪数や平米数(㎡)に実際の建物との大幅なズレがないか?
この数字が誤っていると全体の金額に大きく影響します - 見積書の内訳項目に、養生シート費用(建物周囲を囲い埃の飛散を防ぐもの)、近隣対策費用(近隣住民への挨拶まわり)は含まれているか?
近隣対策をずさんに行なうと、ご近隣から苦情が入る可能性が高いです - 整地費用は見積もり内容に含まれているか?
中には別途費用を請求する業者もいるため、事前に確認しましょう - 万が一の事故があった際の保証は含まれているか?
解体業者が賠償保険に加入していると言っておきながら保険の有効期限が切れている、というケースがあり、トラブルや事故の際の責任所在の矛先が工事依頼者に向けられた事例もあります - 工事前のリサイクル法の届出(事前の届出)の費用は見積もりに含まれているか?
申請義務は工事依頼者にあります。届出を怠ると、発注者に20万~30万円の罰金が課せられてしまいます。業者にお願いする場合その費用が見積もりに含まれているか見落としがないよう注意しましょう - 工事後の、取り壊し証明書の発行費用は見積もりに含まれているか?
取り壊し証明書は、工事後の滅失登記申請の際、必須書類です - 見積もり費に含まれていない工事の案内があるか?
見積もりに含まれていないが工事が発生する可能性がある内容は事前に把握しておきましょう
【事例解説】実際の見積書を比較

