
自宅を解体する事になったけど、分からない事ばかりで不安……
解体工事をすることになったら、必要な手続きや工事の流れを把握しましょう。
流れを把握していないと「着工前に依頼主がやるべきことが終わっていない」「契約のタイミングが遅くて、お願いしたい解体業者に請け負ってもらえない」など、工事が上手く進まないリスクが高くなります。
この記事では、解体工事をする際に何から始めれば良いのか、どのような準備が必要なのか、具体的な流れを知りたいなどの不安が解決できるように解説します。
- 本当に解体工事が必要かどうかを必ず家族で話し合って決定する
- 自分の敷地はどこまでか、どの範囲まで壊すのかを確認し必ず業者と認識をあわせておく
- 工事後も自分の目で状況を確認しましょう


中野達也。一般社団法人あんしん解体業者認定協会理事。解体工事業の技術管理者であり、解体工事施工技士を保有。2011年に解体業者紹介センターを鈴木佑一と共に創設。2013年に一般社団法人あんしん解体業者認定協会を設立し、理事に就任。めざまし8(フジテレビ系列)/ひるおび(TBS系列)/ 情報ライブ ミヤネ屋(日本テレビ系列)/バイキングMORE(フジテレビ系列)など各種メディアに出演。


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解体工事の全体像


まずは、解体工事の検討段階から工事完了まで、解体工事の流れをひととおり見てみましょう。
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これが解体工事ひととおりの流れです。次からは各項目について詳しく解説します。
【依頼~着工まで】
解体工事が本当に必要か話し合い、決定する


本当に解体工事が必要か話し合いましょう
まず初めにするべきは、その建物を本当に解体する必要があるのか、家族や親族と話し合うことです。その理由は、建物の解体は所有している本人だけでなく、家族の思いも絡んできたり、建物や土地の最適な活用方法は人によってさまざまなためです。
いくつか活用パターンを紹介しますので、自分の状況に照らし合わせて考えてみましょう。
解体工事が必要なケース例
新築建替の場合
古い建物を取り壊して新築を建てる場合、解体工事は必ず実施されます。基本的には解体工事へ向けて話を進めて問題ありませんが「必ずしも建物の所有者が解体工事を依頼するとは限らない」という点にだけ注意しましょう。
例えば建物付きの土地を購入した場合、土地の売り手が解体を請け負うケースがあります。基本的に建物の付きの土地は更地に比べて需要が低いため、売り手が解体を請け負うことで売却促進を図ることが目的です。また、土地の売り手は解体費用も譲渡経費として認められるため、節税対策も兼ねています。
土地を売却する場合
不動産業界の風潮としては「建物付きの土地よりも更地の方が価値が高い」とされ、土地売却のために解体工事を勧められることもしばしばです。価値や需要の点において更地の方が優れているという見解は正しいのですが、ここでは「まず建物付きで売りに出す」ことをおすすめします。これは、更地にしてしまった後に「買い手がつかなかった場合のデメリット」が大きいためです。
まず、土地から建物が無くなると、税率の軽減措置が外されるため土地の固定資産税が6倍になります。加えて、建物を壊してから年月が経過しすぎると、解体費用が譲渡経費として認められなくなるため、節税対策として活用できなくなります。需要が高い土地で買い手が現れる見込みがあれば更地にしても問題ありませんが、需要の低い土地では一旦建物付きで売りに出した方がリスクは低いと言えます。その際は不動産会社の協力のもと「解体工事」の条件付きで売りに出すことをおすすめします。
リフォーム・リノベーションする場合
建物を解体せずに、リフォーム・リノベーションしたいという方もいらっしゃると思います。
その場合は、建物の内側だけを撤去する「内装解体」が必要になります。内装解体では基礎や駆体はそのままにするため、現代の耐震基準に合わせるための免震システムや耐震補強が施されます。
住まいの間取りや動線に不満を感じている方はリノベーションを選択されることがありますが、建物全体を対象とした「フルリノベーション」は新築と大差のない金額になることもあるため、建て替えとどちらが適しているか慎重に検討する必要があります。
土地活用する場合
土地活用の場合、多くは一旦更地にする必要があるため、解体を行います。
土地活用の例で最もオーソドックスなのはコインパーキングや月極駐車場の施工です。コインパーキングでは、土地管理を行う会社次第では解体費用等の初期費用を負担してくれる場合があります。また、解体業者の中には駐車場の施工を請け負える業者も存在するため、ワンストップで依頼することでスムーズな対応をしてくれる場合もあります。解体工事を依頼する前に、費用や施工を誰が担うか検討しておきましょう。
借地返却の場合
借地返却の場合、原則として土地の借り主側が解体を行います。ただし、地主の意向次第では解体工事を負担してくれる場合があります。いずれにしても、借地上にある建物を解体すると土地の固定資産税が変動するため、解体する前に地主へ相談する必要があります。借地返却の場合は家族や親族だけでなく、地主との間で齟齬や遺恨が発生しないように話し合いを進める必要があります。



