
この記事の案内人・編集長
稲垣 瑞稀
解体工事が全て終わり、更地だけの状態になると「滅失登記」という手続きが必要になります。
申請の手続きは「土地家屋調査士」に代行してもらうか、ご自身で行うかの2択。なお、自身で手続きを完了させれば4~5万円程度の節約になります。
登記申請と聞くと難しそうで自分1人では出来ないように感じますが、滅失登記の申請はどなたでも簡単に行えるため安心してください。
本記事では「自分で申請を終わらせたい!」とお考えの方に向けて、滅失登記の申請サポートにも携わる「あんしん解体業者認定協会」全面監修のもと、滅失登記の手続き方法を分かりやすくお伝えします。
- 滅失登記を自分で申請すべきか、土地家屋調査士に代行してもらうべきかがわかる
- 自分で簡単に手続きできる滅失登記の申請ステップがわかる
- 解体業者に滅失登記を代行してもらえない理由がわかる
一般社団法人あんしん解体業者認定協会 理事・解体アドバイザー
初田 秀一(はつだ しゅういち)
解体アドバイザー歴15年、相談実績は11万件以上。お客様の不安を笑顔に変える現場のプロフェッショナル。「どんな些細なことでも構いません」をモットーに、一期一会の精神でお客様一人ひとりと向き合い、契約から工事完了まで心から安心できる業者選定をサポート。この記事では現場のリアルな視点から解説を担当。

「スッキリ解体」編集長
稲垣 瑞稀(いながき みずき)
解体業界専門のWebメディアでWebディレクターとして6年以上、企画・執筆・編集から500社以上の解体業者取材まで、メディア運営のあらゆる工程を経験。正しい情報が届かず困っている方を助けたいという想いから、一個人の責任と情熱で「スッキリ解体」を立ち上げ、全記事の編集に責任を持つ。
建物滅失登記とは?
滅失登記は解体工事に欠かせない法的手続きです。手続きを忘れると、ペナルティが発生するおそれがあります。
建物がなくなったことを法務局に知らせる手続き
建物滅失登記とは、文字通り「建物がなくなった(滅失した)こと」を、法務局の登記簿に記録するための手続きです。登記簿は、その土地や建物が誰のもので、どのような状態にあるのかを公的に証明する大切な記録です。
建物を解体しただけでは、登記簿上はその建物が存在し続けていることになってしまいます。この矛盾を解消し、登記簿の情報を現状と一致させるために滅失登記が必要になります。
申請期限は1ヶ月以内!手続きを忘れると10万円以下の過料に
建物滅失登記の手続きは不動産登記法で定められた義務であり、建物を解体した日から1ヶ月以内に申請しなければなりません。
もし正当な理由なくこの期限を過ぎてしまうと、「10万円以下の過料」に処せられる可能性があります。
(建物の滅失の登記の申請)
第五十七条 建物が滅失したときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人(共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記がある建物の場合にあっては、所有者)は、その滅失の日から一月以内に、当該建物の滅失の登記を申請しなければならない。(過料)
第百六十四条 第三十六条、第三十七条第一項若しくは第二項、第四十二条、第四十七条第一項(第四十九条第二項において準用する場合を含む。)、第四十九条第一項、第三項若しくは第四項、第五十一条第一項から第四項まで、第五十七条、第五十八条第六項若しくは第七項、第七十六条の二第一項若しくは第二項又は第七十六条の三第四項の規定による申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、十万円以下の過料に処する。
【初田理事に聞いた】実際に滅失登記を忘れるケースはどのくらいある?
実際に滅失登記の手続きを忘れてしまう人はどれくらいいるのでしょうか。また、滅失登記の手続きが1ヶ月以上遅れてしまったときのリアルな対応はどうなるのでしょうか。
その実態を確かめるため、解体ユーザーからの相談実績が11万件以上にものぼる「あんしん解体業者認定協会」の初田理事に見解を伺いました。
一般社団法人あんしん解体業者認定協会 理事・解体アドバイザー
初田 秀一 (はつだ しゅういち)
解体アドバイザー歴15年、相談実績は11万件以上。お客様の不安を笑顔に変える現場のプロフェッショナル。「どんな些細なことでも構いません」をモットーに、一期一会の精神でお客様一人ひとりと向き合い、契約から工事完了まで心から安心できる業者選定をサポート。この記事では現場のリアルな視点から解説を担当。
稲垣:実際に滅失登記の申請を忘れてしまうユーザーはいるのでしょうか?