実際の見積書を比較しながら確認していきましょう。詳細な解説をしてもらうため、11万件以上の解体ユーザーから相談実績のある「あんしん解体業者認定協会」の初田理事に見解を伺いました。
現場解説
一般社団法人あんしん解体業者認定協会 理事・解体アドバイザー
初田 秀一 (はつだ しゅういち)
解体アドバイザー歴15年、相談実績は11万件以上。お客様の不安を笑顔に変える現場のプロフェッショナル。「どんな些細なことでも構いません」をモットーに、一期一会の精神でお客様一人ひとりと向き合い、契約から工事完了まで心から安心できる業者選定をサポート。この記事では現場のリアルな視点から解説を担当。
理事 初田秀一A社は一式でまとめられている項目が多く「どんぶり勘定」で、何にどれくらい費用がかかってくるのかが不明瞭です。一方B社は項目が細かく設定されており、見積もり段階では断定できない作業も「みなし作業」としてあらかじめ見積もっています。
建物解体では、どうしても実際に作業を進めてみないと実態が分からない部分があります。(建物の基礎部分や浄化槽の有無など)後々追加費用が高額になる場合もあるので、どんぶり勘定であまりにも安い見積書には注意が必要です。
今回のA社は高めに見積もっているため追加費用は少ない可能性がありますが、もしかすると実態は見積書の金額よりも安価で依頼をする事が可能だった……という事も想定ができます。
その点B社は項目も細かく、数量・単位・単価もA社と比較して明瞭なためより安心感があります。
理事 初田秀一みなし作業として見積もってくれるかどうかは、解体業者の経験値や得意分野にもよって変わってきます。何社か比較してあまりにも金額が他と違う見積もりには注意が必要です。
見積もり内容とあわせて比較すべきポイント
また、見積書に書かれている内容以外でも、業者を比較するポイントが3つあります。
- 現地測量での調査内容が見積書に反映されているか?
見積書比較の大前提として、現地測量をしたうえで見積もってもらうことが重要です。概算や口頭だけでなく現地測量をした内容が確実に反映されて算出されているか、改めて確認しましょう。見積もりに含まれていない追加費用は発生しないか?発生するとしたらどんな工事が考えられるかあらかじめ業者に質問した際、丁寧に説明してくれるかどうかも、優良を見極めるポイントです。 - 見積内容の説明があるか?
職人さんの多い業界なので、見積書を提出するだけでフォローをしてくれない解体業者は未だに多いです。わからない部分をそのままにして比較を進めると、正確な比較ができません。説明がなかった場合は、こちらから質問してみましょう。お客様思いで優良な業者は、依頼者の立場になり親身になって詳細を聞いたり、問題を解決しようと誠実に対応してくれます。 - 見積到着までの日数は?
現地調査から見積書が届くまでに何日間かかったかも、重要な比較ポイントです。現地調査に立ち合い測量を行う人間は、解体工事を長年やってきている熟練の職人さんです。現場監督を兼任している方もいれば営業専門で1日に何件も現地調査を行う方もいます。
見積書の作成とお届けをどれだけ迅速に行うかをみると、その業者の普段からの対応の速さを測れます。早い業者ですと依頼した翌日に見積書を届けてくれる解体業者もいます。現地測量後、1週間~10日以上待っても見積書が届かない解体業者は注意してください。
金額比較の注意点
見積書の金額を比較する時は、以下の点に注意してください。
- 合計金額を比較する。税込・税抜を確認する
解体業者ごとに見積書の表記方法は様々です。合計金額欄に税金を含んで表記している業者と含んでいない業者がいます。普段の買い物ならそれほど大きな差は出ませんが、解体工事は高額です。一般的な木造家屋でも消費税だけで10万円を超えてしまいます。注意して確認して下さい。 - 単位を揃えて金額を比較する
価格表示とあわせて気をつけたいのが、換算している単位です。主な表記単位は、建物の面積や大きさを表す坪、または㎡です。
1坪は3.3㎡なので、手元にある全ての見積書の単位を揃えてから比較すると、各業者が解体するための費用をどのように金額設定しているかが比較できます。
解体工事で発生する廃材の処分費用に使用する単位は、m3(立米)、t(トン)、室内荷物の処分費用には台(だい)を使うことが多いです。
ステップ4 解体業者と工事契約する
解体業者の比較が終わり依頼先が決まったら、次は業者との工事契約です。工事契約は業者と直接会って行いましょう。
直接会うと、コミュニケーションが取りやすいため、書面や電話では伝わりづらい内容や取り壊し範囲等についても詳細に双方で確認しながら契約できます。
もし、解体業者とスケジュールが合わない場合は、契約書を郵送して契約を交わすことも可能です。優良な業者ほど、工事前に不明な内容や不安点を解消しようと出来る限り努めてくれます。
契約の注意点
解体工事の契約において大切なのは、契約日と工事開始日を業者と明確にしてスケジュールを組むことです。
解体工事を完了するまでの期間が迫っている事を理由に近隣対策を省略する業者には注意が必要。近隣対策を怠るとトラブルが発生する確率が高まります。
工事スケジュールは業者に任せきりにせず、やるべきことが確実に行われているか、確認しましょう。
理事 中野達也契約が工事開始の直前だった場合、ライフラインの停止など工事前の準備を契約前に行う必要があります。準備が間に合わず工事期間が後ろ倒しになり、思わぬ追加依頼で解体費用が高くなってしまうなどの事態に繋がらないよう、スケジュールの事前確認を行いましょう。
契約書の基礎知識とチェックポイント
契約書の内容をしっかり確認しないまま契約してしまい、解体工事中にトラブルが発生したが契約内容に含まれていなかったため損してしまったというケースは珍しくありません。
契約書は、知らない単語や聞きなれない表現が多く記載されているので混乱されるかもしれませんが、契約前にしっかり確認すればトラブル発生の確率を下げることができます。必ず見落とさずにチェックしてください。
- 契約書は解体業者が用意する(決まった書式はありません)
- 2部契約書を用意し、業者と依頼者で1部ずつ保管する
- 契約方法
- 直接会って契約する場合 ▶ 契約内容を読み合わせ、相違がないか確認後契約・押印
- 直接会って契約しない場合 ▶ 郵送で契約書が届き、ご自身で内容を確認、押印後返送
また、契約書の内容に関しては以下の点に注意しましょう。
- 工事内容が記載されているか?
- 解体工事の総額金額が記載されているか?
- 工事期間などがしっかりと明記されているか?
- 工事中の損害、トラブルになった場合の対処と責任所在が記載されているか?
- 産業廃棄物処分証明(マニフェストE票)に関する記載がされているか?
工事実績が豊富かつお客様評価が高い業者は、記載の漏れが無いことはもちろん、依頼者への補足説明を怠りません。優良な業者ほど事前にあらゆるケースを考慮した対策をとります。
契約書に記載すべき4項目
実際に使われている契約書の記載文とその意味をご紹介します。ご自身の契約書と照らし合わせを行い、記載されていない場合は解体業者に追加するよう伝えて契約を交わしましょう。
なお、スッキリ解体では解体工事の契約書についてより詳細に解説した記事もございます。より網羅的に知りたい方は以下の記事でご確認ください。