迷ってしまう場合は下のフローチャートをぜひ活用してみて!
※画像クリックで拡大できます。


【解体工事が決まったら】解体する範囲や建物の構造を把握する
解体工事が決定したら、工事の準備に取り掛かります。業者へ依頼する前に必ずチェックしておきたい項目を確認しましょう。
解体工事の相見積もり前に確認すること
解体工事を依頼する際、まず初めに建物の構造が木造・軽量鉄骨造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造のどれに当たるのか、坪数(平米)はどれくらいなのかを事前に確認しておきましょう。これらは建物の登記簿を取得することで確認が可能です。登記簿が手元にない場合は法務局で取得可能です。
また、上記を確認した上で「敷地内で撤去するもの(ブロック塀など)はどれか」「取り壊してはいけないものはどれか」を事前に確認しておく必要があります。これは、相見積もりの際に発生する業者ごとの認識ズレを無くすためです。すべての業者が同じ認識と条件のもとで見積もりをしないと、出てくる見積書間での比較が出来なくなってしまいます。





チェックリストを活用して、漏れなく作業を進めましょう!
【依頼~着工まで】
解体業者を探して契約する


解体工事が決定したら、次は解体業者を探して契約をします。多重下請け構造を採用しているメーカーに依頼するよりも、解体業者へ直接依頼した方が中間マージンがかからず費用削減ができるのでオススメです。
※画像クリックで拡大できます。


※多重下請け構造(たじゅうしたうけこうぞう)
発注元から元請け企業に仕事が委託され、その元請け企業がさらに下請け企業に、そしてその下請け企業が孫請け企業へと、と複数回にわたって仕事を再委託する構造のことを指します。
※中間マージン(ちゅうかんまーじん)
解体業界では、仲介手数料や紹介料の意味合いで使用されています。工事を依頼した会社と、実際に作業する会社が違う場合に発生します。
解体業者へ見積もり依頼
まずインターネットで「地域名 解体業者」などで検索し、相見積もりを取る業者を決めていくのが基本です。この時、業者選びのポイントも一緒に抑えておくのがオススメです。


解体業者の選び方ポイント4つ
ホームページを持っている業者かどうか
ホームページを持っている業者は開示されている情報が多く、判断材料に長けています。所有していない業者が悪いということではなく、より多くの情報を得られるという点でホームページを持っている方が判断しやすいです。
解体工事を専門的に行っているかどうか
解体工事を専門的に行っている業者の方が、より多くの経験と豊富な技術を有している可能性があります。解体工事は建設業の傍らに請け負っている業者も多いため、「単に解体工事も出来る業者」なのか「解体工事を中心に請け負っている業者」なのかを見極めたいところです。
まずはホームページの事業内容を確認してみましょう。解体工事の事業内容をホームページの上部に、または大々的に取り上げているのであれば主たる事業であると判断できますが、記載情報が少なければ副次的な事業である可能性があります。
また、それに伴って工事実績や口コミも確認しておきましょう。解体工事の実績が多く掲載されているか。ホームページに限らずGoogle口コミや口コミサイトにレビューが掲載されていて、どんなことが書かれているかをチェックしておくと判断の材料になります。
口コミを確認する際にぜひ気にしてみて欲しいというポイントを紹介します。
- 点数よりも内容を確認してみましょう。
どんな業者なのかはコメントを見てみた方が情報が得られます。 - 感情などの感想ではなく、実際に起こった事象を探してみましょう。
「どう思った」等の感想は、人によって受け取り方が変わってくる部分です。「どんな事が起きたか」という事実であれば信ぴょう性は高まります。 - Google口コミとその他媒体の口コミがあれば内容を比較してみましょう。
様々な視点から情報を比較してみましょう。 - 低い評価の口コミほど確認してみましょう。
高評価の時よりも事実が記載されている場合が多いです。
連絡が付きやすい業者かどうか
電話やメールで見積もりの依頼をした際に、連絡が付きやすい業者かどうかも判断したいポイントです。工事完了までには業者と何度もやり取りをすることになりますし、もしトラブルが起きた場合に迅速な対応をしてくれるかどうかも大切なため、連絡の付きやすさは重視しましょう。
何回かメール問い合わせしても返答がない、電話してもいつも繋がらないといった業者は避けるのが無難です。
行政処分等を受けている業者ではないか
ネガティブチェックとして、過去に行政処分などを受けている業者でないかも確認しておきましょう。不法投棄などで処分が下った業者は「産業廃棄物処理業者 行政処分 地域名」などで検索すると、対象都道府県が処分を下した業者の一覧を確認できます。自身で業者を探す際は、本当に良い業者か不安になると思いますので、ネガティブチェックも念入りに行っておきましょう。
参考リンク