忘れてしまう方も僅かにいらっしゃいます。ただ、解体業者からも登記に必要な書類が送られてくるので、「滅失登記の存在を知らなかった」という方はほとんどいません。そのため全体で見たら滅失登記の申請漏れはほぼ無いと言っていいでしょう。
稲垣:「申請から1ヶ月を過ぎたら過料が発生する」と言いますが、忘れてしまったケースでは罰則はありましたか?
半年前の解体工事で滅失登記を忘れていたお客様のケースでは、解体業者に再度取り壊し証明書を発行してもらい、手続きを行いました。
滅失登記の申請遅れに関する過料は実質的に機能していないことが多く、そのお客様も特に罰則はありませんでした。
だからといって「遅れても大丈夫」なわけでは決してないので、もし手続きが遅れてしまった場合は行政に正直に相談しましょう。
滅失登記が遅れたことで起きた失敗事例
実態としては数少ない「滅失登記の手続き漏れ」ですが、その中でも「あんしん解体業者認定協会」に寄せられた滅失登記の失敗事例をご紹介します。
【失敗事例1】売却直前で「幽霊家屋」が発覚! 買主の信用を失い、契約が危うくなったケース
Aさんは、親から相続した土地を売却することにしました。その土地はすでに更地になっており、Aさんはすぐにでも売却できると考えていました。
幸いにもすぐに買主が見つかり、売買契約を結ぶ直前の段階まで話が進みました。しかし、買主側の不動産会社が登記簿を確認したところ、実際には存在しないはずの古い家屋の登記が残っていることが発覚しました。
【発生したトラブル】
- 買主の不信感
買主は「話が違う。本当に建物はないのか?何か隠しているのではないか?」と不信感を抱き、契約に難色を示し始めました。 - 住宅ローンの審査への影響
買主が利用する金融機関から、「登記簿と現況が異なるため、このままでは住宅ローンの審査を進められない」と指摘され、売買計画そのものが頓挫する危機に陥りました。 - 売却の遅延と余計な費用
Aさんは慌てて土地家屋調査士に依頼し、滅失登記の手続きを行いました。しかし、登記が完了するまで1ヶ月以上かかり、その間ずっと買主を待たせることに。売却のタイミングが大幅に遅れた上、想定外の登記費用(約5万円)が発生してしまいました。
結果として、 なんとか契約はできましたが、買主からの信頼を損ない、精神的にも金銭的にも大きな負担を強いられることになりました。
【失敗事例2】存在しない建物の相続!? 兄弟間で費用負担をめぐり揉めたケース
Bさんの父親が亡くなり、実家の土地を兄弟3人で相続することになりました。実家の建物は父親が生前に取り壊していたため、兄弟は更地になった土地だけを相続するものだと考えていました。
しかし、遺産分割協議を進める中で、父親が建物の滅失登記をしていなかったことが判明。法務局の登記簿上は「土地と建物」の両方が存在しており、兄弟3人はこの「幽霊家屋」も一緒に相続する形になってしまいました。
【発生したトラブル】
- 遺産分割協議の停滞
「誰が中心となって滅失登記の手続きをするのか」「土地家屋調査士への依頼費用は誰が負担するのか」で兄弟間の意見が対立。スムーズに進むはずだった遺産分割協議が、この一点で完全に停滞してしまいました。 - 手続きの煩雑化
滅失登記を行うには、建物を取り壊したことを証明する書類(建物取毀証明書など)が必要です。しかし、父親の遺品の中からその書類を見つけ出せず、手続きはさらに難航しました。
最終的に長男であるBさんが費用を立て替えて手続きを行いましたが、費用負担をめぐる不満から兄弟間の関係に亀裂が入り、後味の悪い相続となってしまいました。
申請が漏れると固定資産税の課税や、土地が売却できないデメリットも
滅失登記の申請が遅れると、過料以外にも様々なデメリットが生まれます。
- 固定資産税が課され続ける
登記簿上に建物が残っていると、存在しない建物に対して翌年以降も固定資産税が課税され続ける可能性があります。 - 土地の売却ができない
解体した建物の登記が残ったままでは、その土地を売却したり、担保に入れて融資を受けたりすることができません。 - 新築建物の登記ができない
同じ土地に新しい家を建てる場合、古い建物の滅失登記が完了していないと、新しい建物の登記(表題登記)ができません。
解体業者は滅失登記の申請代行ができない
中には「滅失登記は解体業者がやってくれる」と誤解される方もいらっしゃいます。