取り壊し範囲について解体業者と認識をすり合わせる
敷地内の樹木や井戸、ブロック塀など、どの範囲までを取り壊してほしいかは事前に認識を揃えておきましょう。
「取り壊す予定がなかった部分を壊してしまった」というトラブルも起こり得ます。特に多いのが、フェンスや塀などの外構部分や、お隣の塀を間違えて壊してしまったというトラブルです。隣接する住宅との境界線を双方の認識が相違したまま工事を進めたことが主な原因です。工事開始までに電話でのやり取りや口頭伝達ではなく、解体業者・依頼者・隣人が一同に会し現場で確認し合うと、認識の相違無くトラブルを防げるでしょう。
工事スケジュールを明確にする
工事スケジュールが曖昧なままだと、以下のようなデメリットが発生します。
- 工事後の予定が立てられない
解体工事後に新築建設、駐車場施工、売却…など解体後の予定がある場合、解体工事完了目処が決まらないと、その先の計画を立てることができません。 - 近隣住民の方々に迷惑がかかる
工事完了目処がわからないと、近隣住民へも説明が出来ません。解体工事は、騒音や振動が発生することが避けられないため近隣住民へ工事の影響を周知しご理解を得ながら工事を進めることが大切です。また事前にお知らせすることで、苦情による工事中断等、不測の事態を避けることにもつながります。
工事スケジュールが明確になると、いつどんなトラブルが起きそうか、事前に把握できるため、万が一に備えた準備と適切な対処ができます。また工事後のスケジュールを立てやすくなるので早めに確認するといいでしょう。
理事 中野達也自然災害の影響や、地中埋設物の発見などでやむを得ず工期延長になる場合もあります。こういったケースは珍しいことではありません。重要なのは、依頼者だけでなく近隣住民に対しても、工期延長の可能性とその影響について事前の説明と対策を怠らないことです。
工期が延びる可能性が出た時点で業者に連絡してもらえると、工事後の予定調整もでき、安心ですよね。具体的な工期についてうやむやにせず、「○日で終わる予定ではいるが、悪天候や予定外の作業が発生することにより、延長する場合もある」と施工前に説明してくれる業者を選ぶようにしましょう。
ステップ5 工事前の準備をする
ライフライン(電気、ガス、水道)の停止手続き
解体工事をする前に、それまで契約していた電力会社・ガス会社・水道局に連絡をし、使用停止の手続きを行いましょう。ただし、実際に停止する日は解体業者との相談が必要です。
- 電気・ガス
多くの場合、解体作業中の事故の危険性を抑えるため工事前に停止手続きをします。場合によっては、家屋内の残留物の撤去など明かりが必要になるので解体業者に聞いてみましょう。 - 水道
近隣住民への配慮を怠らない業者は、解体工事中のホコリや粉じんの飛散を最小限に抑えるために散水をしながら解体作業を行います。また工事後に現場周辺を清掃する際も水を使用するため、水道だけは工事後に停止するケースが多いです。
いずれの場合も解体作業に関わることなので、業者と連携して手続きを進めましょう。
理事 中野達也予め自分がやるべき事、業者がやるべき事を把握しておけば慌てることなく着実に進められます。
電気・ガス・水道の他にも、郵便物やインターネット等、定期契約していたサービスの停止、移転の届出が必要です。(電話については、以降使用しない場合は解約手続き、使用再開する場合は、一時中断手続きが必要)
停止手続きを忘れてしまったために、余分な料金を支払い続けてしまったり、郵便物が手元に届かなくて困ることの無いよう、事前に漏れなく手続きを進めましょう。
また、経験豊富でお客様思いの解体業者の中には、手続きついてアドバイスをしてくれる業者さんもいます。解体工事をする方の多くが初めての経験です。工事完了までに自分がやるべき事の多さに驚かれる方は少なくありません。手続きや申請漏れで後々損することがないよう、気持ち的にもスケジュール的にも余裕を持った準備が、安全かつ安く工事を終えるためには大切です。
建設リサイクル法の事前申請
解体工事の前には建設リサイクル法の事前申請をすることが法律で義務付けられています。なお、基本的に建設リサイクル法の届け出は解体業者が代行するため、依頼主がアクションを起こす必要はありません。
(対象建設工事の届出等)
第十条 対象建設工事の発注者又は自主施工者は、工事に着手する日の七日前までに、主務省令で定めるところにより、次に掲げる事項を都道府県知事に届け出なければならない。
道路の使用許可申請
解体する敷地内に廃棄物などの運搬車や重機が入る十分なスペースがある場合は、この申請は必要ありません。しかし、敷地内に十分なスペースが無い場合は、長時間道路を使用することになるため、道路使用許可の申請が必須です。
使用する車の駐車方法を記した道路の図面と申請書を、所轄の警察署へ届け出ます。(証紙代として数千円が必要)この届け出は解体業者が行うのが一般的であり、解体工事の見積もりにこの証紙代も含まれています。業者の中には、値引きに応じない代わりに証紙代をサービスしてくれるところもあります。
ステップ6 工事前に近隣トラブル対策をする
解体工事前のトラブル対策(解体現場で起きているトラブルの実態)
実は、あらゆる工事の中で「もっともトラブルが発生する」のが、この解体工事と言われています。そのトラブルの多くは、解体業者と依頼者とのトラブルではなく、解体工事現場の近隣にお住いの住民の解体業者もしくは依頼者とのトラブルです。
- トラブルが原因で、工事後の計画にも大きな影響が出る可能性も
クレームを対応してもなかなか話がまとまらず、トラブルが長引いたり場合によっては工事が一時中断してしまうケースもあります。最悪の場合、解体後の新築着工予定に間に合わなくなってしまう等、工事後の計画に大きな影響を及ぼします。 - 業者の工事内容が原因でも、クレームの矛先は依頼者に向けられる
たとえ、解体業者の作業内容に問題があっても、近隣住民のクレームや怒りの矛先は業者に留まらず、その業者に工事を発注した依頼者に向けられます。その結果、近隣住民と訴訟にまで及んだケースもあります。
解体工事では、騒音、粉じん、振動はどうしても発生してしまいます。重要なのは、工事の影響を最小限に抑える事前対策をする業者を選ぶことです。
- ホコリ飛散防止養生をしっかりと設置する
- 近隣住民へ想定される影響と工事期間を必ず工事前に周知する
- 近隣住民の生活に十分に配慮しながら工事を進める
近隣トラブルの発生を格段に低くする方法
近隣住民への影響を最小限に抑えるためには、作業中の対策はもちろん、工事前に近隣住民へ周知し、ある程度理解を得ることが大切です。
きちんとした業者であれば、工事前に近隣住民への挨拶回りを必ず行います。挨拶回りのタイミングは余裕を持って工事開始から一週間~10日前に実施することが多いです。
理事 中野達也近隣挨拶は、解体業者と依頼者が一緒行うのがおすすめです。解体業者に任せきりにして依頼者が挨拶に行かないと、住民の中には「施主なのに挨拶の一言もない!」と不信感を抱く方もいます。特に建て替えを予定されている場合、近隣関係は大切にしましょう。
解体業者と依頼者が一緒に挨拶回りをすると、工事に関する専門的な質問を受けた場合にも業者に答えてもらえます。さらに依頼者自らが足を運ぶと、住民は事情を把握しやすく、解体工事への理解を得やすいため、後々のトラブル・クレーム発生の可能性を抑えることができます。
どうしても業者と日時の都合が合わず一緒に挨拶回りできない場合は、解体業者からも挨拶に伺う旨を一言伝えておくと良いでしょう。