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現地調査を行う
解体業者に見積もり依頼をしたら、次は現地調査が始まります。現地調査とは、解体業者が見積もりを出すために建物と敷地を調査することです。依頼主と解体業者の認識にズレがないよう、この時点で詳細をすり合わせておきましょう。
現地立ち会いの手間を減らすためには、見積依頼をした業者はすべて同じ日に現地調査の日程を組むのが望ましいです。ただし、複数の業者を同じタイミングで呼ぶのはマナー違反になります。前の業者が終わったタイミングで次の業者が来るのが望ましいので、45分~1時間程度のインターバルを設けて日程を組みます。なお、現地調査にかかる時間は15分~30分程度で、建物や敷地の要件が複雑になるほど時間がかかります。



見積もりの仕方は業者によってさまざまですが、大体はこのくらいの所要時間で対応してくれます。
見積書の取得・比較検討を行う
現地調査が完了したら、それぞれの解体業者から見積書が送られてきます。大体1週間前後で送付されますが、遅い業者だと半月ほどかかります。もし1ヶ月経っても送られてこなかった場合は管理不足による遅延と考えていいでしょう。
見積書が出揃ったら、見積書の比較検討を行います。
実際の見積書例
見積書は業者によって表記がさまざまです。実際の見積書を参考に見てみましょう。
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A社は一式でまとめられている項目が多く「どんぶり勘定」。何にどれくらい費用がかかってくるのかが不明瞭です。一方B社は項目が細かく設定されており、見積もり段階では断定できない作業も「みなし作業」としてあらかじめ見積もっています。
建物解体では、どうしても実際に作業を進めてみないと実態が分からない部分があります。(建物の基礎部分や浄化槽の有無など)後々追加費用が高額になる場合もあるので、どんぶり勘定であまりにも安い見積書には注意が必要です。今回のA社は多めに見積してくれているので、追加費用は少ない可能性がありますが、もしかすると実態は見積書の金額よりも安価で依頼をする事が可能だった……という事も想定ができます。その点B社は項目も細かく、数量・単位・単価もA社と比較して明瞭なためより安心感があります。



みなし作業として見積もってくれるかどうかは、解体業者の経験値や得意分野にもよって変わってきます。何社か比較してあまりにも金額が他と違う見積もりには注意が必要です。
また、丁寧な業者さんでも「一式」という単位自体はよく使われるものなので、書いてあるからと言って過剰に心配しなくても大丈夫です。
依頼業者の決定と契約



比較検討して、一番ぴったりな業者が見つかったら本契約をします。契約の際には、念の為に次のことを再確認しておきましょう。
- 解体工事の内容と工事範囲の再確認(現地に赴いて視覚的に確認する)
- 解体費用の総額を再確認
- 工事保険に加入していることの確認
- 建設業許可(解)を持っているか、解体工事業の登録を済ませているかの確認(資格有無の確認)
- 追加工事が発生した場合の連絡の流れと、どのくらいかかるのかを確認
- 着工日と工事にかかる日数の再確認
- 近隣挨拶の範囲と内容を再確認
- 官公庁への届け出を行ってくれるかを確認
- 緊急連絡先を交換
- その他注意点、要望にお互い漏れがないかを確認