原則として、解体業者は滅失登記の申請は代行できません。
解体業者の役割は「建物滅失証明書」の発行まで
解体業者の仕事は建物を物理的に取り壊し、その事実を証明する「建物滅失証明書」を発行するところまでとなります。
この証明書は、あなたが滅失登記を申請する際に必要となる重要な添付書類の一つです。つまり、解体業者は登記申請の「材料」を用意してくれるパートナーであり、申請そのものを代行する立場にはありません。
登記申請の代行は国家資格(土地家屋調査士)が必要
登記申請を代行できるのは、「土地家屋調査士」という国家資格を持った専門家に限られます。
土地家屋調査士は、不動産の表示に関する登記の専門家であり、法務局への申請手続きを正確に行う知識と技術を持っています。
解体業者がお金を貰ってこの業務を代行することは、土地家屋調査士法に違反します。
(非調査士等の取締り)
第六十八条 調査士会に入会している調査士又は調査士法人でない者(協会を除く。)は、第三条第一項第一号から第五号までに掲げる事務(同項第二号及び第三号に掲げる事務にあつては、同項第一号に掲げる調査又は測量を必要とする申請手続に関するものに限る。)又はこれらの事務に関する同項第六号に掲げる事務を行うことを業とすることができない。
- あなた(建物の所有者)滅失登記の申請義務者。
- 解体業者 建物を解体し、「建物滅失証明書」を発行する。
- 土地家屋調査士 あなたに代わって、登記申請を法的に代行できる唯一の専門家。
【初田理事に聞いた】解体業者から「代わりに滅失登記を申請するよ」と言われたら?
土地家屋調査士法には、調査士以外は滅失登記の代行を「業とすることができない(業務として請け負うことができない)」とあります。では、解体業者から「滅失登記もやっておくよ」と言われた場合、どのように対応するのが適切なのでしょうか。
解体業者が滅失登記の申請をするのはグレーゾーンと言えます。報酬が発生せずに無料で代行した場合は「業ではない(業務として請け負ってない)」ように見えますが、実質的には「解体工事を受注するためのサービスの一環」であることが多く、業とみなされる可能性があります。
解体業者から滅失登記の代行を提案される場合、殆どの場合は無料が前提になります。一見「業務として請け負っていない」ように見えても、実際は業務の一環として代行していると判断される可能性があります。
専門家以外への代行依頼はトラブルに繋がるおそれがあるため、ご自身での申請か専門家への依頼が確実と言えます。
滅失登記は自分でやる?専門家に頼む?
滅失登記の申請は依頼者自身で行うか、土地家屋調査士に代行してもらうか、どちらが良いのでしょうか。
選択肢①:自分で申請する場合(費用を抑えたい人向け)
できるだけ費用を抑えたい、という方はご自身での申請をおすすめします。
- 費用の目安: 数千円程度(書類取得費用や交通費のみ)
- メリット: 専門家への依頼料(4〜5万円)を節約できる。
- デメリット:
- 法務局へ訪れたり、郵送で資料を送ったりする手間がかかる。
- 書類の準備や作成に手間がかかる。
- 書類に不備があると、法務局へ再度足を運ぶことになる。
解体費用の出費に際して、少しでもトータルの費用を抑えたいと考えている方は手続きに挑戦してみましょう。
選択肢②:土地家屋調査士に依頼する場合(時間と労力をかけたくない人向け)
仕事が忙しい方や、法的な手続きに不安を感じる方は、土地家屋調査士への依頼が確実です。
- 費用の目安: 4万円〜5万円程度
- メリット:
- 面倒な手続きをすべて任せられる。
- 資料作成や提出の手間を節約できる。
- 書類の不備なく、確実に手続きを完了できる安心感がある。
- デメリット: 専門家への報酬費用がかかる。
資料作成や提出の手間に煩わしさを感じている方にとっては、費用を払ってでも得られるメリットは大きいと言えます。
自分で滅失登記を申請する6つのステップ
登記の申請と聞くと難しい印象を抱くかもしれませんが、滅失登記の申請はご自身でも簡単に行えます。これから解説する6ステップを守るだけで誰でも手続きできますので、参考になさってください。
ステップ1:申請する法務局を探す
建物滅失登記は、その建物を管轄する法務局に申請します。まずは滅失登記を申請する法務局を探しましょう。