- 解体現場の場所等の概要
- 工事日程と作業時間
- 工事による影響(騒音、ホコリ、振動等が出る)
工事による影響をあらかじめ伝えておくと、住民側も事前に対策できます。
- 振動や騒音が発生する時間帯に家を空ける用事を済ませてもらう
- 粉塵が飛散する作業の時は、洗濯物などの家のものを外に出さないようお願いする
- 現場付近で車の出し入れが必要な場合、時間を考慮、調整してもらう
近隣住民とのトラブルが原因で、工事中断した場合に困るのは依頼者だけではありません。現場作業員の人件費や重機の稼働に関わるため、解体業者にとっても避けたい事態です。スムーズにかつ安全に解体工事を完了するために、解体業者が普段からどんな対策を行っているかも業者を比較する際の重要なポイントです。
普段から挨拶回り時に配布している挨拶状を見せてもらったり、どんな粗品を配っているかを確認するのも良いでしょう。
優良な解体業者ほど、依頼者だけでなく近隣住民を十分に考慮し、工事の影響を最小限に抑える対策、努力を怠りません。また万全な事前対策をしたうえで、問題が起きた場合の適切な対処法を心得ています。
理事 中野達也優良な解体業者は、解体現場の隣家だけでなく、騒音や振動、工事車両の通行が想定される付近のお宅にも事前に挨拶まわりを実施しています。在宅、不在宅をチェックし、現場内で情報共有する等、近隣への配慮を欠かすことなく工事を行います。
挨拶状の書き方
もし挨拶まわりで隣人が不在の場合は、挨拶状をポストに入れておきましょう。

挨拶状を作成する場合は、以下の内容を記載しましょう。
ご協力のお願い
工事中にご迷惑をおかけしてしまうこと、ご協力をお願いしたい旨を記します。
工事の名称
「●●邸取り壊し工事」など、工事の概要がわかる名称を明示します。
工事を行う場所
取り壊し事を行う家屋の住所を具体的に明示します。
発注者名
取り壊し工事を発注した責任者の所在を明示します。
施工期間
工事の施工予定期間を記します。天候等の影響により遅れてしまうことを想定し長めに設定しておいたほうが良いです。
施工時間
1日のうち何時から何時まで工事を行うのかを記します。万が一の為始まる時間を早めに、終わる時間を遅めに設定しておいたほうが良いです。
休みの日
工事を行わない曜日を記載します。
工事施工業者
取り壊し工事を請け負い、実際に施行する業者の名前を明示します。
施工業者の住所
取り壊し工事施工業者の住所を明示します。
施工業者の担当者
施工業者の中で、今回の工事の責任者である担当者の名前を明示します。
施工業者の連絡先
万が一お客様から直接ご連絡をしたいという場合に、対応できる連絡先を明示します。
なお、スッキリ解体では解体工事で発生しうるトラブルとその対策、対応について網羅的にまとめた記事もございます。あわせてご確認ください。