納得できない部分が残ったまま契約しないように、慎重に手続きをすすめていこうね。
▼契約書について詳しく解説中!▼


【依頼~着工まで】
着工前の準備・届け出を行う





解体業者と契約が済んだら、着工前にやっておくべき事を漏れなく進めていきましょう。
- 解体前の片付け
- ライフラインの停止
- 官公庁への届け出
- 近隣挨拶
解体前の片付け
まずは解体業者と「どの範囲まで依頼主が片付けを行うか」をすり合わせる必要があります。先述の通り、残置物は依頼主自身で処分するほど費用を抑えられますが、残置物を残したままにしておくこと自体は問題ではありません。
問題は「解体業者の認識」と「依頼主の認識」にズレがあることです。業者と約束した分の片付けが終わっていないと、業者側の予定が狂って工事に遅延が発生してしまいます。また、遅延が発生すると業者に負担がかかるだけでなく、その分の費用が追加で発生してしまうため、双方の利益のために約束は守りましょう。


ライフラインの停止
着工前には電気やガスなどのライフラインを停止させるため、契約解除の手続きを行います。
ただし、水道だけは工事中に使用することがあるため、契約の継続をお願いされたり、停止してから業者名義で水道を利用したりします。契約の時点でどのライフラインをいつまでに止めればよいか話し合っておきましょう。
- ガス
- 電気
- 水道
- 浄化槽、便槽の汲み取り
- 電話
- 光ケーブルやケーブルテレビ
官公庁への届け出
解体工事を始める前には、官公庁へ工事の届け出をしないといけません。
基本的には業者が代行してくれますが、契約の際に手続きを行ってくれるかどうか確認しておきましょう。なお、提出期限に関しては自治体ごとに差異があるためご注意ください。
- 建設リサイクル法の届け出(工事の7~14日前まで)
- 解体工事計画の届け出(工事の7日前まで)
- アスベスト調査結果の届け出(工事の14日前まで)
▼解体工事で必要な届け出を解説中!


近隣挨拶
着工の1~2週間前には、近隣への挨拶回りを行います。工事の時間帯や工期、注意事項などを事前に説明しておくことで、工事中のクレームやトラブルを減らせるためです。
挨拶回りは基本的に解体業者のみで行われますが、建て替えを予定されている方は業者と一緒に回ることをオススメします。今後もその土地で暮らしていくにあたっては、近隣関係が重要になるためです。





近隣挨拶の範囲は業者によって異なります。
「向こう三軒両隣」(5軒~)が基本ですが、少ない場合は2,3軒、多い場合は30軒以上行うこともあります。
挨拶前には、どの辺りまで挨拶回りをするのか業者とすり合わせをしておきましょう。その際には「◯◯さんとは以前トラブルがあったからとくに配慮してほしい」など、伝えるべき近隣情報があれば共有しておくことが大切です。なお、挨拶回りでは基本的に粗品を持っていくため、その粗品代が解体費用の諸費用に計上されることがあります。
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挨拶状は、業者が渡す場合は自分で用意する必要はありません。万が一業者が書面を用意していなかった場合は用意しましょう。


挨拶状を作成する場合は、以下の内容を記載しましょう。
ご協力のお願い
工事中にご迷惑をおかけしてしまうこと、ご協力をお願いしたい旨を記します。
工事の名称
「●●邸取り壊し工事」など、工事の概要がわかる名称を明示します。
工事を行う場所
取り壊し事を行う家屋の住所を具体的に明示します。
発注者名
取り壊し工事を発注した責任者の所在を明示します。
施行期間
工事の施工予定期間を記します。天候等の影響により遅れてしまうことを想定し長めに設定しておいたほうが良いです。
施行時間
1日のうち何時から何時まで工事を行うのかを記します。万が一の為始まる時間を早めに、終わる時間を遅めに設定しておいたほうが良いです。
休みの日
工事を行わない曜日を記載します。
工事施工業者
取り壊し工事を請け負い、実際に施行する業者の名前を明示します。
施工業者の住所
取り壊し工事施工業者の住所を明示します。
施工業者の担当者
施工業者の中で、今回の工事の責任者である担当者の名前を明示します。
施工業者の連絡先
万が一お客様から直接ご連絡をしたいという場合に、対応できる連絡先を明示します。
引用:解体工事の近隣挨拶 必要な手土産や挨拶の範囲を解説/解体無料見積ガイド
【着工~工事完了まで】着工準備