インターネットで「○○市(解体工事をした地域) 管轄 法務局」と検索すれば、簡単に管轄する法務局を特定できます。ただし、 法務局は統廃合があるので、念のため電話をして建物の所在地を告げて間違いがないか確認しておくと安心です。
画像引用:横浜地方法務局 不動産登記/商業・法人登記の管轄区域一|法務局
上記は「横浜市 管轄 法務局」と検索した結果、トップに表示されたページです。
「不動産登記管轄区域」が詳細に指定されているため、ご自身が解体した土地の住所と照らし合わせて確認しましょう。
ステップ2:必要書類を揃える(建物滅失証明書・印鑑証明書など)
次に、申請に必要な書類を集めます。あなたが用意すべきなのは「建物滅失登記申請書」「案内図」の2つだけです。
書類の種類 | 主な入手先 | 備考 |
---|---|---|
【解体業者から受け取る書類一式】 | ||
① 建物滅失証明書 | 解体業者 | 建物が取り壊されたことを証明する中心的な書類です。 |
② 解体業者の印鑑証明書 | 解体業者 | 上記証明書に押された印鑑が本物であることを証明します。 |
③ 解体業者の資格証明書(会社謄本など) | 解体業者 | 業者が法人である場合に必要です。ただし、申請書に会社法人等番号を記載すれば、この書類と印鑑証明書の添付を省略できる場合があります。 |
【ご自身で準備・作成する書類】 | ||
④ 建物滅失登記申請書 | 法務局の窓口 or ウェブサイトでダウンロードし、作成 | 法務局のサイトで様式と記載例をダウンロードできます。申請書への押印は認印で構いません。 |
⑤ 案内図(地図) | ご自身で用意 | 建物があった場所がわかる住宅地図のコピーや、Googleマップ等を印刷したもので構いません。 |
ステップ3:建物滅失登記申請書を作成する
書類が揃ったら、登記申請書を作成します。
法務局のウェブサイトにある記載例を参考にし、ご自身で記入を進めてみてください。
なお、記入の際には以下の注意事項をよく読み、抜け漏れがないかを確認してください。
- 建物を取り壊した工事請負人の証明書(工事請負人が法人の場合は、 その法人の代表者の資格を証する登記事項証明書などの書面、及び代表者の印鑑証明書を、工事請負人が法人でない場合は、個人の印鑑証明書を含む)を添付してください。
- 工事請負人が法人である場合に、記載例のとおり申請書に当該法人の会社法人等番号を記載したときは、当該法人の代表者の資格を証する書面 (登記事項証明書など) 及び代表者の印鑑証明書(現在登記所に印鑑を登録している場合に限ります。)の添付を省略することができます。
- 登記の申請年月日は、申請書を登記所に提出する日を記載してください。
- 申請人として、登記事項証明書の所有権に関する事項欄(甲区といいます。)に記録されている現在の登記名義人の住所と氏名又は名称(法人の場合は代表者の氏名)を記載します。
- 甲区がない登記記録の場合は、登記記録の表題部の末尾に記録されている所有者の住所と氏名又は名称を記載します。氏名(法人の場合は代表者の氏名)の下に認印を忘れずに押しましょう。
- 登記記録上の所有者の住所が、現在の住所と一致していない場合は、登記記録上の住所から現在の住所までの異動の経過が分かる、住民票の写し、戸籍の附表の写し等を申請書に添付してください。不明な点は市町村役場又は登記所にお問い合わせください。
- 申請書の記載内容等に補正すべき点がある場合に、登記所の担当者から連絡するための連絡先の電話番号を記載します。
- 不動産番号を記載したときは、所在、家屋番号、種類構造及び床面積の記載を省略することができます。
- 現在の権利書または登記記録(登記事項証明書) に記録されているとおりに記載し、「登記原因及びその日付」欄には、取壊し証明書に記載された建物の取壊しの日を記載してください。
書き方で分からないことがあれば、管轄の法務局にある「登記相談窓口」で相談することをおすすめします。
ステップ4:解体業者から必要書類を受け取る
解体工事完了後、指定の住所宛に「建物滅失証明書」「解体業者の印鑑証明」「解体業者の資格証明書または会社登記簿謄本」が送られてくるため、資料の内容を確認しましょう。
【初田さんに聞いた】解体業者から書類が送られてこなかったら?