ステップ7 解体工事の開始
ここからは実際に解体工事が始まります。各工程を把握していきましょう。
看板の設置
解体工事の現場には必ず「建設業許可及び解体工事業登録」の看板を設置する義務があります。これは「解体工事をする資格があるかを証明するもの」であり、建設業法及び建設リサイクル法に基づいた規則になるため、設置しない場合は法令違反となります。
(標識の掲示)
第四十条 建設業者は、その店舗及び建設工事(発注者から直接請け負つたものに限る。)の現場ごとに、公衆の見やすい場所に、国土交通省令の定めるところにより、許可を受けた別表第一の下欄の区分による建設業の名称、一般建設業又は特定建設業の別その他国土交通省令で定める事項を記載した標識を掲げなければならない。
建設業法で定められた、看板への掲示内容は次のものです。
- 商号及び名称
- 代表者の氏名
- 主任技術者の氏名
- 専任の有無
- 資格名
- 資格証交付番号
- 一般建設業及び特定建設業の種別
- 許可を受けた建設業
- 許可番号
- 許可年月日
- 建退協加入証
- 労災関係成立表
- 施工体系図
- 下請人に対する通知
- 建設業退職金共済制度適用事業主の現場標識
- 緊急連絡先

また、建物にアスベストが含まれている場合は「石綿使用状況の調査結果」の看板も設置する必要があります。これも石綿障害予防規則及び改正大気汚染防止法に基づいた規則になるため、設置しない場合は違法になります。
なお、法令に基づいた設置義務はありませんが「有資格者一覧」「建設リサイクル方の届出証明」「道路使用許可証」が記載された看板の設置も望ましいと言えます。それぞれが正当な解体業者であることの証明になるため、近隣や周囲への周知方法として有効です。
作業スペース・搬入経路の確保
敷地内で重機を十分に動かすスペースや廃材の運搬車両を駐車するスペースがない場合、敷地の状況に応じてブロック塀や外構、庭木などを先に取り壊します。なお、重機や作業員が敷地からはみ出して作業をすることは法令で禁じられています。必ず敷地内での作業が求められるため、スペースが不十分と判断されれば先にある程度の撤去作業を行います。
この作業は敷地や周辺環境によって大きく異なり、十分に重機が動かせる環境であれば必要ありません。

足場組立・仮設養生の設置
工事が開始されたら、まずは足場組立・仮設養生の設置を行います。「足場組立」は、工事の高所作業において職人の安全を確保するために仮設足場を設置する作業のことです。普通の木造家屋の場合は単管(パイプ)の足場を3~4面に設置するのが一般的です。なお、足場組立には「足場の組立て等作業主任者」という国家資格が必要になります。
「仮設養生」は、工事中の粉塵や騒音を防止するために必要な養生シートの設置作業を指します。足場組立や仮設養生の作業がずさんになると、近隣や通行人とのトラブルに発展する可能性が高まるため、工事現場を見に行けるのであればこの段階で現場確認しておくことを推奨します。
ちなみに「作業スペース・搬入経路の確保」の時点で重機解体が難しいと判明している場合は、この段階で手壊し工事を行います。手壊しの解体作業が行われた場合は工期が延びるため注意が必要です。


アスベスト塗料を除去する
建物の塗料にアスベストが含まれている場合は、このタイミングで除去されます。アスベストが外壁材などに含まれている場合は比較的撤去が容易ですが、塗料に含まれている場合は撤去作業が複雑になり難易度が上がります。アスベストの量や工法によって工期は前後し、最低でも5日程度はかかる作業となります。
まず、塗料撤去による飛散を防ぐため、剥離剤と呼ばれる粘度と湿度の高い液体を塗り、アスベストを湿潤化させます。その後、工具のスクレーパーや金ブラシなどを使い、手作業でアスベストを除去します。また、飛散を防ぐために足場や養生も厳重かつ頑丈に設置する必要があるため、工期の長さも相まって費用は高額になる傾向があります。


なお、スッキリ解体ではアスベストの調査や除去にまつわる詳細な解説をまとめています。以下の記事からご確認ください。
住居設備・屋内残置物の撤去・内装撤去
駆体を取り壊す前に建物の中を綺麗にし、建物を駆体のみにします。
まずは屋内残置物の撤去です。基本的に依頼主と事前に約束した量の残置物であれば問題ありませんが、約束よりも量が増えている場合は想定作業時間を上回ることがあるので注意が必要です。
続いて住居設備の撤去です。キッチン、お風呂、トイレ、エアコンなど、駆体と一緒に取り壊せない設備を先に撤去しておきます。


最後に内装の撤去です。内装材、断熱材、窓ガラス、畳などの内装を撤去します。本工程はすべて手作業で行われ、かつ廃材は品目ごとに分別されるため、作業には2~3日を要します。
なお、この時に産業廃棄物の排出事業者となる解体業者は、産業廃棄物のマニフェストを発行します。
屋根材・外壁撤去
建物の内部を綺麗にしたら、屋根材と外壁の撤去を行います。外壁は内装と同時並行で撤去作業をすることがありますが、屋根材は作業位置に高低差が生まれ危険が生じるため、同時に作業は行いません。
このタイミングは埃が飛散しやすい工程でもあるため、一つひとつ手作業で丁寧に撤去を行います。特に屋根材に関しては、屋根上からトラックに瓦を投げ入れるなどの雑な作業を行ってしまうと、粉塵、騒音トラブルの危険性が高まるため注意が必要です。
なお、外壁建材にアスベストが含まれている場合はこのタイミングで撤去します。アスベストが飛散しないよう、外壁をそのまま手作業で外して処分をします。飛散防止の観点から梱包をしてトラックに積み込み、排出、運搬を行います。アスベストの撤去作業は1~2日程度です。