いよいよ解体工事が始まります。ここからは解体工事が開始してからの流れを解説していきます。
工事が始まったら、基本的に依頼主側で何かアクションを起こすことはほとんどありませんが、解体工事がどんな工程で行われるのかは把握しておきましょう。
一般的には「着工準備」「解体作業」「最終確認と清掃」すべて併せて5~11日程度の期間をかけて作業します。
※以下各項【】内は工程にかかる作業時間
看板の設置【0日~】
解体工事の現場には必ず「建設業許可及び解体工事業登録」の看板を設置する義務があります。これは「解体工事をする資格があるかを証明するもの」であり、建設業法及び建設リサイクル法に基づいた規則になるため、設置しない場合は法令違反となります。建設業法で定められた、看板への掲示内容は次のものです。
- 商号及び名称
- 代表者の氏名
- 主任技術者の氏名
- 専任の有無
- 資格名
- 資格証交付番号
- 一般建設業及び特定建設業の種別
- 許可を受けた建設業
- 許可番号
- 許可年月日
- 建退協加入証
- 労災関係成立表
- 施工体系図
- 下請人に対する通知
- 建設業退職金共済制度適用事業主の現場標識
- 緊急連絡先


また、建物にアスベストが含まれている場合は「石綿使用状況の調査結果」の看板も設置する必要があります。これも石綿障害予防規則及び改正大気汚染防止法に基づいた規則になるため、設置しない場合は違法になります。
なお、法令に基づいた設置義務はありませんが「有資格者一覧」「建設リサイクル方の届出証明」「道路使用許可証」が記載された看板の設置も望ましいと言えます。それぞれが正当な解体業者であることの証明になるため、近隣や周囲への周知方法として有効です。
作業スペース・搬入経路の確保【0日~4日】
敷地内で重機を十分に動かすスペースや廃材の運搬車両を駐車するスペースがない場合、敷地の状況に応じてブロック塀や外構、庭木などを先に取り壊します。なお、重機や作業員が敷地からはみ出して作業をすることは法令で禁じられています。必ず敷地内での作業が求められるため、スペースが不十分と判断されれば先にある程度の撤去作業を行います。
この作業は敷地や周辺環境によって大きく異なり、十分に重機が動かせる環境であれば必要ありません。


【着工~工事完了まで】工事開始


足場組立・仮設養生の設置【1~2日】
工事が開始されたら、まずは足場組立・仮設養生の設置を行います。「足場組立」は、工事の高所作業において職人の安全を確保するために仮設足場を設置する作業のことです。普通の木造家屋の場合は単管(パイプ)の足場を3~4面に設置するのが一般的です。なお、足場組立には「足場の組立て等作業主任者」という国家資格が必要になります。
「仮設養生」は、工事中の粉塵や騒音を防止するために必要な養生シートの設置作業を指します。足場組立や仮設養生の作業がずさんになると、近隣や通行人とのトラブルに発展する可能性が高まるため、工事現場を見に行けるのであればこの段階で現場確認しておくことを推奨します。
ちなみに「作業スペース・搬入経路の確保」の時点で重機解体が難しいと判明している場合は、この段階で手壊し工事を行います。手壊しの解体作業が行われた場合は工期が延びるため注意が必要です。




アスベスト塗料を除去する【5~11日】
建物の塗料にアスベストが含まれている場合は、このタイミングで除去されます。アスベストが外壁材などに含まれている場合は比較的撤去が容易ですが、塗料に含まれている場合は撤去作業が複雑になり難易度が上がります。アスベストの量や工法によって工期は前後し、最低でも5日程度はかかる作業となります。
まず、塗料撤去による飛散を防ぐため、剥離剤と呼ばれる粘度と湿度の高い液体を塗り、アスベストを湿潤化させます。その後、工具のスクレーパーや金ブラシなどを使い、手作業でアスベストを除去します。また、飛散を防ぐために足場や養生も厳重かつ頑丈に設置する必要があるため、工期の長さも相まって費用は高額になる傾向があります。




▼アスベストについて詳しく解説中!