稲垣:解体業者から書類が送られてこない、または遅れるようなことはありますか?
基本的にはありません。もし解体業者から資料が送られてこない場合は、お手数ですが業者に催促の連絡を入れてみてください。
ただ、稀に「お客様の解体費用の入金が遅れている」などの理由で証明書が発行できないこともあります。
お客様自身の手続きが問題なく行われているかも確認しておきましょう。
ステップ5:書類を法務局へ提出
必要書類が用意できたら、それらをまとめて法務局へ提出します。上の画像のように「建物滅失登記申請書」「案内図」「建物滅失証明書」「解体業者の印鑑証明」「解体業者の資格証明書または会社登記簿謄本」の順にホチキスで左綴じにし、管轄法務局の「不動産登記部門」の「表示係」へ提出します。
窓口ではなく郵送で申請する場合は、封筒の表面に【不動産登記申請書在中】と記載し、書留郵便で送ります。
法務局によっては申請者本人の印鑑証明を要求される場合があります。必要書類は事前にホームページまたは電話で確認しておきましょう。
ステップ6:滅失登記完了の確認
提出後、1週間〜10日ほどで登記が完了し、法務局から「登記完了証」が交付されます。あらかじめ郵送での返却手続きをしておけば、登記完了証が郵送されます。
もし書類に不備(補正)があった場合は、法務局から連絡があります。指示に従って修正し、再提出すれば問題ありません。
なお、登記が完了したら確認したい場合は、返信用封筒と切手500円程度を同封して完了通知を送ってもらうことも可能です。
土地家屋調査士に依頼する流れと費用相場
「平日に申請の時間が取れない」「慣れない手続きでミスをするのが怖い」と感じる方は、土地家屋調査士に依頼することをおすすめします。
ここでは、依頼した場合の具体的な流れと費用について詳しく解説します。
相談から登記完了証の受領までの4ステップ
土地家屋調査士に依頼した場合、あなたが実際に行うことは最初の相談と委任状への署名・捺印だけです。
- 相談・見積もり依頼: まずは土地家屋調査士に連絡し、状況を伝えて見積もりを依頼します。
- 正式依頼・委任状の提出: 見積もり内容に納得したら、正式に依頼します。手続きを代行してもらうための委任状に署名・捺印して渡します。
- 専門家による手続き代行: 土地家屋調査士が必要な書類の収集から申請書の作成、法務局への申請まで、すべて代行してくれます。
- 登記完了証の受領: 手続きが完了したら、土地家屋調査士から登記完了証などの書類一式を受け取って終了です。
費用相場は4〜5万円|費用の内訳と変動要因
日本土地家屋調査士連合会が発行した『2022年度アンケートによる土地家屋調査士報酬ガイド』によると、土地家屋調査士に滅失登記を依頼する場合の平均的な費用は、48,098円です。これに基づけば4万円~5万円程度が相場と言えるでしょう。
全国における報酬額
平均報酬額 48,098円(税抜き)であった
この費用は、大きく分けて「土地家屋調査士への報酬」と「登録免許税などの実費」で構成されています。
建物の状況によっては費用が変動することもあります。例えば、建物の図面がない場合や、相続が複雑に絡んでいるケースなどでは、調査費用が追加でかかる可能性があります。
必ず事前に見積もりを取り、費用の内訳をしっかり確認することが大切です。
後悔しない土地家屋調査士の選び方3つのポイント
ポイント1:地域の土地家屋調査士会やオンラインで探す
土地家屋調査士は各都道府県にある「土地家屋調査士会」のウェブサイトで検索できます。
地域に根ざした専門家を見つけることができます。
ポイント2:見積もり依頼時に対応の早さと丁寧さを確認する
良い専門家かどうかを見極める上で、対応の質は非常に重要な判断基準になります。
問い合わせや見積もり依頼をした際の、レスポンスの速さを確認しましょう。
対応が早い事務所は、業務全般においてもしっかりしている傾向があります。
また、専門用語ばかりでなく、あなたの知識に合わせて分かりやすく説明してくれるかどうかも大切なポイントです。
質問に対して親身に、そして丁寧に答えてくれる専門家を選びましょう。
ポイント3:複数の専門家を比較し、相性の良い担当者を選ぶ
面倒に感じるかもしれませんが、必ず2〜3の事務所から見積もりを取り、比較検討することを強くおすすめします。
費用を比較するのはもちろんですが、それ以上に担当者との「相性」も重要です。
電話やメールのやり取りを通じて、「この人なら信頼して任せられそう」と感じるかどうか、ご自身の直感を大切にしてください。
最終的にあなたの財産に関する重要な手続きを任せるわけですから、心から納得できる専門家を選ぶことが、後悔しないための最も大切なステップです。
【FAQ】滅失登記の手続きに関するよくある質問
不動産番号、家屋番号が分かりません
証書や法務局で調べられます。
不動産番号とは、土地や建物を特定するための13桁の番号です。建物滅失登記申請書を記入する際、この不動産番号を記入すると所在地や家屋番号などの記載を省略できるため、大変便利です。
不動産番号は登記事項証明書の表題の横に記載してあります。権利証や、固定資産税評価証明書、固定資産税の納税通知書に付いてくる課税明細書などでも確認出来ます。これらの証書がない場合は、建物を所管する法務局に申請すれば、登記事項証明書を郵送もしくはオンラインで交付を受ける事が出来ます。
また、管轄法務局ではブルーマップという地図で家屋番号を確認することも出来ます。 具体的には法務局にお問い合わせください。
購入した建物で、名義がまだ売主の場合は?