駆体の解体・廃材分別(搬出)
駆体以外をすべて撤去したら、いよいよ駆体の取り壊しに入ります。本工程が多くの方の想像する「解体工事」だと思われますが、実際には駆体を取り壊すまでにさまざまな工程を踏んでいるのです。
また、多くの方は重機で建物を一気に取り壊す「ミンチ解体」をイメージされるかもしれませんが、現代でその取り壊し方は違法になっています。現代では廃材を「コンクリート」「アスファルト」「木くず」などの品目ごとに分別する「分別解体」が義務付けられており、本工程に多くの作業時間とマンパワーが必要になります。
(分別解体等実施義務)
第九条 特定建設資材を用いた建築物等に係る解体工事又はその施工に特定建設資材を使用する新築工事等であって、その規模が第三項又は第四項の建設工事の規模に関する基準以上のもの(以下「対象建設工事」という。)の受注者(当該対象建設工事の全部又は一部について下請契約が締結されている場合における各下請負人を含む。以下「対象建設工事受注者」という。)又はこれを請負契約によらないで自ら施工する者(以下単に「自主施工者」という。)は、正当な理由がある場合を除き、分別解体等をしなければならない。2 前項の分別解体等は、特定建設資材廃棄物をその種類ごとに分別することを確保するための適切な施工方法に関する基準として主務省令で定める基準に従い、行わなければならない。
また、本工程の作業時間は解体業者に所属する重機オペレーターの技術力に依存します。腕の良いオペレーターが作業を行っていればその分工期を短縮できるため、業者選びの際には評判や口コミを参考に注視したいポイントでもあります。なお、この期間では重機を使い始めるため、急に振動や粉塵が発生します。本工程に入る前に近隣への配慮を行っているかどうかで近隣トラブルの発生に影響するため、必要であれば近隣に挨拶を行っているか確認を入れましょう。


基礎撤去・地中埋設物撤去
建物の土台となる部分を「基礎」と呼びます。建物の駆体を取り壊し終わったら土台である基礎を撤去します。
基礎は大きく分けて「布基礎」と「ベタ基礎」があり、布基礎よりもベタ基礎の方が頑丈で取り壊しづらく、工期も工費も掛かってしまいます。木造建築において1990年代は布基礎が基本でしたが、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」が2000年代に制定されたことをきっかけに、より強固なベタ基礎が主流になっていきました。
そのため、古い建物を取り壊す際は布基礎が多く、より新しい建物を取り壊す際はベタ基礎である傾向が高いです。この観点で言えば、建築技術は年々進歩しており耐震性も上がりどんどん強固になっているため、時代が進めば進むほど解体工事は難しくなり、解体費用も高額になると言えます。
なお、基礎を撤去する際には地中埋設物の撤去も行います。地中埋設物はこの段階にならないと存在を確認することが出来ないため、発掘された場合は撤去に追加費用が発生します。

外構の撤去
「作業スペース・搬入経路の確保」において取り壊さなかった外構の残りを撤去します。外構の対象となるのは「ブロック塀」「フェンス」「門柱」「カーポート」「物置」「花壇」「ウッドデッキ」などです。
外構撤去の作業は、敷地内の状況によって大きく異なります。大きな庭石や樹木がある場合は、専門業者による撤去が行われる場合もあります。

整地・清掃
解体作業完了後に、更地を綺麗に整えることを「整地」と言います。工事で出た廃材の破片やガラを撤去し、土に増減があった場合は盛土を追加・撤去して平らに均します。
意図的に土地の高さを変えたい場合にも土を追加する必要があるため、業者に依頼をして整地時に土を追加してもらいましょう。
また、整地と共に現場周辺の清掃も行います。清掃の際には水を使用することが多いため、水道の解約は清掃終了後になるケースがほとんどです。

ステップ8 解体後の更地を確認する
解体業者から工事完了連絡がきたら、まずは現地で更地確認を行います。
土地の仕上がり確認ポイント
業者と一緒に現地確認すると、双方の認識の食い違いが起きず詳細に確認できます。以下を必ず確認しましょう。
- 事前にすり合わせた内容通りに作業を完了しているか
- コンクリート破片、砕石、タイルやガラス等の欠片が落ちていないか
- 廃材やゴミが土地の表面だけでなく、中からもすべて撤去されているか(解体後の地中に廃材やゴミが埋められていないか)
解体業者の工事内容によって、土地の価値を上げることも下げることもあります。
そのため、解体後の土地の売却、新築工事に大きく影響が及んでしまいます。下記の写真をご覧いただくと、更地の仕上がりの違いが一目瞭然ではないでしょうか。
また、解体工事で発生した廃棄物を撤去するにもお金がかかります。悪徳業者の中には、この廃棄物撤去・処理費用を削減して安価な見積もりで仕事をとるために、廃棄物を地中に埋めてしまう行為をしている業者もいます。