住居設備・屋内残置物の撤去・内装撤去【2~3日】
駆体を取り壊す前に建物の中を綺麗にし、建物を駆体のみにします。
まずは屋内残置物の撤去です。基本的に依頼主と事前に約束した量の残置物であれば問題ありませんが、約束よりも量が増えている場合は想定作業時間を上回ることがあるので注意が必要です。続いて住居設備の撤去です。キッチン、お風呂、トイレ、エアコンなど、駆体と一緒に取り壊せない設備を先に撤去しておきます。最後に内装の撤去です。内装材、断熱材、窓ガラス、畳などの内装を撤去します。本工程はすべて手作業で行われ、かつ廃材は品目ごとに分別されるため、作業には2~3日を要します。なお、この時に産業廃棄物の排出事業者となる解体業者は、産業廃棄物のマニフェストを発行します。




屋根材・外壁撤去【1~2日】
建物の内部を綺麗にしたら、屋根材と外壁の撤去を行います。外壁は内装と同時並行で撤去作業をすることがありますが、屋根材は作業位置に高低差が生まれ危険が生じるため、同時に作業は行いません。
このタイミングは埃が飛散しやすい工程でもあるため、一つひとつ手作業で丁寧に撤去を行います。特に屋根材に関しては、屋根上からトラックに瓦を投げ入れるなどの雑な作業を行ってしまうと、粉塵、騒音トラブルの危険性が高まるため注意が必要です。
なお、外壁建材にアスベストが含まれている場合はこのタイミングで撤去します。アスベストが飛散しないよう、外壁をそのまま手作業で外して処分をします。飛散防止の観点から梱包をしてトラックに積み込み、排出、運搬を行います。アスベストの撤去作業は1~2日程度です。


駆体の解体・廃材分別(搬出)【2~3日】
駆体以外をすべて撤去したら、いよいよ駆体の取り壊しに入ります。本工程が多くの方の想像する「解体工事」だと思われますが、実際には駆体を取り壊すまでにさまざまな工程を踏んでいるのです。
また、多くの方は重機で建物を一気に取り壊す「ミンチ解体」をイメージされるかもしれませんが、現代でその取り壊し方は違法になっています。現代では廃材を「コンクリート」「アスファルト」「木くず」などの品目ごとに分別する「分別解体」が義務付けられており、本工程に多くの作業時間とマンパワーが必要になります。
また、本工程の作業時間は解体業者に所属する重機オペレーターの技術力に依存します。腕の良いオペレーターが作業を行っていればその分工期を短縮できるため、業者選びの際には評判や口コミを参考に注視したいポイントでもあります。なお、この期間では重機を使い始めるため、急に振動や粉塵が発生します。本工程に入る前に近隣への配慮を行っているかどうかで近隣トラブルの発生に影響するため、必要であれば近隣に挨拶を行っているか確認を入れましょう。




基礎撤去・地中埋設物撤去【半日~2日】
建物の土台となる部分を「基礎」と呼びます。建物の駆体を取り壊し終わったら土台である基礎を撤去します。
基礎は大きく分けて「布基礎」と「ベタ基礎」があり、布基礎よりもベタ基礎の方が頑丈で取り壊しづらく、工期も工費も掛かってしまいます。木造建築において1990年代は布基礎が基本でしたが、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」が2000年代に制定されたことをきっかけに、より強固なベタ基礎が主流になっていきました。
そのため、古い建物を取り壊す際は布基礎が多く、より新しい建物を取り壊す際はベタ基礎である傾向が高いです。この観点で言えば、建築技術は年々進歩しており耐震性も上がりどんどん強固になっているため、時代が進めば進むほど解体工事は難しくなり、解体費用も高額になると言えます。
なお、基礎を撤去する際には地中埋設物の撤去も行います。地中埋設物はこの段階にならないと存在を確認することが出来ないため、発掘された場合は撤去に追加費用が発生します。


外構の撤去【1~2日】
「作業スペース・搬入経路の確保」において取り壊さなかった外構の残りを撤去します。外構の対象となるのは「ブロック塀」「フェンス」「門柱」「カーポート」「物置」「花壇」「ウッドデッキ」などです。
外構撤去の作業は、敷地内の状況によって大きく異なります。大きな庭石や樹木がある場合は、専門業者による撤去が行われる場合もあります。