「滅失登記の申し出」ができます。
原則として名義人である売主が滅失登記を行います。まずは名義人である売主に滅失登記を依頼しますが、中には非協力的な方もいます。その場合は「建物の滅失登記の申し出」という方法があります。
この申し出を受けると、登記官は建物の所有者に通知を出し、滅失登記を促します。しかしそこには名義人はいないため、不在として通知が戻り、これを受けて登記官は現地を確認し、滅失登記を行います。 たとえ、建物を取り壊しても建物の登記が残っていると、売却や抵当権の設定の際などに不都合が生じる恐れがありますので、注意が必要です。
親名義の家を相続した場合、相続人が申請できますか?
相続人でも申請出来ます。
建物滅失登記は、本来建物所有者(名義人)が行わなければならないことになっています。但し、相続が発生している場合は、相続人が登記申請する事が出来ます。
その場合は、相続人であることを証明できる書類(戸籍謄本等)を添付して提出します。なお、戸籍謄本は管轄される市区町村の役場で取得可能です。
(一般承継人による申請)
第三十条 表題部所有者又は所有権の登記名義人が表示に関する登記の申請人となることができる場合において、当該表題部所有者又は登記名義人について相続その他の一般承継があったときは、相続人その他の一般承継人は、当該表示に関する登記を申請することができる。
建物が遠く離れた場所の場合、どのように申請すれば良いですか?
郵送でやり取り出来ます。
建物滅失登記は、建物の所在地を管轄する法務局で行います。しかし、遠い場所にある建物を滅失登記しなければならない場合もあります。そんな場合は、 電話での確認・郵送での提出により、現地に行かず完了させることもできます。
申請書は法務省のホームページからダウンロードし記入し、提出書類(解体業者も遠くの業者と思われますので、業者から受け取る書類も郵送しておいてもらいます)と共に管轄法務局へ郵送すれば受け付けてもらえます。手続きしておけば登記完了証も郵送してもらえます。
不明な点は、管轄法務局へ電話して、具体的に質問すると良いでしょう。
(3)郵送による申請も可能です。申請書を郵送する場合は、申請書を入れた封筒の表面に「不動産登記申請書在中」と記載の上、書留郵便により送付してください。
建物が共同名義の場合は?
1人でも申請出来ます。
建物を数人で共有している場合、原則としては共有者全員で登記申請することになっています。
しかし、実際には全員の協力が得られないケースや、共有者が行方不明になっている場合もあります。
この実態を反映して、建物の滅失登記申請は、共有者の中の1人でも申請する事が出来ることになっています。
(共有物の管理)
第二百五十二条 共有物の管理に関する事項(次条第一項に規定する共有物の管理者の選任及び解任を含み、共有物に前条第一項に規定する変更を加えるものを除く。次項において同じ。)は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。共有物を使用する共有者があるときも、同様とする。5 各共有者は、前各項の規定にかかわらず、保存行為をすることができる。
※滅失登記は「保存行為」とみなされるため、必ずしも共有者全員の同意を必要としません
建物の一部を取り壊した場合、滅失登記は必要?