理事 初田秀一上の写真は、当協会のお客様が完工された後の更地です。少し石が残っているように見えますが、これは綺麗な整地に分類されます。
解体業者が綺麗に撤去するのはあくまで「解体作業で出たコンクリートや石」で、元からあるような小さい石までは取り除かないのが普通です。
粗悪な解体工事が与える影響
無事に解体工事を終え、その後の計画を思い通りに進めるためにも、最後まで責任を持ち、安全かつ適正な工事が出来る解体業者選びが重要です。
- 新築の場合:土地の仕上がり次第で最悪の場合、地盤沈下…家が傾いてしまう
万が一、廃材やゴミが地中に埋められていた場合、表面を綺麗に固めて整地しても意味がありません。月日が経つにつれて地中のゴミが腐敗し地中に空洞ができるため地盤が沈下し建物が傾いてしまいます。そうなってからの対処や建て替えには、さらに多額の費用がかかってしまいます。
家の建設は建物を支える基礎部分の工事が最も重要と言っても過言ではありません。そのためハウスメーカーや工務店は解体後の土地の仕上がり状態を重要視しています。 - 売却の場合:売却後に地中ゴミが発覚した場合、撤去費用・運搬費用等、多額の費用がかかる
土地の表面が綺麗に整地されていたのに、地中に廃材やゴミが埋まっていることが後々になって発覚するケースは珍しいことではありません。発覚した場合、土地の所有者はその地中ゴミをお金をかけて撤去しなければなりません。売却した後でもその責任の所在を問われることになりかねません。
理事 初田秀一当協会に解体業者の紹介依頼をくださるお客様の中には、建築会社や工務店の社長様もいらっしゃいます。そういった社長様の多くが、「いい加減な工事をする解体業者がホントに多い。ウチの(自分の工務店の)評判を左右するから死活問題。建物の基礎や地盤に大きく影響するから仕上げまで責任を持って仕事をする解体業者がいい」と、解体工事の品質を重要視されています。
ステップ9 工事代金を支払う
工事代金支払いのタイミング
工事代金支払いのタイミングは2通りあります。「どちらの方が良い」というものはなく、解体業者によって方式が異なります。
- 工事着工前に半金、工事終了後に残りの半金支払い
- 工事終了後、全額支払い
いずれの場合も、最終支払いは解体工事が全て問題なく終了してから対応しましょう
代金支払い後に整地のやり直しを訴えたとしても、対応してもらえないケースもあり得ます。中には、代金支払い後、業者と音信不通になってしまった事例もあります。作業完了の報告を受けたら、まず、当初の打ち合わせ通りの工事内容が最後まで行われたのかを確認し、問題がなかったら最終的に代金を支払いましょう。
請求書の内訳を必ず確認してから支払いましょう
追加費用が発生していないかを確かめましょう。工事の途中で地中に埋まっていた過去のゴミや柱等が発見されるケースもあります。当初予期できなかった撤去作業が加わる場合、追加費用はやむを得ません。そのような場合も、良心的な業者なら、発覚した時点で依頼者に報告するはずです。中には、依頼者へ何の報告もせずに勝手に撤去工事を進め、後から不当な追加費用を請求する業者もいるので請求金額の内訳は必ず把握しておきましょう。
建物滅失登記に必要な書類一式を解体業者から受け取る
取りこわし証明書とは?
「その土地にあった建物は滅失した」ことを解体業者が証明する書類です。(建物があった住所、滅失の理由、建物所有者の名前、工事完了日等が記載されている)工事後の滅失登記申請の際、解体業者の会社登記事項証明書、印鑑証明書とあわせて必ず必要な書類です。
解体業者から受け取る書類3つ
- 取りこわし証明書
- 解体業者の会社登記事項証明書
- 解体業者の印鑑登録証明書
ポイント:いつ書類を提出してくれるか?業者に事前確認しておくと工事後の予定を組みやすい
お客様思いの業者さんほど、工事後の手続きがスムーズにいくよう配慮してくれます。事前に「いつ頃書類をもらえるか?」質問してみると業者さんの対応を見ることができ、ご自身のスケジュール管理もしやすくなるでしょう。
ステップ10 建物滅失登記申請をする
工事作業が全て終わり、支払いが完了したところでホッとしたいところですが、解体工事はこれで終わりではありません。最後に重要な手続き「建物滅失登記申請」があります。
「建物滅失登記」とは
建物の登記簿を閉鎖する手続きのこと。解体工事後の申請が義務付けられています。法務局に記録されている登記簿に、その建物がなくなったことを登記することを言います。建物の解体が完了したら建物滅失登記申請書を作成し、1か月以内に管轄の法務局へ申請しなければなりません。申請を怠ると、10万円以下の罰金が課せられる等、トラブルにつながります。必ず忘れずに申請し、無事に全てを完了させましょう。
(建物の滅失の登記の申請)
第五十七条 建物が滅失したときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人(共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記がある建物の場合にあっては、所有者)は、その滅失の日から一月以内に、当該建物の滅失の登記を申請しなければならない。
スッキリ解体ではご自身で滅失登記の申請をするための詳細な解説をまとめています。以下の記事からご確認ください。