【着工~工事完了まで】作業終了


整地・清掃【1~2日】
解体作業完了後に、更地を綺麗に整えることを「整地」と言います。工事で出た廃材の破片やガラを撤去し、土に増減があった場合は盛土を追加・撤去して平らに均します。
意図的に土地の高さを変えたい場合にも土を追加する必要があるため、業者に依頼をして整地時に土を追加してもらいましょう。
なお、自然石(通常の土に含まれるような小さい石)は基本的に撤去されないため注意が必要です。業者はあくまで工事で出たガラを撤去するので、まっさらに綺麗な土地に仕上がると想像されている場合、現実とのギャップがあるかもしれません。ただし、中には熊手などを使って小さい石まで細かく撤去する業者もいます。要望があるならそのような業者を探すか、工事前に要望をしっかり伝えましょう。
また、整地と共に現場周辺の清掃も行います。清掃の際には水を使用することが多いため、水道の解約は清掃終了後になるケースがほとんどです。


完工確認・現地立ち会い【1日】
整地が完了したら依頼主に現場写真が送られてきますが、仕上がりに関しては写真だけでなく現地での確認を推奨します。依頼主と業者の間ですり合わせたことがちゃんと守られているか、食い違いが起きていないかを確認するには、写真だけの情報では不十分だからです。たとえば指定した境界を誤って認識していないか、近隣に傷は付けていないか、残してと言ったものはちゃんと残っているかなど、しっかりと確認した上でOKを出しましょう。
また、工事が完了したら業者と立会日をすり合わせ、かつなるべく早く現場に立ち会うことが大切です。最も望ましいのは、工事前から工事完了日をすり合わせておき、完了日に立ち会いへ赴くことです。
なぜなら、解体工事が終わったら業者は重機などの資材を引き上げるためです。長期間同じ現場に重機を置いておくのは現実的ではないため、仮に何か不備があってもすぐに対応できないことがあります。早めに現地の状況を確認し、何か要望があるなら重機が保有されているうちに伝えて対応してもらうことが望ましいです。
請求書発行
工事が完了したら、解体業者から解体費用の請求書が発行されます。請求書が到着次第、業者の指定にしたがって支払いを行いましょう。
依頼主の現地確認が遅れている場合、確認の旨を伝えなくても請求書が届くこともあります。


建物滅失登記の申請
解体業者からの書類がひととおり揃ったら、建物滅失登記の申請を行います。
申請は土地家屋調査士に代行してもらうことも可能ですが、依頼主自身で手続きをした方が費用を抑えられます。滅失登記の手続きが完了したら、解体工事は無事終了となります。
※建物滅失登記(たてものめっしつとうき)
法務局に登記されている建物を取り壊したときに行う手続きのことです。建物を解体してから1ヶ月以内に建物滅失登記を行う必要があると、不動産登記法第57条に定められています。
(建物の滅失の登記の申請)
第五十七条 建物が滅失したときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人(共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記がある建物の場合にあっては、所有者)は、その滅失の日から一月以内に、当該建物の滅失の登記を申請しなければならない。引用:不動産登記法(e-Gov 法令検索)



手続きが難しそうに思えるかもしれませんが、専門知識がなくても自分で手続きできるのでご安心ください!
検索すると手続き方法について簡単に調べられるので参考にしてみましょう。
まとめ:解体工事に失敗しないために大切な流れポイント
1.解体工事をするかどうか
本当に解体工事が必要かどうか、あらゆる選択肢と比較して検討する。関係者の総意として決定したら解体工事に取りかかる。
2.責任の範囲は事前に明確に
工事前には依頼主側の認識を業者と綿密にすり合わせ手続き等の責任区分も明確にしておく。
3.工事後も自分の目で確認を
整地後の立ち合いはなるべく早く現地で行う。事前の取り決めや約束が守られているかをチェックし、問題がないと判断してから工事後の手続きを行う。



解体工事は人生の大イベントです。笑顔で解体工事を終えられるよう、ぜひこの記事を参考にして準備を進めましょう!
参考文献:『知るだけで100万円安くなる!令和版解体工事の新常識』(著:中野達也/出版:セルバ出版)


中野達也。一般社団法人あんしん解体業者認定協会理事。解体工事業の技術管理者であり、解体工事施工技士を保有。2011年に解体業者紹介センターを鈴木佑一と共に創設。2013年に一般社団法人あんしん解体業者認定協会を設立し、理事に就任。めざまし8(フジテレビ系列)/ひるおび(TBS系列)/ 情報ライブ ミヤネ屋(日本テレビ系列)/バイキングMORE(フジテレビ系列)など各種メディアに出演。


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