建物滅失登記ではなく、建物の床面積の変更登記を行います。
滅失登記は建物が完全になくなった際に登記をするものです。建物の一部を取り壊した場合は、滅失登記ではなく、床面積の変更登記を行います。
建物の床面積の変更登記も、滅失登記と似ています。ただし、提出書類には建物図面や各階平面図といった、やや難しい書面を添付する必要がありますので、ご自身での申請は滅失登記ほど容易ではありません。
この場合は、土地家屋調査士に依頼された方が無難です。
(建物の滅失の登記の申請)
第五十七条 建物が滅失したときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人(共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記がある建物の場合にあっては、所有者)は、その滅失の日から一月以内に、当該建物の滅失の登記を申請しなければならない。
建物が登記されているかすら分からない場合は?
法務局で、全部事項証明書請求を行いましょう。
建物に抵当権が付いている場合は?
取り壊す前に抵当権者の承諾を得ましょう。
既に取り壊した建物は、抵当権が付いたままでもそのまま滅失登記ができます。建物がないのに登記だけを残しておく意味が無いからです。
しかし、取り壊す建物に第三者の抵当権が設定されている場合は、トラブルを避ける意味で事前に抵当権者の承諾を受けておくべきでしょう。法務局によっては、抵当権者の承諾書などを求める事もあります。
解体工事に関する資料が1つもない場合は?
法務局に相談しましょう。
提出書類の多くが解体業者からもらう書面にもかかわらず、稀にいつどの業者が解体したのか一切わからないというケースもあります。
そんな場合は、建物に関するあるだけの書面(固定資産税の証明書や、売買契約書など)を持って、法務局に相談します。
わかりうる経緯を書面にまとめた「上申書」を作成することで登記が可能になります。とにかく、現に建物が無い事を確認すれば良いわけですから、書類が揃っていないから受け付けないという事はありません。
登記されていない建物(未登記建物)を解体した場合も手続きは必要?
「未登記建物」を解体した場合、法務局への滅失登記は不要です。
なぜなら、元々登記が存在しないからです。
しかし、注意点が一つあります。
未登記建物であっても、市区町村の固定資産税課税台帳には登録されています。
そのため、建物を管轄する市区町村役場(都税事務所など)へ「家屋滅失届」を提出する必要があります。
これを忘れると固定資産税が課税され続けてしまうので、忘れずに手続きを行いましょう。
第三者に滅失登記を行った証明を要求されたら?
閉鎖登記事項証明書を提出しましょう。
建物の滅失登記を行った後で、土地の売却などに伴って、第三者から滅失登記を行った証明を書面で出して欲しいと言われることがあります。
こんな時は「閉鎖登記事項証明書」を提出します。閉鎖登記事項証明書は、いつ滅失登記が行われたかが記載されており、普通の登記事項証明書同様、手数料を支払うことで交付してもらえます。この時、登記完了証も併せて提示すれば完璧です。
解体業者から登記簿謄本(または資格証明書) が送られてこない場合は?
申請書に解体業者の会社の法人番号12桁の記載があれば登記簿謄本や印鑑証明書の添付は不要です。
解体工事完了~入金後に、解体業者から建物滅失証明書と印鑑証明のみ送られてくることがありますが、法人番号の記載があれば法務局への提出は省略できます。また業者が個人の場合も不要です。
完工後スムーズに書類を受け取るためには、契約時に「書類はいつ発行してくれるのか」を確認しておくと安心です。また、工事料金の支払いを確認してから建物取毀証明書を発行する業者が多いので、依頼主は完工後すみやかに現地で工事が問題なく完了したかを確認し、期日内に料金の支払いを完了させるのが大切です。
まとめ:滅失登記の申請手続きに挑戦してみましょう
建物滅失登記の申請はそこまで複雑なものではありません。まずは手続きの方法をしっかり理解して、ご自身での申請に挑戦してみましょう。
- 1.必要書類を揃える
-
あなたが用意するべきは「建物滅失登記申請書」「案内図」の2つだけ。「建物滅失証明書」「解体業者の印鑑証明書」「解体業者の資格証明書」は解体業者から郵送されます。この5つの書類を揃えましょう。
- 2.法務局の窓口、または郵送で提出
-
必要書類は管轄の法務局に直接提出するか、郵送で提出できます。管轄の法務局はインターネット検索「○○市(解体工事をした地域)管轄 法務局」で調べられます。
- 3.不備がなければ滅失登記完了
-
提出書類に問題がなければ滅失登記が完了します。法務局からの「登記完了証」発行をもって完了となります。