【FAQ】解体工事の流れ、手順に関するよくある質問
解体工事中、依頼主側は何もしなくて大丈夫ですか?
近場であれば1度現場を見に行くのがおすすめです。
事前に約束した工事範囲を守っているか、作業員がうるさく騒いでいないか、清掃をちゃんと行っているかなど、可能であれば1度だけでも現場を確認しにいくことをおすすめします。
理事 初田秀一解体業者には工事の進捗状況を報告してもらうようにしましょう。作業状況の報告に加え、取り壊し状況がわかる現場写真を撮影し、メール等で送ってくれる業者もいます。依頼者の不安な気持ちを理解して対応してくれる業者に工事をしてもらえると、安心して工事完了を迎えられます。
インターネットで探さず、知り合いの解体業者に頼んでも良いですか?
問題ありません。
親交のある解体業者がいる場合は、その業者さんに直接依頼して問題ありません。費用面が心配な場合は、業者さんに断りを入れて「相見積もりをしてみても大丈夫か」と相談してみましょう。
工事前のお祓いは必ず行うべきですか?
必ずしも行う必要はありません。
敷地内に井戸がある場合はお祓いを行う風習がありますが、これは地域の風習や信仰に基づくもので、家族の考えや自身の気持ちに合わせて行うかどうか決めて問題ありません。
雨や雪など、悪天候の日は工事は休みになりますか?その場合、工期はどのくらい延びますか?
安全確保が難しいと判断される悪天候(大雨、強風、大雪、台風など)の場合は中止となります。
小雨程度であれば工事を続行することが多いですが、大雨、強風、大雪、台風など安全確保が難しい場合は中止となります。また、悪天候で中止になった日数分、工期は後ろ倒しになります。この場合、工期が延びたからといって追加費用が発生することはありません。
理事 初田秀一基本的に解体業者は契約時の工期にある程度の予備日を設けています。そのため、悪天候で1日2日中止になったとしても、工期が延びることは考えづらいです。
思い出のある柱や梁など、解体で出た廃材の一部をもらうことはできますか?
可能なケースがほとんどです。ただし、事前に解体業者へ相談しましょう。
思い出の品として建物の一部を取っておきたい場合は、契約時に解体業者へ相談してみましょう。事前に伝えることで、業者側もその部材を傷つけないように取り外す工程を計画してくれます。ただし、建物の状態が著しく悪い場合、危険性の観点から難しいこともあります。
まとめ:解体工事の流れについて

本記事では、解体業者へ見積もり依頼をするところから、工事完了後の手続きまで、解体工事をスムーズに進めるための全手順を解説しました。
最後にもう一度全ての手順を簡易的にまとめました。これらの流れを踏まえたうえで、まずは解体業者を探すところから始めてみてください。
- 手順1 解体業者を探す
-
インターネット検索で「〇〇市 解体業者」と検索し、ご希望のエリアに対応できる解体業者の情報を調べましょう。
- 手順2 解体業者から見積もりをとる
-
気になる業者に連絡し、現地調査に立ち会って複数の業者から見積もりを取得しましょう。
- 手順3 見積書を比較する
-
複数社の見積書を、合計金額だけでなく内訳や担当者の対応まで含めて総合的に比較検討しましょう。
- 手順4 解体業者と工事契約する
-
依頼する業者が決まったら、工事内容や金額、工期などを契約書でしっかり確認したうえで契約を結びましょう。
- 手順5 工事前の準備をする
-
電気・ガス・水道などのライフライン停止手続きや、必要な行政への届け出を業者と連携して進めましょう。
- 手順6 工事前に近隣トラブル対策をする
-
工事によるトラブルを防ぐため、業者と一緒に近隣住民への挨拶回りを行い、工事への理解を得ましょう。
- 手順7 解体工事の開始
-
足場・養生の設置から始まり、内装撤去、建物本体の解体、基礎撤去、整地・清掃という流れで工事が進みます。様子を確認したい場合は現場へ足を運びましょう。
- 手順8 解体後の更地を確認する
-
工事完了の連絡を受けたら、廃材やゴミが残っていないか、土地が綺麗に整地されているかを現地で確認しましょう。
- 手順9 工事代金を支払う
-
更地の状態に問題がなければ、請求書の内容を確認して工事代金を支払い、滅失登記に必要な書類を受け取ります。
- 手順10 建物滅失登記申請をする
-
工事完了から1か月以内に、法務局へ建物滅失登記を申請します。この手続きをもって全ての工程が完了です。

